ヴァンパイアライフ~不慮の事態で吸血鬼になりましたがなんとか頑張って生きていきます~

琴葉悠

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支配からの脱出を目指す~私は貴方の花嫁になんかならない~

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 明里は一人、自室のベッドの上で泣き続けていた。
 両親が居なくなった事を、死んだ事を再認識させられて辛かったのだ。

 それが自分せいだということがさらに辛かった。
 祖父母に言えない事。

 吸血鬼にされたこと、その結果父母が殺されたこと。
 全部、自分のせいだと。


 死んでわびるなんて怖くてできない、けれども独りぼっちで生きていく勇気もない。
 自分を吸血鬼にしたアルフレートの好き勝手になんてされたくない。
 せめて一矢報いたい。
 でも方法も何も分からない。


 ぐるぐると思案していると、チャイムがなった。
 顔がひどい事になってるのを確認し、何とか見られてもいいように取り繕い、玄関に出ると、葛葉とクォートが居た。
「すまないな、納骨が済んだばかりだと言うのに」
「いえ……いいんです、独りよりは……」
「……明里、無理をするな」
「え……」
「酷い顔をしているぞ」
 明里はクォートに言われ慌てふためく、取り繕ったはずなのに、と。
「どれほど取り繕うと顔に出る」
「クォートさん……」

「で、諸悪の根源。貴様何を考えている」

『諸悪の根源とは失礼な』

「事実だろう」
 明里の影が男の──アルフレートの影になる。
「単刀直入に明里に聞くぞ、明里、お前はこいつの物になりたいか?」
「──なりたくありません!」
 お守りの効果か、明里は自分の気持ちをはっきりと言えた。
「だそうだぞ、大馬鹿者」
「悲しいねぇ、でもこちらに振り向かせる楽しむができたよ」
「こいつ頭花畑じゃないか」
 葛葉は額に手を押さえ、疲れたように言った。
「未だ、お守りがないと明里は主導権を簡単に奪われてしまう……作り直したから前よりは強固になったが……」
「先生……」
「安心しろ、明里、必ずお前をこいつの魔の手から助けてやるからな」
「有り難うございます、先生……」

『やれやれ、魔の手とは酷い言われようだ』

 アルフレートの影は悲しそうに揺らぐ。
「貴様のしでかした行いは必ず償ってもらうからな」
『さて、どうだか』
「クォート、しばらく明里と暮らしてくれ」
「え?」
「分かりました」

『何だと、私がいるのに若造と暮らすだと⁈』

 アルフレートの影が明らかに動揺していた。
 葛葉はそれを見て鼻で笑う。
「お前が何かしたらクォートならすぐ対応できるだろう」
 そう言って明里を見る。
「クォートは人目につかないように行動してもらう、だから気にするな」
「は、はい」
「すまないな、本当はゆっくり両親の死を悼みたいところに私が押しつけて」
「ご安心を、明里の邪魔にならないようにします」
「は、はい……」

『何故拒絶しない、明里!』

 アルフレートの影が怒鳴る。
「だって、貴方が何かしたら対処してくれるのはこの方だと思うから……」
『若造だぞ!』
「……でも、貴方より信用できます。私を勝手に吸血鬼にした貴方よりも」
『ぐむぅ……』
「という訳だ、何かしたらクォートが行くし、私もお前の事を叩きのめしに行くからな」
『もっと平和的にやれないのかね』
「どの口がほざく」
 葛葉はそういって、家を後にした。

「失礼ですが、寝床は先に運ばせていただきました」
「え⁈」
「場所はどこかは秘密にさせていただきたい、アルフレートの影が何をするか分からない故に」
「い、いいえ。それで結構です」
『見つけ出して白木の杭を打ち込んでやる』
「悪いですがそういう場所には置いてませんので」
 忌々しそうに揺らぐ影に、クォートはそう言った。

──一体どこに置いたのだろう?──

 明里は気になったが調べることはしなかった。




「疲れた……」
『明里、何故私を拒絶するような事をいったのだい?』
 やっと一人きりになったと思ったらアルフレートが影を通して現れて明里は肩を落とした。

 一人の時間もないのかと。

 そしてお守りを握りしめて言う。

「私の両親が死んだのは私の心のどこかで見てくれないことへの悲しみが怒りにつながった結果かもしれない、それでも私の本心は両親に死んで欲しくなどなかった! それをさも善意の行動であるように言う貴方とは相容れない! だから私は貴方の花嫁になどなる気はない!」
──言った、はっきりと──
『それは困るな、君は私のものなのだから』
「絶対脱出してみせる」
『精々頑張り給え、我が花嫁』
 そう言って影は元に戻った。
「……」
「明里、大丈夫か?」
「わわ⁈」
 目の前にクォートが現れたので明里は慌てふためいた、
「だ、大丈夫だよ!」
「そうか……ところで明里」
「何?」
「アルフレートの支配から脱出したいのだな?」
「は、はい‼」
「なら方法がある」
「な、何でしょう⁈」
「奴の血を吸う事だ」
「え゛」
 予想外の解決方法に明里は困惑する。
「そうすれば君はただ一人の夜の一族になる。アルフレートの血族でありながらそれから外れることができる」
「……」
「ただ、アルフレートもそれを知っているからやすやすと血を飲ませるような行為はしないはずだ」
「で、ですか……」
「だから、君はアルフレートよりも強く無ければならない」
「強く……」
「私が言えるのはこの程度だ、すまないな」
 クォートが謝罪すると、明里は首を振った。
「い、いいえ! クォートさん有り難うございます!」
「とにかく、君が支配から脱出するために、葛葉と共に作戦を練ろう」
「は、はい‼」
「だが、もう夜も遅い。普通の人間の生活をする君は眠らなければならない」
「あ……」
「薬はこちらだ、ちゃんと服用するように」
「あ、有り難うございます」
「では」
 クォートが居なくなってから、明里はふぅと息を吐いた。
「よし、頑張らないと!」
 そう言って薬を飲み、ベッドに眠りについた。





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