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直視する
しおりを挟む明里は普段通りに学校に行き、授業を受けて帰る日々を続けていた。
その間に、タリスマン──お守りを作り直して貰った。
部活動に入っていない明里は、授業が終わったら即座に帰るという行動を続けていた。
土曜日になり、学校が休みとなった。
明里は少し遅めの起床をすると、血液を摂取し、そして薬を飲む。
「冷蔵庫も順調に空になったし……カモフラージュに何かいれておこうかな……」
随分を空き部分ができた冷蔵庫を見て、明里はつぶやいた。
その時チャイムが鳴り、明里が外に出ると母方の祖母が尋ねてきていた。
どうしたのかと聞いたところ、明日葬式だという話を聞き、明里は自分の両親が亡くなった事を再認識する。
祖母がぼうっとしている明里を心配して声をかけると、明里はなんでもないと伝えて、祖母から明日のことを聞いて見送った。
明里は両親が居なくなっても毎日変わらず生きている自分を薄情者と内心ののしったが、どこかでそうなっても仕方ないかとあきらめた。
両親とはそこまで仲良くできなかったのだ。
いじめに苦しんでても見ぬふりをしてきた両親、その事が原因で両方の祖父母やら親類に縁を切られていたのだ。
そんな両親に、悲しみを覚える一方で、何故自分をちゃんと受け止めてくれなかったのだろうかと怒りも未だに残っていた。
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「……先生に伝えて置こう……」
明里は自室に戻り葛葉に電話をした。
葛葉はすぐ電話に出た。
『はい、葛葉です』
「先生? 外崎です」
『外崎か、どうした』
「明日、両親の葬式があるんです……」
『そうか……場所はどこだ?』
「真宵ホールです」
『あそこか、少しだけ人が多く入るところだな?』
「はい……祖母は本当はこじんまりやるはずだったらしいですけど、両親の同僚とかがいろいろ言ってきたらしく……」
『なるほど解った何時頃だ?』
「10時頃からです」
『ありがとう、では学校代表としていかせてもらうよ』
「いえ……こちらこそありがとうございます」
『外崎』
「はい……」
『1人でいろいろ考え込むな、今は私がついてるだろう』
「先生……」
『今まではやれる事が少なく結構面倒だったが、これからは大手をふってお前に何かできるようになったんだ、まぁこっそりとだがな』
明里は葛葉の言葉に少しだけ嬉しくなりくすくすと笑う。
『やはり凹んでいるより笑っている方が気分はいいな』
葛葉は楽しげにいってから、急に声色を変えた。
『ところで――あの阿呆に会いに言ってないだろうな』
「え……その会いにいってません、というかプライバシー侵害説が出てきて怖くて行けません……」
『まさか、タリスマンが破損したとか?』
「なんかひもとか切れてちょっとよれっとなってましたいつの間にか……」
明里の言葉を聞くと、葛葉は盛大に電話の向こう側で舌打ちをした。
『あの阿呆!! 外崎が不安定になりやすいの知ってて意識のっとったな!! やっぱりあの阿呆締める!!』
「せ、先生……落ち着いて」
『外崎、すまんが今日はあの阿呆のところ行ってくるから少ししか話ができん』
「あ、あの先生……!」
通話が途切れ、明里は失敗したと頭を抱えた。
確かにプライバシーの侵害をしてる発言してしまったが、葛葉に話して二人の仲をこれ以上悪化して何か悪いことでも起きたらと不安になった。
「ああ、これで悪いことになったらどうしよう……」
『明里、何が悪いことなのだい?』
優しい声色に、明里はびくっとした。
きょろきょろと周囲や影を見渡すが、特に変化はなかった。
「あうう……また声だけ……」
『ああ、私と会いたかったのかい、それは済まないね。今エレナが来てね、君とは直に会うことができないんだよ』
「え゛」
明里は悪い予感があたったという顔をして狼狽えた。
『エレナがやたら怒っているのだが、私が何か悪いことでもしたかね?』
「それはその……」
疑問に思っているような声色に、明里は「プライバシー侵害した」とか「お守り破損させた」などを言うことができなかった。
『――ああ、なるほどそういう事かい』
「え゛」
『君の観察がプライバシーの侵害ならそうだろうし、タリスマンを破損させたのは事実だからね』
「ええぇ?!」
明里はすっとんきょうな声をあげた、何一つ言ってないのに、アルフレートにバレていたことに驚いたのだ。
『何を驚いているのだね、君は私の花嫁。何を考えている位わからないと――』
ぶつりと声がとぎれる。
「あ、あれ? アルフレートさん……?」
何度か呼んでみたが反応はなく、明里はあきらめたような顔をして自室に戻った。
「買い物行きたいなぁ……」
ぽつりとつぶやくが、先日の惨劇が頭をよぎり外出ができなかった。
「でも、また化け物が来たらいやだなぁ……」
そういうと、ベッドにうずくまり体を丸める。
何もできない、何かをすることに歯止めがかかっている状態にため息をつく。
しばらくうずくまったままだったが、起き上がり、何かをしようと決めた顔をして、服を着替えて家を出る。
そして、アルフレートのいる『吸血鬼のでる館』へと向かった。
館につくと、誰もいないのを確認し館に入っていく。
扉を締めると、館が振動しているのに気づいた。
「な、何これ……?!」
明里は不安になり館を出ようとしたが、少しの間扉を見てからそれをやめて館の奥へと走る。
館の奥の扉を開け放つと、おとぎ話などで国王がいるような部屋が広がっていた、そしてそこで葛葉がアルフレートに殴りかかっていた。
「えぇええ?!?!」
明里の叫び声に、葛葉が振り返る。
「外崎?! どうしてここに!?」
葛葉が驚きの声をあげて見ると、アルフレートが葛葉を投げ飛ばした。
葛葉は壁に見事にめり込むように投げられ、明里はそれを見て悲鳴を
あげた。
崩れた壁から葛葉が起き上がり、明里のそばにきて、彼女の肩をつかんだ。
「何故ここに来た、危ないのは解ってるだろう?」
「だって……今の状態良くないから何とか良くしたくて……」
「……なら私を待ちなさい、わざわざこんな教育に悪いところにくるな」
「教育に悪いとは失礼だね」
葛葉の言葉にアルフレートは機嫌悪そうに反論する。
そんなアルフレートを無視して葛葉は話かける。
「この間の事件だな」
「はい……ここ最近、私の周囲にいた人――特に私が好ましく思ってなかった人どんどん亡くなっているんです、ほぼ私が原因です……」
「安心しろ、全部アルフレートが悪い」
「ロクデナシは死んでも問題ないだろう?」
「ほら、こんなこと言ってる奴だ、だいたい此奴が悪い、それに此奴はお前のプライバシー侵害基お前がどういう目にあったのか見た奴だ、お前の血を通してな」
「え……そんなことできるんですか?」
「できるとも、私もお前の血を飲めば私もお前の記憶を取り込むことができる、逆しかり」
「な、なんか便利な生き物に見えてきました」
「でも、飲めば記憶を必ず受け取れる訳じゃない。直接血を吸わないと無理だが。まぁ眷属に入れる時なら確実にみれるがな」
「べ、便利なようで厳しい……」
「そうばかすか人の記憶取り込んで見ろ、自分が薄れていくぞ」
「や、やっぱりやらないでおこう……」
明里が少々げんなりした表情で言うと、アルフレートはくすくすと笑った。
「私位の夜の一族なら、知識を選び出して吸うことも可能だとも。君もいずれできるとも」
「は、はぁ……いや、そういう風になりたいわけではないんです、ただ……周りでこれからも人が死んでいくのは見たくないんです」
「明里は優しいのだね、ならば早く強くなるといい。本気になればヴァンピール一体ぐらい軽く倒せるのに君はまだそれができない、自分自身でセーブをかけてるから上手く力を発揮できていないんだよ」
「え……」
アルフレートの言葉に、明里は信じられないという顔をする。
「誰も死なせたくないのなら強くなるのが一番だよ」
「貴様が言うか!!」
アルフレートに葛葉がまた突っかかる。
明里はそれを見てられず、顔を覆うと同時に再び館が揺れ始めた。
二人の戦闘が再開したからである。
ドカバキと破壊音が明里の耳に届き、目をうっすらとあければ塵が舞うとが見えると悲惨な光景だった。
「うう……もう、帰ろう」
明里はそういうと、振り返り元来た道を歩いていった。
そして自宅に戻ると、制服によれなどがないか確認してクローゼットにかけ直す。
翌日になるまで、明里は普通に過ごし、薬をきちんと服用していた。
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