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二人のダンピールのハンターとそれを巡る関係

神を堕とす者、神代は忘却されゆく

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「神堕とし⁇」
 マリーの仲介屋に戻ってきたアレフィードは首を傾げた。
「……賢者の一族は、人間を害なす神を堕として消滅させてきた……という話を聞いたことがありますが実際に目にすることになるとは……」
「おい、他のハンターには頼まないのか?」
「ちょっと現地の状態がアレなので今のところ一番腕が立つクロウとディストさん、次に腕がたつようになったアレフィードさん位しか頼めないんですよ……」
「あれ、坊ちゃんいつのまにそこまで?」
「……お前の現場実習が難易度が高いものが突如出現するのが多かったからだと思う……」
「あー……」
 アレフィードの言葉にクロウは心当たりが大量にあった。
「しかし、神堕としとはあの時以来か」
「あの時は神になった魔族を堕としましたが、今回はもともと神なのを堕としますからね……一族から直々のご用命です」
「お前の一族だけじゃダメなのか?」
「ちょっと力不足らしいので私が出ることになりました」
 困り顔をするマリーを見てクロウは口を開いた。
「どんな神だ?」
「それも言えません、下手に情報を教えると――」
「そうだな、神が堕としづらくなるんだったな」
 クロウとマリーの会話にアレフィードだけはついていけてないのか分からないと言いたげな表情をする。
「情報や信仰が多い程神の力は増して、堕とす時大変になるんですよ」
 アレフィードにマリーは優しく言う。
「俺らがするのはその神の力によって来た害虫の駆除だ」
「害虫とは?」
「無貌<むぼう>――神の使いになりたがろうとする普段はそこらへんにいるけど害のない連中だ、奴らが害なす存在になるときは、神が出現する時だ」
 クロウはマリーが作った情報に目を通すと、空間の穴を開けてその場所への道を作る。
「おい、行くぞ。後、ファレスだったか、お前さんはどうする」
「アレフィード様のお供をしましょう」
「よし、戦力多いに越したことはねぇ、行くぞ」
 クロウ達はクロウの作った穴を通って、その場所へ移動した。


 その場所に着くと、クロウは忌々し気に目を細めた。
「降臨開始か」
 夜だというのに、昼のような明るさがあった。
 雲で月は隠され、隙間からは太陽よりもまぶしい光が差し込み、光の柱を無数につくっていた。
 白く不気味な生き物たちが何かをささげようとしていた。
 それらはこちらに気づくと襲い掛かってきた。
「こいつらが無貌だ!! 遠慮するなぶちのめせ!!」
 クロウは異形の姿に変わると、周囲の無貌を破壊し始めた。
 ディスト達も後に続いて無貌達を切り、銃で吹き飛ばし、魔術をもって消滅させていった。

「……マリー様、貴方は?」
 唯一戦闘に参加してないマリーを見て、ファレスは無貌の首をねじ切りながら問いかけた。
「神堕としの為に力温存中です」
「なるほど」
 ねじ切った無貌を捨てると、それは消滅した。
「しかし無数にいますね」
「そこら中にいますから、正直終わるまではお願いします」
 マリーはそう言ってクロウ歩き出した。

 できるだけ近い距離で神を堕とさねばならないからだ。

 アレフィードとディストにやけに無貌が集まっているのを危険視した、クロウは二人のところにより、近づいた無貌を一掃する。
「気をつけろ、お前ら人間とか比べ物にならないレベルで美形なんだからな」
「それが何か危険なのか?」
「それは――」
 天上から白い糸のようなものが伸びてきて、ディストとアレフィードを縛り上げた。
「くそ!!」
 クロウは糸を破壊するが、破壊した途端、無数の白い触手が天井から伸びてきてディストとアレフィードを吊り上げ、持って行ってしまった。
「やられた!! マリー飛ぶぞ!!」
「はい!!」
 マリーは箒を取り出し、一足先に二人を追いかけた。
「私も行きます!!」
 ファレスが無貌を排除しながら言う。
「無茶すんなよ!!」
 クロウはそう叫ぶと、背中から黒い翼をはやし、天へ向かって飛び立った。
 追ってくる無貌達を力で破壊しながら、道を阻む触手たちも力で消滅させながら分厚い雲を抜ける。
 雲の上は白い光に包まれていた。
 巨大な人ともつかぬ何かが居た。

 あとを追ってやってきたファレスがその存在が放つ神聖な力に少しばかり気分を悪そうに顔色を青白くする。

 神聖さにすこしやられているファレスにクロウは術をかけた。
「……楽になった?」
「ヴァンパイアには神の力は少々毒だからな。それで当分持つだろ……さて……いたハニー達だ!!」
 その存在の複数ある手の中の一つに、ディストとアレフィードが球体に包まれるようにいた。
 見たところ二人とも意識を失っているようだ。
「おい! そこの腐れ神! 俺の恋人と、その弟分返しな!!」
 クロウが叫ぶと、その存在は複数の目を開けた。

『『『これは』』』

『『『我の物にする』』』

『『『そしてこの地を』』』

『『『我の物とする』』』

「話通じねぇなぁ、このくそ神、長いことの隠居で頭が腐ったんじゃねぇか!?」
 クロウがそう吐き捨てると、その存在に使える、天を飛ぶ軍勢が三人に向かってきた。
 クロウは両手をかざし、黒い雷で軍勢を落としていく。
「……神に仕える軍勢か……なら」
 ファレスは周囲に闇を広げる。
「手加減は一切無用ということか!!」
 闇が軍勢を飲み込み捕食していく。
 マリーは二人の応戦の間をぬって進み、神へと近づいていく。
 しかし軍勢がマリーの行く手を阻もうとする。
「腐れ神、俺が二人に何もしてないと思ったら大間違いだぞ!!」
 クロウが叫ぶとファレスは目を丸くした。
「何をしたのです?!」
「破壊者特権――生贄はく奪!!」
 クロウが手を伸ばすと、球体にヒビが入り、黒い羽根が包み込む。

『『『何だ』』』

『『『これは』』』

「破壊者に親しい奴に手を出したお前がバカやったんだよ!!」
 球体は粉々に砕け散り、黒い翼をはやした二人が姿を現す。
 クロウは空間の穴を開けて、二人を手元に引っ張り、取り戻した。
「……少し頭がくらくらするな……」
「アレフィード様!! ご無事で!!」
「すまん」
「まぁ、いいってことよさて」
 クロウは神と呼んでいる存在を指さす。
「軍勢とやら蹴散らして、マリーにあの腐れ神堕としてもらうぞ!!」
「わかった」
「勿論だ」
「了解です」
 四人はマリーの道を阻もうとうする軍勢たちに突っ込んでいった。

 ファレスは白い翼を闇で捕食し地に落としていく。

 アレフィードは炎と剣で軍勢に立ち向かい、消滅させていく。

 ディストは銃で向かってきた存在の頭を射抜き、頭部を再生しようとするそれを真っ二つにし消滅させた。

 クロウは黒い羽根を散らし、それに接触した存在は体が一瞬で消滅し、それに怯んだ存在を、破壊者の力を込めている銃で撃ち落とし消滅させた。

 四人の健闘もあり、マリーは神の元にたどり着く。
 触手がマリーを貫こうとしたが、マリーに近づいた途端先端から消滅していった。
 クロウの結界が守っているのだ。

「――よ」
 マリーは目を閉じ古き言葉で神の名を言う。
 いつの間にか槍を持っていた。
 二又に分かれた、神秘性を保持した槍だ。
 マリーの背後に無数の巨大な魔法陣が展開される。
「神代は終わりをつげ幾星霜、今は人の世、神は奇跡を残すのみ」
 マリーの持っていた槍が黄金の輝きを放つ。
「されど再び神が世界に干渉せしとき、我、賢者神から世界を守護するのみ」
 目を閉じていた目を見開く。
 マリーの魔力が槍に集まり、槍は更に輝いた。
「終わりの時は来れり、我は神を堕とす者――!!」
 マリーは槍を投げた、槍はすさまじい速さで飛んでいき、神と呼ばれる存在を射抜いた。
 槍はその存在の体を貫通し、天の彼方へと消えていった。
『『『そんな』』』

『『『我を堕とすとどうなるか』』』

『『『どうなるかわかっているのか?!』』』

 神だった存在は五人に怒声をぶつける。
 触手が向かってくるが、全てクロウの力の前に消滅させられる。
 軍勢も全て消滅していった。
「神だったものよ、貴方の力は形骸化しているのです、とうの昔に貴方は人間から不必要だったのです」
 マリーは神だった存在に静かに事実を告げる。
「他の神々同様、時折祈られるだけで満足していればよかったのです、そうすれば生き永らえた」

「神だった方、さようなら。貴方は栄光を取り戻したいが為に悪手をうったのです」

『『『そんな、そんな馬鹿なぁあああああAaAaaaaa!!』』』

 神だった存在はぼろぼろと崩壊していった。
「じゃあな元神様とやら」
 クロウが力を使い、存在を完全に破壊した。
 神だった存在が消えると空は元の静かな夜の色に戻った。
「……魔神の時よりあっけないな」
「あの神は人間の信仰によって生まれた神なのです、堕とされ、信仰を失くした以上力は失われるのです……それでも最後のあがきで私達を道連れにしようとしてましたが」
「まぁそれは俺がなんとかしたからな」
「じゃあ、帰るか」
 クロウが空間に穴を開けると、五人全員がそこに入った、そして穴は消え、静寂だけが残った。





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