旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
27 / 27
花嫁として巫女として~この世界で生きて行く~

旅するレストラン~ここで私は生きて行く貴方達と共に~

しおりを挟む



 ごたごたがあったが、それからは穏やかな日々を過ごしていた。
 たまにドラゴンを紅き王達が狩ってくるので、メルトさんとゴンドラさんの所に行き来していたらちょうどトライさんも来て。

「私だってドラゴン解体できますー‼」

 と絶叫し、泣き叫んだのにはちょっと引いた。
 なのでメルディスの街、ベルディの街、ビルドの街の三つを交代で行くことで話はまとまった。

 他の街にも、ちょくちょく顔を出すことはあった。
 主に五ヶ月の滞在期間が終わって、二ヶ月は他の場所で過ごさなければならないとき。

 店のメニューも増えて、常連さん達は居なくなっている間にお金を貯めて来た時に豪遊、満腹になるまで食べるというのを続けているようだ。

 国王陛下も、お忍びでいらっしゃる事がある。
 それもそうだろう、あの値段で自分達に取って美味なる食事が提供されるならお忍びでもやって来たい。

 それに、誰かが私達に突っかかってくる事は無かった。
 店も騒ぐことはあれど暴動のようなものは起きなかった。

 平穏な日々がやって来た。




「ただいま戻りました──」
 今回はベルディの街で二ヶ月過ごして帰って来た。
「おう、カズエ! 神王様方よくぞ戻っておいでになりました!」
 ドーンさんが出迎えてくれる。
「じゃあ、早速ですが、レストランを」
「おう!」

 いつもの空き地に向かい、叫ぶ。

「旅するレストラン!」

 バーンとレストランが出現する。
 私が扉を開けると──

「オーナーようこそいらっしゃいました」
 店員さん達が挨拶をする。
「じゃあ、いつも通りお願いね」
「はい」
 私は待っている人達を見て言う。
「開店しました、どうぞ!」
 歓声が上がり、人が入っていく。

 私達はいつも通りVIP席に向かう。

「今日のメニューは……」
「カズエ」
「はい?」

 紅き王が私の額にキスをする。

「えっと……」
「……もう少し私の好意を自覚してくれ」
「言葉にしちゃいなよ~~紅~~」
「緑、燃やすぞ」
「きゃー! 助けてカズエちゃん!」
「紅き王、緑さんをいじめちゃ駄目ですよ」
 そう言うとふてくされた顔になるなので──

「私も、紅き王の事は好きですよ」

 とはっきり言う。
 この長い時間の中で紅き王に好意を抱くようになった。

 最初は強引な方だと思ったが、行動の中の優しさに少しずつ惹かれていった。
 私だけが特別、貴方の特別。

「ああ、我もだ」

 紅き王も嬉しそうに笑った。




 そして翌朝──
 家から出ると閉まっているレストランに向かい、開店の合図を送る。

 待っている人達に向かって言う。

「旅するレストラン、開店です!」

 レストランは賑わいを見せる。
 今日も、明日も、明後日も、私が終わるその日まで。
 どうかずっとこの幸せが続きますように──




 旅するレストランは今日も営業中。
 六神王はレストランで舌鼓を打つ──
 住民達も──
 私も──
















END
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...