旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
26 / 27
花嫁として巫女として~この世界で生きて行く~

身勝手な復讐心を燃やす炎~平穏な生活が欲しい~

しおりを挟む



「カズエ、戻ったぞ」
「お帰りなさい、紅き王。黒さん、青さん何を取ってきたんですか?」
「コカトリス一匹」
「ブラッディオーク、二十匹とブラッディオークキング一匹」
「ワイバーン二十匹」
「わぉ」
「肉を寄越せ」
「二日位かかるが大丈夫ですか?」
「かまわん」
 解体小屋のおじさんが言うと、紅き王は素っ気なく言った。
 紅き王達はどさどさと狩ってきたものを置いた。
「紅き王、黒さん、青さん、食事にしませんか」
「そうだな」
 紅き王達は頷き、一緒にレストランに向かう。
 レストランは待っている人も居るくらい大盛況だった。
「カズエは何を食べる」
「ちょっと疲れてるのでうどんにします」
「うどん?」
「紅き王にはちょっと物足りないですね?」
「そうか……」
「でもカレーうどんにすれば、少し満足感が増えるかも?」
「ではそうしよう」
 紅き王、気のせいじゃない気がするのだけど、私と同じ物を食べたがるようになっているような……。
 まぁ、深く詮索はしないでおこう。




「このカレーうどん、辛みが良く太い麺に絡まって美味いな」
「そうですか」
 カレーうどんの大きいサイズを注文して、私は通常サイズのうどんをすすった。
 出汁が透明で丁寧に取られており、うどんと絡み合って美味しかった。


 今までは巫女だけで通っていたのが、今は紅き王の伴侶件、他の神王の巫女という役柄な為結経神経が疲れる。
 今までは、契約者兼巫女という立ち位置だったので、巫女という意識は薄かったが、今はその認識は濃い。

「はぁ」

 思わずため息をつく。

 なんか思考は子どものまま、役職だけが上に上げられている社会人の気分だ。
 こんな子どもに重役押しつけるとか正気の沙汰とは思えない。
 と、思いはするものの口では言わない。

 というか紅き王も何でこんな私を気に入ったのかが分からない。

 食欲?
 それはあり得るけど、なんかそれ以外にもあるような感じで何も言えない。

 ベッドの中でぐるぐると考えていると──

『カズエ今寝室か⁈』

 紅き王の念話が飛んできた。

『はいそうですけ──』
『今すぐそこから離れろ!』

 その言葉に飛び起き逃げると、寝室に穴が空いた。

「な、な、何⁈」
「カズエ無事かー⁈ 魔王の国から集団脱走があったらしくてこの国に来てるって報告あったんだー!」

 ドーンさんの声が聞こえた。

「殺してやる、俺達がどんな目にあってきたか……‼」

 人影が見える。
 血走っているのが分かる。
 言葉なんて通じない。

『助けて‼』

 そう思った直後──

「「「「ぎゃああああああああ‼」」」」

 燃え上がるのが見えた。

「我が妻に害意をなそうなどすればそうなる」
「紅き王! ……⁈」

 抱きしめられた。
「無事で何よりだ……」
 心底安心しきった声に、なんだか私も安心してしまう。
 燃え上がったほうとチラリとみれば、鎮火して、黒くなっているがかろうじて生きているのが分かった。
 警備兵の方々が連れて行くのが見えた。
「カズエ! 紅き王! ご無事ですか‼」
「無事だけど寝室に穴が……」
「大工に修理を特急で依頼する! それまでは安全な場所で休んでくれ」
「安全……となると一つ」

 レストランの居住スペースに戻り、布団の中にくるまる。
「あーあ、あのベッドふかふかだったのに」
「それも新しいのをくれるそうですよ」
「……ならいいですかね」
「魔王にはキツく言っておかねばな」
「いやいや、魔王様も集団逃亡すると思わなかったんでしょう」
「……だとしてもだ」

 紅き王、かなりご立腹のご様子。
 大丈夫かなぁ?




 それから一週間後、魔王様がやって来た。
「此度はこちらの監視不足の為に起きてしまいました、申し訳ございません、六神王と巫女様」
「二度と同じことを起こさぬよう連中はバラバラに閉じ込めておけ」
「了解いたしました、各国で一人ずつ閉じ込める方向性で話していきます」
「我が伴侶に危害が加わる寸前だったのだからな」
 そう言って紅き王が私を抱き寄せる。
 魔王様は目を丸くしている。
「え、はい?」
「カズエは我の妻だ」
 そう言うと魔王様は傅いた。
「申し訳ございません、紅神王様! 伴侶様を危険な目に遭わせてしまい──」
「だ、大丈夫です、私無事です、無事でしたから!」
 私は首を振る。
「……以後気をつけよ」
「勿論でございます!」




 その後、魔王様は国王陛下と話すことがあるらしく、ベルドの街を後にして行った。
 私はその間、紅き王が過保護になって側から離れなかった、おかげでお風呂に入るのも一苦労。
 黒さん達が居なかったら大変だった。

 街の人には細かい情報は行かないよう私が頼んだので、レストランはいつも通り営業した。


「うーん、このチーズケーキほろほろと口の中で溶けて美味しいわ」
「かー! ビールは良いもんじゃあ!」
「肉料理がこんなに安くて美味しいなんて!」


 相変わらず大盛況。
 ただ、私は色々ありすぎて、ご飯も食べずに休んでいる。

「カズエ、どうした、飯を食わねば体は持たぬぞ」
「……紅き王、お心遣いは有り難いのですが、ちょっと食べる気になれないのです」

 布団に横になり、くるまる。
 色々な事がありすぎて疲れた。
 平穏無事な生活はほど遠いが、できれば静かに暮らしたい。

 とにかく眠ろう。
 明日になれば、少しは良くなってるはず。


 そう思い、私は目を閉じた──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~

愛山雄町
ファンタジー
 エンデラント大陸最古の王国、グライフトゥルム王国の英雄の一人である、マティアス・フォン・ラウシェンバッハは転生者である。  彼は類い稀なる知力と予知能力を持つと言われるほどの先見性から、“知将マティアス”や“千里眼のマティアス”と呼ばれることになる。  彼は大陸最強の軍事国家ゾルダート帝国や狂信的な宗教国家レヒト法国の侵略に対し、優柔不断な国王や獅子身中の虫である大貴族の有形無形の妨害にあいながらも、旧態依然とした王国軍の近代化を図りつつ、敵国に対して謀略を仕掛け、危機的な状況を回避する。  しかし、宿敵である帝国には軍事と政治の天才が生まれ、更に謎の暗殺者集団“夜(ナハト)”や目的のためなら手段を選ばぬ魔導師集団“真理の探究者”など一筋縄ではいかぬ敵たちが次々と現れる。  そんな敵たちとの死闘に際しても、絶対の自信の表れとも言える余裕の笑みを浮かべながら策を献じたことから、“微笑みの軍師”とも呼ばれていた。  しかし、マティアスは日本での記憶を持った一般人に過ぎなかった。彼は情報分析とプレゼンテーション能力こそ、この世界の人間より優れていたものの、軍事に関する知識は小説や映画などから得たレベルのものしか持っていなかった。  更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。  彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。  マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。  彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。 ■■■  あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。 ■■■  小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載しております。

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

処理中です...