旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

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紅き王の花嫁

エルフの里と港街にさよなら~本拠地に戻って早々トラブル~

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 翌朝──
 私はふとんから抜けだし、シャワーを浴びて体を洗った。
 そして着替え、寝ている六神王様達をそっと起こす。
 皆眠そうにしていたが、朝食を食べるとしゃきんとなった。

「じゃあ、エルフの里を後にしましょうか、もう威厳のある発言は疲れたー」

 緑さんの意見に皆賛同した。
 そしてエルフの方々に帰る旨を伝えると──

「「「「「「「「もう帰ってしまわれるのですか⁈」」」」」」」」
「オウフ」

 全員に詰め寄られるように言われる。
「我が巫女を困らせるな、やらねばならぬ事もある」
「そ、そうですよね……うう」
「あんな美味しいものを食べられるならエルフの里を出ることも考えてしまう……」
「わかるぞ……」

「あの……また用事ができたら来ますので」
「「「「「「「「本当ですか⁈」」」」」」」」
「は、はい、用事が、できたら」

 そう言って私達お店を仕舞いはエルフの里を後にした。
 ギルティクスの街に着いたのは昼過ぎ。
 店は大盛況。

「朝市の飯も美味いが、こっちの飯は生もいける上旨みが違う!」
「食材を持ち込みすれば、幾分か安くなるからありがたいわぁ!」

「オウフ」
「おう、カズエ。戻って来たか」
「ギルドマスターさん」
「ジンでいいぜ。それよりもすげぇなお前のれすとらん。ここでも食えないような料理がごろごろとありやがる」
「あ、有り難うございます」
 お客さん達の話を聞いて私は思った。
「私達も何か市場で買って、それを調理してもらってみませんか?」
「うむ、いいな」
 私達は市場へ向かった。
 見たことのあるような無いような食材がごろごろとあり、また大量にオマケを貰った。
 何でも、リヴァイアサンとクラーケンを退治してくれたお礼だそうだ。
 お礼にしては量が多いよとは思うが六神王は大食い。
 これ位がちょうどいいと思ってレストランに戻った。
「これで何か作れませんか」
「そうですね、では鍋はいかがでしょうか?」
「いいですね! それでお願いします」
 そしてVIP席へと戻る。
 しばらくすると、海の幸が山盛り入った巨大な鍋が出て来た。
「わぉ」
「うむ、いい匂いだ」
「美味そうだな」
 私は六神王様に鍋の具と汁をよそって、渡す。
「少し赤いな……」
「少々辛くしてみました」
「ふむ」
 紅き王が口にする。
「うむ、貝の旨みと辛さが合う! 魚が辛みを吸っていてまた美味い口の中でほどけるようだ!」
「私も私も!」
 皆が食べ始める。
 私も落ち着いて食べ始める。
 自分の分が無くなると六神王様は勝手に自分の分をよそうので私はゆっくり食べることができた。

「美味かったがまだ足りんな、でざーととやらをいくか?」
「勿論!」
「ええ」
「食べるわ!」

 紅き王と女性陣がデザートを注文し始める。
 青さんと黒さんは満足したのかゆっくりとしている。

 紅き王はフルーツタルト、緑さんはフルーツパフェ、黄さんはチョコパフェ、白さんは桃パフェを食べて満足したようだった。
 ちなみにどれもLLサイズだった、相変わらず凄い。

 私はお腹いっぱいになったし、ゆっくりと休む事にした。




 本当は次の日にベルドの街に帰ろうと思ったのだけど、緊急の依頼が無いようだから一週間レストランを開いてて欲しいとギルドマスターのジンさんに頼まれて私はそれを受け入れた。
 そして一週間後──

「もう帰っちまうのか、はやいもんだな」
「一応本拠地ですので」
「また、何かあったらきてくれよ。アンタならいつでも大歓迎だ!」
「ははは……」

 私はなんとも言えない笑みを浮かべ、紅き王に乗ってベルドの街へと向かった。




 昼頃──
「ただいま戻り増したー」
「おう! 良く戻って来たな! いつ戻ってくるか待ちくたびれてたぞ」
「すみません色々用事が重なった物で」
「聞いてるぜ、エルフの里の件とかな」
「話が伝わってるようで助かります」
「じゃあ、いつもの頼むぜ」
「はい!」
 私は空き地に向かう。
 息を吸い叫ぶ。
「旅するレストラン!」
 バーンといつもの如くレストランが出現する。

 私が客引きすると街の人はわっと集まり、レストランに行列ができる。
「私達も昼食に──」
「カズエ! 六神王様と来てくれ! 急ぎだ!」
 ギルドマスターのドーンさんが慌ててやって来た。
 何事かと思い全員でギルドに向かう。
 其処には酷い怪我をした人達がいた。
「なに、これ」
 私は思わず吐きそうになったが飲み込んだ。
「ブラッドドラゴンの群れが冒険初級者が行くベルド草原に現れたんだ、なんとか全員命からがらで逃げたんだが、こんな重傷じゃ……」
「緑さん!」
「はいはいーお姉さん特製のお薬使っちゃいますよぉ?」
 と言って取り出したのはエリクサー。
 私は言わないことにした。
「傷が! 目が治ってる⁈」
「指が動く⁈」
 ドーンさん、視線が痛いです。
「じゃあ、みんな、ブラッドドラゴンを狩りに行きましょうか」
「……すまない、頼みます!」
「雰囲気的に一匹じゃないのでしょう?」
「ええ、五匹の群れを成して居たそうです」
「まぁ、大変! 早く狩らないと!」
 緑さんはそう言って私の手を取り、六神王全員でギルドを後にしました。
「み、緑さん、あの、私居ても意味無いですよ?」
「そんな事ないわぁ、貴方がいるだけで私達はやる気がでるのよ」
「……はい、分かりました」
 そう言われては反論もできない。

 四足歩行の紅き王に乗り、ベルド草原へと向かう。

「うわ……」
 遠目からも分かるとおり、ベルド草原のモンスターを赤黒いドラゴンが捕食していた。
「では、緑、カズエはお前に任せた」
「はいはいー」
 紅き王から下りると、緑さん以外の六神王様が行ってしまった。
「大丈夫かな」
「大丈夫よ」

 不安になっていると大地を揺らす程の音が響いた。

「あ、倒し……ん?」
 私は紅き王達がいる所のドラゴンの数を数える。
「いち、にぃ、さん、し……四匹しか居ませんよ」
「あらーつまりー」

 ぎゃおおおん!

「うぎゃー!」
「あらあら」
 私達の側に潜んでいたブラッドドラゴンが襲いかかってきた。
 私は思わず目を閉じる。
「テンペスタ!」
 風が巻き起こったと思うと、緑さんに抱きしめられていた。

 ずしーん!

「これで五匹目ね、アイテムボックスに入れちゃいましょう」
「は、はい」
 それから皆で手分けしてアイテムボックスに入れて貰った。
「なんで、ドラゴンがこんな場所に?」
「さぁ、突然現れるから、ドラゴンは」
「はぁ……」

 何故こんな平和そうな場所にあんな怖い生き物が現れたのかは不明のまま、私達はベルドの街へと戻る事にした──





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