旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

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六神王と旅をする

メルディスの街へ

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「では、行ってきます」
 翌朝、レストランをしまうとギルドマスターさんに行って紅き王の背中に乗る。
 やっぱりドラゴンにしか見えないんだよなぁ。
 初対面でドラゴンと名乗ってたし。
「おう、気をつけてな! 無事戻って来たられすとらん頼むぜ。俺はソレまで金稼ぐからよ」
 その言葉に私は笑う。
「頑張ってくださいね!」
「おうよ!」
『では行くぞ』
「はい」
 紅き王達は上昇し、飛んで行く。
「ところで場所は把握してるんですか?」
『安心しろ、場所は把握済みだ』
「良かったー」
『先にメルディスの街に向かうぞ』
「……あの、竜種を解体するってなるとゴンドラさんに頼まないといけないんじゃ……」
『アースドラゴンはな、リヴァイアサンならギルティクスでもできる可能性はある』
「うーん……とりあえず、紅き王と皆さん、頑張ってください」
 自分はレストラン出すしか能が無いのでそれでバフを盛る位だからそれ以外の事はできない。
 いや、一応戦えるらしいけどー⁈
 無理して死ぬのは嫌‼
『レベル的に早々簡単に死ぬ事は無いだろうが、お前は隠れているのがいいだろう』
「そうねぇ、カズエちゃんが怪我したら大変だもの」
「とりあえず、海の連中は私と黒に任せてねー」
「青さんじゃなくて?」
「青がやると傷だらけになっちゃうのよ、だから移動手段になって貰うわカズエちゃんの」
「なるほど……」
『メルディスの街に到着したぞ』
「はや⁈」
 一時間くらいしか経ってないのに、もうついた。
「誰……も、もしやベルドの街から連絡のあった六神王様と巫女様⁈」
「ま、まぁそうです」
「ギルドマスター!」
 最初私達に槍を向けようとした門番の一人が急いで街中に入って行った。

 ギルドマスターのところに案内されると、耳が長い女性がいた。
「初めまして、メルディスの冒険者ギルドのマスターのメルトです。薬剤ギルドのマスターも務めています」
「薬剤?」
「薬やポーションのギルドです、薬を流通させるギルドでこのギルドの資格がある場合のみ薬を販売したりできます」
「あ、じゃあ登録お願いできますか」
「はい、個人での販売になりますか?」
「多分……」
「ではブロンズクラスですね、金貨一枚になります」
「高いですね」
「薬ですから、勿論劣悪な薬を流しているようなら剥奪される可能性もあるので注意です」
「分かりました、ところで依頼の件ですが」
「ええ、薬の材料の採取場所に危険なモンスターがいるのです。我が冒険者ギルドでも手出しができず……」
「我らが片付けてこよう、行くぞ」
「あ、ちょっとまって赤、今回は貴方以外が担当しましょう?」
「何故だ?」
「だって、下手をすれば植物を燃やしてしまいますもの」
「む……」
 そうだ紅き王の得意分野は火だ。
「では任せるぞ」
「ええ」
 緑さんはにこりと笑った。

 そして四足歩行モードの紅き王に乗り、採取場所へと向かう。
 最初はブラッディオーク。

「くたばれ」
 青さんの水の弾丸で射貫かれあっという間にオークの群れは居なくなった。
 集落の痕跡を破壊し空中でそれらを燃やした。
 紅き王がね。
 ブラッディオークは解体してお肉にしてもらうのでアイテムボックスに詰める。

 それが終わると、次はマーダーゴブリン。
 隠れてたけど、目が血走ってて怖いと思った。
 青さん達が自分の得意な魔法の弾丸を撃ち出して倒していた。
 マーダーゴブリンも魔晶石を取る為アイテムボックスに詰める。

 そして最期、アースドラゴン。
 遠目から見ても、でかい。
 あんなんどうするんだ、一体。

 風が吹いてきたそれが竜巻のようになってアースドラゴンを切り刻む。
 石と水も混じり合いアースドラゴンは溺れていく。

 ズシーンと音がした。

「うん、採取場所も無事そうだし、これでいいんじゃないかしら?」
 緑さんがそう言った。
「そうね、黄、紅。カズエのアイテムボックスに詰めるの手伝って上げて」
「はーい」
「分かっている」
 二人の力を借りてアイテムボックスにしまう。
「では戻るぞ」
「はい」
 紅き王の背中に乗り、その場を後にする。




「もう、討伐を終えたのですか⁈」
「私じゃ無くて……ですが」
 ちらりと神王様達を見る。
「……素晴らしいです! 有り難うございます。では、急ぎ採取依頼を張り出します」
 ギルドマスターのメルトさんはそう言って依頼書渡し始めた。
「あの、マーダーゴブリンと、ブラッディオークの解体を……あ、オークは肉を下さい……」
「あら、アースドラゴンは?」
「解体、できるんですか?」
「ええ、勿論」
 メルトさんはにこりと笑ってこう続けた。
「ゴンドラさんに解体の方法を教えたのは私ですもの」
「うぇ⁈」
 まさかの繋がり。
 だからアースドラゴンもお願いし、肉は貰う約束をした。
「ああ、そうだ。空き地が街の奥にありますからギルドの者に聞いて下さい」
「有り難うございます」
 私はマーダーゴブリン、ブラッディオーク、アースドラゴンを解体小屋に置いていくとメルディスの奥の空き地に移動した。
「旅するレストラン!」
 バーンとレストランが登場する。
「腹が減った、飯にするぞ」
「は、はいい!」
 慌てて入ろうとすると、人だかりができた。

「もしかして、他の街で噂になってるアレ?」
「そうそう、れすとらん……」
「ちょっと興味があるなぁ」
「俺入ってくるよ」

 と男性が一人入って来た。

「いらっしゃいませ」
「すぐ食べられるものってある、いやその俺が時短で食べられるものとか」
「ではサンドイッチセットやおにぎりセットとかはどうでしょうか?」
「あ、じゃあサンドイッチセットで」
「スープにしますか、それともサラダ」
「スープで」
「少々お待ちください」
 店員さんは厨房に入り、そして即座に戻って来た。
「はや!」
「こちらサンドイッチセットになります」
「なんだ、この白いパン……」
 男性は食べる。
「美味い! 白いパンは柔らかくて甘くて、挟んでいる肉と野菜の相性が抜群だ!」
 つぎつぎと食べる。
「スープは……あちち……うん、甘いそれでいて塩気がある、美味い!」
 多分コーンスープを飲んでいるのだろう。
「こっちは果物だな……」
 と最期の一個を食べる。
「ん! 美味い! 果物でべちゃってなることなく、みずみずしさを保っている! そして白い物体が甘くて美味い! 果物も甘酸っぱくて美味い!」
 食べ終わったらしい男性は会計をしていた。
「え、あんなに高価そうなのに、値段これだけ⁈ うっそだろおい!」
 驚いている。
 会計を済ますと慌てて出て行った。

「おいすげぇぞこのレストラン! 美味いし安い!」

 という大声が聞こえた。
 色んな人が入ってくれるといいなと思いながら私はVIP席へと向かった。

「遅い、何をしていた」
「ちょっとお客さんの生の声を聞いてみたくて」
「そんなのいつでも聞けるだろう」
 紅き王がちょっと不満げに仰る。
「メルディスに来たのは初めてなので、初めてのお客さんの声は聞きたいなって」
「……そういうものか」
「はい」
「ならいい」
 紅き王はメニューを開いたまま仰る。
「紅ったら中々来なくて焦れてたのよ」
「緑だまれ」
「わぁ怖い!」
 緑さんが私に抱きつく。
「カズエ、良いからさっさと決めろ」
「はい」
 私はメニューを見て何するか考え始めた──





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