旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
16 / 27
六神王と旅をする

魔王の国から帰還~英気を養う~

しおりを挟む



 魔王の国から戻ってきた私達はベルドの街に戻ってきた。
「おう! 巫女様! よく戻って来てくれた」
「色々ありましたが戻ってこれました」
「早速で悪いんだが……」
「はい」
 空き地へと向かう。
「旅する、レストラン!」
 バンとレストランが出現する。
 住民の皆さんが歓声を上げる。
 私が扉を開け──

「今日から営業できますか?」
「できますとも、オーナー」

 と店員さんたちからお墨付きを貰うと──

「どうぞ、皆様。営業開始です」

 わっと人が入ってくる。

「カツカレー大盛りで!」
「チキンカレーを大盛りで!」
「スパゲッティとイチゴパフェ! パフェは食後!」

 等など注文をしている。

「では、私達も食事にしましょうか?」
「うむ」
 VIP席で食事を取る。
「うむ、何度食べてもこのステーキの肉の旨みはやみつきになる」
「私は刺身定食だ、魚は寄生虫がいるから食べられないのが人型の時は普通だが、ここの魚は人型でも食える、美味い。わさび醤油だともっと美味い」
「鰹のたたきというのがでてますよ。わらであぶった鰹の……レアなお刺身? すみません、説明が下手で」
「あぶったものというだけで分かった、何で食うのだ?」
「ニンニク醤油だったり、マヨネーズだったり、ポン酢だったり……?」
「ほぉ、試してみよう」
 青さんが慣れた手つきで店員さんを呼び注文している。
「パフェはいくら食べても飽きないわー」
「分かるわー」
「ケーキもよー」
 神王様なのだが、もはや女子会の会話にしか見えぬ。
「ワインとチーズは合うものだな、このハムもいい」
 黒さんは朝っぱらから酒ですか。
 突っ込む気力もわきません。

 お風呂からボディーソープとシャンプーとリンスと入浴剤、洗面所からは洗顔料と歯磨き粉と歯ブラシを持って行き、家へと戻る。

「「「「「ご主人様、お帰りなさいませ」」」」」
「うん、ただいま。お風呂入りたいな」
「はい畏まりました」
 数分待つ。
「入浴ができるようになっております、どうぞ」
 私は着替えを持って風呂へ向かう。
「あ、お風呂は一人で入れますので……」
「畏まりました」
 王宮に滞在時、お風呂を用意して貰ったとき、侍女さんが手伝ってきて恥ずかしかったからちょっとそうならないように言っておく。

 入浴剤を入れて体の汚れを落としてお風呂に入り、伸びる。
「あ~~、いい湯だわ~~」
 お湯はちょうど良く、ほどよく熱かった。
 体をもみほぐし、着替えて風呂場からでると見た目女性陣の神王様達が風呂場の前に居た。
「ねぇ、カズエちゃん、カズエちゃんところの湯浴みって……この世界とちょっと違うの?」
「違いますね、大人は、一人で入りますし、髪の毛も一人で洗います」
「カズエちゃん、貴方とっても良い匂い、何を使ったの?」
「えっと、ボディソープとシャンプーとリンスと……それから洗顔料です」
「この世界の者では無く、カズエちゃんの世界のもの?」
「は、はい」
「じゃあ使い方教えてくれない?」
「へ?」
 三名に言われて私は間の抜けた声をだした。

「ありがとー! カズエちゃん、つるつるだわ!」
「本当いつもよりもち肌だわ」
「風呂の香りも良かったわ」
「そ、それは何より……」
「今までお風呂は水浴びくらいしか考えてなかったけど、カズエちゃんが居る間はお風呂にしっかり入らせて貰いましょうね」
「そうね」
「ええ」
 何故かお風呂の良さに目覚めた女性陣?であった。
 そのうち化粧水とか出てくるんじゃないかなぁとか思ったりもしなかったり。

 つやつやさらさらヘアーで街を歩く六神王【女性陣限定】。
 人目につく。

「カズエちゃん、今日は何をするのかしら?」
「うーん、何をしましょう?」
「カズエ、ギルドへ行くぞ」
「分かりました紅き王」
「もう、紅ったら我が儘なんだから」
「ふん」

 なんか紅き王若干ご機嫌斜め?
 どうして?

 とりあえず、ギルドへ到着するとギルドマスターが出て来た。

「巫女さんと神王様達ですか」
「何か依頼は無いか」
「あるっちゃありますよ、ただそうすると街を離れることになるんですよ」
「ほほぉ、話を聞かせろ」
 紅き王は興味津々。
「メルディスの街──薬やポーション生産で有名な街なんですがね、アースドラゴン、ブラッディオーク、マーダーゴブリンが採取場所を占拠しちまってるんですよ」
「マーダーゴブリンは食えたものではないが魔晶石を大量にため込んでいるな」
「お話が早い」
「ブラッディオークとアースドラゴンは肉が美味い」
「あの、黄さん、アースってつくから眷属だったりしませんよね」
「ドラゴンの姿を取ってるけど、私達とドラゴンは別種よ、人と豚くらい違うわ」
「マジっすか」
「本当よ?」
「それにドラゴンには私達みたいな意思はないもの」
「なるほど……」
 とりあえず共食いになるんじゃないかという危惧は無くなった。
 しかし、人と豚……完全に捕食対象じゃないですかソレ。
「で、もう一つはギルティクスの街。港町なんだが、クラーケンと、リヴァイアサンが出たそうだ」
「リヴァイアサンか、奴の肉は美味いぞ。クラーケンもな」
 青さんが言ってる。
 いやちょっと待って、クラーケンはともかく前の世界では神話級のとんでもない生き物食うんですか貴方。
「リヴァイアサンは見てくれはちょっと違うが竜種の一種だな、エリクサーの材料にもなるな」
「あ、この世界では竜種なんですか」
「ん? お前の世界にもいたのかリヴァイアサン?」
「えっと……ちょっと聖書というものに書かれているのを思い出した程度なので実際いたのかと聞かれるとお答えできません」
「難儀だな」
 元の世界だと色々とゲームで魔改造されてるから私も分からないんですよ-!
「では、明日立つ」
「明日⁈」
「こうしちゃ居られん、れすとらんにいそがにゃ!」
 ギルドマスターは走り出した。
「……お仕事良いのかな?」
「言ってやるな」
「ギルドマスターも羽を伸ばすのは必要であろう」
「何を察してるんですかお二方」
「まぁ、神王特権故」
「そういうものだ」
 神王様、ギルドマスターの仕事覗き見してたりするの?
 え、もしかして私も覗き見──
「お前の覗き見は私達はしてない、緑と黄と白は分からんが」
「青さんは?」
「奴は見目は女だが、それは人の信仰、母なる海という意識に引っ張られたものだ」
「なるほど」
「だから中身は男に近い、海は荒々しいからな」
「マジか」
 思わず言ってしまう。

 ギルドの一回に下りると誰も居なくなっていた。
 ギルドから出ると「巫女と神王様達が明日立つので全員レストランに行っています」という看板が書かれていた。
 いつの間にそんな看板を作ってたんだろう。

「やることがないし、明日のために英気を養うぞ」
 紅き王が言うと、他の神王様達が頷く。
「じゃ、レストランに行きましょうか」

 私達はレストランへ戻るのだった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...