旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
12 / 27
六神王と一緒~過去にさよなら~

ダンジョンの真実とお持ち帰り

しおりを挟む



「あれ、ギルドマスターさん今回は来ないな?」
 誰もギルドマスターを呼びに行ってないようではないし、居ないのは不思議だった。
「大方レストランで食事をしてるのでは?」
「あ」

 レストランに行くと食事に夢中になってるギルドマスターのトライさんの姿が。

「お、おお! 再度踏破なされたのですね、お話を聞きますので少々お待ちを」

 そう言って料理を大急ぎでかきこんでいく。

「むぐ……ごくん! ではギルドへ参りましょうか!」
「はぁ……」
 なんだか私は気が抜けた。

「なるほど、もしかしたら攻略する度に最終階層が変化し、難易度が上がっているのかもしれません」
「まぁ、一理ある」
「ではギルドにそのように張り紙をつけておきます」
 そう言ってトライさんが居なくなると、白さんが黒さんに話しかけた。

「黒、ここのダンジョン貴方が作ったのでしょう? どういう仕組みなの?」
「先ほどのは少し正解からずれてるな、攻略される度にランダムに最終階層の様相が変化するのが正しい。後100年に一度様相が変化する要素もある」
「難易度が上がるんじゃなくて、ランダム、ですか」
「ああ」
「……それギルドマスターさんに言った方が」
「言うと色々面倒くさい」
 うへぇあ。
 まぁ、面倒くさいの分からないでもないけど、ないけど‼
「……おい、カズエ」
「はい何でしょう紅き王」
「お前のステータス欄に、『持ち帰り可能』が追加されてるぞ」
「ふへ⁈」
 それを聞いた私は急いで、レストランへ向かった。

「あのー紅き王がステータス見て、『持ち帰り』ができるようになったと聞いたのですが」
 と、小声で店員さんに聞く。
「はい、その通りです。料理を持ち帰って外で食べる事ができます」
「……うーん、でも、私にメリットあるかな?」
「スキルを出せない状況下で食事をとれるようになるのは良いだろう? 例えば他国へ言った時などな」
「あー確かに」
「え⁈ カズエさん、別の国に行く予定でも⁈」
「ありません、ありません、この国で十分です」
「はー……ですよね」
「……寧ろアイテムボックスを持っている人とか、この街に滞在中、住んでいる人が家とかで食事するのに使うとか?」
「お前は他人が使うことのほうが優先だな」
「いやその……」
「まぁ、いい」
 紅き王はそっぽを向いた。
「のう、巫女さん」
「はい?」
 ドワーフのおじさんが声をかけて来た。
「今、持ち帰りが可能とか聞こえたんじゃが……」
「えーっと……」
「私がご説明いたします」
 店員さんが間にはいってくれた。
「一回につき品物10品までお持ち買えることができます。飲食物なら全て」
「つまり、酒、も持ち帰れると?」
「はい」
「こうしちゃおれん! 仲間に言わんと!」
 どたどたとおじいさんは走って行った。
 それから『持ち帰り』について聞く人がたくさん出た。
 アイテムボックス持ちの人は、旅する日数分のスープとサンドイッチ、サラダ等を頼んでいた。
 一回につき10品という限られた品数の中でどうやっていくのに四苦八苦していた。

「とりあえず、上の階で泊まりましょう」
「そうだな」
「そうしましょう」

 私と神王様達はプライベードゾーン……基住居スペースでゆっくりと休むことにした。
 疲れ切った私はぐっすり眠ることができた。

 翌朝起きて、シャワーを浴び、髪や顔、体を洗い、歯を磨いて着替えてから神王様達と会う。

「お早うございます」
「うむ、ではさっそく食事に行くぞ」
「はい!」
 紅き王が言うので私は早速レストランの部分に向かう。
 VIP席に座り、注文をする。
 ちょっと疲れていたのでお粥とゼリーを頼んだ。

「美味しい……」
 お粥のほっとする味にほっこりする。
「あら、このスライムみたいなのは何かしら?」
 緑さんが尋ねます。
「あ、ゼリーっていうんです。デザートの一種です」
「何味?」
「イチゴ味ですね」
「私似もイチゴ味のゼリーを頂戴」
「畏まりました」
 店員さんはすぐ持ってきました。
「あら、ぷるぷるして堅さもあって美味しいわ」
「お気に召したようで……」
「凍らせたらどうなる」
「そうね、聞いてみましょう。カズエ」
「ひゃい」
 私は言われるままに店員さんを呼び、凍ったゼリーを持ってきて貰った。
「あら、こっちの方が私は好みだわ美味しい!」
「……このプリン、ゼリーと似てるが卵と牛乳を使ってるのか?」
「あ、プリンは美味しいですよ」
「そうか、注文しよう」
 緑さんはプリンを頼み、クリームとカラメルとサクランボがのっかったプリンを出される。
「これ、さくらんぼね、うん、美味しい……さて」
 緑さんは匙をプリンに入れる、そして口にする。
「うーん、濃厚だわ……美味しい」
「な、何よりです」
「ねぇ、カズエちゃん、そんなにおびえなくても大丈夫よ、貴方は私達の契約者、なんだから」
「は、はぁ……」
「神王全員が勢揃いしてるんだ、おびえない方が無理というものだろう」
「まぁ、それもそうよね」
「はは……」
 とんでもない方々と契約しているのだと言われ、その上全員の巫女扱い。
 怖い。

「さて、ではここのギルドの依頼でものんびりこなしてベルドの街に戻る準備をするか」
「そうね、それはいいかも」
「ではギルドマスターのところに行きましょう」

 食事を終えた私は、引きずられるようにギルドに向かった。

「ギルドマスターさんは?」
「いますよ、お待ちください」

 ギルドマスター室に案内されると──

「うう、この温かいスープとサンドイッチが美味しい……帰って欲しくないです……」

 私のレストランの持ち帰りを早速利用して食事を取っていた。

「ああ! カズエさん‼ どのような要件でしょうか」
「いえ、その、しばらく滞在したいという旨をお伝えに」
「本当ですか‼」

 がしっと手を掴まれる。

「カズエさんのスキルのれすとらんというモノは素晴らしいです、本当に!」
「は、はぁ……」

「要件は終わったな、では戻るぞ」
「は、はいー……」
 少し不機嫌な紅き王に言われて私は引きずられながら戻って行く。

「んー中毒性とかあるのかな」
 あまりにも人が来るものだから中毒性があるような気がしてレストランに戻りこっそりと聞いてみる。
「ありません」
 即答された。
「じゃあ、みんなが来るのは……」
「純粋に味、が良いからでしょう」
「な、なるほど……」
 安心したけど、大丈夫か不安になった。

 私が居なくなった時、どうなるんだろう。

 それが不安だった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

素直になる魔法薬を飲まされて

青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。 王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。 「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」 「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」 わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。 婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...