旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
9 / 27
六神王と一緒~過去にさよなら~

朝食の後は……

しおりを挟む



「カズエ様、ギルドマスター様がいらっしゃいました」
 翌日、ドーンさんが書状をもってやって来た。
「国王陛下からの話だと神王の加護を受けた者は丁重に扱いたい、何か不便なことがあれば即座に報告するように。それと暇があったら王都でスキルの店を開いて欲しいだとよ」
「つまり、今のままで大丈夫そうってことですか?」
「ああ、貴族も冒険者も手出ししないようにお触れを出してたがそれをより強く出すつもりだと」
「なんか申し訳ない……」
 自分はただの人間なのだ、スキルはもっているし、何故か無制限のアイテムボックスを持ってるがそれ以外は普通だ。
 自分のステータスを見ることなんてできないし。
 神王さん達は私のステータスとか見れるらしいけど。
 謎だ。

「でだ、カズエ、今日の店は……」
「あわわ、今開けますー!」
 私は慌てて家から飛び出し、スキルで建ててるレストランへ行く。
 そして扉を開けて──
「すみませんー営業開始してくださいー!」
「「「「畏まりました、オーナー!」」」」
 店がぱっと明るくなり、皆働き出す。
 そしてあっという間に店の中は客で一杯になる。

「うめぇうめぇ」
「アンタそれしか言えないの?」
「事実じゃねーかうめぇんだから!」
「まぁ確かにそうね」
「だろ?」

 たまに軽い言い争いっぽい言葉が聞こえてくるが、特に問題は起きない。
 それに安堵する。
 出禁になられるような自体は起きて欲しくない。

「カーッ! 朝から飲むビールは最高じゃなぁ!」
「そうじゃなそうじゃな!」

 何だろう、駄目なサラリーマン見てるみたい。
「オーナー様、お食事は」
「あ、いつもの席で、皆さんもそれでいいですか?」
「構わん」
「勿論よ」
「ええ」
「勿論だ」
「いつもの席?」
「食事か、楽しみだ」

 私は店員さんに連れられてVIP席へと移動した。

「ああ、この席の事だったのね」
「はい」
「お食事は──」
「えっと私はオムライスと、デザートにイチゴタルトを」
「我はそうだな、カレーライスというものを頼もう、肉は牛でな」
「私もそうね、カレーライスで、肉は鶏で。デザートにイチゴパフェを」
「私はサラダを、デザートにチョコレートパフェを」
「私は焼き魚定食を」
「私は彼女と同じオムライスをお願い、それからデザートは桃パフェ!」
「私はローストビーフを頼もう、葡萄酒もくれ」
「畏まりました」
 店員さんは注文を受けると居なくなった。

 数分後──
「「「お待たせしました」」」
 と、店員さんたちがやって来た。
「デザートは後ほどお持ちします」
「はい」
 私はそう答えてオムライスにスプーンを入れる。
 口にすると、チキンライスの肉とトマトのふわとろの卵の優しさが口いっぱいに広がる。
「ああ、美味しい」
「うむ、このカレーライスというものも中々悪くない。この辛みが良い」
「ええ、鳥肉ってこんなに美味しいのね、辛みも良いし、ふふこれならデザートが楽しみになりそう」
「うむ、このみそしるとやらに入っている海藻と白いものも良いな」
「この黄色いのふわとろ、中の赤いのも美味しい!」
「うむ、この葡萄酒水割りせんでも美味いな、ローストビーフとやらは肉が柔らかく、このソースなる液体との相性がいい、美味い」
 皆さん、ぱくぱくと朝食を食べ始める。
 それでもしっかりと味わっている、凄い。

 食事を終えた方々でデザートを頼んだ人達にデザートが来る。
「ん~~!」
 イチゴの甘酸っぱさとクリームの甘さが引き立っていて、タルト生地の部分もさくさくとしていて美味しい!
「ああ、このチョコレートパフェ、甘苦くで美味しい……ひんやりと冷たいのもいいわ」
「このイチゴパフェ、イチゴが甘酸っぱくて、クリームの甘さがまたいいわ」
「うーん、この桃パフェ、桃なる果実をまるごと使っているけど、それがまた美味しいのよ!」
「……我もデザート頼めば良かったかな」
「私もだ」
「私もだな」
「あ、頼みますか、メニューどうぞ」
「うむ、良き契約者だ、カズエ」
「ありがとう、カズエ」
「礼を言う」
「いいえ……」

 正直私の方が恩恵受けてるし。
 レベル上げとかの恩恵とか、色々。

 おかげでレストランは規模を増し、料理のメニューも増えてきた。
 高級品からお手頃な価格のものまで色々。

 場所も変えて過ごすことができるだろう。

 色んな人に食べて貰いたい。
 この国の色んな人に。
 私のお店スキルで、私にとってささやかでもいい、その人達にとって豪華と思える料理を食べて貰いたい。

「カズエ」
「はい⁈」

「何を考えている?」
「いやその、この国で、私のこのスキルでの料理を色んな人に食べて欲しいなぁって思いまして……」
「甘ちゃんだな」
「うぐ」
 紅き王に言われて言い返せない。
「ちょっと紅。貴方もう少し言えないのかしら? 貴重なスキルだからあまり使いすぎると人々が貴方頼りにしてしまうと」
「え?」
「この料理を出すスキルは貴重だ、何もない場所から対価さえ払えば好きなだけ料理が出る。その能力を狙わないものは余所の国では居ないだろう」
「と言うことは……」
「この国のギルドがある場所限定なら使うのを許可しよう。お前の身を案ずるが故だ、許せ」
「いいえぇ!」
 まさか自分の身の安全を心配してくれてたなんて思わなかった。
「オーナー様」
「はいぃ⁈」
 店員さんに呼ばれ、私はびくっとする。
 あ、神王様達笑わないでくださいよ。
「な、何かあったんですか?」
「ギルドマスターを名乗る方がオーナー様に用があると」
「はい?」
 私は案内されるがままに、二階へと向かった。

「おう、美味い飯いつも有り難うな」
「有り難うございます」
 食事を終えたらしい、ギルドマスターのドーンさんと、マーニさんが居た。
「レストランの事で相談ですか?」
「いや、実は神王様方にご相談があるんだが……一応契約者はお前さんだろう? お前さんを通した方がいいと思ってな」
「はぁ……」
「我らに何の用だ?」
「実はですね……」

 話を聞くと、プラチナウルフと呼ばれるモンスターが街道に現れて冒険者や商人達を襲っているのだと。
 プラチナウルフはフェンリルの次に強い狼種の生き物だが人を襲わないはずなのに襲っている原因を調べて欲しい、とのことだ。

「プラチナウルフと言えば」
「私の庇護にある生き物の一種ね」
 と、白さんが言う。
「分かりました、調べてきますね!」
「ああ、頼むぞ」
「はい!」
 そう言って店を出ようとすると──
「オーナー様」
「はい?」
「二号店をオープンできるようになりました」
「二号店をオープンってことはここにこのお店を置いたまま別の場所でもお店をオープンできるの?」
「はい」
「ほへー」
「まぁ、使う事はあまり無かろう、どっちにしろ一定期間営業してると別の場所に行って営業しないと駄目なのだろう」
「その通りです」
「まぁ、二号店をオープンできることが分かったので、行きましょう!」
「元気がいいな」
「元気がいいのはよい証拠よ」
 紅き王のぼやきに白さんが反応する。

 プラチナウルフ、何が目的で人を襲うんだろう?





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...