旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~

琴葉悠

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旅するレストランと異世界~六神王~

黒き王と白き王~胃がやばい~

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「こ、こちらが私のスキルのレストランになります」
「これが異世界の食事を売り物とする場所か」
「わぁ、素敵‼」
「な、中へどうぞ……」
 私はおっかなびっくりに案内する。
「オーナーとお客様ですか?」
「私のお客様だから無料で……」
「畏まりました」
 店員はそう言うとVIP席へと案内した。
「良い眺め」
「そうだな」
「メニューはこちらになります」
「ほぉ、色々ある……ぴざ? なんだこれは?」
「元々は私の世界の料理なんですが……故郷で色々改造して色んなピザができて、それがそこに載っているものです」
「果物のピザというのもあるのか、うむ、ではこのピザを頼む」
「私はこの桃のパフェというものが気になりますわ」
「ではそれにすれば良かろう」
「もう、でもそうですわね、すみません。もものパフェを」
「畏まりました。オーナーは?」
「わ、私は今お腹いっぱいなのでいいです……水だけで」
「畏まりました、何かありましたらそこのボタンを押してお呼びください」
 そう言って店員さんはいなくなった。
 私は息を吐き出す。

 神王。

 神としてあがめられているドラゴンに似た姿を取る王。
 その気になれば国など一瞬で滅ぼせるまさしく神と呼べる存在。
 そんなとんでもない存在が既に四名いるのに、二名増えてしまったら私の胃袋がますますキリキリ痛むことになる。
 あ、胃袋に優しい料理少量とかで頼めるかな?
 後で試してみよう。

 ……とか考えている私も相当アホというか、図太くなっている気がする。

「これがぴざか。柑橘系のものとはちみつ、チーズらしきものが乗っているな」
 黒さんが一口食べる。
「うむ! この果物のさっぱりとした味と蜂蜜、それにチーズの濃厚さがあって美味い!」
「このもも、なる果実んもジューシーで甘くて美味しいわ! アイスなる白い塊も、クリームなる柔らかなものも美味しいわ!」
「そ、それは良かったです」
 ばくばくと食べるお二人。
 食べ終わると、二人は顔を見合わせて頷いた。

 あ、嫌な予感がするぞ。

「ねぇ、カズエさん。私と黒も貴方と従魔契約をしたいの」

 やっぱりー!

「ええい、駄目だ駄目だ!」
「なによ紅、私達のけ者だなんて酷いわよ」
「その通りだぞ」
「ぐむむ……」
 紅き王は何か考えているみたいで少しして目を見開いた。
「カズエは既にお前ら以外の王達とも契約している! これ以上契約を増やせばカズエはどの国に行っても大変な目にあうぞ!」
「あら、だったらそのたびに私達が出ればいいじゃなくて」
「そうだぞ」
 紅き王はひねり出した、案があっさりと却下されたことに苦悩しているようだった。
「あ、紅き王、お心遣い、感謝します、ですがこの方々だけのけ者にしたらそれこそ何が起こるか分からないかと」
「ほれ、この娘はよくわかっている」
「ええ」
「ぐむむむ」
「では、契約で良いな」
「は、はい」
 二人は私の手を握った。
 手に紋様が刻まれる。
 赤、青、黄色、緑、白、黒、カラフルな紋様が書かれた手だ。

「……一応、ギルドマスターには連絡したほうがいいですよね?」
「だろうな」

 紅き王は額に手を当てて、言った。




「し、白き王と、黒き王とも契約したぁ⁈」
 ドーンさんはそう言ってひっくり返った。
「不可抗力で……」
「ま、まぁお前さんのスキルの店の料理は確かに美味いからなぁ……」
「あはは……」
「分かった、国王陛下や他のギルドマスターには儂から伝えておく、お前さんはいつも通り店をスキルで出していておいてくれ」
「はい」

 その後、自宅に帰って柔らかなソファーに座る。

「ふへぇ」
「カズエちゃん、大丈夫?」
「緑さん……」
「ごめんね、白と黒が、あの二人私達の中でも格が違うから」
「そ、そうなんですか」
「正確にはまとめ役というかそんな感じ」
「なるほど……」
「食に興味ないと思ってたけど違ってたのに驚いたわ」
「別に食に興味がないわけではない」
「あら、黒」
 黒さんが部屋に入って来た。
「あの白さんは?」
「あの後桃パフェを食べまくって満腹になったからと寝室で寝ている」
「胃袋つよぉい」
 そしてちゃっかり寝室で寝てるあたりマイペースなのはどうなのだろう。
「我らも食に興味はある、だが人が食べるものに其処まで興味がわかなかったのだ」
「じゃあ、どうしてですか」
「神王の半数以上が料理に関するスキルを持つ娘と契約したと聞いてな、気になってやって来た」
 マジですか。
「スキルは確かに有能だな、良い食事は気力を補う」
「は、はぁ……」
「と言うわけでこれからも頼むぞ」
「分かりました……」

 神王と呼ばれるとんでもない存在全員と契約しちゃった私。
 どうなるんだろう?




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