5 / 27
旅するレストランと異世界~六神王~
王都へ~私を召喚した国は滅亡しました~
しおりを挟む「さて、ベルドの町に戻るか、それとも王都に向かうべきか……」
私は考え込んで悩んで居た。
どっちにしろ王都には向かわなければならない。
「なら王都に向かって王族が満足したらベルドの町に戻ればよかろう」
「紅き王……」
「あら、貴方そんな呼び方させているのね」
「えっと……」
「私は黄でいいわ」
「黄さん……」
「さん付けも結構よ」
「私も青で良い」
「私も緑でいいわ」
「は、はい……」
「王って呼ばせてるのは貴方だけよ、紅」
「私はお前達とは違うのだ、こいつと最初に契約した王なのだからな」
「あらあら……」
「意地はって」
「ねぇ」
「貴様等~⁈」
「紅き王抑えてください! 店内で喧嘩をされては困ります!」
「ぐむ……そうだな、そうだったな」
「あの短気な紅が珍しいわ~」
「すごいわねカズエちゃん」
他の王達に感心されている、私は私でいっぱいいっぱいなのだ。
「よし、では王都へ向かうぞ」
「はい」
「なにぃ⁈ もう王都に向かうのか⁈」
ギルドマスターのゴンドラさんが目を見開いた。
「え、ええ。紅き王達もそれが良いと……」
「なら、仕方ないのぉ。また来て店開いてくれ!」
「はい!」
そう返事をして私は紅き王に乗り王都へと向かった。
あっという間に王都に着くと、騎士達がぞろぞろとやってきた。
「連絡は既に聞いております、国王陛下がお呼びです、どうぞ」
「は、はい」
案内されて謁見の間へ。
「其方が異世界人カズエか?」
「は、はい」
「ゾナール王国め、異世界人召喚はやってはならぬと他国の忠告を無視したな」
「あの、私帰れるんでしょうか?」
「帰った者がいる試しがない」
「……」
どうやらこの世界で生きる腹をくくるしかないらしい。
「魔族の領土を攻め込んで……魔王ゾフィエルは既に怒り心頭だと言うのに……」
「はぁ」
「おっと話がそれたな、余がクルディア王国の王クルスだ。そして妻の……」
「ミーアです、異世界の御方初めまして」
「は、初めまして」
「さっそくだが其方のスキルを見せて貰いたい」
「あの、広い場所を提供していただければ……」
「うむ」
騎士団達の稽古場を提供された。
稽古に使うものは片付けてただっ広い。
「旅するレストラン!」
バーンとレストランが出現する。
なんかよくよく見るとおしゃれ感が満載。
「おお、これが噂の……」
「此度はお客様として扱いますお代は結構です」
「そうか」
「という訳で宜しくね」
と店員さんに声をかける。
「畏まりましたオーナー」
「わぁ、ひろい」
「きれいー」
「二人ともはしゃがない」
「まぁ子どもだからいいじゃないか」
王様と王妃様のお子様らしき方々が。
広い席に案内される。
「葡萄酒がこんなに安いのか? だが味が良いときく、済まぬ葡萄酒を持ってきてくれ、グラスは二人分で」
「畏まりました」
店員は葡萄酒を持って行き、コルクを抜いて二人分に注いだ。
「どうぞ」
「陛下、毒が入っているかもしれませぬ」
「ギルドから聞いている毒など入っておらぬとな」
豪胆だな、この王様。
「うむ、美味い! このような美味い葡萄酒は初めてだ! お前達も注文してみるといい」
「えっと、あの方々も私のお客様扱いで」
「分かりました」
店員さんはにこやかに笑いながら騎士団の方や大臣の方の相手をしていた。
「こんな美味い肉初めてだ!」
「しゅりんぷってこんなにおいしいものなの?」
「赤いライスおいしい、お肉が入ってる」
「こんな甘い菓子初めてだわ……」
王族の皆様、満足そうです。
騎士団や、大臣の方々も満足そうです。
食事が終わり、店から皆が出ると私はレストランをしまいました。
「これが私のスキルです」
「いや、素晴らしい!」
「こんな素晴らしいスキルを見抜けぬゾナール王国には感謝する、が異世界人召喚はいただけぬ」
「と、言いますと?」
「魔王ゾフィエルとゾナール王国の隣国に、ゾナール王国を滅ぼす旨の文書を渡す。皆今回の件を知れば喜んで参加するだろう」
王様怖いことおっしゃってます。
──私と一緒に召喚された子達どうなるんだろうなぁ?──
──まいっか、誰もかばってくれなかったし!──
私は割り切ることにした。
「其方にはこのような素晴らしい食事を提供してくれた礼がしたい、しばしまたれよ」
「こちらへ」
と、客間へと案内される。
しばらく待っていると──
「魔王ゾフィエルとゾナール王国の隣国全てが我らの意見に同意してくれた、我らも兵士達を派遣する、ゾナール王国は前々からうさんくさい事ばかりしていたが、今回の事で我慢が効かなくなった。だからゾナール王国を滅ぼすこととなった」
「は、はぁ……」
「ならば我らも行こうか?」
「おお、誠ですか、神王達よ!」
「神王?」
久しぶりに聞く単語に首をかしげる。
「私達全員を王様とか貴族が呼ぶ場合は神王と呼ぶのよ、神に等しい存在だから」
「神に等しいなら──」
「残念だけど、貴方を帰すことはできないの、ごめんなさい」
「がっくり」
やっぱり駄目かぁ、腹くくってこの世界で生きて行こう、うん、そうしよう。
紅き王に乗せられ、ゾナール王国まで飛んできた。
隣には黄さんが居る。
「あの黄さんは、なんで私と一緒に紅き王に?」
「貴方が凄惨な光景を見ない為よ」
「?」
そう言うと、周囲が岩だらけになった。
幸い呼吸はできるが混乱する。
「あの⁈ 黄さん⁈」
「終わるまでそのままで居てね、ごめんなさい」
十数分くらいそのまま閉じ込められた。
岩が消え、明るくなり、下を見ると大地が燃えていた。
「あまり見ちゃ駄目よ」
黄さんが私の首根っこを掴み見ないようにさせる。
『青と緑が王都からもどってくるぞ』
バサバサと、青いドラゴンらしき存在と、緑のドラゴンらしい存在がやってきた。
『カズエちゃん、お仕事終わったわよ』
『お前と一緒に召喚させられた連中は捕まったが、どうする?』
「追放されるとき助けてくれなかったので無視で」
『そうなの? 酷いわねぇ』
『誰もか』
「誰も」
『それは酷い』
「これからは私達がしっかり守ってあげるからね」
黄さんが私を抱きしめてくれた。
「うぁあ、あ、ああああああん!」
私は大声で泣いた。
『泣くが良い、許す』
「よしよし」
追い出されるとき、着いてきてくれる子は誰もいなくて。
不安だらけの世界で、自分のスキルを使ってなんとかしやろうと思った。
そうしたら、とんでもない方達に見つけられて、保護されて。
やっと、やっていけるんだと思えるようになった。
これでもう、泣かなくても平気だ──
11
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

どうやら私はラスボス魔王の娘に憑依したらしい。
枝豆@敦騎
ファンタジー
毒親から逃げ出して再出発しようとした矢先、電車の事故で死んだ私。
目が覚めるととんでもない美幼女に憑依していた。
しかも父親は魔族の王、魔王。
どうやらこの魔王もろくでもない親らしい……だけど私が憑依してからデレ期が発動したようで…。
愛し方を知らなかった魔王とその娘に憑依した私が親子になる物語。
※一部残酷な表現があります。
完結まで執筆済み。完結まで毎日投稿します。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

テンセイシャの舞台裏 ─幽霊令嬢と死霊使い─
葉月猫斗
ファンタジー
小説家になろうさんに掲載しているこちらの短編⇒「厄介なテンセイシャの処分法」(https://ncode.syosetu.com/n5444je/)の長編化作品です。
あらすじ
男爵令嬢のアマーリエは憧れていた魔法学校の入学式当日、何者かに肉体を乗っ取られて自分は幽霊のような状態になってしまう。
誰にも気付いてもらえず万事休すかと思いきや、死霊使いの一族のヘスターに拾われ、自分の肉体を乗っ取ったのが「テンセイシャ」だと知らされる。
テンセイシャとは異世界から来訪した魂のことであり、憑依された人間はどう運命が転ぶか分からない災いとも僥倖とも言われる存在。
更に乗っ取ったテンセイシャは第一王子を始めとした複数の男性を攻略しようと企んでいて……!?
そんな最低な人間に自分の身体を好き勝手にされたくない!協力者のヘスターと共に自分の身体を取り戻す為の戦いが始まる。

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います
七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。
独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。
が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。
再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。
独自世界のゆるふわ設定です。
誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。
毎日0時にアップしていきます。
タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。
よろしくお願いします。
※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。
※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる