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光翼の祝福
しおりを挟む「道具もってれば良かった!」
ライラは愚痴りながら、モンスターを遭遇しないようにフロアを異動していた。
少しすると、足を止める。
「師匠? 皆?」
ライラはリヴンと、コルヴォ達がやってきた事を把握した。
「来てくれたんだ……!!」
うれしさがこみ上げてくる。
「よし、急いで合流しないと!」
ライラは嬉々として下の階層を目指した。
「ライラ大丈夫かな? 道具とかもってないんだよね?」
「安心しろ小僧。ライラは道具が無くともモンスターがいない箇所があるフロアなら一人で抜けられる。幸い、モンスターは移動しているようだし、ライラが逃げるにはもってこいだ」
「だが、早く合流したほうが良さそうだ」
コルヴォの言葉に皆が頷く。
危険な状態にある塔の中で、一秒でも早くライラと合流をしたかった。
「ってちょっとおい! フェザードラゴンまでいやがる! 順路を変えるぞこっちだ!」
リヴンはフロアの状況を把握しながら危険なモンスターと避けて進んでいった。
「ライラと本当同じね、師匠だから?」
「俺のは長年の経験と才能だよ。ライラのは完璧才能だ。俺より上にいってやがる」
リヴンは少しばかり悔しそうに言った。
「師匠としては誇らしいのでは」
「まぁな、でも悔しいのもある。俺はフロア全部のエネミーの事を理解するのはできないが、ライラはどんな広さでもそれができるんだよ」
「あーそういえば、そんな気が」
レイナはライラの過去の行動と発言から思い出す。
「取りあえず、もうすぐライラと──」
どんと何かがぶつかった。
「きゃ!」
「ライラ?!」
「ライラ無事か!」
「はい無事です!」
リヴンにぶつかり尻餅をついたライラにコルヴォが手を差し伸べる。
「一度戻るか?」
「いや、難易度が今のままだと不味いから取りあえずてっぺんいくぞ」
「はい、師匠!」
「ライラ、案内頼むぞ」
「はい!」
今度はリヴンに変わって、ライラが先導しはじめた。
モンスターを避けて通り、上へと向かう。
そして頂上。
「おいレザス! うちの可愛い弟子はやらんぞテメェには!」
「彼女の師である貴方の同意を得られず残念です」
レザスはため息をついた。
「しかし、私は諦めない!」
「諦めろ、ライラは私の恋人だ」
「ダンピールなんぞに私は負けない!!」
「負けてるわよ、性格も顔も」
レイナが呆れたように言う。
「おい、ライラ、ちょっと待てどういう事だ?」
「実は……という事で」
「なるほどカモフラージュって訳か」
恋人発言に驚いていたリヴンだが納得したようだった。
「おいレザス、俺はコルヴォとライラの恋人関係を正式に認めるぞ! あと、ルナティックで恋人同士の奴いるか?」
「グレイさんとレイナさん……」
「根負けして恋人よ」
「食らいついて恋人なったぜ」
「よし分かった……聞いているか光翼の祝福者よ!」
リヴンがそう叫ぶと、天から光る翼が生えた人が現れた。
『全て、聞いております。ならば「二組」に祝福を──』
コルヴォとライラ、グレイとレイナを光が包む。
光が消えると祝福者はこういった。
『貴方方の愛ある道に、幸多からんことを』
そういって姿を消した。
「そんな、こんな、はず、では……?!」
リヴンはレザスに近寄り蹴り飛ばして塔の装置を弄る。
そしてレザスを簀巻きにすると、やって来た王宮の使いの者達にレザスを渡す。
「コイツに魔法封じ施せ、じゃないと同じことが起きる」
「は! 分かりました」
使いは魔法封じを行い、兵士はレザスを担いで去って行った。
「あー疲れた!」
「あの、師匠?」
「祝福の事か? 言ったろ、全て聞いておりますって。俺とお前の話も聞いていて祝福したんだ、グレイとレイナだっけか、その二人とはちょっと異なる祝福だがな」
「は、はぁ……」
「あとで観て貰えばいいだろう」
「それもそうだな。よし、帰るぞ」
「ワープポイントも起動させたから塔の入り口に戻れるぞ」
「よし、乗り込め──!」
わーっと乗り込み、頂上から姿を消した。
無事ギルドに帰還すると、ライラを受付嬢達が抱きしめた。
「くるちぃです……」
「そんくらい我慢しろ、みんなに心配かけたんだから」
ギルド長のグレアがそう言うと、ライラはそんなぁ、と言わんばかりの顔をした。
「それにしても迷惑かけたな」
「光翼の祝福者の祝福を受けたからレザスも多分諦めただろうよ」
「は?!」
リヴンの言葉にグレアは驚愕の声を上げる。
「ちょ、ちょっと待て、光翼の祝福者の祝福ってアレだろ」
「安心しろ、ライラとコルヴォのはちょっと違う奴だ、鑑定士に見せてみろ」
「おい鑑定士、ちょっと来いー!!」
「はーい!!」
ギルドお抱えの鑑定士がライラを鑑定する。
「あー光翼の祝福だけのですね。愛の祝福無しで」
「師匠が言ってたのはこのことなんですね」
「おうよ。さて、本来なら素材回収に行きたいが今回は見送ろう」
「どうしてですか?」
「王宮の連中が持ってったのが分かったからだよ」
「むぅ、勝手にもってくなんて……」
「急いでたからな」
「……すみません」
ライラは申し訳なさそうに謝罪する。
「はっはっは! いいんだよ」
リヴンは豪快に笑ってライラの頭を撫でた。
「あんな変態にお前が結婚させられなくて良かったよ」
「──有り難うございます、師匠!」
ライラはリヴンに抱きついた。
「──で、お前らはどうするんだ。本物の常闇の迷宮に乗り込むのか?」
グレアはライラ達に問いかけた。
ライラは不安げにコルヴォ達を見る。
皆自身に満ちた表情をしていた。
それに安堵したライラは口を開いた。
「常闇の迷宮の探索をします」
「よし、いいだろう。王室からの直々の依頼だ、行って稼いで来い。そして生きて帰ってこい」
「はい!」
屋敷に戻り、皆支度をする。
ライラは入念に準備をする。
封印されていた場所だ、何があってもおかしくないと。
「ライラ、準備はできた?」
レイナがノックをして部屋へ顔を出す。
「はい、できました!」
ライラは荷物を背負って部屋から出る。
「ライラ、貴方に期待してるわよ」
「はい!」
「全員の準備ができたようだ、向かおう」
「はい!」
「了解」
ルナティックのメンバーは屋敷を後にし、王室が用意した馬車に乗って迷宮へと向かった──
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