13 / 17
迷宮の真実
しおりを挟む「皆様?! たった一日で踏破なされたのですか?!」
王室の使者が戻ってきたルナティックとリヴンを出迎える。
「あーそういえば……」
「迷宮の中の時間では五日ほどかかりました」
「あーあ、ライラがもっと早く来てくれれば俺の五年……いや、一年は……」
リヴンはふてくされたように言う。
「仕方ないじゃないですか! もう」
「取りあえず、レイジ陛下にも会わせて下さい」
「え?!」
「この迷宮は王室が関与していると思います」
「?! わ、わかりました」
皆馬車に乗り込み、王都へと向かった。
「手紙一通しか持ち帰らぬとは……」
「まぁまぁ、中身を見れば理由が分かりますよ」
王室の偉い人々と国王に、リヴンは平然と言った。
ルナティックメンバーはほとんどがカチカチと凍り付いていた。
リヴンが手紙を開けると、映像が出た。
『この手紙を手に取り、その上で宝を一つも取らなかった者へ感謝を。私はストレア国国王、リーザス』
「お、御祖父様?!」
国王陛下が目を丸くする。
『妻の亡骸を迷宮に放置したのには訳がある、妻を亡くした私は妻が永遠に眠ったままで居て欲しいと願い防腐魔術をかけた、当時は禁忌の。それを隠すために迷宮を魔術師と案内人に作らせた』
「やっぱりか」
リヴンが当たっていた事に頷く。
『宝は生前彼女に私はプレゼントしたものだ、だから宝を取ると呪われるように仕込んでおいた』
『常闇の迷宮は妻の墓碑だ、願うなら誰も入らせないで欲しい』
『夜が好きだった彼女への私からの手向けなのだ』
映像が消えると、国王は息を吐いた。
「……分かった、今後常闇の迷宮への立ち入りは禁止としよう」
「それが良いでしょう」
リヴンが言う。
「……墓参りいけぬのが残念だが」
「それについてはもう一枚の紙が説明すると思いますよ」
リヴンはもう一枚の紙を開いた。
『もし王族が墓参りをしたいのなら、それを願って入るといい。彼女の場所へと行けるだろう』
『それと、宝を盗まなかった者に、王室から褒美を出すがいい。既に用意している』
『宝物庫の一番奥の青い宝箱だ』
『くれぐれも、渡さないなどケチな事はするなよ』
『そんなケチな王族は呪うからな』
「御祖父様、圧が強いです!」
国王は声を上げる。
「今すぐ取ってくるのだ!」
「は!」
しばらくすると青い少し古びた宝箱を持ってきた。
「こ、これかと!」
「御祖父様の刻印が付いている、よし、渡せ!」
「ライラ、君が受け取れ。その資格がある」
「え?」
「そうだな、ライラお前が受け取れ」
コルヴォとリヴンに言われてライラは戸惑いながら宝箱を受け取った。
「迷宮の調査完了、感謝する」
「これは、私からだ受け取って欲しい」
今度は国王からの報酬が渡された。
金貨がみっちり入っている袋と、魔術アイテムの数々だった。
「師匠は……?」
「俺はいいわ、独断で入って仲間待たせまくってるし、いやもう新しく案内人とってるかな?」
「師匠……」
寂しげなリヴンにライラはなんと言葉をかければいいのか分からなかった。
「取りあえずギルドに戻って報告するか」
「そうしましょう」
全員城を後にし、ギルドへと向かった。
「「「「「リーヴーン?!?!?!」」」」」
「げ!?」
待っていたのはリヴンの所属していたパーティ「ブレイブハート」だった。
「お前俺達を帰らせといて、自分は一人迷宮探索とかふざけてんのか?!」
「し、仕方ないじゃねぇか!! あの時フロアボス倒す方法無かったんだからよ!!」
「それなら、それを探しに行って出直せば良かったじゃない!!」
一年間戻ってこなかったリヴンに非難の嵐。
「申し訳ない、うちの案内人を連れ戻して下さり……」
ブレイブハートのリーダーらしき男性が、リヴンの頭を下げさせながら自分も頭を下げていた。
「いや、リヴンのおかげでこちらは対策がとれたのです、あまり責めないでください」
「というか、うちのライラちゃんがサンダーソードの連中にこき使われたので得たアイテムが決定打ってのが複雑よねぇ」
「「「「ライラ?!」」」」
ライラはブレイブハートのメンバーに囲まれた。
「皆さんお久しぶりです」
「四年前、別のパーティに異動してからどうなってたか不安だったが、酷い目にあったみたいだな」
「今のパーティはどうだ?」
「はい、とても優しい方々で嬉しいです」
「そういえば、ライラちゃん。リーダーさんとお付き合いしてるって聞いたけど……」
「何ぃ?!」
リヴンが顔を上げてライラの方を掴む。
「おい、いつの間に恋人なんてできてたんだお前?!」
「いえ、あの、その」
「何で俺に紹介しようと思わなかったの?!」
「だって師匠行方不明だったし……」
「しかも、相手はこの顔面筋肉痛野郎だと?!」
「コルヴォさんの悪口は言わないで!」
ライラは持っていた木の板でリヴンの頭を叩いた。
「いで!!」
「こっちにも色々事情があるんですよ……」
「そうだな……ここではなんだ、別室──ギルド長も交えて話そう」
「おう」
「はー?! あのレザスにストーカーされたから恋人役をやってるぅ?!」
「あの噂のストーカー男ね……」
「じゃなきゃ、簡単に可愛い姪っ子をほいっと恋人認定しねぇよ嘘でも」
ライラはコルヴォに背負われながら、頭に顎を乗せ、退屈そうに話を聞いていた。
リヴンやブレイブハートのメンバーは額に青筋を浮かべていた。
「今は幽閉されてるけど、いずれ出てきたら嫌だなぁ」
「それはないから安心しろ」
ライラの嫌そうな言葉をグレアが否定する。
「取りあえず、お前達が無事に戻ってほっとしているよ」
「有り難うございます、グレアさん」
「今日くらいは叔父さんでいいぜ」
「有り難う、叔父さん!」
「おう」
グレアはにかっと笑った。
リヴンはブレイブハートの案内人として仕事をすることが決定し、そして常闇の迷宮の謎解明と、踏破を祝して、宴が開かれた。
宴の後、酔って帰ってきたメンバーを先に戻って宝箱の中身を見ていたライラが出迎える。
「お帰りなさい!!」
「すまん酔っ払いが二人も居る」
「わわわー! グレイ、僕の頭かじるのやめてー!」
「やめんかグレイ」
コルヴォはグレイの頭を殴り昏倒させた。
「まだ飲み足りないぃ……」
「レイナ十分飲んだろう」
「レイナさん、水でしたらいくらでもどうぞ」
「ううー」
レイナはのそのそと水場へ行き水を飲み干していった。
「それで、宝箱の中身は?」
「案内人が持っていた方がいいアイテムだけですね、後は……」
「月光花のペンダント?」
「ええ、皆さんの能力を上げるものですからもっておいて損はないかと」
「分かった全員に明日渡そう」
「はい」
コルヴォの言葉に、ライラはにこりと微笑んで頷いた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

捨てられ聖女は魔王に拾われる
水中 沈
ファンタジー
ここは、人間と魔族が争う、剣と魔法の世界。
ある日、神託が下り新しい聖女が生まれた。
元聖女であるリリアナは、新しい聖女アリスに聖女としての仕事を教えるも、アリスは全く仕事を覚える気配が無かった。
そんなある日、リリアナは魔物が大量に発生しているのはお前が原因だと追放されてしまう。
人間の住む領土「人間領」と魔族が住む「魔族領」。
その境目である、切り立った崖から放り出されたリリアナは、魔王に拾われ、助けたお礼にと、 人間領の魔物大量発生事件の調査の手伝いをする事になってしまう。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる