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こんなはずでは……(side:アレス)
しおりを挟む「なんだよ……地下に行けばいいって噂で聞いたのに、いくら降りてもお宝一つでてこねぇ……」
「もう、十五階は降りたわよ……フロアボスに毎回遭遇するし倒すのきつくなってるし、どうなってるの?!」
「おい、お前案内人なのに、なんでわかんねぇんだよ!!」
ライラが抜けて新しい案内人をいれた「サンダーソード」だが、月の塔のダンジョンで苦戦していた。
「も、もう嫌だ!! お前達にこき使われるのは!!」
案内人はそう言って逃げ出してしまった。
「あ!」
「どうすんのよ、案内人がいないんじゃダンジョン探索は自殺行為よ」
「追いかけて戻ろうぜ」
「くそ、一体なんでこんな事に……」
月の塔のダンジョンにある、入り口へのワープポイントを使って入り口に戻ると、パーティメンバーはうなだれた。
「どーすんのよ、ライラがいなくなった途端案内人が近寄らなくなってやっと見つけた案内人が逃げたのよ」
「くそっ!」
「ライラがいなくなってから、急にダンジョン以外の依頼も来なくなったし……どうするんだよ」
「俺が知りたい!」
アレスは地団駄を踏んだ。
ライラがいなくなったと聞いた途端、依頼がぱったりと途絶え、受付嬢から斡旋される依頼も今まで受けていた高額な依頼ではなく、低額のしょぼい依頼ばかり。
ダンジョンも入ってみたものの、途中でリタイア。
──あの女に価値なんかあるものか──
──案内人のお荷物係くらいしかできない奴だぞ?──
──なのに、他の連中はライラがいないなら受けさせられないとばかり──
──何なんだ一体──
ギルドに戻ると他の冒険者達が話し合っているのが聞こえた。
「ライラって子、ルナティックに入ったみたいよ」
「あの人外集団に?! なんでうちでスカウトしなかったんだ!」
「ちょっとぉ、私という案内人がいるんですがぁ?」
「案内人はいくらいてもいいだろ!」
「ルナティック案内人がついたらしいな」
「ああ、まだ踏破されてなかった月の塔のダンジョンを攻略して、宝物を持ち帰ったらしいぜ」
「案内人がいなくてもかなり強いパーティだったから、まさに剣聖に剣だな!」
「ライラちゃんを追い出した『サンダーソード』の連中も馬鹿だなぁ」
「ああ、ライラちゃん程の案内人を探すのは今後不可能に近いぜ」
「そうそう、ライラちゃん案内人としての能力以外もすごいものね」
と、皆がライラの話で持ちきりになっていた。
──役立たずを追い出しただけなのに、なんなんだこれは──
アレスはあっけにとられた。
そんな自分たちを他の冒険者達は見て顔を背けた。
「お帰りなさいませ、あら? 案内人の方は?」
「逃げ出したよ、根性がねぇ」
「あら」
不機嫌そうにアレスが言うと、ギルドの受付嬢はくすりと笑った。
「貴方達に見合った依頼は嫌だと言って、その上でダンジョンに無謀に潜って浪費だけして戻ってきた貴方達はどうなのかしら」
受付嬢の言葉に、アレスはかっとなって殴りそうになって仲間に止められた。
「落ち着けアレス!」
「そうよ、受付嬢を殴ったりなんかしたらあたし達本当に無一文になっちゃうよ!」
「そうじゃ、落ち着け!」
「くそが!」
アレスはギルドの床を蹴り飛ばした。
「では、失礼致します」
受付嬢はそう言って戻っていった。
──あいつだ、ライラだ──
──あいつが全部悪いんだ──
アレスの目は怒りに満ちていた。
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