2 / 17
新しいパーティに
しおりを挟む宝物を仕分けし、山分けした後、ライラは不安げにたずねた。
「ところで、私は合格でしょうか?」
コルヴォ達はあっけにとられた表情を浮かべたが、すぐ全員笑い出した。
「え、え?」
「不合格などあるものか、合格だ。これから宜しく頼む」
「や、やったー! ありがとうございます!!」
ライラは嬉しそうに飛び跳ねた。
「他の売らない方がいいアイテムの管理をお願いできるかな?」
「はい! 喜んで!」
ライラは嬉々として販売しないアイテムを魔法袋へと入れていった。
「……いいわねぇ」
「何がだレイナ」
「ライラちゃん、可愛くってすっごいいい! 素直だし!」
レイナがにこにこと笑っているとにやけづらのグレイも近寄ってきた。
「そうそう、今まで俺等のダンジョン案内人は人種で差別してきたのに、あの子はそれがねぇな」
「ふふーん、つまり一番下だった僕に後輩ができたってことだな!」
「「いや、それはない」」
「なんで否定するのー!」
グランの言葉に、レイナとグレイは顔を見合わせて。
「だって、」
「なぁ」
「「経験値はあっちの方が上すぎるだろ(でしょう)」」
「そ、そういえば!」
グランが頭を抱えたのを見て、レイナとグレイは笑い合った。
「今日は久々に稼げた、と言う事で──」
「「「「乾杯!」」」」
「か、かんぱーい……」
食堂で、ルナティックの全員が嬉々として酒や果実水を飲んでる中、ライラは居心地わるそうにしていた。
「ライラ、もしかして君は宴にも呼ばれなかったのか?」
「は、はい」
「……今日からは君もいれて盛大に祝うぞ」
「ほらほら、食べて食べて──」
「わわわ」
盛大に祝われて、ライラは驚きながらも嬉しそうに食事をした。
「ここが俺達の家だ」
宴が終わり、ルナティックのホームにライラは案内された。
「わー……!」
屋敷というには少し狭めの家に招かれ、ライラは周囲を見渡しうずうずとしはじめた。
「な、何か?」
「あの、少し改良しても良いですか?」
「構わないが……」
「ひゃっほーい!」
ライラはそう声を上げて台所へと向かっていった。
台所の器具を魔法袋から取り出して改良魔術を使う。
すると、つまみをひねると火がつく台所に、綺麗な水が出る水道に、まぁ、色々と早変わり。
風呂場もスイッチを押すとちょうどいい温度のお湯が出てくる使用に早変わり。
貯水タンクも常に綺麗な水をため込んでいる状態。
各部屋も一カ所を除いて薄暗い部屋が明るい部屋へと変わっていった。
「すごい! 案内人ってこんなこともできるの?」
「いえ、多分私だけかと。案内人の主な仕事はダンジョン案内ですから」
「ところで、何でリーダーの部屋だけ手をつけなかったんだ?」
「あ、その……リーダーですし、どこまで手をつけたらいいか話し合って相談したほうがいいかなって」
「分かった、じゃあ部屋へ来てくれ」
「はい」
ライラはコルヴォの部屋へと向かった。
小綺麗な部屋だが、分厚いカーテンで覆われ、棺桶がそこにあった。
「ふむ、じゃあ月の光を明かりにした方がいいですね」
ライラは魔法袋から、月の形をした明かりを取り出し、天井につるした。
そしてカーテンも、太陽光が一切入らない物へと変更し、棺桶の位置も調節した。
「こんな感じでいいですか」
「ああ、助かる。……初めてだ、こんな明るいのに苦しくないのは」
「ブレスレッドの効果と、この明かりの効果がありますからねー」
「この明かり消す場合は」
「ああ、『明かりを消して』」
ライラがそう言うと明かりが消えた。
「『明かりをつけて』」
続けて言うと明かりがついた。
「これでいいです、他の所も似たような感じなので連絡しますね」
「ああ、助かるよ」
「では」
ライラはそう言うと出て行った。
ライラがいなくなると、コルヴォは椅子に腰掛け机の上で腕を組む。
「とんでもない少女だな……それを追放する……いや馬鹿にし、無下に扱うとは愚か者が……」
呆れと怒り交じりの声で呟いた。
「ライラちゃーん♪」
「はひ?!」
レイナはにこりと笑って部屋でごそごそと何かをしているライラに声をかけた。
「お、脅かさないでくださいよぉ」
「ごめんなさいね、ノックしても返事が無かったから……何をしているの?」
「ダンジョンに入る準備をしているんです。『ダンジョン案内人は命綱だ、だから何が起きても大丈夫なようにしておけ』と、師匠に言われてたんです」
「……真面目なのね」
「皆さんの期待を裏切りたくないんですよ」
「ううん、もう十分貴方は私達の期待に応えているよ」
レイナはライラを抱きしめた。
「そ、そんな事ないですよ」
「あーあ、貴方の事悪く言った連中、私直々にぶちのめしたいわ」
「い、いいんですよ! もう、関わりたくないですし……」
「本当にいい子ね……」
レイナは少し悲しげにライラの頭を撫でた。
「はーい、皆さん、朝食ですー!」
翌朝、お玉をカンカンと鳴らしながら、リーダーであるコルヴォ以外の部屋に入って起床を促す。
「うーん……まだ眠い……ん? いい匂い」
「美味そうな匂いがするなぁ」
「もしかして、ライラちゃん?」
「はい!」
ライラはにっこりと笑って言った。
「冒険者さんは体が資本! ちゃんと食べてくださいね?」
テーブルの上の朝食を見せてライラは笑った。
「このベーコン最高!」
「ちょっと! そのサラダと果物とスープは、私の!」
「いーじゃんかちょっとくらいー」
「まだまだありますから、喧嘩しないでください!」
「ずいぶん騒がしいな……」
「あ、リーダーごめんよ」
「コルヴォごめんなさい」
「わりぃなコルヴォ起こしちまって」
「いや、構わない」
「コルヴォさん食事は?」
「済ませてある、ライラ。君は?」
「皆さんが終わったら食べますよ、残った物を」
「それはいけないわ!」
レイナが動き、椅子に座らせる。
「同じ仲間なんだから一緒に食事をしましょう、今日からは」
「は、はい……!」
レイナの言葉にライラは嬉しそうに笑った。
「コルヴォ、あの子の扱いなんだけど」
「何だ?」
部屋にこもっているコルヴォに、レイナが声をかけた。
「前のパーティ『サンダーソード』だっけ? そこで本当扱いが悪かったんじゃないかしら」
「俺もそう思う」
「だから、あの子が連れ去られないよう注意しないと」
「分かっている。グレイを護衛につけよう」
「私も護衛になるわ」
「助かる」
レイナはふぅと息を吐いた。
「それにしても、あの子相当不遇な扱いを受けてたんじゃ無いかしら」
「だろうな」
「あのこレベルなら国宝級の存在よ、国が調べる時に派遣する位のスキルと経験の持ち主だわ」
「経験以上に才能だな」
「ええ、ダンジョンに入って一瞬であそこまで把握するんだもの、普通の案内人なら自分の周囲半径500メラ位か、最大四フロア位しか把握できないって聞いたわ」
「それを考えると、足を踏み入れただけでその階層と、どちらに行くのが正解か、正解行動は何かを知る彼女は飛び抜けすぎているな」
「ええ、取りあえず今は屋敷にいるから、買い物に出るときは一人で出ないように行ってくるわ」
「そうしてくれ」
レイナはそう言って、コルヴォの部屋から離れた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

捨てられ聖女は魔王に拾われる
水中 沈
ファンタジー
ここは、人間と魔族が争う、剣と魔法の世界。
ある日、神託が下り新しい聖女が生まれた。
元聖女であるリリアナは、新しい聖女アリスに聖女としての仕事を教えるも、アリスは全く仕事を覚える気配が無かった。
そんなある日、リリアナは魔物が大量に発生しているのはお前が原因だと追放されてしまう。
人間の住む領土「人間領」と魔族が住む「魔族領」。
その境目である、切り立った崖から放り出されたリリアナは、魔王に拾われ、助けたお礼にと、 人間領の魔物大量発生事件の調査の手伝いをする事になってしまう。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる