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追放された案内人は──

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 案内人──
 ダンジョン等の地形や罠把握、構造把握をしてパーティを安全に導く貴重な役職──
 能力の差が、パーティの安全へと繋がる──




「案内しかできないお荷物に一緒にいられると迷惑なんだよ」

 そう言われて、私はパーティ「サンダーソード」を追放されました。
 一人とぼとぼとギルドに戻り、受付のお姉さんに話しかけます。

「案内人を求めてるパーティはありませんか?」
「あるけど……どうしたのライラちゃん。貴方『サンダーソード』の案内人だったでしょう?」
「……クビになりました」
「何ですって?!」
 受付のお姉さん──ミスティさんは急いで私をギルド長のところへ連れて行きました。


「ライラ『サンダーソード』をクビにされたそうだな」
「はい……グレアさん」
 ギルド長──グレア叔父さんは苦笑して私の頭を撫でた。
「今は叔父さんでもいいぞ。よく頑張ったな、連中は後々相応の事が起きるだろう」
 わしゃわしゃと頭を撫でながらそう言いました。
「さて、お前ほどの案内人なら引く手数多だろうが、そうなると他の案内人がちょっと不味い事になるんでな」
「はぁ……」
 お荷物、と言われた私にとって叔父さんの言葉は実感がないものでした。
「ミスティ。『ルナティック』を紹介してやれ、あそこは案内人がいないパーティだ」
「ルナティック?」
「まぁ、何で案内人がいないのか会えば分かる」
「はぁ……」
 翌日の午前十時に、ギルドの個室で顔合わせをするという事で、私はギルドの仮部屋で荷物整理をしてから、ベッドに潜りました。


 翌日の午前十時、個室で待っていると四人組が入ってきました。
 一人はダンピール、一人はエルフ、一人は狼の獣人、最後の一人はホビット。
 一人目で、案内人がパーティにいない理由を理解してしまった。

 ダンピールの美貌は、争いの種だからだ。

 しかし、そんな雰囲気を全く感じさせないパーティだとライラは感じた。
「ライラさん、こちらが『ルナティック』のメンバーです」
「今まで四人でやって来たんですか?」
「ああ、ダンジョン探索はできないが、それ以外の依頼でなんとか食いつないで来た」
「案内人が入ると、リーダーの顔の所為で問題が起きて大変だったんだけど、貴方は大丈夫?」
「あ、はい」
 エルフの女性がたずねてきたのに、私は生返事で返す。
 美貌に見惚れてる訳じゃない。

 この人達は私を「お荷物」扱いしないだろうか?

 それだけが不安だった。
「あ、案内人として仕事はきっちりこなします」
「ライラちゃん緊張しなくていいわよ。この人達人外パーティとか呼ばれてるけど、他の人だけのパーティよりも温かくて優しいから」
「……」
 ミスティさんの言葉に、少しだけ不安になる。

「試しに、何処かダンジョンへ潜りたい。君の実力が知りたい」
 リーダーのダンピールの方がそう言うと、エルフの女性が頭を叩きました。
「馬鹿、その前に自己紹介でしょ! 私はレイナ。種族はエルフよ。弓使いと精霊魔法使いを兼任してるわ」
「……そうだったな、俺はコルヴォ。ダンピールだ。ルナティックのリーダーをやっている。魔法剣士とタンクを兼任してる」
「俺はグレイ。見ての通り狼の獣人だ。俺は斥候担当とモンクだ。まぁ、気楽にやろうぜ!」
「ぼ、僕はホビットでヒーラーのグランだよ。よ、よろしくね」
「……あれ? シーフは?」
「それはリーダーが兼任してる」
 その言葉に私は目を丸くしてから、声を出しました。
「あ、あの。宜しければシーフ……罠発見とかそういうのの役目は今後私にやらせてください!」
「そうか、助かる」
「いいの?」
「はい! 私、案内人ですので!!」
 私は声を張り上げていった。
「で、何処のダンジョンに潜るんですか?」
 たずねると、張り紙を見せてきました。
「最近発見された、月の塔を攻略したい。噂ではあそこにはダンピール用の装備があるらしい」
「──分かりました、精一杯案内をさせて頂きます!」
 これが私と「ルナティック」の出会いでした。





 月の塔に到着し、ライラは中に入ると即座にこのダンジョンの構造を理解した。

「むー」

「どうしたんだ?」
 コルヴォがライラに声をかける。
「嫌なダンジョンですね。塔だから皆上に上ってるけど、これは下に降りるのが正解なダンジョンです」
「「「?!?!」」」
 レイナとグレイ、グランは驚愕の表情を浮かべる。
「フロアボスらしいミスリルゴーレムを倒すと厄介な事になるので避けながら行きましょう、こっちです」
 ライラがそうやって動き出すと、コルヴォは後を追い、他の皆に向かって言う。
「行くぞ」
「わ、分かってるわよ!」
「お、おう!」
「は、はい!」

 ライラはフロアボスを避けながらコルヴォ達を下の階へと案内していった。
「なぁ、何でフロアボスを倒したらいけないんだ?」
 グレイが問いかけるとライラは歩いたまま口を開いた。
「フロアボスを倒すと、このダンジョンの構造が変化して、最終階層がより下になっていく構造をしているんです。今は十階ですが、倒し続けると百階まで降りないといけませんよ」
「百ぅ?!」
「なので、この塔は無用な争いは避けて行きましょう」
「──ライラ」
「はい、何ですか、コルヴォさん」
 コルヴォがライラに話しかけると、ライラは歩いたまま返事をした。
「君はこのフロアの何処に何があるのか全部把握してるのか」
「してますよ。じゃないと安全に地下に降りられませんから」
「……すごいな。ギルド長から凄腕だと言われた理由も分かる」
「あ、あははは。でも前のパーティクビにされたんですよね……」
「それはそいつらが見る目が無かっただけよ」
「そうだな、ちったぁ物足りないが、こういうダンジョン攻略もあるって分かっただけでも勉強になるぜ」
「あら、勉強嫌いのグレイがそんな事言うなんて、明日は大雪かしら、ね。グラン?」
「ですねー」
「お前等俺をなんだと思ってんだ?!」
「いい加減黙れ、お前達。ライラの行動の邪魔になる」
 コルヴォの言葉に、ぴしゃっと全員が口を閉ざした。
「君に私達の行動を委ねる」
「……有り難うございます」
 ライラは少しだけ照れくさそうに笑った。

 ライラは罠のエリアは罠を解除し、フロアボスがいるエリアが下の階層だった場合はフロアボスを別の場所に移動させる手段をとり、十階まで潜った。


 そこで見た光景は──

「宝の山だー!!」
 グランが思わず叫んだ。
「自動で生成されるらしいので遠慮無く持ってちゃいましょう」
 宝の山を見てライラは何でも無いように呟いた。
「しかし、これだけあるのに、持てる量が限られるのは悲しいな」
 コルヴォがそう言うと、ライラは袋を取り出した。
「そんな時のための魔法袋です!」
「魔法袋?! そんなレアアイテムを貴方は持っていたの?!」
 レイナが驚きの声を上げてライラと、袋を見る。
「師匠のお下がりですけどねー弟子は私一人だったので形見は全部貰っちゃいました、師匠独り身だったので……」
 ライラは明るかったが少しだけ暗い表情になった。
「いや、助かる。さて、持って帰って売れる物は売り、持っておく物は持っておこう」
「「「了解!!」」」
「あ、鑑定できるので、あとでやりましょうー!」
「……あの君どこまで万能なんだい?」
「え、これくらいできて当然かと……」
 ライラの言葉に、コルヴォ達は顔を引きつらせた。


 ライラは持ってきたお宝を全て鑑定し、売って良い物と、売ってはいけないものに仕分け、売って良い物をコルヴォ達に渡した。
 また、売ってはいけない物は──

「好きな物を持って行って下さい」

「私この指輪がいいわ!」
「あ、それは精霊魔法使いのレイナさんと相性の良い指輪ですよどうぞどうぞ」
「俺はこのブレスレットがいいな」
「それは、風よけのブレスレット。動きが良くなるのでモンクのグレイさんに良いですよ、どうぞどうぞ」
「僕はそうだなーこのメイスがいい!」
「それ、回復と攻撃補助効果をアップさせるのでヒーラーのライトさんにお勧めです、どうぞどうぞ」
「私は……いいかな」
 コルヴォが受け取ろうとしなかったのを見て、ライラは月の形のブレスレットを差し出した。
「これは月の加護があるブレスレットです、日中の行動が大変なコルヴォさんにはぴったりかと思います」
「……そこまで見てくれていたのか」
「当然です」
 ライラはえへんと胸を張った。

 ライラは出会ったとき、体調が悪そうなコルヴォをしっかりと見ていたのだ。




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