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調教師は手心を知らない

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 大抵の場合「依頼品」は、抵抗する。
 大体、逃げるか、調教者であるセドリックに反抗してくるかの二択。

 けれども。
 調教空間の一つである、この部屋ではセドリックが全てを支配する。
 調教空間のあらゆるものがセドリックに従わざる得ない。
 故に、抵抗も、逃亡行為も、無意味なのを知っていて、それを分からせるためにあえて行為はできるようにしている。




「――少々度が過ぎたので拘束させてもらった。貴方を傷つける行為をする訳ではない事を理解して貰いたいが、それは当分無理そうだ」
 セドリックはひとしきり抵抗したクライヴを、拘束具で体の動きを制限してベッドの上にうつ伏せの状態にして言う。

 自害する事はできないから口枷はつけない。
 自傷行為もできないから動きを制限する拘束具で十分だった。

「さて、これは起きてる時にやった方が効果があるのでさせてもらおう」
 セドリックは緑色の粘質生物が入った針のついてないシリンジを取り出した。
 シリンジの先端にローションを塗り、そしてクライヴの明らかに未通の後孔をローションで塗れた指で軽く撫でる。
「貴様何を――?!」
「貴方はそう言う事は知らないのか、男が男とする場合、基本使う穴は此処。勿論、最初からそういう使われ方が箇所できる場所ではないから、できるようにする」
 セドリックはクライヴのくすみのない後孔にローションを塗りつけ、わずかに小指を押し込む。
「っ……ぐ……!!」
 セドリックの指に、明らかに拒むような締め付けが伝わった。

 それがセドリックにはとても「嬉しい」事だった。

 何故「嬉しい」のか、セドリックは理解できなかったが。

 セドリックは小指を抜いて、シリンジの先端を押し込んだ。
 小指よりも少しだけ細いそれは、すんなりと入った。
 セドリックはプランジャーを押し、ゆっくりとシリンジの中身をクライヴの腸内に注入していく。
「?!」
 びくりとクライヴの体が震えた。

 粘質生物は腸内の排泄物を全て喰らい、洗浄し、そして増えるのだ。
 シリンジの中の量でも、腸内の排泄物を全て喰らい、同時に出す特殊な液体で腸内を変えるのだ。

 体には一番負担が少ない方法であるため、セドリックはあまり使わない方法だった。


 理由は「依頼品」を従順にさせる為には、最初は恥辱と苦痛の味を教えてから快楽で堕とすのがセドリックの一番使う調教方法だったからだ。
 調教は時間制限がある、短ければ短いほど、急ぐ必要がある為、相手を見極めて調教方法を選ばなければならない。

 だが、クライヴはセドリックが「欲しがった」から調教している。
 時間を気にする必要などないのだ。
 自分の望むように、調教することができる。


 シリンジ内の粘質生物を全て注入し終えると、シリンジの先端を抜いた。
「暫く、そうしているといい。快楽が欲しいなら排泄しようとしてみるといい。排泄はできないが、催淫効果が高まるから」
 セドリックはそう言って、クライヴの居る部屋を後にした。

 時間をかけた方が、より受け入れやすい体へと変貌するからだ。
 そして「依頼品」の方も、そろそろ見なくてはいけない。

 セドリックは足早に「依頼品」の居る部屋へと向かった。




 セドリックがダリルの部屋に戻れば、汗の匂いが漂ってきた。
 熱に浮かされたものではない、苦痛から生まれる汗の匂い。
「お゛ぐぇ……」
 呻き声が聞こえた。


 限界を超える排泄欲を、無理やり押さえつけられ続ける苦痛は耐えがたいもの。


 セドリックは静かに近づき、ダリルの青黒い髪を掴んで顔を上げさせた。
「少しは、自分の立場を理解できたか?」
「ふ……ざける……んじゃ、ねぇ……!! ころ、す……!!」
 汗で顔をじっとりと濡らしながら、殺意のこもった目と表情でダリルはセドリックを睨みつけてきた。
「……なるほど」
 セドリックは無感情にそう呟くと、ダリルの髪を掴んだまま、脚の拘束を僅かに緩めて引きずる。

 トイレの便座の上に無理やり座らせ、脚を開かせて固定する。
 そしてアナルプラグを抜いた。
 だが、ダリルは排泄しない、必死に耐えているようだった。

「さっさと出せ、次が出来ん」
「ふざけ、るんじゃねぇ!! でて、いきやが、れ!!」
「貴様の意見など聞いていない、さっさとすべて」

「『出せ』」

 セドリックはダリルの体に「命令」する。

 ぶしゅ、と液体が吹きだし始める音が聞こえた。
「?!」
「無駄だ、さっさとすべて『出せ』次の工程に移るための時間が惜しい」
 セドリックは淡々と告げる。


 ダリルの調教の手を抜くことはしないが、クライヴの調教に手間をよりかけたいのだ。

 ダリルの自尊心をさっさとへし折りスムーズに調教を進めたいのだ。


 洗浄液で分解されたのか、透明な液体だけが、排出された。
 ぽたぽたと、ダリルの後孔から、雫が垂れている。
 セドリックは次の作業に移る為に透明な手袋を手にはめてから、ダリルの尻を紙でぬぐい、捨てると、髪を掴んで再び引きずり、ベッドの上で先ほどと同じ体勢にした。

「貴様……必ず殺してやるから覚悟しろ……!!」
 ダリルが憤怒と恥辱に染まった顔をしているのは分かっているが、セドリックにはどうでもよいことだった。

 セドリックはローション入りのボトルを取り出して、先ほどの排泄行為の所為でわずかに開いたままのダリルの後孔にボトルの先端を入れ、ボトルを握りつぶし、蜂蜜の様な粘質性のあるローションを注ぎ込んだ。
「貴様――!!」
 ダリルの罵倒に、セドリックは耳を貸さない。

 ローションを注ぎ終えると、セドリックは缶を取り出した。
 白い丸い缶に、黒い薔薇の模様の入った、塗る事で使用する媚薬入りの缶を。
 蓋を開けて、薬を掬うと、ローションで塗れたダリルの後孔に薬が付着している指を入れる。
「?! な、何しやがる貴様?!」
「媚薬だ、貴様は此処で相手を悦ばせるようになる必要があるのでな」
「ふざけ……っぐぅ?!?!」
「かなり強い媚薬だ、貴様にはちょうどいいだろう」
 セドリックは淡々と薬を腸内の指が届く範囲に塗り込んでいく。

 ぐちゃぐちゃと粘質的な音が響く。

 ダリルが必死に口を閉ざしていると思われる、音がセドリックの耳に届く。
 罵倒ができないのだろう。

 自分の喉から出そうになっている声を必死に殺すことで、ダリルが己の自尊心を守ろうとしているのがセドリックには予想ができた。

 プライドが高いのか、それとも羞恥心が強いのか、我慢強いのか。
 いずれにしても、セドリックにはどうでもよかった。

 セドリックはもう片方の手でダリルの会陰を撫でてから、ゆっくりと揉む様に押すと同時に、ダリルの腸内にある前立腺を同時に刺激してやる。

「っ……?!」

 ダリルの声が零れる直前に、無理やり押し殺したのが分かった。
 口の端から息が零れ、体は震えて汗ばんでいる。
 萎えていた雄は勃起し、透明な汁を垂らしていた。


 薬をより腸内に塗り込み、前立腺を内側と外側、両方から刺激し続ける。
 前立腺はふくらみ、こりこりとした感触が伝わってきた。
 勃起している雄は扱けば射精するであろう程の状態にあった。
 それでも、必死に声を殺し続け、耐えるダリルを見て、セドリックは呆れの視線を向ける。

――耐えれば余計に辛いという事が分からないというのは、いつ見ても理解しがたい――

 他人事のように、思いながらも、次行う手段をセドリックは頭の中で思案し始めた。





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