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聖女認定からの~生け贄になるしかない!~

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 はい、何故か聖女認定されることになりやがりました。
 魔法の詠唱なんて知らぬ。
 ただ治れーとか、毒消えろーとか、そういうので全部綺麗さっぱり元通りになった。
 生き物も荒ぶってるのを鎮まれーとやると鎮まる。
 天候とかも同様です、雨降れとかやれば雨降る。
 川が汚れてるの綺麗になれーってなれば綺麗になる。
 気が付いたら王女だけど聖女扱いもされるようになってた、なんでじゃ。




「リア、無理してはだめよ?」
 妃は自室でいつものように神殿に向かう準備をしているリアに声をかける。
「お母様、無理はしてません。私はやりたいんです、皆の苦しみを和らげてあげたいんです」
「本当に優しい子……良い国に嫁げればいいのだけど……」
「それが無理なら神殿で一生民のために祈ります」
「ああ、本当に優しい子……」
 妃はリアを抱きしめる。

──うーん、なんか嫁ぐというワードにびんびん不穏を感じるのは気のせいかなぁ──
──正直、よその国の状態何も解ってないから嫌だぞー──


 二人がそうしてると、血相を変えた大臣が入ってきた。
「お妃様! リア王女様!! 大変です!!」
「何事です!?」
「帝国が、わが国に……!!」
「何ですって!!」

──うわー!──
──なんか嫌な予感しまくりだぞーコレ!!──

 リアは嫌な予感に若干不安げな顔をしていると、母親である王妃は穏やかにほほ笑んだ。
「リア、大丈夫よ」
「……」
「帝国は魔王の国と争ってる最中のはずです、何故我が国に?」
 王妃は凛として大臣に尋ねた。
「それが――聖女を――リア王女を差し出せと」
「何ですって!?」

──ほら来た嫌な予感的中ー!!──

 驚愕している王妃と心の声を殺して、困り顔をするリア。
「あの……お母さま、帝国と魔王の国とは?」
「……ここから西にある二つの国です。古から続くレイゾン王国、魔術王が統治する国ですが皆魔術王を恐れて魔王と呼び、魔王の国と呼んでいるのです、帝国は歴史が浅いけれども発展が異常に早すぎるクリムゾン帝国、この二つの国は戦争をしているのです」
「……」
 リアは母親である王妃の言葉を黙って聞く。
「……どちらも強国、この国では歯が立ちません。しかし、何故よりにもよって帝国がリアを?!」
「それが……偵察に出した者によると、魔王の国との和平交渉に差し出すと、どうやら魔王がこの国の聖女に興味を抱いているという情報があったらしく……」
「ああ、なんて事なの……」
 王妃は顔を覆う。

──ここで行かないって言ったら、多分国滅ぶなー……──
──愛着出てきたから離れるのは寂しいなーでも滅ぶのはやだなー……──

「お母様、私行きます」
「リア?!」
「だって、でなければ帝国はこの国を滅ぼそうとするんでしょう?」
 リアの言葉に、王妃は言葉を失っているようだった。
「……リア王女の言う通り、差し出さなければ国を滅ぼすと言っております……」
「お父様に伝えて、私は行きますと。国を守る為に行きますと」
「リア……ああ、なんてことなの……ようやく目覚めて家族で幸せに過ごせると思っていたのに……その矢先にこんな……」
 王妃は泣き崩れた。

 それから数日後、リアは帝国から来た、車のような乗り物に乗せられ帝国に連れていかれることになった。

──あー、なんつー人生だ──
──というかあの女性……まぁ女神様も面倒な人生を押し付けたもんだ──
──通り魔に刺されて死ぬとは別に波乱万丈な人生だぞこれ普通に見ると──

 リアは帝国に着くと、窓越しの景色を見て非常に発展しているのが分かったが、何か嫌な雰囲気を感じた。
 多分、あまり良い発展の仕方じゃないのだろうと思った、何故かは分からないが。
 体がざわつく、ここは良い場所ではないと言っているように。

 帝国の城に着くと、見世物のような扱いを城で受けた。

──こいつらいつか地獄見せてやる……──

 できるか分からない決意を胸に抱きながら、罪人とは違う立場の人間を幽閉するための部屋に入れられ一週間を過ごした。
 その間の扱いは、普通だったが、魔王の国に連れていかれるとなった日には手を拘束された。
 馬なら二日かかるらしいが、帝国の乗り物なら半日で着くと言われて、リアはただそれを受け入れた。

──……魔王、どういう人物なんだ?──
──……ここでまた死ぬのは嫌だなぁ……──

 リアはそう考えながら乗り物の中で、じっとしていた。

 禍々しいとは異なる、立派な、それでいて神聖な何かを感じる居城につくとリアは乗り物から降ろされた。
「速く歩け」

──うーん、こいつら死ねばいいのに──

 物騒な事を考えつつも、リアは大人しく従った。
 身分が高そうな帝国の人間と護衛の兵士に従い、手の枷を引きずられるように歩かされる。

──こいつら、完全に私のこと物扱いだ、死ねばいいのに──

 周囲を監視されていると感じながら、リアは歩いた。
 城の中の通路を歩き、歩き続けて広い場所に着いた。
 広く荘厳な空間の奥に、何かすさまじい、それでいて近しい何かを感じる存在が座っていた。
 リアは何故か分からないが、その存在が魔王だと感じた。




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