覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

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貴方達と、共に

これからも~一緒に~

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「お母さん、じゃあ」
「一人暮らし、気をつけるんだよ」
 末子のヒマリが一人暮らしを始めるようになった。
 他の子等も一人暮らしを始めるようになった。
「ずいぶん年が経ったのに、昨日の事みたい」
 リビングに戻りソファーに座るとカナタは夫達と話始めた。
「そうだな」
「でも、友達は年を取っていってる。私の親と兄も……祖母も亡くなったし」
「カナタ……」
 アルビオンが抱き寄せる。
「私だけが年を取ってない。友達や後輩達の中で」
「カナタ……」
「四十近くか、四十過ぎになってる中、私だけ若いまま」
 カナタは悲しげに笑う。
「そうして私は置いて逝かれる」
「カナタ大丈夫だ」
「僕達が側にいるよ」
「うん、有り難う」
 微笑みを浮かべ、カナタはため息をついた。

「みんながいなかったら、多分私は耐えられなかった」

 そういって笑う。
「大丈夫だ、カナタ俺達は一緒だ」
 そういってマリが手を握った──




 また、月日が流れ、カナタの母が亡くなった。
 老衰だった。
 しわくちゃになっても、若いままのカナタに優しかった母。
 カナタはそれを失った。

 葬儀が終わり、墓石に骨になって入った母を見て、カナタは息を吐いた。

「私はこの墓にはきっと入れないだろう」

「そうだろうな」
 カナタの言葉に、カナタの兄が言った。
 しわくちゃになって、白髪だらけで、それでいてどこか寂しそうに言うのだ。
「だよね、兄さん」
 カナタは静かに頷いた。

 それから十数年後、兄が亡くなった。
 兄の葬儀は、カナタ達家族だけで行った。

「おじさん、優しかったな」
「ああ」
 アサヒとレイジが語る。
「おじさん、最後まで結婚しなかったのは何故?」
「引きこもっていたからね」
 ツムギとユイナが語る。
「親戚が来ないのは何故だ?」
「わからない」
 シロウとレオが語る。
「でも、アイカおばさんたちは来てくれたよね」
「そうだね」
 ヒマリとカイトは語る。
「……貴方達、まだ結婚しないの?」
「「「「「「「「いい人が見つからない」」」」」」」」
 カナタの発言に、八人の子等はそろって返す。
 カナタはあまりにもそろって言うので吹き出した。
「そうよね、いい人が見つからないなら仕方ないか」
「母さんみたいな人がいない」
「そうだね」
「それは相当難易度高いぞ」
「ああ」
「分かってるよ」
「おふくろみたいな人は早々居ないからな」
「だなー」
 等と男性陣は話している。
「お父さん達みたいな人と結婚したい」
「私もー」
「私も!」
「ツムギ、ユイナ、ヒマリ、それも相当ハードル高いよ?」
 カナタは笑った。




 夫達や子ども達が居ない家で、カナタは一人でいた。
 黒い影が近寄る。
「まだ死ぬ気はないですよ、夫を残して死ねません」
『だろうな』
「不幸かなとか思ったけど、案外幸せですよ」
『それは良かった』
「ありがとうございます」
『礼はいらぬ、ではな』

 黒い影は消えた。

 夫と子ども達が一緒に戻ってくる音がした。

 カナタは立ち上がり玄関に向かう。

「お帰りなさい」
「「「「「「「「「「「「「「「「ただいま」」」」」」」」」」」」」」」」」

 久しぶりの家族団らん、どんな食事にしようか、カナタは嬉しそうに考えた。

「カナタ」
 ディオンが突然訪ねる。
「なぁに?」
「今、幸せか?」
「うん、幸せ!」
 その言葉に八人は満足そうに笑みを浮かべ、カナタも満面の笑みを浮かべた──















END 
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