66 / 73
貴方達と、共に
親友との語らい~子ども達の成長~
しおりを挟む「そういえば、アサヒ、レイジ」
「何。母さん?」
「どうしたの、母さん」
とある休日、ヒマリの世話をしているカナタが息子二人に話しかけた。
「あんたらモテないの? お父さん達はモテてたって聞いたけど」
「モテるよ」
「うん、モテる」
「そう」
「でも断ってる」
「うん、断ってる」
「ああ、そうなの」
何となくカナタは納得した。
あの二人の子どもだ、早々簡単に恋人なんてできないだろう、と。
「ツムギとユイナはどうなの?」
「お兄ちゃん達に邪魔される」
「邪魔してくる」
「へ?」
「告白してきた男子に『妹と付き合いたくば俺達を超えてみろ』をやらかしてくれる」
「ちょっと、アサヒ、レイジ」
「そこで引き下がるならその程度の男だ」
「まぁ、私達もそう思ってるからいいよ、別に」
妙に納得しているツムギとユイナ。
カナタは我が子達の思考回路が分からなかった。
「ヒマリが0歳、カイトが2歳、レオが4歳、シロウが6歳、ユイナが10歳、ツムギが12歳、レイジが14歳、アサヒが16歳……か」
「見事2歳ずつ離れてるな」
「そういう計画でやったからね」
ディオンの言葉にカナタは返す。
「それにしても、ツムギとユイナもモテるのね……私モテた記憶無いわー」
「……ディオンはそれに対して無反応だった」
「え、カナタがモテなかったのかって?」
マヤを呼び出し、ディオン達は話を聞くことに。
「モテたわよーただ本人が気づいていないのと……」
「と?」
「アイカの妨害が激しかったからねぇ……」
マヤは遠い目をした。
相当なものだったのだろう。
「あ、マヤにあってきたの」
「出産祝いを貰ってきたぞ」
「もー言ってくれれば私もついていったのに」
「いや、ちょっと聞きたい事があってな」
「そうなん?」
「そうだ」
「なら、仕方ないか」
出産祝いでもらったお金をカナタは貯金箱に入れ、ふーっと息を吐く。
「カナタ、どうした?」
「そういや、妊娠中だったから、結婚式行ってなくて後でご祝儀もってっただけだったらから、マヤの旦那さん見たことなかったのよね」
「あ、そうなのか」
「だから、会いに行きたいなーって」
「次の休みにすればいい」
「ヒマリは僕が見てるから」
「そう? じゃあ、そうしよっか」
カナタは早速クリエイフォンのアプリでマヤに連絡を取り、次の休みに行くことに決めた。
次の休みになり、カナタはマヤの家を訪問した。
「いらっしゃい!」
「マヤ、久しぶり」
「本当久しぶりだよー!」
そう言ってカナタとマヤはハグしあった。
そこへ眼鏡をかけた男性がやってくる。
「えっと……」
「私の旦那のサトル」
「サトルです、カナタさんのことは妻からよく聞かされていました」
「はぁ……その、どうも」
「妻と仲良くしてくださり有り難うございます」
「こちらこそ、有り難うございます」
ジュラスと共に来ていたカナタは家に入り、食堂の椅子に座った。
「実は僕、カナタさんが覚醒者になる前から妻と付き合ってたんですよ」
「え⁈」
突然の事に、カナタは驚愕の声を上げた。
お茶の用意をしているマヤに視線を向けてから、サトルを見る。
「ですから、カナタさんが覚醒者になった時の事とか、アイカさんのやらかしの愚痴とかよく聞かされました」
「なんか申し訳ないです……」
「いいえ、アイカさんの事はともかく、カナタさん自身の事はマヤは前向きに捉えてました」
「前向き?」
「ええ『覚醒者になってもカナタはカナタだった』とね」
「はぁ……」
カナタはそこで普通の覚醒者と自分が違うところがあるんだろうなと思った。
「正直カナタさん、僕は貴方に嫉妬していた」
「え?」
「妻が其処まで思い入れが強かったのはカナタさん、貴方だけだった」
「……」
「カナタさん、妻はマヤさんは貴方が結婚したと聞いた時『漸く一人じゃなくなる』と安心していました」
「……」
「だからどうか、カナタさん、貴方は幸せでいてください。それが妻の願いです」
「はい、分かりました」
「母さん、ただいまー!」
「ただいまー!」
「おや、部活から子ども達が帰って来た」
「サトコ、マオ、お帰りなさい」
マヤが子ども達を出迎える。
「ただいま! あれ、お客様?」
「私の親友よ、カナタっていうの」
「あー! 覚醒者になったっていうあの!」
「アイカおばさんがトラブル起こす原因になったあの!」
「ちょっとマヤ?」
「嘘はついてないわよー?」
「嘘ついてなくてももっといいかたあるでしょう!」
マヤとカナタはわいわいと話合う。
「やっぱり、母さんが言ってたとおり、カナタさんは普通の覚醒者じゃないっぽいね」
「うん、怖くない」
「……」
ジュラスはやはり、普通の人と覚醒者には壁があるのだと実感した。
その壁を取っ払って行動できるカナタの貴重性も再確認した。
「じゃあ、また来てね」
「うん」
カナタとジュラスはマヤの家を後にした。
「ただいまー」
「ケーキ買ってきたよー」
帰りにケーキを買ってきたカナタ達の元にアサヒとレイジ以外の子ども達がわらわら集まる。
カナタはケーキを傾けたりしないようにして、食堂に向かい、テーブルにケーキを置いた。
「はい、好きなの選んでー」
「私これ!」
「私、これ!」
「僕これ!」
「これ!」
「れ!」
子ども達は次々とケーキを選んで、皿にのせられると、そのケーキを美味しそうに食べ始めた。
「アサヒとレイジはいいの?」
「うん、いいんだ」
「妹と弟達が食べてるのを見るだけでいいよ」
「我慢してない?」
「してないよ」
「してない」
カナタはアサヒとレイジが少しずつ実父であるディオンとアルビオンに色んな意味で似ているなぁと思いながら、複雑な心境でケーキを選び頬張った──
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚しましたが、愛されていません
うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。
彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。
為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました
新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる