覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

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貴方達と、共に

親友との語らい~子ども達の成長~

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「そういえば、アサヒ、レイジ」
「何。母さん?」
「どうしたの、母さん」
 とある休日、ヒマリの世話をしているカナタが息子二人に話しかけた。
「あんたらモテないの? お父さん達はモテてたって聞いたけど」
「モテるよ」
「うん、モテる」
「そう」
「でも断ってる」
「うん、断ってる」
「ああ、そうなの」
 何となくカナタは納得した。
 あの二人の子どもだ、早々簡単に恋人なんてできないだろう、と。
「ツムギとユイナはどうなの?」
「お兄ちゃん達に邪魔される」
「邪魔してくる」
「へ?」
「告白してきた男子に『妹と付き合いたくば俺達を超えてみろ』をやらかしてくれる」
「ちょっと、アサヒ、レイジ」
「そこで引き下がるならその程度の男だ」
「まぁ、私達もそう思ってるからいいよ、別に」
 妙に納得しているツムギとユイナ。

 カナタは我が子達の思考回路が分からなかった。

「ヒマリが0歳、カイトが2歳、レオが4歳、シロウが6歳、ユイナが10歳、ツムギが12歳、レイジが14歳、アサヒが16歳……か」
「見事2歳ずつ離れてるな」
「そういう計画でやったからね」
 ディオンの言葉にカナタは返す。
「それにしても、ツムギとユイナもモテるのね……私モテた記憶無いわー」
「……ディオンはそれに対して無反応だった」




「え、カナタがモテなかったのかって?」
 マヤを呼び出し、ディオン達は話を聞くことに。
「モテたわよーただ本人が気づいていないのと……」
「と?」
「アイカの妨害が激しかったからねぇ……」
 マヤは遠い目をした。
 相当なものだったのだろう。




「あ、マヤにあってきたの」
「出産祝いを貰ってきたぞ」
「もー言ってくれれば私もついていったのに」
「いや、ちょっと聞きたい事があってな」
「そうなん?」
「そうだ」
「なら、仕方ないか」
 出産祝いでもらったお金をカナタは貯金箱に入れ、ふーっと息を吐く。
「カナタ、どうした?」
「そういや、妊娠中だったから、結婚式行ってなくて後でご祝儀もってっただけだったらから、マヤの旦那さん見たことなかったのよね」
「あ、そうなのか」
「だから、会いに行きたいなーって」
「次の休みにすればいい」
「ヒマリは僕が見てるから」
「そう? じゃあ、そうしよっか」
 カナタは早速クリエイフォンのアプリでマヤに連絡を取り、次の休みに行くことに決めた。




 次の休みになり、カナタはマヤの家を訪問した。
「いらっしゃい!」
「マヤ、久しぶり」
「本当久しぶりだよー!」
 そう言ってカナタとマヤはハグしあった。
 そこへ眼鏡をかけた男性がやってくる。
「えっと……」
「私の旦那のサトル」
「サトルです、カナタさんのことは妻からよく聞かされていました」
「はぁ……その、どうも」
「妻と仲良くしてくださり有り難うございます」
「こちらこそ、有り難うございます」
 ジュラスと共に来ていたカナタは家に入り、食堂の椅子に座った。

「実は僕、カナタさんが覚醒者になる前から妻と付き合ってたんですよ」
「え⁈」

 突然の事に、カナタは驚愕の声を上げた。
 お茶の用意をしているマヤに視線を向けてから、サトルを見る。
「ですから、カナタさんが覚醒者になった時の事とか、アイカさんのやらかしの愚痴とかよく聞かされました」
「なんか申し訳ないです……」
「いいえ、アイカさんの事はともかく、カナタさん自身の事はマヤは前向きに捉えてました」
「前向き?」
「ええ『覚醒者になってもカナタはカナタだった』とね」
「はぁ……」
 カナタはそこで普通の覚醒者と自分が違うところがあるんだろうなと思った。

「正直カナタさん、僕は貴方に嫉妬していた」
「え?」
「妻が其処まで思い入れが強かったのはカナタさん、貴方だけだった」
「……」
「カナタさん、妻はマヤさんは貴方が結婚したと聞いた時『漸く一人じゃなくなる』と安心していました」
「……」
「だからどうか、カナタさん、貴方は幸せでいてください。それが妻の願いです」
「はい、分かりました」
「母さん、ただいまー!」
「ただいまー!」
「おや、部活から子ども達が帰って来た」
「サトコ、マオ、お帰りなさい」
 マヤが子ども達を出迎える。
「ただいま! あれ、お客様?」
「私の親友よ、カナタっていうの」
「あー! 覚醒者になったっていうあの!」
「アイカおばさんがトラブル起こす原因になったあの!」
「ちょっとマヤ?」
「嘘はついてないわよー?」
「嘘ついてなくてももっといいかたあるでしょう!」
 マヤとカナタはわいわいと話合う。
「やっぱり、母さんが言ってたとおり、カナタさんは普通の覚醒者じゃないっぽいね」
「うん、怖くない」
「……」
 ジュラスはやはり、普通の人と覚醒者には壁があるのだと実感した。

 その壁を取っ払って行動できるカナタの貴重性も再確認した。

「じゃあ、また来てね」
「うん」
 カナタとジュラスはマヤの家を後にした。




「ただいまー」
「ケーキ買ってきたよー」
 帰りにケーキを買ってきたカナタ達の元にアサヒとレイジ以外の子ども達がわらわら集まる。
 カナタはケーキを傾けたりしないようにして、食堂に向かい、テーブルにケーキを置いた。
「はい、好きなの選んでー」
「私これ!」
「私、これ!」
「僕これ!」
「これ!」
「れ!」

 子ども達は次々とケーキを選んで、皿にのせられると、そのケーキを美味しそうに食べ始めた。

「アサヒとレイジはいいの?」
「うん、いいんだ」
「妹と弟達が食べてるのを見るだけでいいよ」
「我慢してない?」
「してないよ」
「してない」

 カナタはアサヒとレイジが少しずつ実父であるディオンとアルビオンに色んな意味で似ているなぁと思いながら、複雑な心境でケーキを選び頬張った──





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