覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

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子だくさんな家族~ただし、旦那一人に子一人だけど~

カナタと友人~とある一日~

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「カナタかなりの大家族になりつつあるよね」
 公園で、アイカとマヤとあって我が子達を抱きつつ、アイカはカナタにそう言った。
「まぁね」
「……何人産む予定?」
「上手くいけば8人かなぁ」
「8⁈」
 カナタの言葉にアイカが驚愕する。
「体の負担にならないの⁈」
「覚醒者だからかそういうのあんまり無いんだよね、これが」
「くっこれが覚醒者と一般人の違い」
「まぁ、覚醒者の数はまだまだ少ないからなんとも言えないけどね」
「あーあ、私も覚醒者になれたらなぁ」
「覚醒者になったらなったで監視されるし、場合によっては家族みんな置いて独りぼっちで生きる羽目になるけど」
「それは嫌ー!」
 カナタの言葉に、アイカは絶叫する。
「まぁ、私はそれが嫌で結婚したようなもんだし」
「そうなの⁈」
「だろうね」
「そうだよ」
 驚くアイカに、動じてないマヤ。
 カナタはユイナに哺乳瓶でミルクをあげた。
「最初の二人と違って離乳食バクバク食べてくれるからすげぇ楽」
「そうなん?」
「私は離乳食食べてくれなくて泣きそうになった」
「そういうのも聞くよね、あるある」
 カナタはマヤの頭を撫でた。

「さて、そろそろ帰らないと」

 カナタはそう言って立ち上がった。
「え⁈ もう帰るの⁈」
 アイカが驚く。
「我が家過保護でね、ほらそこで、子ども達が公園からでないように見張ってるでしょう、うちの旦那の一人」
 カナタはレンを指さす。
「あー……」
「という訳で、アサヒ、レイジ、ツムギ、帰るよー」
「えー」
「ツムギかえろ?」
「うん」
「レイジも」
「うん」
 三人は仲良く手を繋いでやって来た。
 カナタはその手を取り、
「じゃあね、アイカ、マヤ。また話そう」
「うん!」
「愚痴ならいつでも聞くよー」
「有り難う」
 そう言ってカナタは微笑むと、レンの所に行き、レンが子ども達の手を取るとその場から姿を消した。

「……本当、私達とは別次元の存在になっちゃってる」
「高校時代からでしょう?」
「そうだけどさ……」
「それに、もう、カナタも私達も家庭を持ってる」
「……」
「歩む道はみんな違うんだよ。まぁ、学校内だと一人身の子も多いけど」
「あー政府が結婚率下がってるって言ってたよね。私はパートナーシップ制度で同棲婚みたいな扱いになってるけど」
「虐待されてる子どもの発見数は年々増加だって、覚醒者のおかげで」
「覚醒者の上層部が虐待と認定したら、子どもは施設、親は永久監獄で子どもを作る権利を奪われて暮らすことになる」
「私の審査も厳しかったわけだよ」
「同性愛者だと、子どもに悪影響、なんて言う人がいるからね、仕方ないよ」
「そうじゃないことを証明してみせる!」
「そう言えば、禁止になってる代理母についてなんだけど」
「ああ、それ、どうしたの?」
「外国で金持ちの同性愛のカップルがやったらしいけど母体に負担がかかるから辞めるのを向こうが拒否してきたが覚醒者にバレて監獄行き。母体の女性は施設に行くことになったって、お金ないからそうして稼ぐしかなかったんだってさ」
「なんか色々大変だね」
「だね」
 そんな話をして、二人は帰路についた。




「子どもの誘拐事件⁈」
「が、あった。人身売買だ」
「子どもをなんだと思ってやがる!」
 帰って来たカナタは子ども等を遊戯室で遊ばせて、赤ん坊のユイナは父親であるレオンに任せて、ディオン達から話を聞いて激怒していた。
「貧乏だと子どもを売るというのは今も少なくない」
「じゃあ子ども作るなよ!」
「昔からあるだろう、口減らしという奴だ」
「う゛ー!」
「貧乏子だくさんと言う言葉は昔からあるだろう」
「……確かに」
 アルビオンに言われて不服そうにカナタは納得した。
「売買した親達は施設行き、子ども達とは全員引き離される。親も男女で隔離される」
「そうなの?」
「人身売買を行った連中は永久監獄行きだ、家族が居る場合は家族は皆監視対象になり生涯監視される」
「そうなんだ……」
「死刑は無くなったが、永久監獄で自分で自分の飯は稼がなければならないからな」
「働く所あるの?」
「あるぞ、病人なら治療する場所もある」
「へぇ」
 カナタは少し考えて。
「レイドやクロさんは永久監獄行きにならなかったのは何故?」
「理由は簡単だ、永久監獄じゃ抑え付けられないからだ」
「なるほど……」
「最近、レイドとクロは大人しい、お前が子育て真っ最中だからかな?」
「だったら嬉しいけどね」
「終わった途端、今までのが爆発するかもしれん」
「ちょっとそれは辞めてよ」
「すまん」
 ディオンはカナタに謝罪し、カナタはため息をつく。
「8人産み終わるまで育休モドキは続くから迷惑かかってるかなぁ?」
「大丈夫だ、その分他の連中も私達も働いてる」
「あんまり無理しないでよ」
「分かってる」
 そう言ったディオンの頭をカナタは撫でた。




 そして珍しく、カナタ以外が出払っている時間帯があった。
「誰か来るかなー」
 子ども達の相手をしながら呟くと、黒き存在が姿を現した。
「あ、お久しぶりです」
 カナタは頭を下げた。
 すると、その存在はカナタの頭を撫でた。
「え、子育て頑張ってて偉い? いやいや、みんながいるからですよ。今出払ってるけど」
 カナタはそう言って否定した。
「ディオンとアルビオンは? ええ、二人ともいい父親をしてくれてますよ」
 そういう黒き存在は満足げに頷いた。
「え、困ったことはないかって? 強いて言うならアサヒとレイジが学校と保育園でモテるんですよやたら、男女問わず、それで喧嘩になるのが本人達は嫌みたいで一人で遊ぶようになってることですかね」
 黒き存在は肩をすくめた。
「え、すまないがどうしようもない? いえいえ、こればっかりは仕方ない。度の過ぎた美形を遺伝しちゃったあの二人の宿命というか」
 黒き存在は考え事をしているようだった。
「あ、子ども等に手出しは不要なんで、大丈夫です」
 黒き存在は、頷いた。
「え、帰るんですか、お土産はいらない? はぁ……では、また来て下さいね」
 黒き存在はあの二人に似た微笑みを浮かべて姿を消した。




「カナター! ガチャ引いてくれー!」
 黒き存在が居なくなって十分後、マリが慌てて帰って来た。
「新規のガチャきたの?」
「そうだよ! ところで誰か来たか」
「うん」
「大方レイドのおっさんとかそういうとんでもない連中だろ」
「まぁね」
「やっぱりな」
 そんな会話をしながら、マリからクリエイフォン受け取ると、カナタはガチャを10連をタップして渡した。
「虹演出キター! よっしゃ本命来た!」
「それなら良かった」
「我慢できなくて引きそうになったけど、我慢した甲斐があったぜ!」
「そういうもん?」
 カナタは苦笑してマリを見る。
「全く苦労させられるな」
「だねー」
 レンとサリが家に帰ってきた。
「夕食何にする」
「今日は鍋で良いだろう」
「分かった手伝うね」
「ありがたい、サリ、マリと一緒に子ども達を見ておけ」
「わかったよー」
「おう」

 そうして、カナタの一日は過ぎていく──





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