上 下
53 / 73
子だくさんな家族~ただし、旦那一人に子一人だけど~

職場見学~問題児二人は相変わらず~

しおりを挟む



「ふと思い立ったので職場に子ども達を連れて行こうと思う」
「おい、そのふと思い立ったの部分を説明しろよ」
 カナタの言葉にマリが突っ込む。
「この子達も覚醒者でしょう? となるとドミニオン所属は避けられない」
「まぁな」
「だから、小さい頃からちょくちょく職場見学させようかなって」
「なるほど、一人で行くのか」
「できれば彼奴ら・・・がいそうだから誰かついてきて欲しい……」
 彼奴らの言葉を聞いて、その場に居た男陣が反応する。
「よし、俺がいってやるよ」
「俺もー」
「俺も行こう」
 と、マリ、サリ、レン。
「私も行こう」
「僕も行く」
「僕も行くよー」
 と、ジュラス、レオン、キリヒト。
 ディオンとアルビオンは仕事で居なかったため反応が無かった。
「ディオンとアルビオンも居たら反応したかな?」
「絶対したと思うよ、僕は」
 キリヒトはニコニコと笑いながら述べた。
「そうか、まぁこれだけ居れば、多分大丈夫……と思いたい」
「そこは俺等を信用しろよ」
「いや、彼奴らのヤバさはちょっとね」
「何かあったら片方は減給処分にできるから安心してくれ」
「減給処分でどうにかなるかなぁ……?」
 カナタは少し不安げだった。




「カナタちゃんー! それとアサヒ君にレイジ君にツムギちゃんでちゅかー可愛いでちゅねー」
「ちっちゃいこあつかいしないでください」
「くだちゃい」
 アサヒとレイジがレインに言う。
「……本当ディオンとアルビオンそっくり」
「あの二人の幼少時期知ってるんですか」
「まぁ、色々あってね……」
 カナタが問いかけると、レインは遠い目をした。
 すると、どどどどど、と足音が聞こえてきた。
「あいつら耳は良いのよねぇ」
「「カナタちゅわあああああん‼」」
「げ!」
 カナタは行動に悩んだ。
 両足にはレイジとアサヒがしがみついている。
 両手ではツムギを抱っこしている。

──頭突きで撃退できるか?──

 飛びついてくる二人を見てそう判断した矢先──

 げし

 ケイにはマリとサリ、レンの足裏が顔面に直撃。
 ゴウにはジュラス、レオン、キリヒトの足裏が顔面に直撃していた。
 要するに、蹴りを喰らったのだ。
「大事な妻と子にさわんじゃねーよ」
「俺の奥さんと可愛い子どもに触んないでくれるー」
「俺の妻と子ども等に触れないで貰おうか」
「アサギリ、私の妻と子等に触るな」
「ゴウ、僕の大事な家族に触らないでくれる?」
「アサギリ君、僕の大事な奥さんと子ども等に触れるの止めてくれない、ばい菌がうつるから」

 ずるっと、今度は二人は床にキスするように倒れ込んだ。

「ひ、人妻になってより魅力的になったカナタちゃんに触るのも駄目なのか……‼」
「駄目に決まってんだろ」
「より魅力が増したカナタちゃんに触れないなんてあんまりだあああああ‼」
「自業自得だ」
 嘆く二人に、マリとジュラスがピリピリとしながら言う。
 そして──
「あ、あんたら子どもの教育に悪いから近寄らないで」
 カナタがとどめを刺すように言い放った。

「「ごふっ」」

 再び倒れた二人を見てカナタは息を吐き出すが、アサヒとレイジが二人をげしげしと蹴るのを見て慌てて止めるように男性陣に言う。

「アサヒーどうしたんだ? とっくにママがトドメ刺した相手だからアサヒが蹴る必要はないぞー」
「いや、マリ。そういう問題じゃない」
「ママをこまらせるやつきらい、だからちゃんととどめさすの」
「さすのー」
「その心がけはいい、だが今はやる必要は無い」
「ツムギがおっきくなったらツムギにもひがいがいくからここでとどめさす」
 アサヒがきっぱりと言うとマリが無言になる。
「アサヒ、そのときはそのときまたみんなで守ればいいだけの話よ」
 ツムギをレインに抱っこさせて両手の空いたカナタがアサヒを抱きしめる。
「ほんとうにとどめささなくていいの?」
「いいのよ、こいつらもいないと仕事回らないし」
 カナタは疲れたように言ってからアサヒに頬ずりする。
「でも、アサヒは思いやりがある子ねーすごいわー」
「まま、ぼくも」
 ズボンの裾を引っ張るレイジを見て、レンにアサヒを渡して、カナタはレイジを抱き寄せ頬ずりする。
「レイジも思いやりがある子ねー」
「きゃっきゃ!」
 レイジが満足すると、床に下ろし、レインからツムギを返してもらう。
「赤ちゃん抱くなんて久々だったわ」
「そうなんですか?」
 レインの言葉に、カナタは問いかける。
「まぁ、今の仕事に就いて以来外に出てどうこうすることないからね。赤ちゃん連れてきてくれるような人はあんまり居ないし」
「そうなんですか」
「ママ、おっきくなったらぼくらはここでおしごとするの?」
「そうよ、覚醒者はみんなここに所属してお仕事するの」
「ママも?」
「ママもここに在籍はしてるわ、育児休暇中だけど緊急時には出られるようにしてるからね」
「おっきくなったらママに楽させてあげるね」
「ありがとー! アサヒ」
「ぼくも!」
「レイジもありがとー!」
 カナタは二人に微笑みかけた、二人は満足げに胸を張る。
「と言うわけで簡単な職場見学お願いできます?」
「いいわよ、今暇だから私が案内するわ、できるところだけだけど」
「お願いします」
 レインに案内され、カナタ達はドミニオン本部を案内された。




「結構勉強になった、知らない所とかたくさんあったから」
 帰宅すると、カナタはそう呟いた。
「でも、教えてくれない場所とかあったわね、あれなんだったんだろう」
「カナタは知らなくていーんだよ」
「……分かった」
 マリの言葉に不満げに納得するカナタ。
「本部に行っていたのか」
「ディオン、アルビオン」
「子ども等に職場見学させたいってカナタがな」
「……あの二人はどうした」
 ディオンは眉をひそめて言う。
「あの二人なら全員で蹴って沈めたぜ」
「その後、カナタちゃんが言葉でとどめを刺して──」
「レイジとアサヒが動かなくなった二人を蹴りを行ったな」
「そうか、よくやった」
「よくやったな」
「えへへ♩」
「わーい♩」
 ディオンとアルビオンが我が子を撫でる。
「ちょっとあんまり褒めないで、危険な行動するようになったら困るわ」
「……それもそうだな」
「偉いが、誰彼構わずやるんじゃないぞ」
「はい!」
「うん!」
 そう言って、アサヒとレイジを二人は撫でた。




「仕事しに行ったわけじゃないけど、久々の職場は緊張したー」
 子ども等を寝かしつけてから、リビングでカナタは言う。
「まぁ、そんなもんだろ」
「そう?」
「そう言えばカナタちゃんは仕事ってどうやっていたの?」
「どうやってたって……レインさんから念話テレパシーが飛んできて、そこで仕事内容を言われてその場所に飛んでったけど、あと直接話してとか」
「ああ、そういう……なるほど」
「?」
「いや、気にするな」
「うん、分かった」
 カナタはレンに言われて気にしないことにした。
 そうした方が良いと思ったからだ。
「じゃあ、私そろそろ寝るね」
「お休みカナタ」
「お休みなさい、みんな」
 カナタはリビングから居なくなった。
「レインも大変だっただろう、拷問する場所もあれば、監獄から輸送されてきた奴から情報を吐き出させる場所もあるからな、あそこには」
 ディオンが言う。
「カナタは知らねぇほうがいいな、子どももカナタに性質がそっくりなら知らないほうがいい」
「だな」
 残された男達はそろって頷いた──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...