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子だくさんな家族~ただし、旦那一人に子一人だけど~
第三子~レイドの予言~
しおりを挟む「そろそろ子作りするか」
カナタが言うとぶーっと皆吹き出した。
「早すぎないか⁈」
「レイジとアサヒの半年が異常だったんだよ、だから今からじゃないと二年くらい間が空かないからさ」
「言われてみればそうだけどさ……」
レオンが納得したような顔をする。
「じゃあ、私寝室で待ってるから」
カナタはそう言って寝室へと足を向けた。
「俺とアルビオン以外だぞ、覚悟を決めろ」
「そうだ」
「軽くいってくれるねぇ」
キリヒトが肩をすくめて皮肉たっぷりに言う。
「よし、くじだくじ」
と残された六人はくじを引き始めた。
それから一ヶ月後──
「妊娠してるわ」
「よっしゃおめでとー!」
サリがどこか自棄になって叫ぶ。
「サリ、何自棄になってるよ」
「気にしないで!」
「そ、そう」
カナタはなんとも言えない表情をした。
「ママ、あかちゃんできたの?」
「あかちゃん?」
「そうだよー」
「わぁ、ぼくまたおっきいおにいちゃんになるんだ!」
「おにいちゃんになるの? ぼく?」
「そうよ」
「おにいちゃんになったらあまえられない?」
レイジが首をかしげて言う。
「そんなことないよー! 甘えて頂戴!」
「わー!」
「アサヒもよ」
「わー!」
二人は母親であるカナタに抱きついた。
「カナタ、まだ安定してるわけじゃないんだから無理するな」
「ディオン、有り難う」
ディオンはカナタからアサヒとレイジの二人を受け取り、抱っこすると、遊戯部屋に連れて行った。
しばらくして──
「うぼぇええ……気持ち悪い」
つわりが始まった。
「ごめんねー、アサヒ、レイジ、一緒に遊べなくて」
「ううん、お母さん、一生懸命頑張ってる、だからきにしなくていいよ」
「いいよー」
「うう、なんて親思い」
アサヒはぶわっと涙を流す。
「レイジ、一緒に遊ぼう。アサヒはこれから保育園に行こう」
「保育園?」
「流石に人慣れさせないのはいかんからな、レイン認可の保育園で社会性を少しは身につけて貰う」
「大丈夫?」
「駄目そうならすぐ連絡が来る」
「ママ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
アルビオンに抱っこされた二人を見送る。
「そっかーレイジは保育園か、もうそんな年か……」
と、カナタは感慨深そうに呟いた。
その後、顔色を悪くし、げーっと嘔吐した。
更に月日は流れて十月十日前後。
「……」
「カナタ?」
レンが声をかける。
「破水したかも……」
「病院だ!」
全員病院に直行して、話をしている。
交代でカナタの様子を見に行ったりしているが、レンが血相を変えてやってきた。
「陣痛と破水両方が始まった」
「「「「「「「!?!?」」」」」」」
「と、とりあえず、交代でカナタちゃんの側にいよう!」
「ネオンもそれで許可をくれた!」
「う゛ぇ~~い! しんどいけど頑張ってくるよ~~!!」
「そんな死にそうな顔で無理すんな!!」
分娩室へと連れて行かれる空元気なカナタをマリが叱る。
アルビオンがまず分娩室に入った。
その数分後──
「あの……生まれました」
ネオンが分娩室から出て報告した。
「「「「「「「早っ?!?!」」」」」」」
「いや、私も今回もびっくりする位、すぽーんとお生まれになって……」
ネオンも驚いたように言った。
「いやいやびっくりするわ!!」
「これびっくりしない方がおかしいよ」
「それはともかく、母子の様子は?」
「母子ともに健康です」
ネオンはそう言って分娩室から出てくるカナタを見る。
カナタは頭の産毛が黒いカナタにどこか似た赤ん坊を抱いていた。
ネオンがにこやかに告げる。
「お父様は、レンさんですよ」
「俺か」
「カナタ似とは、羨ましい」
「同意だ」
二人。
「あ、ああ」
布でくるまれている赤ん坊をレンはカナタから受け取った。
「小さいな……」
レンは大切そうに抱えながら言う。
すると赤ん坊はくぁと欠伸をした。
「レンお父さん、赤ちゃん見せてください」
「あかちゃんー」
「おお、そうだな」
レンは屈んでアサヒとレイジに赤ん坊を見せる。
「可愛い」
「きゃわいい」
と、アサヒとレイジは赤ん坊にメロメロなご様子。
「あのさぁ思ったんだけど」
「何だ?」
カナタが問いかけるとディオンが反応した。
「私似の子が生まれたら、子どもも総出で過保護になったりしないかなこれ?」
「……」
「おーい、無言はやめれー」
何も言わなくなったディオンにカナタは嫌そうな反応をした。
退院し、帰宅についたカナタは行った。
「そう言えば名前なんだけど」
「カナタ、君が決めてくれ」
レンがそう言った。
「え、うーん」
カナタは名前帳を取り出し、どれにするか決め始める。
皆が見守る。
「ツムギ」
「おお」
「いい、名前じゃねぇか」
「ならいいんだけど……ツムギ、これが貴方の名前よ」
赤ん坊──ツムギはカナタにそう言われて欠伸をした。
その後、カナタとレンは役所に届け出をし、ツムギとちゃんと名付けを行った。
「やっほー! 今回もおめー!」
レインが家にやって来てブドウジュースを持ってきていた。
「レインさん、お仕事は?」
「やってらんないから放り投げてきた!」
「ちょ、おおい‼」
カナタは赤ん坊を器用に抱えたままレインに突っ込んだ。
「それにしてもアサヒちゃん似の可愛い女の子でしゅねー。お兄ちゃん達が過保護なりまちゅよー」
「ちょっと予言めいた発言は止めてください」
「だってレイドに言われたし」
「は?」
レインの言葉に、カナタは寝耳に水と言わんばかりの顔をする。
「今後カナタちゃん似で生まれてくる子は夫衆と父親似の連中が過保護になるから気をつけろってさ」
「なんじゃそりゃー!」
カナタの叫び声を聞いても赤ん坊は泣き声を上げず、すやすやと眠っていた──
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