覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

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子だくさんな家族~ただし、旦那一人に子一人だけど~

レイドとの再会~そして案の定~

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「アサヒもレイジも元気だなー」
「そういうお前は元気がないのか?」
「へ?」
 久方聞いた声に、カナタは間の抜けた声を上げた。
「レイドさん⁈」
 妊娠前はラーメン屋でたまに見かけるレイドだった。

「出産おめでとう、少ないが祝い金だ」

 と分厚いご祝儀袋を貰った。
「いやいやいや、結構です! 多過ぎです!」
「二人も居るんだろう、金がかかるだろう」
「八人も夫がいるから大丈夫です!」
「最初は頭おかしくなったかと思ったが、やはり八人か……当たっていたな」
 レイドは最期にぼそりと呟いた。
「おかーさん、おともだち?」
「おろもだち?」
 遊んでいたアサヒとレイジがやって来て首をかしげて尋ねる。
「えっと……」
「友人だ、つまり君らの母さんの友達だ」
「じゃああそんであそんで」
「あしょんで!」
「遊んであげたいが、別件が入ってな、またな」
 そう言ってレイドは姿を消した。
「いっちゃった」
「いちゃった」
「ちょっと待て、あの人が別件ということは──」
 カナタは慌てて、レインに連絡を取る。
「あの、レイドさんが現れて別件があるって消えちゃったんですけど⁈」
『あー今さっき、畜産業界への抗議デモでレイドが現れて凍傷者多数でたってさ、死人も出かかってるって!』 
「うぼぁー!」
 カナタは頭を抱える。

 あの時レイドを止めていれば、と。

『カナタちゃん、そこで自分を責めないで、まぁカナタちゃんに会いに行ったから死人が出かかってるで済んだのよ』
「ほ、ほんとうですかぁ?」
『うん、だって普段の奴、止め入らないと全員凍死させるもん』
「うぼぁー‼」
 カナタは再度頭を抱えた。

 自分があのままついて行って止めておけば被害は出なかったのではないかとカナタは頭が痛くなった。

「カナタ」
「アルビオン……」

「奴がやったことは、いつも通りということだ」
「でも、被害者がでてるんだよ?」
「そこが君と私達の大きな違いだ、普段の奴の感情を知っているからこそ、畜産業をけなす輩を、奴は許せないんだ」
「……」
 カナタはなんとも言えない顔になった。
「そんな顔をするな、アサヒとレイジが困ってるぞ」
「おかーさんどうしたの?」
「おかーしゃん……」
「ううん、何でも無いの、そう、何でもないの」
「今日は帰ろう、帰ってアサヒ達の面倒は他の連中に任せよう」
「うん……あ」
 アサヒは手に持っていたご祝儀袋を見せる。
「こんなにもらって……どうしよう」
「子どもに還元すればよかろう」
「……うん」
 カナタは小さく頷いた。
「アサヒ、レイジ、帰ろう」
「うん!」
「うん!」
 ご祝儀袋をアルビオンに渡すと、アサヒとレイジの手を取った。
 アルビオンがレイジの手を握る。
「じゃあ、帰ろう」

 そう言って一歩踏み出し、その場から全員姿を消した。




「へー、そんなことがあったんだ」
 サリがカナタから話を聞く。
「私、どうしたら良かったんだろう?」
「いや、カナタちゃんとあったおかげで被害は通常時より減ったんだから喜ぶべきだよ」
「それでも死にかけの人が出たんだよ?」
「それはそいつらの責任さ」
 マリがクリエイフォンを弄りながら言う。
「マリちゃん……カナタちゃんはそう思えないからこうなってるんだよ?」
「連中も、学校で氷河の能力者について勉強はしてるだろう、それなのに、知っててやったんだ、自己責任って奴さ」
「自己責任、なのかなぁ……」
「自己責任自己責任! それに連中は今頃監獄行きさ、一人も漏れず。例外なく」
「子どもも?」
「子どもは──親とかと引き離されて政府の機関で再教育だろうな」
「可哀想……」
「そう言う風にさせた連中に文句を言うのが一番だぜ、未だ反覚醒者主義者な連中とかよ」
「そういう、ものなのかぁ……」
 カナタは不服そうだが納得しようとしていた。
「ん? となると、隠れて反覚醒者主義の授業やってたあの先生どうなったんだ? 私が覚醒者になったとたんこなくなったけど」
「ああ、それか」
 ディオンが部屋にやって来た。
「ディオン、アサヒとレイジは?」
「アルビオンが寝かしつけてくれてる」
「そう良かった、ところで、『ああ、それか』って何か知ってるの」
「君の記憶からそういう授業をこっそりしているのがバレて確保されてな、監獄行きになった」
「マジかー」
「妻はその事実を知らなかったそうだが、子ども達がその思想に染まりかけていてな、急遽妻子は別場所に移送され、子ども等は再教育を受けることになったらしい」
「……なんだかなぁ」
「反覚醒者主義は禁止されているからな、何処の国でも」
「そうなんだ……」
「そうそう、あの『御方』が宣言したそうだからな」
「『あの御方』って、もしかして『あの御方』?」
 マリがいい、カナタが確認するように言うと、ディオンはどこか渋い表情を見せた。
「世界を作ったと言われている『あの御方』?」
「そうだぜ! という訳でガチャ回してくれ! 新規が来たんだ! 期間限定のがみっつんあるんだ‼」
 マリがそう言うとカナタはぽかーんとする。
 ディオンは先ほどの真剣な話を返せと言いたげにマリの頭を叩く。
「いでぇ!」
「先ほどの真剣な空気を返せ」
「いつまでもしけた空気してるより、明るい方がいいだろうよ! 辛気くさい家庭より明るい家庭がいいだろう⁈」
 マリの言い分に、カナタは吹き出した。
「ちょっと強引すぎない、いや引くけど来なくても怒らないでよね」
「ないない! お前が引いたら必ず来る!」
「もう……分かった」
 カナタはマリからクリエイフォンを受け取り、ガチャを引く。
「おお、虹演出来た来たー! FOOOOOO‼」
 演出は止まらない。




「ふー! カナタのおかげで全部予算内でゲットできたぜ」
「そう? ならいいんだけど……」
「マリちゃん、またガチャしてたの?」
 サリがカナタを見て確認するように言う。
「予算全くオーバーすることなく来たぜ……」
 ガッツポーズを取るマリを見てサリはため息。
「ごめんね、カナタちゃん、マリが迷惑かけて」
「ううん、おかげで辛気くさい空気が無くなったから気にしないよ」
「そう? ならいいけど……」
「カナタ、あまりマリを甘やかすなよ」
「甘やかしてないってば!」
 カナタはふぅと息を吐く。
「私もそろそろ寝ようかな」
「分かった、子ども達は先も言っている通り寝てるぞ」
「うん、起こさないようにする」
 カナタは子ども部屋に併設してあるベッドの一つに潜り静かに眠りに落ちた。

 眠る前に、子ども等の寝顔を一つ一つ眺めながら。




「──なるほど、そういう話してたの」
「ああ」
「辛気くさいったらありゃしねぇだろう?」
 カナタが眠った後、ディオン達は話合いをしていた。
「まぁ、あまり聞きたくない話だろうよ」
「ディストピアちっくだからねぇ」
「でも俺等覚醒者の天国って訳でも無いんだけどなぁ」
「そうそう」
 マリとサリは話ながら頷く。
「だが、彼女にはよいと思って貰いたい物だ、それが幸せの道の一つだ」
「確かにな」
「そうだな」
「じゃあ、俺等は少し酒でも飲もうか?」
「良いのか?」
「少しだけだからよ」
 マリが細い瓶の酒を取りだし、皆がため息をついて、飲み始めた。




 翌朝──
「……お酒の匂い?」
 酒の匂いに首をかしげるカナタが居た──






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