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子だくさんな家族~ただし、旦那一人に子一人だけど~
妊娠、そして出産
しおりを挟む「う゛ぼぇぎぼぢわるい」
連日のように、カナタはつわりに苦しんでいた。
必ず誰かが寄り添い、カナタの世話をして過ごしている。
また、クリエイフォンのゲーム等はマリが全て行うようになった。
横になり、時折水を飲んでは、ぐったりとするカナタを皆が労る。
「カナタ」
「なぁに?」
「妊娠しなければ良かったとは思わないか?」
「おぼわない……うぼぇ」
「すまん、余計なことを聞いたな」
ディオンはカナタの背中をさすりながら言う。
カナタの腹は妊婦だと分かる程度にもう膨らんでいた。
「あー、男の子ですね」
定期検診で、ついにカナタの子どもの性別が発覚した。
「男の子かー。元気に育ってねー……うぼぇ」
「ああ、カナタさん、無理はしないで」
ネオンもカナタを労る。
「男だってよ」
「性別はこの際いい、カナタと子どもが無事ならな」
「同感だ」
男達はアルビオンとディオンの言葉に無言で頷いた。
「う゛ぞだああああああ!! カナタちゃんが妊娠した?! そんな馬鹿なああああ!!」
「うそだと言ってくれ、レイン!! 彼女が妊娠しただなんて!!」
「妊娠したから絶賛休暇中ですー! 後、お前等は彼女に近寄るなよ? 近寄ったら……切り落とすからな」
「「ひぃいいい!!」」
レインはゴウとケイに対してそう言って、股間の部分を指さしてハサミでちょきんと切る仕草をした二人を脅した。
脅しはきいているようだった。
「胸がちくちくする、張ってる感じがする」
「赤ん坊への母乳を与える為に胸が大きくなってるんだろう」
「へー」
「ネオンさんから、流産の危険性が下がったってさ」
「それでも動くのは禁止だ」
「ちぇー」
「うーつかれるーしんどいー」
「無理はするな休め、ベッドに連れて行こう」
「ありがとー……」
「赤ちゃんがお腹蹴った!」
「何?!」
「お腹触っていい?」
「触っていいか?」
「いいよー!」
「ぽこんって蹴られた!」
「すごいよねー赤ちゃんも」
「……俺が触ったら蹴りもしないんだが」
「そういうこともあるある」
「寝るのがつらいー」
「そのお腹だと辛そうだな……」
「でも頑張るー……」
「無理はするな」
「何か早産の危険性あるから病院に入院だって」
「荷物の準備は他に任せたから、今すぐ行くぞ」
「うん」
「──で、現在半年を目前に控えて、お医者さんからはいつ生まれてもおかしくないと」
全員病院に待機して、話をしている。
交代でカナタの様子を見に行ったりしているが、ディオンが血相を変えてやってきた。
「どうした?」
「……陣痛と破水、両方始まったそうだ。生まれるかもしれん」
「「「「「「「!?!?」」」」」」」
「と、とりあえず、交代でカナタちゃんの側にいよう!」
「ネオンもそれで許可をくれた!」
「う゛ぇ~~い! しんどいけど頑張ってくるよ~~!!」
「そんな死にそうな顔で無理しないで!!」
分娩室へと連れて行かれる空元気なカナタをサリが叱る。
ディオンがまず分娩室に入った。
その数分後──
「あの……生まれました」
ネオンが分娩室から出て報告した。
「「「「「「「早っ?!?!」」」」」」」
「いや、私もびっくりする位、すぽーんとお生まれになって……」
ネオンも驚いたように言った。
「いやいやびっくりするわ!!」
「これびっくりしない方がおかしいよ」
「それはともかく、母子の様子は?」
「母子ともに健康です」
ネオンはそう言って分娩室から出てくるカナタを見る。
カナタは黒髪のとても美しい赤ん坊を抱いていた。
ディオンは顔を覆っている。
「ディオン、どうした?」
「……俺似だ」
「はー!?!? お前赤ん坊の頃からこんな綺麗だったの?!」
マリが呆れと驚きの声で言う。
「ディオン、何感極まってるのか、それとも何か不満があるのかわからないけど、いいから抱っこしてあげて。ネオンさんからも、お父さんはディオンだって言われたんだから」
「あ、ああ」
布でくるまれている赤ん坊をディオンはカナタから受け取った。
「……」
「俺のようにはなるなよ」
アルビオンにしか聞こえないほどの声で、ディオンは呟いた。
「カナタ! おめでとう!! 初孫ね!!」
「そうだね、お母さんの孫だよー」
アルビオンがカナタの母親を連れてきて、カナタと赤ん坊を見る。
「……綺麗な赤ちゃんだねぇ」
「だよね」
母親の言葉にカナタは納得したように言う。
「すみません、出産に間に合わず……」
アルビオンが謝罪しようとすると、カナタの母親は首を振った。
「いいえ、まさか数分で出産終えるなんて誰が思いますか」
「私も激しく同感」
「とにかく、カナタ。出産が終わったなら腹筋を鍛えなさい! じゃないとお腹の皮が伸びっぱなしだからね!」
「えー」
「あ、それは覚醒者だとないので大丈夫です」
ネオンが口を挟んだ。
「あら、そういう所は羨ましいわ」
「でも、運動するよー」
「カナタ」
ディオンが重い声で名前を呼ぶ。
「おそらく、運動は当分できないと思う」
「へ、どうして?」
「……すまん、その時になったら言う」
「んー分かった」
ディオンの言葉に、カナタは軽く返した。
そして出産後、妊娠中とは別の意味で大変な目に遭うとはカナタは予想をしていなかった──
そう、普通の子どもと、違うのを理解していないから──
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