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一人に八人
知らないことだらけ~いつか教えて~
しおりを挟む「隕石を木っ端みじんにしてこい?!」
「いや、カナタちゃんじゃなくてそれはレンにお願いしたいの。カナタちゃんはレンのその足場になってほしいなぁと」
「すまんな、足場がないと不安定なんだ」
「無重力なのに?」
カナタは普通の質問をぶつけると、レインは困ったように笑いながら続けた。
「カナタちゃん、鎧纏っている時あるわよね? あの時は周囲空間が安定するから無重力状態じゃなくなるのよ」
「いや、できるようにはしてますけれども……その……なんと言いますか私がしくったら終わりな感じがして」
「大丈夫、しくってもレンがなんとかするから」
「そう言う訳だよろしく頼む」
「はぁ……」
特殊なスーツに身を包んだレンを抱きかかえてカナタは上昇する。
本来なら寒さや暑さ、重力などを感じるはずだが、赤い鎧を纏ったカナタはそれを感じない。
「ここでいい」
「うわー……くらーいいっぱいなんかあるー」
「宇宙ゴミだな。衛星などの破片だ」
「ほへぇ……」
「お、来たぞ」
「き……ぎゃああああああああ!!」
カナタは悲鳴を上げた。
隕石と聞いていた、レンが破壊できる大きさと聞いていたからてっきり小さい物を予想していたのだ。
それがまさか巨大な隕石だとは思わなかったのだ。
大きさとしては月と同等の大きさの隕石だった。
「カナタ落ち着いていろ、なんとかする」
「なんとかってぇ?!」
スーツの上から分かるほど、筋肉質になったレンをなんとか抱きかかえながらカナタはあわあわと慌てふためく。
レンは巨大な石の塊を見据える。
普通に粉々に砕いたら修復してしまうのは見えている。
だから修復するという現象毎破壊すると。
「完全消滅」
レンが石の塊を殴ると、ヒビが無数に入り、そして全て砂になるように溶け消滅した。
「……うそぉ、消えたぁ」
信じられない物をような声でカナタが言うのでレンはばつ悪そうに口にした。
「ここだけの話にしてくれないか?」
「な、何?」
「レイヴン事件で世界規模の地震があっただろう?」
「あーうん」
「あれ、レイヴンの仕業だとされているが、犯人は俺だ」
「へ?!」
「力の使い方をうっかり誤ってな、この星にヒビを入れてしまったんだ。即座にレイン達が修復したから良かったものの……」
「なにしてくれとんの?」
「いや、すまん」
「下手すりゃこの星、いまの隕石みたく消滅してたじゃ無いですかー! やだー!」
「それはない、できない」
「へ?」
「……そうさせない存在がいる、とだけ言っておこう」
「はぁ……」
『カナタちゃん、レン!? 悪いところなんだけど隕石が多数振ってきたから全部粉々にしてー!! 今アルビオンとディオンが犯人捜し中だからー!!』
「え、ええ?! りょ、了解!!」
「いやはや、やっかいな輩だ」
カナタは頭の中の地図に目的地点を全て書かれた状態にされ、レンを抱えたまま急いで隕石の破壊に向かった。
「えー今回の隕石事件はレイヴンの残党でした、お疲れ様でした!!」
「マジですか、疲れました、ご褒美ください」
「ご褒美何が欲しい?」
「休みをください」
げっそりしているカナタはレインにそう求めた。
レインは苦笑し、頷いた。
「いいよ、多分カナタちゃんは休んでた方が良さそうだし」
「よし、何処で休もう……実家……いや、家にするか」
「家か、では行こうか」
ディオンがやってきてカナタに手を差し出した。
「うん!」
カナタは手を取った。
家のカナタの部屋に着くとカナタはばたりとベッドに倒れ込んだ。
「つかれた~~、いろんな意味で」
「ああ、お疲れ様」
「ありがとう、ディオン」
「お詫びの茶とケーキを用意した、ここに置いてあるから食べてくれ」
「うん」
二人が出て行くと、カナタは服を脱ぎ捨てパジャマに着替えて、甘いお茶を飲み、ちょうどいい堅さのチョコレートケーキを口にした。
「ん~~! 美味しい……ん?」
誰かの気配を感じ、扉を見れば黒い影がそこにあった。
否、黒衣を身に纏った巨躯の存在がそこに居た。
カナタは敵意を感じなかった、それどころか、どこかで感じた存在だった。
「もしかして、私が覚醒者になって精神不安定な時に何かしてくれた方?」
『ほぉ、覚えているのか』
静かで低く錆を含んだ男の声だった。
「ということは、貴方がそうしてくれたんだ、ありがとう。でも不法侵入はやめてね」
『お前の家の件は謝罪しよう、だがここは私の昔の家だ、許して貰いたい』
「え?」
カナタは驚いた。
ディオンと、アルビオンの家だと聞いていたからだ。
となると、この存在は──
「ディオンと、アルビオンの、お父さん?」
『私は二人からは父とは呼ばれんよ、呼ばれてはならない』
その言葉に複雑な意味が込められているのをカナタは理解した。
「どうして私の前に現れたんですか?」
『お前は、希望だ』
「希望?」
『あの二人の希望であり、覚醒者の希望になりうる存在だ』
「希望……」
カナタは渋い顔をする。
「二人の希望までならいいんですが、覚醒者全員の希望はちょっと」
『だからこその希望だ』
「はぁ……」
カナタはなんとも言えない表情を浮かべる。
『ディオンとアルビオンはまだ青い。どうか導いてやってくれ』
「いや、導かれてんの私なんですが?」
『そう思っているだけだ』
黒衣の存在は笑っているようだった。
『お前はお前のままでよい、善性と悪性、両方持つ人らしさを保ち続けてくれ』
黒衣の存在はそう言って姿を消した。
「……なんなんだ?」
カナタがあっけにとられていると急に扉が勢いよく開いた。
「カナタ無事か!?」
「奴に何かされなかったか?!」
血相を変えたディオンとアルビオンが入ってきた。
「んー、なんにも」
「そうか、それなら良かった……」
「ねぇ、ディオン、アルビオン」
「どうした?」
「何だ?」
カナタは二人に抱きついて耳元で言葉を口にした。
「私、貴方達の事何にも知らないの、だからね、時間がきたらでいいから貴方達のことも、教えてね」
「……すまない」
「わかった……」
「本当、すぐじゃなくていいよ、いくらでも時間をかけてね」
カナタはにこりと笑った。
カナタが二人の事を知るのは、彼女が思っている程時間がかからない事を彼女も、アルビオンもディオンも知らない──
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