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一人に八人
玉砕と本心~結婚生活の始まり~
しおりを挟む翌日の学校で、授業が終わり友人達とカナタは話していた。
「あ、そういえば言うことあった」
「どうしたのカナタ?」
マヤが尋ねるとカナタは何でも無いように言った。
「私結婚したから、職場仲間の八人と」
「「「「八人?!」」」」
後輩達が声を上げる。
「む、無理矢理とかじゃねぇっすよね?!」
「ヒカリ安心して、無理矢理ではない。ちゃんと話して決めたこと」
「そ、それならいいですけど……どんな人達ですか?」
「んー私にトラブル持ち込まない人」
「「「「あー……」」」」
バンと机を叩く音が聞こえた。
アイカが震えている。
「アイカ?」
「は、八人も結婚してるなら、わ、私とも結婚して!!」
「いや」
カナタは即答した。
「どうじで!!」
「まず第一に、八人は私に迷惑をかけるような行動を好んでしない」
「!!」
「何より問題を持ち込んで私を困らせるような行動は絶対しない」
「!!」
アイカの目元に涙がにじむが、カナタはアイカを見据えてはっきりと言う。
「私は、愛とか恋とかよくわからん!! だが、一緒に居て安心できない奴とは一緒に暮らしたいとは思わない!!」
「う」
「う゛わあああああああああああああん!!」
アイカがその場から逃げ出すのをカナタは追いかけようとするが、マヤが制止した。
「マヤ?」
「私が行ってくるから、ね」
「……うん、お願い」
カナタはマヤに任せることにした。
「ぐずっ……」
公園で一人、アイカはベンチに座って泣いていた。
「だから言ったでしょう、無理だって」
マヤが現れ、アイカの隣に座る。
「だって、好きなんだもん」
「そうね、分かるわ。でも、だから駄目なの。カナタは強くない」
「そんなことない!! だって──」
「カナタのお母さんは八人の結婚相手がそれを分かってたから許可したのよ。だからマヤは駄目」
「カナタ強いよ!? なんで?!」
「それが分からないなら駄目ね、カナタは責任感は強し優しいけど、面倒くさがりなのは知ってるでしょう」
「う、うん……」
「そこからどうしてそうなのかちゃんと考えないと駄目よ」
「そ、そんなぁ……」
しょげた顔をしてから、アイカはきっと顔つきを変えてマヤに言い返す。
「ま、マヤだって、カナタの事すきなんでしょ!? なのにどうして──」
「好きよ、だから幸せになって欲しい。それで十分なの」
「わけ、わかんないよぉ……」
「まぁ、アイカはもう少し大人になりな?」
ぐずぐずと泣き出すアイカの頭を、マヤは優しく撫でた。
「マヤ、お帰りー……アイカは?」
帰ってきたマヤに、カナタは問いかける。
「先に施設に帰したよ」
「そっか」
「ヒカリ君達は?」
「ん? ああ、デートだってダブルデート」
「若いねぇ」
「マヤも若いじゃん」
くすくすと笑い合う。
「ねぇ、カナタ」
「ん?」
「今、幸せ?」
「まだ、わかんないかな?」
「そっか、でも幸せじゃなくなったらいつでも言ってね」
「勿論!」
にっこりと笑うカナタを見て、マヤは優しく微笑んだ。
「えっと、とりあえず、今の学校にいる間は実家で過ごしていいんだよね」
「ああ、と言うか実家に戻りたくなったらすぐ言ってくれ」
「そ、そんなに、大変な場所なの?」
ディオンの言葉に、カナタが不安そうな顔をすると、レインが首を振る。
「ああ、空間転移しないといけない場所だからね、ずれた場所にある家なのよ二人の家。それを上手くこちらとつなげて、ゲームとかできるようにしてたのよこの一年」
「す、すごい」
「まあ、見てみないと分からないだろうから、つれてってあげたら?」
「ああ」
ディオンはカナタに手を差し出した。
カナタはディオンの手を掴む。
すると、光景が変わり、木々に囲まれた屋敷の前に立っていた。
「お、大きい……」
「今後暮らしていくように建て直しをしてあるから、大丈夫だ。入ってくれ」
ディオンの言葉に頷いて、カナタは屋敷の中に入っていく。
外側に反して中身は現代的で、綺麗な作りになっていた。
ディオンに案内されるまま行くと、リビングで他の七人が集まっていた。
「カナタちゃん、待ってたよー!!」
サリが近づいてきてカナタと握手する。
「他の皆はここでもう暮らしてるの?」
「うん、皆で暮らしてるよ。誰に何を任せるかとか色々話してて……」
「じゃ、じゃあ私も──」
「まった、カナタちゃんはまだ駄目」
「え」
駄目と言われてカナタは困惑するが、レンが近寄ってきて補足するように言った。
「カナタ、君はまだ学生だし、それに大学にも行くんだろう? ならば、学業と仕事で手一杯のはずだ。そこは俺達に任せておいて欲しい」
「で、でも会社で働いている──」
「そこも織り込み済みで色々やっているんだ」
「……」
カナタはどうしてそこまでしてくれるのか、分からなかった。
「とりあえず、カナタちゃんは学業とドミニオンの仕事を頑張って、手伝って欲しいときは言うから」
「それなら……」
漸くカナタは安心できた。
「ここへの空間転移は当分は俺かアルビオンに言ってくれ、他の六人は自分ので手一杯だからな」
「は、はい!」
ディオンに言われてカナタは元気よく返事をしてしまう。
それを見たディオンは優しく微笑み、カナタの手を握った。
「これからよろしく、カナタ」
「は、はい!」
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