覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

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一人に八人

18歳になりまして~結婚の申し込み~

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「18歳おめでとう!」
「あ、ありがとうございますレインさん」
 カナタは18歳になり、誕生日を家で過ごした翌日レインに呼び出され、誕生日祝いと称して現金を支給された。
 カナタはそれを仕舞うと、突如所長室にディオン達八人が入ってきた。
「ど、どうしたの?」
 急に八人が真面目な顔をして所長室に入ってきて、扉に鍵をかけて、カナタに近寄ってきたのだ。
 違和感しか無かった。

「「「「「「「「カナタ、俺【僕/私】達と結婚してくれ」」」」」」」」
「……はぁ?!」

 カナタは目を丸くし、耳を疑った。
「ちょ、ちょっと待って、結婚っていきなり言われても……その、付き合うとか」
「いや、君は付き合うと確実に『他にいい人いるから』と逃げるだろう」
「う」
 ディオンに行動を読まれてカナタは表情をこわばらせる。
「カナタちゃん、こいつら一年以上前からカナタちゃんに結婚申し込むの我慢してたのよ」
「レインさん?!」
「そんな奴らが無下にされたらどーなるかなー、ねー?」
「ぎゃー!!」
 カナタはレインの言葉に頭を抱える。
「大丈夫だ、もし拒否したい相手がいるなら言ってくれ、そのときは受け止める」
「ちょ、ちょっと考えさせて……」
 カナタは頭をフル回転させて、どうするべきか考えた。




 ま、まずディオンさんとアルビオンさんね。
 うーん、二人には何かと世話になってるし最初の頃から……。
 怪我した時はいつも治療してくれるし、ご飯とかは食べないけど贈り物とかは大事にしてくれるし……。
 そう、そうだね。
 ここで二人を拒否して任務に支障が出る事態は避けたいし、拒否する理由もない。

 えっと次はリヴン組……ジュラス、レオン、キリヒトね。
 最初の印象はアサギリの所為で最悪だったけど、あとでいい人だって分かったし……。
 まぁ、キリヒトは相当レイヴンに恨み深いのは驚いたけどね……。
 それを除けば全員普通にいい人だし、ご飯だって一緒に食べに行ってくれるし、ディオンさんとアルビオンさん同様ゲームとかもしてくれるし……
 まぁ、拒否する理由もないよね。

 じゃあ、マリに、サリに、レンさんは?
 普段から、お世話なってるよね。
 マリはガチャ爆死を除けばいい人だし、ちょっと俺様気質だけど優しいし。
 サリはきゃぴっとしてるけど、戦闘マジ強いし、マリの世話もうまくできるしすごいよね……
 レンさんは……この二人をまとめてるし、落ち着いてるし、それでいて家庭的だし……




「こ、断る、理由はないけど。本当に? 私一人に、八人というか皆、いいの?」
「いいからこうして提案しているわけだ」
「全員の意見会わせた結果、君との結婚を八人で申し込む事にしたんだ」
「じゃ、じゃあ……とりあえず、お母さんに言ってからでいい?」
「勿論だ」
 アルビオンは静かに肯定した。
 そこに、ドアをぶち破ってゴウと、ケイが入ってきた。

「「ちょっと待ったー!!」」

 その二人の登場に、八人とレインが舌打ちした。
「なら俺とも結婚してくれるよね?!」
「俺ともだってそうだろう」
「え、アンタらは嫌」
 二人の言葉にカナタは即答した。
「「何故?!?!」」
「セクハラ、女性関係トラブル……私が嫌いなものだから。一緒にいて安心できない輩とは居たくない」
 カナタのその言葉に二人は真っ白な灰にでもなったようにその場に崩れ落ちた。
「さすがに即答はできるのね」
「ええ、まぁ、はい」
 カナタはそう苦笑いして、急いで家へと戻った。


「お母さん聞いて! 私結婚申し込まれた!」
「まぁ、どな……」
「職場の仲間の八人から!! 八人全員と結婚してくれって!!」
「……」
 笑みを浮かべていたカナタの母親は顔をこわばらせてからしばらく考え込んだ。
「……その方々とお話をさせて欲しいの、いいかしら?」
「う、うん」
 カナタは母親に言われるままに、もう一度ドミニオン本部に戻り、ディオン達に事情を話して家へと案内した。

 家に戻ると、少しだけ小綺麗な格好をした母が皆を出迎えた。
「貴方方がカナタに結婚を申し込んだ方々ですか?」
「その通りです」
 ジュラスがはっきりと言った。
「カナタ呼ぶまでちょっと自室で待ってくれる」
「う、うん」
 カナタは疑問に思いながらも自室にいることにした。




 カナタの母親は客間に八人を案内すると、まずは頭を下げた。
「初めまして、私はミソノ・アオイ。カナタの母親です」
「初めまして、俺はディオン」
「初めまして、私はアルビオン」
「初めまして、私はジュラス・ロランと言います」
「初めまして、僕はレオン・グローブと言います」
「初めまして、カナタちゃんのお母様。僕はキリヒト・スオウ」
「初めまして、俺はマリ・ロードだ」
「初めまして、カナタちゃんのお母さん。俺はサリ・エリでっす」
「初めまして、俺はレン・シュート」
「……皆様、カナタと同じドミニオンの所属、で間違いないですか」
「その通りです」
 ジュラスが言う。
「……皆様はカナタをどう、思っていますか?」
 カナタの母親──ミソノの言葉に、全員は顔を見合わせて、そして頷き、口を開いた。
「変に真面目で、責任感がある」
「けれどもその反面怠け者で面倒くさがり」
「いつも前をみて強いように見える」
「けれども、実際はとても弱気で、苦しいのを我慢してる」
「我慢強いから、友人を見捨てられない」
「見捨てたら傷つく人が増えるからと」
「何より、一人になるのを怯えている」
「いつか家族や友達が居なくなって一人になる──」
「そんな未来に怯える、女性だと、俺達は思っている」
 最後にレンがしめるように言う。
 ミソノはしばらく無言だったが、笑みを浮かべた。
「それなら、貴方方にカナタを任せられます。どうか、カナタの側にいてください」
 ミソノの言葉に全員が頷いた。




「一体話何してるんだろうなぁ」
「カナターちょっと来なさい」
「あ」
 母親に呼び出されて、カナタは下の階へと降りていく。

「お母さんどう……」
「カナタ、皆さんと仲良くするのよ?」
「え、マジで、いいの?」
「ええ」
 母親の反応に驚きつつ、カナタはディオン達を見る。
「えっとその……よろしくお願いします」
 カナタがそう言うと、ディオンが前に出て手を握った。
「いいや、俺達の我が儘を聞いてくれてありがとう。こちらこそ、よろしく頼む」
 カナタはこくこくと頷いた。







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