覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

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え、覚醒者になったら人権ある意味無し⁈ ふざけんなー‼

本当に見舞い?

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「缶詰の果物は食べないのか?」
「いや、その……一人で食べるのは罪悪感があるから後でお母さん達が帰ってきたら食べますから……」
「そうか」
 カナタの言葉に二人は納得したようだった。

 チャイムがまた鳴る。

「もう、誰だろう」
「俺が出よう」
「いや、いいよ私が出るから」
 カナタはパタパタと走って玄関へと移動した。

「はーい、どちら……あれ、アンタ達怪我はもういいの?」
 ドアを開けると、リヴン出身の三名──ジュラス、レオン、キリヒトだった。
「あ、ああ怪我大丈夫だ」
「君より軽く済んだからね」
「カナタ……の方は怪我の具合は?」
「私は大丈夫よ。ただ能力過剰解放で暴走しやすくなってるから少しだけ休んでてって言われてるの」
「調べたいなぁ」
「キリヒト!」
「冗談だよ」
「で、何のようなの?」
 ジュラスは箱をカナタに渡した。
「見舞いだ。私御用達のパティシエが作っている焼き菓子類が入っている、遠慮無く食べてくれ」
「ま、またとんでもないものを……」
「また?」

「……」

 ぬっと姿を現したディオンにジュラス達は驚愕する。
「カナタは今休息が必要だ、分かったら帰れ」
「何でお前に言われなくてはならない!」




 視線がバチバチとなるように向けられ合う二人に、カナタだけが気づいていなかった。




「あーもう、いいから家に上がって。これは遺影壇に上げさせて貰うから」
「遺影壇?」
「お墓の家のある版。まぁあるのは遺影だけなんだけどね、昔は名前壇って言って亡くなった人の名前を書いた板を置いてた──はず」
「と言う事は誰か亡くなったの?」
「ん、お祖父ちゃんと、お父さん。両方とも病気で亡くなった」
「……」
「なんか聞いてごめん」
「いいや、別にいいよ」
 レオンの言葉に何でも無いようにカナタは返すと、カナタは遺影壇に箱を置いてから、手を合わせた。

「……さて、見舞いとは言え客人だからお茶くらいは出すよ」

「え、いいよ。今は休んでて」
「いや、なんかお茶──」

 再びチャイムが鳴った。

「おっかしいなぁ、今日はお母さん通販来ないっていってたのに」
 カナタはぼやきながら、玄関に再度向かった。




「「「「「……」」」」」
 なんとも言えない沈黙が男達を包み込んだ。




「よぉ、カナタ。見舞いついでにガチャ引いて貰いに来たぜ」
「欲望に忠実ですね、マリさん」
「マリでいいぜ。俺らに『さん』付けとかはいらないから気にすんな」
「そうだよ~! カナタちゃん、もっと俺らに気軽に言ってよ!」
「まぁ、他の二人のそう言ってるし、俺もそれでいいと思う」
「はぁ……じゃあ、三人とも家に入ってくれる? 先客がいるんだけど」
「だろうな」
 カナタの言葉にマリは愉快そうに笑った。

「何でこう見舞いが来るのかな……?」
 カナタはぼやいた。

「えっとこのがチャ引けばいいんですよね」
「ああ、頼む」
「このゲームはやってないからどうなのか分からないけど……」
 カナタはゲーム内のガチャを十連ボタンを押した。
「あ、虹色になった」
「よっしゃ誰だー!! よーし! リトルフェアだ!! 今回の大本命だ!!」
「あ、まだ虹が……」
「よっしゃああ!!」




 カナタがガチャをしているのを、部外者になっている状態の男性陣は見つめていた。

「締めるか?」
「そうするか?」
「私も手伝う」
「僕も手伝おうか?」
 物騒な発言をする男性陣を、レオンとレン、サリは見つめた。
「あ、あのこれ止めなくて」
「止めなくていいぞ、マリの奴分かっててやってるからな」
「でも、そのうちマリちゃんもこっち側に来そうだね」
「確かに」
「え゛」




「よっし、目当ての子達は全部当ててもらった後は──」
「おい」
 カナタがげんなりしはじめた頃、ディオンがマリに声をかけた。
「なん……ぐえええ?!」

 ごきゃん!

 ディオンはそのままマリを絞めて落とした。

「ええ?!」
「長居をしたな、ゆっくりと休むといい」
 ディオン達はそう言うと、マリを引きずって家から出て行った。
「……一体何だったの」
 カナタはぽかんとして状況について行けなかった。

 それから数十分後──
「カナタ、ただいま。お客さんが来てたの?」
「あ──仕事場から見舞いの品が」
「本当?」
「とりあえず学校も今どこも休校状態で落ち着いてないから、しばらくゆっくり休むね」
「それがいいわ」

 カナタは母親にそう言うと、自室に戻ってベッドに寝っ転がった。

「んー今回の事件で終わってくれればいいんだけど……」
 はぁとため息をつく。
「なーんか嫌な予感がするんだよなぁ」
 カナタはそう言って目を閉じて眠りについた。




 カナタが眠って数分後、黒衣を纏った巨躯の存在が現れ、カナタの額に触った。
 少しの間そうしてから、姿を消した。

 その直後、ディオンとアルビオンが姿を見せる。
「また奴か」
「何をした?」
 アルビオンの問いかけに、ディオンはカナタの手に触れて、何かを確認したようだった。
「暴走しやすい状態を抑えたようだ」
「腹立たしいな」
「ああ、俺たちではまだ奴に届かないのが」
「それもあるが、カナタに触られるのが嫌だ」
「同感だ」
 ディオンとアルビオンはそう言って部屋から姿を消した。




 渦中の人物であるカナタは何も知らずにすやすやと寝息を立てていた──





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