19 / 73
え、覚醒者になったら人権ある意味無し⁈ ふざけんなー‼
本当に見舞い?
しおりを挟む「缶詰の果物は食べないのか?」
「いや、その……一人で食べるのは罪悪感があるから後でお母さん達が帰ってきたら食べますから……」
「そうか」
カナタの言葉に二人は納得したようだった。
チャイムがまた鳴る。
「もう、誰だろう」
「俺が出よう」
「いや、いいよ私が出るから」
カナタはパタパタと走って玄関へと移動した。
「はーい、どちら……あれ、アンタ達怪我はもういいの?」
ドアを開けると、リヴン出身の三名──ジュラス、レオン、キリヒトだった。
「あ、ああ怪我大丈夫だ」
「君より軽く済んだからね」
「カナタ……の方は怪我の具合は?」
「私は大丈夫よ。ただ能力過剰解放で暴走しやすくなってるから少しだけ休んでてって言われてるの」
「調べたいなぁ」
「キリヒト!」
「冗談だよ」
「で、何のようなの?」
ジュラスは箱をカナタに渡した。
「見舞いだ。私御用達のパティシエが作っている焼き菓子類が入っている、遠慮無く食べてくれ」
「ま、またとんでもないものを……」
「また?」
「……」
ぬっと姿を現したディオンにジュラス達は驚愕する。
「カナタは今休息が必要だ、分かったら帰れ」
「何でお前に言われなくてはならない!」
視線がバチバチとなるように向けられ合う二人に、カナタだけが気づいていなかった。
「あーもう、いいから家に上がって。これは遺影壇に上げさせて貰うから」
「遺影壇?」
「お墓の家のある版。まぁあるのは遺影だけなんだけどね、昔は名前壇って言って亡くなった人の名前を書いた板を置いてた──はず」
「と言う事は誰か亡くなったの?」
「ん、お祖父ちゃんと、お父さん。両方とも病気で亡くなった」
「……」
「なんか聞いてごめん」
「いいや、別にいいよ」
レオンの言葉に何でも無いようにカナタは返すと、カナタは遺影壇に箱を置いてから、手を合わせた。
「……さて、見舞いとは言え客人だからお茶くらいは出すよ」
「え、いいよ。今は休んでて」
「いや、なんかお茶──」
再びチャイムが鳴った。
「おっかしいなぁ、今日はお母さん通販来ないっていってたのに」
カナタはぼやきながら、玄関に再度向かった。
「「「「「……」」」」」
なんとも言えない沈黙が男達を包み込んだ。
「よぉ、カナタ。見舞いついでにガチャ引いて貰いに来たぜ」
「欲望に忠実ですね、マリさん」
「マリでいいぜ。俺らに『さん』付けとかはいらないから気にすんな」
「そうだよ~! カナタちゃん、もっと俺らに気軽に言ってよ!」
「まぁ、他の二人のそう言ってるし、俺もそれでいいと思う」
「はぁ……じゃあ、三人とも家に入ってくれる? 先客がいるんだけど」
「だろうな」
カナタの言葉にマリは愉快そうに笑った。
「何でこう見舞いが来るのかな……?」
カナタはぼやいた。
「えっとこのがチャ引けばいいんですよね」
「ああ、頼む」
「このゲームはやってないからどうなのか分からないけど……」
カナタはゲーム内のガチャを十連ボタンを押した。
「あ、虹色になった」
「よっしゃ誰だー!! よーし! リトルフェアだ!! 今回の大本命だ!!」
「あ、まだ虹が……」
「よっしゃああ!!」
カナタがガチャをしているのを、部外者になっている状態の男性陣は見つめていた。
「締めるか?」
「そうするか?」
「私も手伝う」
「僕も手伝おうか?」
物騒な発言をする男性陣を、レオンとレン、サリは見つめた。
「あ、あのこれ止めなくて」
「止めなくていいぞ、マリの奴分かっててやってるからな」
「でも、そのうちマリちゃんもこっち側に来そうだね」
「確かに」
「え゛」
「よっし、目当ての子達は全部当ててもらった後は──」
「おい」
カナタがげんなりしはじめた頃、ディオンがマリに声をかけた。
「なん……ぐえええ?!」
ごきゃん!
ディオンはそのままマリを絞めて落とした。
「ええ?!」
「長居をしたな、ゆっくりと休むといい」
ディオン達はそう言うと、マリを引きずって家から出て行った。
「……一体何だったの」
カナタはぽかんとして状況について行けなかった。
それから数十分後──
「カナタ、ただいま。お客さんが来てたの?」
「あ──仕事場から見舞いの品が」
「本当?」
「とりあえず学校も今どこも休校状態で落ち着いてないから、しばらくゆっくり休むね」
「それがいいわ」
カナタは母親にそう言うと、自室に戻ってベッドに寝っ転がった。
「んー今回の事件で終わってくれればいいんだけど……」
はぁとため息をつく。
「なーんか嫌な予感がするんだよなぁ」
カナタはそう言って目を閉じて眠りについた。
カナタが眠って数分後、黒衣を纏った巨躯の存在が現れ、カナタの額に触った。
少しの間そうしてから、姿を消した。
その直後、ディオンとアルビオンが姿を見せる。
「また奴か」
「何をした?」
アルビオンの問いかけに、ディオンはカナタの手に触れて、何かを確認したようだった。
「暴走しやすい状態を抑えたようだ」
「腹立たしいな」
「ああ、俺たちではまだ奴に届かないのが」
「それもあるが、カナタに触られるのが嫌だ」
「同感だ」
ディオンとアルビオンはそう言って部屋から姿を消した。
渦中の人物であるカナタは何も知らずにすやすやと寝息を立てていた──
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる