18 / 73
え、覚醒者になったら人権ある意味無し⁈ ふざけんなー‼
休暇と見舞い
しおりを挟む「~~!! お前ら、いきなり殴ることねーだろ!!」
「黙れ」
ディオンは青年とカナタを引き離し、アルビオンに預ける。
「……カナタ、ジュエリナクエストとは何だ?」
「あ、宝石の力を引き出せるジュエリナ達とジュエリナの力を最大限に引き出せるコンダクターと一緒に世界を旅するゲームです。クリエイフォンで遊べるゲームで……」
「君はやっているのか?」
「え、ええ……ちょこちょこ課金しつつ……」
「そうか、良かったら教えて欲しい?」
「え? ゲーム、するんですか?」
予想外の相手からの発言にカナタは戸惑う。
「暇つぶしにはちょうどいい、ディオンこっちに来い」
「わかっている」
二人の青年に抑えつけられて暴れそうになっている青年を無視して、ディオンは近寄ってきた。
「俺たちのでもできるか?」
「ちょ、最新のじゃない!! 勿論できるに決まってるよ!」
「じゃあ教えてくれ」
「はい!」
「俺が誘った時は興味ないだったのにあいつら何なんだ……!!」
「俺わっかんない!」
「……」
「んー? レンちゃんどったの?」
「いや、気にするな」
「……なんか強いフレンドさんが一気に増えた……」
家に帰りベッドに横になるとカナタはクリエイフォンを手にぼやいた。
フレンドは基本IdetterというSNSで知り合った相互さんか、たまに来る強い方だけで、知り合いでフレンドができるのは初めてだった。
「マリ、さんだったっけ。すごい強いよなぁ……JQの縛りプレイとかもやってる人だったなんて……ヤベェ」
ごろんと横になり、クリエイフォンの画面を見る。
「詰まってたところ全部クリアしてくれたし、おかげでシナリオ読めたからすごい助かった……」
カナタはしばらく無言になってそして口を開いた。
「ドミニオンに所属して初めてラッキーだとか思ったよ……」
「──という訳で、カナタちゃんはしばらくお休み。その分君たちが働くこと、いい?」
「レイン様!」
「はい何でしょう、気持ち悪いくらい敬語とか使ってくるゴウくん?」
レインはちょっと嫌そうな顔でゴウを見る。
「カナタちゃんのお見舞いは──」
「君は禁止。絶対近づくな」
「何故!?」
「カナタちゃんが『あのセクハラ野郎の面は二度と見たかねぇ』とおっしゃっておりましたので」
「そ、そんな……」
ゴウは膝をついた。
「はいはいー!」
「サリくん、何ですかな?」
「どんなセクハラしたの?」
「セクハラなどしてない! あれはスキンシップだ!! コミュニケーションの一種だ!!」
「そういう奴がセクハラしてるの気づいてないから質が悪いのよ!!」
「とりあえず、服がボロボロになったからコートとか投げて渡したりしたらいらねぇと言われるレベルのセクハラをされたのは分かってる。同類だと思われて」
「あ、それ駄目だね」
「何故だ!!」
ばんばんと床を叩いて頭を抱えるゴウに突き刺さるのは冷たい視線だけだった。
「じゃあ、俺らは見舞いに行っていいわけ?」
「うん、そう言う事だね」
その言葉を聞いた途端、ディオンとアルビオンが姿を消した。
「あの二人は何処に?!」
「多分カナタちゃんの見舞いじゃない。あと見舞いの品何か買いに」
「カナタを助けて貰ったのはありがたいが抜け駆けは許さん!」
ジュラスはそう言って所長室を飛び出していった。
「あ、待てジュラス!」
「ジュラスくんずる~い」
ジュラスの後を追ってレオンとキリヒトも出て行った。
「んーじゃ俺も行くか。課金カードもって」
「マリちゃん……」
「マリお前……」
「新規ガチャが来たんだよ!! 回さない訳にはいかねぇだろう!!」
「本当、レンくんと、サリくんがいないと、マリくんの生活は成り立たないわね……」
「飯は作れないしな」
「掃除洗濯とか他の家事はできてるだろうが!!」
「飯が致命的すぎるんだ」
レンは黒い目を死人のようにどんよりとさせてマリを見る。
「ま、まぁ、料理はレンちゃんと俺がやればいいじゃん! ちゃんとお見舞いの品買って行こう?」
「そうだな」
レンとサリが出て行くと、マリも慌てて後を追った。
「私も……!」
「アンタは駄目言うとるだろうが、ほれ!」
レインはゴウの首根っこを掴み、所長室にぽつんと置かれている椅子に座らせ、目の前の机に薄型パソコンを置く。
「な、なんだ」
「何って、今回の事件の後始末の書類データ全部入ってるからこれの処理終わるまで帰さないからね」
「お、横暴だ!!」
「つべこべ言わずやれ!」
レインはゴウの頭を叩いた。
「んー」
カナタは服をめくり体を見る。
傷跡一つ残っていない体だった。
「あんだけ痛かったのが残らないってすげぇな」
そんなことを呟いていると、チャイムが鳴る。
家族は出払っており、今家にいるのはカナタだけだった。
カナタは室内着だけどもいいかと思いながら玄関に向かった。
「はい、どちら様──」
扉を開けると花束を持ったアルビオンと、何かの箱を持ったディオンが立っていた。
「どうしたの?」
「見舞いだ、体はどうだ?」
「おかげさまで悪いところはないよ」
「それなら良い」
「家族今出払ってるから上がっていく?」
その言葉に、ディオンとアルビオンは悩んでいるような表情を浮かべた。
「どうしたの?」
「いや、親がいるならともかく、今君は一人だ。仕事仲間を軽々しく家に入れるのは──」
「いや、仕事仲間以上に恩人だし、何もないでしょう?」
カナタの言葉に二人は顔を見合わせてため息をついてそのまま家の中に入っていった。
「うわ、すごい高そうな花と、缶詰」
「花はともかく、食べ物は生ものは不味いと思ってな」
「……いくらした?」
「マリの一回のガチャに使う金よりは少ない」
そのディオンの言葉にカナタの表情は引きつった。
「う、うわああああ……ものすごく受け取りづらい」
「気持ちだ、受け取ってくれ」
「あ、うん……じゃあちょっと手伝ってくれる?」
「何だ?」
「お祖父ちゃんと、お父さんの遺影壇の花瓶の花と交換するのよ。そろそろ交換しようかなって」
「「……」」
カナタのその言葉に二人は無言になった。
「駄目?」
「いや、駄目ではない」
「ああ」
カナタの願い通り遺影壇の花瓶の花と二人の持ってきた花を交換した。
死人に手向ける花にしては豪華すぎる花に、カナタはちょっとどうかと思ったが無理矢理納得させた。
選ばれた花の花言葉の意味など、カナタは分からなかった。
だから、二人は顔を見合わせたなど、知ることもなかった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜
みおな
恋愛
転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?
だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!
これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?
私ってモブですよね?
さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?
TRACKER
セラム
ファンタジー
2590年代後半から2600年代初頭にかけてサイクス(超常現象を引き起こすエネルギー)を持つ超能力者が出現した。 生まれつき膨大な量のサイクスを持つ主人公・月島瑞希を中心として心理戦・策略を張り巡らせつつ繰り広げられる超能力バトル/推理小説
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる