覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

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え、覚醒者になったら人権ある意味無し⁈ ふざけんなー‼

休暇と見舞い

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「~~!! お前ら、いきなり殴ることねーだろ!!」
「黙れ」
 ディオンは青年とカナタを引き離し、アルビオンに預ける。
「……カナタ、ジュエリナクエストとは何だ?」
「あ、宝石の力を引き出せるジュエリナ達とジュエリナの力を最大限に引き出せるコンダクターと一緒に世界を旅するゲームです。クリエイフォンで遊べるゲームで……」
「君はやっているのか?」
「え、ええ……ちょこちょこ課金しつつ……」
「そうか、良かったら教えて欲しい?」
「え? ゲーム、するんですか?」
 予想外の相手からの発言にカナタは戸惑う。
「暇つぶしにはちょうどいい、ディオンこっちに来い」
「わかっている」
 二人の青年に抑えつけられて暴れそうになっている青年を無視して、ディオンは近寄ってきた。
「俺たちのでもできるか?」
「ちょ、最新のじゃない!! 勿論できるに決まってるよ!」
「じゃあ教えてくれ」
「はい!」




「俺が誘った時は興味ないだったのにあいつら何なんだ……!!」
「俺わっかんない!」
「……」
「んー? レンちゃんどったの?」
「いや、気にするな」




「……なんか強いフレンドさんが一気に増えた……」
 家に帰りベッドに横になるとカナタはクリエイフォンを手にぼやいた。
 フレンドは基本IdetterというSNSで知り合った相互さんか、たまに来る強い方だけで、知り合いでフレンドができるのは初めてだった。

「マリ、さんだったっけ。すごい強いよなぁ……JQジュエリナクエストの縛りプレイとかもやってる人だったなんて……ヤベェ」
 ごろんと横になり、クリエイフォンの画面を見る。
「詰まってたところ全部クリアしてくれたし、おかげでシナリオ読めたからすごい助かった……」
 カナタはしばらく無言になってそして口を開いた。
「ドミニオンに所属して初めてラッキーだとか思ったよ……」




「──という訳で、カナタちゃんはしばらくお休み。その分君たちが働くこと、いい?」
「レイン様!」
「はい何でしょう、気持ち悪いくらい敬語とか使ってくるゴウくん?」
 レインはちょっと嫌そうな顔でゴウを見る。
「カナタちゃんのお見舞いは──」
「君は禁止。絶対近づくな」
「何故!?」
「カナタちゃんが『あのセクハラ野郎の面は二度と見たかねぇ』とおっしゃっておりましたので」
「そ、そんな……」
 ゴウは膝をついた。
「はいはいー!」
「サリくん、何ですかな?」
「どんなセクハラしたの?」
「セクハラなどしてない! あれはスキンシップだ!! コミュニケーションの一種だ!!」
「そういう奴がセクハラしてるの気づいてないから質が悪いのよ!!」
「とりあえず、服がボロボロになったからコートとか投げて渡したりしたらいらねぇと言われるレベルのセクハラをされたのは分かってる。同類だと思われて」
「あ、それ駄目だね」

「何故だ!!」
 ばんばんと床を叩いて頭を抱えるゴウに突き刺さるのは冷たい視線だけだった。

「じゃあ、俺らは見舞いに行っていいわけ?」
「うん、そう言う事だね」
 その言葉を聞いた途端、ディオンとアルビオンが姿を消した。
「あの二人は何処に?!」
「多分カナタちゃんの見舞いじゃない。あと見舞いの品何か買いに」
「カナタを助けて貰ったのはありがたいが抜け駆けは許さん!」
 ジュラスはそう言って所長室を飛び出していった。
「あ、待てジュラス!」
「ジュラスくんずる~い」
 ジュラスの後を追ってレオンとキリヒトも出て行った。
「んーじゃ俺も行くか。課金カードもって」
「マリちゃん……」
「マリお前……」
「新規ガチャが来たんだよ!! 回さない訳にはいかねぇだろう!!」
「本当、レンくんと、サリくんがいないと、マリくんの生活は成り立たないわね……」
「飯は作れないしな」
「掃除洗濯とか他の家事はできてるだろうが!!」
「飯が致命的すぎるんだ」
 レンは黒い目を死人のようにどんよりとさせてマリを見る。
「ま、まぁ、料理はレンちゃんと俺がやればいいじゃん! ちゃんとお見舞いの品買って行こう?」
「そうだな」
 レンとサリが出て行くと、マリも慌てて後を追った。
「私も……!」
「アンタは駄目言うとるだろうが、ほれ!」
 レインはゴウの首根っこを掴み、所長室にぽつんと置かれている椅子に座らせ、目の前の机に薄型パソコンを置く。
「な、なんだ」
「何って、今回の事件の後始末の書類データ全部入ってるからこれの処理終わるまで帰さないからね」
「お、横暴だ!!」
「つべこべ言わずやれ!」
 レインはゴウの頭を叩いた。




「んー」
 カナタは服をめくり体を見る。
 傷跡一つ残っていない体だった。
「あんだけ痛かったのが残らないってすげぇな」
 そんなことを呟いていると、チャイムが鳴る。

 家族は出払っており、今家にいるのはカナタだけだった。
 カナタは室内着だけどもいいかと思いながら玄関に向かった。
「はい、どちら様──」
 扉を開けると花束を持ったアルビオンと、何かの箱を持ったディオンが立っていた。
「どうしたの?」
「見舞いだ、体はどうだ?」
「おかげさまで悪いところはないよ」
「それなら良い」
「家族今出払ってるから上がっていく?」
 その言葉に、ディオンとアルビオンは悩んでいるような表情を浮かべた。
「どうしたの?」
「いや、親がいるならともかく、今君は一人だ。仕事仲間を軽々しく家に入れるのは──」
「いや、仕事仲間以上に恩人だし、何もないでしょう?」
 カナタの言葉に二人は顔を見合わせてため息をついてそのまま家の中に入っていった。


「うわ、すごい高そうな花と、缶詰」
「花はともかく、食べ物は生ものは不味いと思ってな」
「……いくらした?」
「マリの一回のガチャに使う金よりは少ない」
 そのディオンの言葉にカナタの表情は引きつった。
「う、うわああああ……ものすごく受け取りづらい」
「気持ちだ、受け取ってくれ」
「あ、うん……じゃあちょっと手伝ってくれる?」
「何だ?」
「お祖父ちゃんと、お父さんの遺影壇の花瓶の花と交換するのよ。そろそろ交換しようかなって」
「「……」」
 カナタのその言葉に二人は無言になった。
「駄目?」
「いや、駄目ではない」
「ああ」
 カナタの願い通り遺影壇の花瓶の花と二人の持ってきた花を交換した。
 死人に手向ける花にしては豪華すぎる花に、カナタはちょっとどうかと思ったが無理矢理納得させた。




 選ばれた花の花言葉の意味など、カナタは分からなかった。
 だから、二人は顔を見合わせたなど、知ることもなかった。






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