覚醒者~特別ランクの私は恋愛の好きが分からない!~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
7 / 73
え、覚醒者になったら人権ある意味無し⁈ ふざけんなー‼

本人が知らないところで、何か進行中?

しおりを挟む



 テロリストの鎮圧を終え、特務課と警察に後を任せて、カナタは本部へ戻った。
「カナタちゃん調子はどう?」
「うーん、前より良くなったかな?」
「どうしてそう思うの?」
 レインがカナタに問いかけると、カナタはうーんとうなってから手をたたく。
「なんか、こいつら全員ぶちのめすー自分がぼろぼろになっても立ち上がって一人残らず倒してやるー!! 無くなったんですよね。普段もそういうのがたまに出てきて敵はどこだ!! って神経がピリピリしてたからそれが無くなって調子は良い感じかなぁ」
 カナタの言葉を聞いて、レインはある言葉を口にする。
「寝てる時、家族以外の誰かが立っているようなことってなかった?」
「え、何で知ってるの。うん、それがあって起きたらそういうのが無くなってた」
「それは本当か?」
 ディオンとアルビオンが急に姿を現してカナタの肩を掴んだ。
「う、うん」
「ディオン」
「分かっている」
「ちょ、ちょっと二人とも」
 レインが二人をたしなめようとするが全く聞かない。
「カナタ」
「なんじゃらほい」
「俺の目を見ろ」
「目?」
 カナタは茶色の目で、ディオンの吸い込まれるような闇色の目を見た。
 カナタの目の色が深い青い色に変化する。
 静寂がその空間を包む。




 カナタの体がぐらりと倒れそうになり、アルビオンがカナタの体を支える。
 目は元の茶色に戻っていた。
「ちょ、ディオン!? カナタちゃんに何したの?!」
「通常より深く情報を見ただけだ、大丈夫か」
「う゛ー……なんか頭がぐわんぐわんするー……」
「すまない」
「次からは一言いってー」
 カナタは目と額を抑えながら言う。
「目もぐるぐるするー……」
「医務室に連れて行こう」
「頼む」
 アルビオンがカナタを抱きかかえると、部屋を後にした。
「……で、どうだったの?」
「奴だ」
 ディオンは声に怒りを混ぜながら言った。
「……あの御方か……」
 レインはやっぱりかと言わんばかりの表情をした。
「奴は何をしたい」
「……私にはさっぱりわからないわよ」
「それは嘘だな」
 ディオンはレインを睨みつけた。
「……そうね、嘘。あの方はね可能性を探してるの」
「可能性?」
「そう可能性をね、人がより輝く可能性を探し続けているの、そしてその可能性を多分カナタちゃんに感じたの」
「今度近づいているのを見つけたら殺してやる」
「今の貴方じゃまだ無理よ、言い間違えた、今の貴方たちじゃ無理ね」
「……」
「あの御方の望む高見にはまだとどいてないのよ私達は……」
「……俺たちは奴の実験動物という事か」
「違うわ、あの御方は、形はどうあれ私達を愛しているもの」
「……」
 レインの言葉に、ディオンは不服そうな雰囲気を出す。
「……そこまで不機嫌にならないの、貴方たちがお気に入りの子にまで手を出したのはちょっと問題かもしれないけど、あの御方が何かしたから彼女の調子は良くなったんでしょう?」
「それでもだ」
 ディオンはそう言うと言う事はもうないと言わんばかりに背を向けて部屋を出て行った。




「うー……」
 カナタは濡らしたタオルを目に当てて、ベッドの上で横になっていた。
 アルビオンがそれをじっと見守っている。
「……ねぇねぇ、なんだったのアレ?」
 ベッドに横になったまま、カナタは壁に背を持たれているアルビオンを見て問いかける。
「調べていた」
「何かされたとか?」
「そうだ」
「どうだったの?」
「……お前は深入りしないほうがいい」
「……わかったそうする」
 カナタは答えは得られなかったが納得した。
 何か問題を抱えているのだろうと、思ったのだ。
 それに土足で踏み入るような考えは起きなかった。
 頭がぐらぐらして、目もぐるぐるして気持ち悪い状態になったことにだけは文句を言いたいが。
 個人用の医務室のドアが開く音がした。
「カナタは?」
「横になっている」
「頭がぐーらーぐーらーすーるー、目がぐーるーぐーるーすーるー」
 こうなった原因を作ったであろう人物が入ってきたのが声で分かったカナタは遠回しに文句を言う。
「すまない」
 頭に手を当てられる。
「うーん」
 少しばかり頭がぐらぐらしている感覚と、目がぐるぐるしている感覚が治まる。
「どうだった」
「当たりだ、だが次の場所までは分からなかった」
「やはりか」
 タオルをちらりとどければ、アルビオンとディオンが話しているのが見えた。
「……とりあえず私になにか悪いの起きたとかはないー?」
「それはないから安心しろ」
「うーん……私どうなるのかな……?」
「どうなる、とは?」
「……仕事時でもやっぱり怖かったんだ。『こいつらは敵だ、殺せ。四肢が無くなろうと再生する、頭をつぶされようと再生する、どんな傷だって再生して、お前たちを殺してやる』……って感情で一色になりそうなのが結構怖かった。だから無くなって逆に怖くなって安心した」
「「……」」
 ディオンとアルビオンは無言でカナタの言葉を聞く。
「あの感情が多分私の能力の根幹を指しているんだと思う。それが恐ろしい、今まで殴り合いとかしたことないとは言わない、でもこの感情は明確に殺意だから怖い。『何故殺さない、こいつらは敵だ、殺せ!』って感情が膨れ上がるのを抑えるのが本当辛かった。殺すのが怖いのに、うるさいのが止まなかった」
「……だが、君は殺さなくていい」
「……子どもだから?」
 ディオンの言葉に、カナタは問いかける。
「……君の心が殺すのを拒み続ける限り、そのままでいい」
 アルビオンも口を開いた。
「……お兄さん達って不思議な人ね、まだ仕事付き合いでそんなに経ってないのに私のこと気にするなんて……」
「……」
「……君は休め、色々考えていると休めない」
 ディオンがそう言ってタオルを取り、カナタの両目を手で覆った。
 ひんやりとした感触が伝わってくる。
「手冷たいね、冷え性?」
「かもしれんな」
「……だったら冬カイロわけてあげるね、うちにたくさんある……」
 最後まで言う前に、カナタは眠気におそわれ、そのまま眠ってしまった。




「……眠ったようだ」
 ディオンはそう言って手をどけ、カナタの黒髪を撫でた。
「お前ばかりあまり触るな」
 アルビオンが少し不満げな顔をして言うと、ディオンはカナタの頭から手を離した。
「……すまん」
「私はお前のような能力はない、だからお前が羨ましい」
「お前は俺とは違う能力がある、そこを誇れ」
 ディオンの言葉に、アルビオンは少しうつむき、その後顔を上げた。
「何故、同じ父、同じ母を持ちながら――」

「私とお前はこれほど違うのだ、双子なのに――」




 カナタが起きたとき、ディオンとアルビオンは居なかった。
 カナタはベッドから降りると空間転移して、自宅へと戻る。
「ただいまー」
「お帰りなさい、今日のごはんはお鍋よ」
「うん、食べる」
 母親の声を聞いて少し安心したような表情を浮かべて食堂へと向かう。
 テーブルの上には鍋があり、色々な具材が入っていた。
「おいしそう」
「たくさん食べなさい」
「はーい、いただきます」
 カナタは鍋の具をよそって食べ始めた。

 食事を終えて風呂に入り、自室に戻ると宿題に手を付ける。
 机に向かい、宿題とにらみ合う。
 頭に答えが浮かび、手が勝手に書いてしまう。
 しばらくそれを続けると、宿題は終わっていた。
 念のため見直すが、これ以外の答えが思い浮かばなかった。
「……これも能力の一つか?」
 カナタは深くため息をついて、明日の準備をするとベッドに横になった。

 ベッドに寝転がり、ふと横を見た。
 黒い影が見えた気がした。
「……気のせいだな」
 カナタは布団を被って電気を消して眠りについた。




 カナタが眠っていると、黒い影が再び現れた。
 カナタに手を伸ばし、額に触れる。
 しばらくそうしてから姿を消した。

「……遅かったか」
「そのようだ」
 ディオンとアルビオンが姿を現す。
「奴の企みはなんだ」
「分からない」
 アルビオンが首を振ると、ディオンはカナタの額に手を当てた。
「……だめだ、読み取れん、かなり深いところに手を出したようだ」
「……戻ろう、カナタが起きるかもしれない」
「ああ」
 ディオンとアルビオンはその場から姿を消した。




 カナタは何も知らず、穏やかに眠っていた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

夜の貴族は、孤独な令嬢を愛する

琴葉悠
恋愛
クリス・エトランゼは、両親が溺愛する妹に、婚約者をとられた。 失意の中、祖父母の元に身を寄せ過ごしていたが、ある日祖父母に夜会にでるように言われ、そこで運命的な出会いを果たす──

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...