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え、覚醒者になったら人権ある意味無し⁈ ふざけんなー‼
各自の思惑
しおりを挟むカナタは脂汗をかいていた。
複数の覚醒者の中にEXクラスの覚醒者が今回いたのだ。
Sクラスの自分では分が悪い。
しかも数が多い、どうしたものかと悩んでいても相手は暇を与えてくれない。
炎が飛んでくる、剣が飛んでくる、拳で殴られそうになる、重力を操っているのかが体が今以上に重くなり動きづらくなる、近づいてきた覚醒者を倒すのが精いっぱいだった。
その為か相手は距離を置くのがほとんどだ。
――あ~~!! ヘルプ誰かこねぇかなぁマジで!!――
カナタがそう思っていると、カナタの目に剣の太刀筋がうっすらと映った。
何事かと分からず瞬きをした途端、覚醒者のほとんどが地面に倒れていた。
「え? え?」
「よくやった」
「後は私達がやる、君は戻れ」
ディオンとアルビオンが自分の目の前に立っていた。
「わ、わかった」
カナタはそう言うと、本部へと空間転移した。
「足手まといはいらねぇってのか!! 自信があるなぁおい!!」
残っているEXクラスの覚醒者が声を上げる。
「何を言ってる」
「彼女にこれからの惨劇を見せないためだ」
二人は剣を抜き、一瞬でEXクラスの覚醒者をバラバラにした。
「は?」
状況が飲め込めてないその覚醒者の残った頭部をディオンが鷲掴み、剣を刺した。
すると、頭部と他のバラバラになった肉片たちも燃え上がる。
覚醒者の絶叫が響き渡り、消える。
アルビオンは他の動けなくなった覚醒者たちにとどめをさしていた。
ここにあるのは二人を除けば屍のみ。
「戻るか」
「ああ」
二人はそう言って姿を消した。
パトカーのサイレンの音だけが遠くから響いていた。
「――というわけで、後のことはあの二人に任せました」
「よし分かった、あ、カナタちゃんはさっきの場所当分行ったらだめよ」
「へ? なんで?」
「上司命令! 何があっても当分行かないこと!」
「はぁ……」
部屋にすっと何かが入ってきたような気がして振り返ると、ディオンとアルビオンが居た。
「あれ、もう終わったの!?」
「終わった」
ディオンはそう答えると、レインの方へと近寄った。
「あの情報は?」
「まだ来てない、あの御方の行方は知れずのままよ」
「……」
「⁇」
カナタは話がよく呑み込めず、頭の中にハテナマークを大量発生させていた。
「あーカナタちゃんには関係ない話、こっちのお兄さん達のお話だから気にしないで」
「さいですか。まぁそうしますよ、厄介ごとはできれば勘弁なんで」
カナタはそう言うと後ろを向いた。
「仕事ないですよね、んじゃ帰ります」
そう言って帰っていった。
カナタが居なくなると、レインはにんまりと口元を弧を描き、ディオンとアルビオンを見て言う。
「本当カナタちゃんは他の女の子たちと違うねぇ」
「……」
微動だにしない二人に向けて言う。
「他の子なら貴方たちにメロメロになって貴方たちに関係があることだとどうしても聞こうとしたり、貴方たちの事を聞いてばかりでも」
レインは手を組んだ。
「彼女は貴方たちよりも自分の周囲の事で手一杯みたい、日常の幸せを取り戻したい感情が強いみたい」
笑みを浮かべたままレインは続ける。
「他の子は貴方たちを見て疎かになるのがほとんどだというのにねぇ、でも」
「貴方たち二人はあの子がお気に入りになったみたいね」
困った顔をして言う。
「見た限りでは、カナタちゃんは全然気づいてないみたいよ」
「構わん」
「え?」
ディオンの言葉にレインは目を丸くする。
「今はそれで構わん、彼女はまだ結婚できん年齢だ」
「まぁ、後二年経たないとこの国では成人扱いされないからねぇ」
「その時まで待つ」
「奪われかねないわよ?」
「俺たちがそれを見逃すと思うか?」
ディオンがそう言って部屋を出るとアルビオンも後をついていくように部屋を出た。
「あの双子、見た目とかは差異はあるのに、女の子の好みは一緒なのねぇ、でも彼女お母さまにはちっとも似てないから少し驚いちゃった」
レインはそういうと、少しため息をついて顔を上げた。
「――貴方本当に突然来るわね」
絶対零度の覚醒者EXランク、レイドがいつの間にかそこにいた。
「イブリス、お前私が何かしようとする際は今後あの娘を送り込む気だな?」
「あ、わかった?」
レイドは怒りが少しばかり宿った表情でレイン――イブリスを見る。
「だって、貴方のお気に入りでしょう?」
「……そうだな、娘のようなものだ」
「恋人じゃなくて」
「恋人は昔いた彼女だけだ、それだけでいい。それにカナタには父親がいない」
レイドがそう言うと、イブリスは頬杖をつきながら頷いた。
「うん、そうねぇ。カナタちゃん高校入る前にお父さん亡くなってるからねぇ。小学生の頃にはお爺さんを。年の離れたお兄さんがいるけど、一人は仕事で別の地域に、もう一人は自宅で家事手伝いと年老いたおばあ様の介護、もう一人は大学、お金には困ってないけど、ぜいたくはそんなにしてない家庭だったみたいね」
「カナタがこの仕事で得た金を少しずつだが家に入れてるから余裕が前より出たと言って居た」
「高給ですからうちは」
「その分仕事もハードだがな」
「それは事件起こす連中に行ってよ」
「『カラス』も捕まってないからな」
「……何を言いたいの?」
レイドの言葉にイブリスは眉をひそめた。
「……近いうち、奴らは動き出す。それを追う奴らがいる、協力を仰ぐなり傘下にいれるなり、お前の好きにするといい」
「貴方いつも思うけど何処からその情報を収集してるの」
イブリスはため息をついた。
「それとカナタだが」
「何?」
「彼女は普通の『覚醒者』と違う」
「それ位分かってるわよ」
「違うというのは精神構造だ、人間の精神のまま『覚醒者』を保持しているが、いま揺らいでいる状態だ」
「え?」
「多分あの御方が何かするだろう」
レイドはそう言うと、全て言い終わったのかその場から姿を消した。
「カナタちゃんの件も気になるけど、『カラス』――『レイヴン』か……」
イブリス――レインは疲れたようにため息をついた。
「今残党どれだけいるか調査するか……隠れ蓑になってるのすげぇ居そう……」
レインは深いため息をつくと誰かと連絡を取り始めた。
自宅で、カナタはのんびりと過ごしていた。
「あー仕事ないといいなー楽で!」
ベッドに横になり本を読む。
「ぷにっこ可愛いな、映画化するんだって? 見に行きたいなぁ、あ、ぬいぐるみも欲しい……お金稼げるようになったしいいかな?」
スマートフォン片手にぬいぐるみの情報を調べる。
「あ、このぷにっこすきなんだよなぁ、予約しないと」
楽しそうにしているその姿は覚醒者ではなく、普通の女の子だった。
「でも働かないとおぜぜがこない……ぐむぅ」
予約を終えると、横向きになり、何か不満そうな顔をする。
「……なんでだろう、仕事してないとざわつくなぁ」
カナタは胸元を抑えた。
敵は全て滅ぼしてしまえ
どれだけ体をぼろぼろにされても
私は立ち上がってやる
そして殺してやる
「?!」
ぞわりとする感情が体を這う。
思わず飛び起きた。
「……なんだ、今の……」
覚醒者の本能が敵を探している感覚にカナタは戸惑った。
「くそ、一生こんなのと付き合って生きるのだけはごめんだ」
布団をかぶり電気を消した。
静かに眠るカナタのところに、黒い影が現れた。
黒いそれは手を伸ばし、カナタの額に触れる。
しばらく額に触れると、カナタが眉をひそめ、うなされるようになってからそっと手を離ししばらくじっと見ていた。
「……んあ?」
カナタが目を開けた時影はなかった。
「……だりぇかいちゃよぅにゃ……むにゃ」
カナタは再び目を閉じて夢の中に落ちていった。
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