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え、覚醒者になったら人権ある意味無し⁈ ふざけんなー‼

EXランク覚醒者と初対峙?! 説得は成功なるか?!

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 カナタはレインから呼び出しを喰らった。
 次の日が学校という休みの日に。
「……休みの日に何ですか?」
 カナタが不満そうに言うと、レインは苦笑した。
「まずはこれを見てほしいの」
 目の前にモニターのような画面が展開され、そこに映るのは――
「Wettier? SNSの画面なんか見せてどうしたんですか?」
「……とある馬鹿どもが明日、養豚場を襲撃するってね、豚を殺して食べるのは酷いことだから養豚場をつぶすって」
「は?!」
「たまにいる菜食主義者を自称する過激派のやることなんだけど……そうすると動く厄介なお方がいるのよ……」
 レインは渋い顔をして続ける。
「EXランク、危険度MAX、不可侵者、絶対零度の覚醒者、自称レイド。100年前この星を氷漬け寸前まで冷やした問題児よ」
「それとこれがどう結びつくんですか?」
「……彼ね、覚醒者になる前は畜産業やってたのよ? 畜産業反対の過激派がウィルス持ち込んで……動物たち殺処分しなきゃならなくなったのがきっかけで覚醒者になったのよ」
「は?」
 覚醒者は命の危機でなるものだと思っていたカナタは、命の危機以外で覚醒者になるのをここで初めて知った。
「……関係者全員凍死させた後、彼は全世界に宣戦布告みたくこう言ったのよ、『このような連中をこの世界から一掃してやる、また環境環境うるさい連中も黙らせてやる、この星を冷たくしてやる、そうすれば満足だろう』ってね」
「……で、世界の反応は?」
「……もう一人の覚醒者が畜産、農業関係に関して必死で働いたからそこらへんは無事だったのよ、後は分かるね?」
「……あのーそれって教科書に載ってる氷河時代再来事件……のことっすか?」
「正解。今回この連中放置すると、レイド氏が出てきて周囲が凍り付くじゃすまない事態になる」
「ギャー!!」
 カナタは悲鳴を上げた、そんな危険な人物をどうにかしろという命令でもあると理解したからだ。

――死ぬ、死んでしまう、不老不死に近いと言ってもそんなん相手したら死んでしまう、今はまだ死にたくない、ここで死んだらおかーちゃん達が泣く!――

「嫌だー!! 私はまだ死にたくないー!!」
 カナタは拒絶の声を上げた。
 するとレインが頼み込むようなポーズを取った。
「お願い!! EXランク下手にぶつけると説得できんのよこの覚醒者!! ついでに過激派をボコる程度で抑えられるレベルの覚醒者って言ったらカナタちゃんくらいしかおらんのよ!! 他のSランク系はみんな問題児かちょっと出すのがアレな子だから!!」
「死んだらマジで化けて出てやるからな!!」
 カナタは泣きそうな顔で怒鳴った。


 カナタは襲撃すると指定された養豚場に来ていた。
 そこには、電気銃をもった養豚場で働いている人らしい人がきょろきょろと見回りをしていた。
「ちょっと」
「き、来たのか!?」
「いえ、ここを守れとドミニオンから派遣された覚醒者です」
「え?! 貴方が覚醒者?!」
 職員らしき人はそう言って目を丸くしている。
「……こっちにも色々事情があるんです、守らないと大変なことになるらしいので……あと、職員さんは避難した方がいいですよ……と上司に伝えろと言われました」
「で、できません!! 大事に育てた豚たちが持ち込んだウィルスとかで殺処分とかになった日には私は……!!」
「うーん、過激派の連中こういうの分からないからなぁ」
 そう言ってると何台かの車が施設の前に強引に止まってきた。
 カナタは車の中から大量の敵意を感じた。

――ハンマーだと効率が悪い、大鎌は殺傷しかねない――

 カナタは手に真っ赤な銃を出現させた。
 車から降りてきた武装集団に弾丸を撃ち込んでいく。
 撃ち込まれたもの達は倒れ、地面の上で痙攣していた。
「私がやるから隠れてて!!」
 あっけにとられている職員にカナタは怒鳴るように言う。
「は、はいい!!」
 職員は物陰に隠れた。
 次々と車がやってきて鉈やハンマー、銃を持っているのを見てカナタは舌打ちする。

――一人でも通したらアウトだ――

 そう考えた時、季節外れの雪が降ってきた。
 春物の制服では寒いと感じる程、温度がどんどん下がっていく。
「うわ、寒い、なに……ってまさか」
 武装集団の周囲に氷の棘が生える。
 周囲が雪景色に一瞬で変わった。
「いつの時代にも愚か者がいるものだ」
 寒さにカナタが震えていると男の声がした、頭上を見上げる。
 空中に、真っ白な髪のガタイの良い男が浮いていたのだ。
 男は真っ青なコートを羽織って、黒いブーツをはいていた。
 地面に足をつけると、武装集団を睨んでいた、非常に忌々しい者を見るかのように。
 彼の怒りが上昇する程気温がどんどん下がっていくのがカナタには分った。
 男が氷の刃を飛ばした。
「うわー!!」
 カナタは思わず氷の刃を全て弾丸で破壊した。
「……何故邪魔をする?」
 男は忌々しそうにこちらを見てきた。
「あんたが怒ると養豚場だけじゃなくて周囲にも迷惑かかるの! 私はこいつらボコってムショ送りにする特務課待ってるの!! だから大事しないでくださいマジで!!」
 カナタは血相を変えて言う。
 このまま気温が下がったら、連中はともかく、無関係な人や、先ほど物陰に隠れた職員が凍死してしまうからだ。
「……なるほど、そういう事か」
 男はカナタをじっと見てから分かったかのように、雪とともに姿を消した。
 カナタは男が居なくなったのを見てほっと溜息をつくと、持っているものをハンマーに変えて、武装集団を全員殴って気絶させた。
 氷が溶けるころ、特務課と警察がやってきて、武装集団を連れていった。
「……もう大丈夫ですよー……」
「と、凍死するかと思いました……!!」
「物陰じゃなくて建物の中にに避難してと言えばよかったですね……すみません……」
「い、いえ、豚たちが無事でほっとしてます、あ、ありがとうございます」
 職員とそう会話をして、カナタは職員に肩を貸す。
 建物の前まで連れて行くと、他の職員が出てきた。
「お前居ないと思ったら外にいたのか?!」
「ぶ、豚たちを守らなきゃと思って」
「ばっか野郎!! ドミニオン? って覚醒者を派遣してくれるところが防衛してくれるって連絡があったって言っただろう!!」
「で、でも、し、心配だったんです!!」
「あのーあんまり怒らないでやってください」
「ん? 娘さん、アンタは?」
「ドミニオンから派遣された覚醒者です、ちょっと大変な人がでるから説得もかねて私が派遣されました」
「そうなのか……ところで何で雪が積もってるんだ?」
「うーん、話せば長くなるんですが……」
 カナタは偉い立場にいると思われる職員に説明をした。
 その人は納得したような顔をした。
「ああ、噂の氷河の覚醒者か!! 俺の爺様の代位から聞かされたよ、畜産業を襲撃しようとする連中のところに現れて周囲を凍らせちまうとんでもない能力持ってるんだってな」
「それで、周囲が雪降ってぬかるんでるんです」
「俺たちを守ろうとしてくれるのは嬉しいんだが、周囲に被害がでちゃあなぁ」
「とりあえず私は帰りますんで……一応当分は気を付けてください」
「ありがとうよ、お嬢ちゃん」
「ははは……」
 カナタは乾いた笑いを浮かべてその場から立ち去った。




 白い髪の男は少し離れた場所で、覚醒者らしい少女がいなくなるのを見ると、その場から立ち去ろうとした。
 その時、首すれすれを剣と刀のような剣の刃先が向けられた。
「……ご子息二人がわざわざ来るとは予想外だったな」
 男は金髪の美しすぎる男と、黒髪の美しすぎる男にそう言う。
「カナタに手をださなかっただろうな?」
「出さなかったとも。ああ随分凄いものだ、今まで私を説得しようと派遣したSクラスは皆私に怯えたというのに、あの少女は怯え一つしなかった」
「本当にそう思うか?」
 金髪の男が刃を向けたまま問う。
「……思わんな、会うまでは相当怯えていたと思う。それなのにいざ会うとあの肝の座りっぷり、そうそうないな」
 白い髪の男は機嫌良さそうに言う。
 その途端、二人の殺意が刃に込められる。
「安心したまえ、君たちが好んでいるのはよくわかった、彼女には感心したがそういう興味はないから安心してくれたまえ、流石にご子息二人相手では私も分が悪い」
 白い男がそう言うと、二人はようやく刃を収め、白い男は今度こそ姿を消した。




「……さて、仕事に戻るぞ」
「ああ」
 二人はその場から姿を消した。
 日常のざわめきがその場に戻った――




「あー……もう、何でこき使われるの私」
 一人ラーメン屋に入り、お気に入りの醤油ラーメンを頼む。
 ラーメンが来たら、箸を取り面を啜りだした。
「すみません、相席いいですか」
「いいですよー」
 店員の言葉に軽く返す、気にせず麺を啜っていると声がした。
「チャーシュー麺を頼む」
 一度聴いたら忘れられないインパクトがあった出来事を起こしてくれた声だった。
 麺をすするのをやめて顔を上げれば、あの覚醒者が居た。
 思わず指をさしてしまう。
「な、な、な」
「俺もここにはたまに来る、覚醒者でも食べたいという欲はあるんだ、必要がなくとも、全て消化されて排泄する行為がなくなってもな」
 白い髪の覚醒者はなんてことのないように話した。
 そこでカナタは気づいた、そういえば自分食べてもトイレに行ってない、排泄行為をしてない、と。
「……全部を説明してないのか彼女は、まぁいい。何かあったら相談に乗ろう、あと俺の名前は――レイドだ。レイドと呼べ」
「は、はぁ……」
 カナタは好物の味が分からなくなったまま、食事をしつつレイドを見た。
 危険人物が自分の行動範囲に来ていることが、心労になっていたのだ。
 とんでもない人物に目をつけられたな、とカナタは自分の運のなさを嘆いた。





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