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人に創られたエキドナは「願い」の為に男を堕とす
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あらすじ
遥か未来、人間同士の大きな戦争がありました。
人間たちは様々な人を殺す物を用いて殺し合いましたが、土地を汚染したり、終結後に処分に手惑う物は使いませんでした。
ですが、武器には限りがあります。
そこで人間たちは、人のように産み、増える武器を作ることにしました。
ある科学者が人を元に作ったソレは「エキドナ」と呼ばれました。
エキドナ――彼女たちは、怪物を生み、敵を殺しました。
エキドナがいない人間達が殺されるのにそう時間がかかりませんでした。
戦争が終結後、エキドナを利用していた人間たちは思いました。
『エキドナが自分達に反抗の意識をもったらどうなる?』
と。
人間たちはエキドナを恐れ、エキドナと彼女らが生み出した怪物たちを殺処分していきました。
殺処分から免れた――殺処分できなかったエキドナは二人。
一人は我が子を失い、悲嘆にくれ、絶望しました。
もう一人は、怒り狂い、人間たちへと牙を向けました。
戦争では出さなかった程に恐ろしい怪物無数生み出し、破壊しつくしました。
一人のエキドナが、そのエキドナが使役する怪物達が破壊しつくすのを見て、人々は「たった一体、生き残ったエキドナによって世界が壊れた」とそのエキドナを「怪物女帝」と呼ぶようになりました。
もう一人、エキドナが生きてる事など人間たちは知りません。
世界の大部分は怪物が支配し、人間たちは残された安全な場所に集まって暮らすようになりました。
それ自体が、エキドナの数少ない慈悲だと気づくことなく。
これは生き残った一人のエキドナが願いを叶える物語。
エキドナの願いを叶えるために、一人の男が堕ちる物語。
遥か未来、人間同士の大きな戦争がありました。
人間たちは様々な人を殺す物を用いて殺し合いましたが、土地を汚染したり、終結後に処分に手惑う物は使いませんでした。
ですが、武器には限りがあります。
そこで人間たちは、人のように産み、増える武器を作ることにしました。
ある科学者が人を元に作ったソレは「エキドナ」と呼ばれました。
エキドナ――彼女たちは、怪物を生み、敵を殺しました。
エキドナがいない人間達が殺されるのにそう時間がかかりませんでした。
戦争が終結後、エキドナを利用していた人間たちは思いました。
『エキドナが自分達に反抗の意識をもったらどうなる?』
と。
人間たちはエキドナを恐れ、エキドナと彼女らが生み出した怪物たちを殺処分していきました。
殺処分から免れた――殺処分できなかったエキドナは二人。
一人は我が子を失い、悲嘆にくれ、絶望しました。
もう一人は、怒り狂い、人間たちへと牙を向けました。
戦争では出さなかった程に恐ろしい怪物無数生み出し、破壊しつくしました。
一人のエキドナが、そのエキドナが使役する怪物達が破壊しつくすのを見て、人々は「たった一体、生き残ったエキドナによって世界が壊れた」とそのエキドナを「怪物女帝」と呼ぶようになりました。
もう一人、エキドナが生きてる事など人間たちは知りません。
世界の大部分は怪物が支配し、人間たちは残された安全な場所に集まって暮らすようになりました。
それ自体が、エキドナの数少ない慈悲だと気づくことなく。
エキドナが生み出した怪物たちは、繁殖し増殖していった。
また、過去の遺産を元に人外的な力をもってそれらと対峙する者や、戦争の過程で肉体を強化した人間の子孫など、様々なものが現れた。
賞金稼ぎとして、人間を救う者もあれば――生きるのに精いっぱいな彼らからむしり取る者もいた。
統治者として、人々の安全の為に尽力を尽くす者もいれば――統治者故に統治場所の人々を苦しめる者もいた。
力を持たぬ人々は、どちらにせよ、それを受け入れるしかなかった。
「――っと着いたか。別に道中は特に問題はなかったんだが、距離があるってのは問題だ。小型飛行機だと空を飛んでる連中が危険すぎると却下される、車とかだと反応してクリーチャー共が襲ってくる、安全に行き来には徒歩のみ――確かにそれだと逃げられないな」
黒いスーツに、黒い刀を腰に下げ、サングラスをかけ、金髪のオールバックのロングヘアーの男がその「領地」へと入って来た。
はしゃぐ声などはなく、何処か暗く、怯えた雰囲気のこの領地の人々を見る。
――噂は本当か、そして、この様子だと、誰も「統治者」を倒すもしくは、説得することができなかった、という訳か――
男はふぅと息を吐いた。
同時に悲鳴が聞こえた、獣の雄たけびと共に。
男は迷うことなく、声が聞こえた方向へと走った。
子どもと母親らしき女性を喰らおうとしている巨大な狼のような怪物がいた。
男は怪物の腹を蹴り飛ばした。
怪物はそのままひっくり返り、藻掻いていた。
男は迷うことなく、怪物の頭と胴体を切断した。
「……やれやれ、こいつは厄介な場所だな」
男は呆れたように、呟いて刀を鞘に納めた。
「奥さんとお子さん、大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」
「そうか、それは良かった。ところでここの統治者は――」
男は奥にそびえる城を指さした。
今は殆どなくなった、データでしか残ってない城――そのどの城よりも美しい白亜の城がそこにはそびえたっていた。
「あの城にいるのかい?」
「は、はい、その、通りです」
「そうか、ありがとう」
男はそう言うと城へと走って向かって言った。
「あ……!!」
子どもの母親は思わず手を伸ばしかけたが、後ろから父親らしい男が彼女の肩を叩いて首を振った。
「……駄目だ、あの御方の言う通り、時が来るまで私達は『演じ続け』なければいけない……『恐ろしい統治者の統治に怯える領民』を。それがあの御方との約束だろう……」
「でも、あんないい人今まで来なかったわ、皆強欲な奴ら……あんないい人が……」
「……命を取ることはしないと願おう」
夫の言葉に、女は項垂れて子どもを抱きしめた。
男は城の前に来ていた、が違和感を感じていた。
どこの統治者も、警備や監視などがあるのに、この城にはそれらしいものがない。
護衛獣も、兵すら見当たらない。
そしてセンサーらしきものすらない。
男は此処にかなりの数の賞金稼ぎや「統治者になることを目論む」連中が来ていた事は耳にしている、だが誰一人として戻ってきていない。
だからそれなりに警備が厳しいと思ったら、警備も、防衛設備もなにもない、ただの飾りのような空間だった。
「……」
男は開いたままの門から城へと向かう。
周囲を見渡すが、やはり警備兵などの姿はない。
ただ手入れされた、庭園が広がっているだけ。
庭園を抜けて、城の入り口に男はついた。
庭園にもなにもなく、今では見かけることの無い花々が咲いているのが見れただけだった。
男が城の扉に手を当てると、扉はゆっくりと開いた。
「……余程腕に自信がある、ってことか?」
男はそう言って舌打ちすると、城の中へと入っていった。
外観も美しい城は、中も美しかった。
これらが領民を苦役を与えた結果得た物だとしたら男にとってそれは許しがたいことだった。
城の中も、城の外同様、警備兵も、センサーなどの類は無かった。
今まで入った統治者の住まう場所は警備兵、警備獣、センサーの類で寄せ付けないようになっていたが、この城は真逆だった。
――さて、どんな統治者かね?――
男が警戒していると、音楽が聞こえてきた。
曲名は覚えていなかったがワルツであることは分かった。
男は罠の予感を感じながらも、手掛かりもないし何もないこの綺麗なだけの空間の手がかりは音楽だけだったので、そちらへと脚を向けた。
音楽を頼りに歩き続け、扉を開けると、広いダンスホールがあった。
ホールの中央でプラチナブロンド長い髪に青いドレスを着た美しい女がロボットと踊っていた。
音楽が止む。
女とロボットの動きが止まり、ロボットが女から離れ、会釈をするとその場を後にした。
女はこちらを向いた。
「……あら……貴方様は……」
女は柔らかな笑みを浮かべて、男を見た。
「先ほど、領地に入った獣から母子を守ってくださった御方ですね」
おっとりとした口調で女は口を開いた。
男はその言葉に自分は最初から「監視されていた」ことに気づいた。
――監視カメラも、警備兵らしい連中もいない、どうやって見ていた?――
「……レディ、お聞きしたい。貴方がこの領地の統治者か?」
男は一旦その疑問を頭の隅に追いやり、聞かねばならないことを女に問いかけた。
もし女が統治者ではなく、この城に監禁された存在、もしくは何も知らぬ娘や妻ならここから出して別の安全な場所で保護してもらう必要がある。
「もし、私がそうでないとおっしゃったら?」
「貴方を安全な場所に避難させたい、それが終わり次第俺はここの統治者と『話』をつける」
男の言葉に、女は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「嬉しい、心の底からそう思って、そう言ってくださる方なんて久しぶり」
女はくるりと回った。
「でも、ごめんなさい。ここの統治者は――私ですもの」
女は微笑みながら、会釈をした。
「――レディを殺すのは趣味じゃない、なら俺の話を聞いてほしい。ここの統治の方法を見直して欲しい」
「まぁまぁ、貴方の様な御方は初めてです」
女は男の言葉に嬉しそうに笑った。
そしてゆっくりと近づいてきた。
男は気は進まなかったが、刀に手をかけ、即座に抜刀できるような状態にしておいた。
「私、貴方の様な方をずっとずっとお待ちしておりましたの、そう――」
「領民の方々に『恐ろしい統治をする統治者がいる』という嘘をついてもらったあの日から――」
女の言葉に、男は耳を疑った。
男が聞いた情報や領民の仕草が全て「嘘」だと女は言ったのだ。
――このレディは何を考えている?――
そう、考えた一瞬。
その一瞬で女は男の前に立っていた。
何かが男の刀をはじいた。
「?!」
女は――その華奢な体に相応しくない怪力をもって、男の手を掴むと押し倒した。
「押し倒してごめんなさい。ところで貴方様のお名前は?」
「レディに押し倒されるのは男冥利に尽きるが、今はあまり嬉しくないな。……アーサー、賞金稼ぎの色男さ。危険な統治者がいないなら、俺は此処に用はないんでな、開放してくれないか、レディ」
男――アーサーはそう言ってサングラス越しに女を見る。
女は淡い笑みを浮かべたまま、退く気配を見せない。
「ごめんなさい、それはできないの。だって私が夢見ていた御方が来たのですもの、アーサー様」
女はアーサーの唇のなぞる。
「レディ、貴方は囚われのお姫様か何かかい?」
「いいえいいえ、囚われるのはアーサー様です。だって貴方様にはこれから――」
「私の子どもを『産んで』貰うんですから」
女はそう言ってアーサーの唇に口づけをした。
力が抜け、意識が朦朧としていく、何とか意識を保たせようする行動は全て女に塞がれ、アーサーの意識はぶつりと途切れた。
女は男――アーサーの意識が無くなったのを確認すると、唇を離した。
「ああ、漸く私の願いが叶うの、もう一度『我が子』を抱けるの、ああ嬉しい」
女は言うと、手につけていたブレスレッドを操作した。
何もない場所に別の空間と繋がる穴ができた。
女はアーサーを抱きかかえると、穴の向こうの空間へと移動した。
そこ自分の子どもを身ごもる為の存在に作り替える場所であり、母体の命をつなぐ場所であり世話をする場所でもあった。
肉壁の人ならおぞましく恐ろしく感じる空間だが、女にとっては大事な空間だった。
人が座れるようなくぼみをもつ肉壁が蠢いていた。
女は男の衣服を脱がし、サングラスも外した。
裸の男の体を見つめる。
筋肉質、胸筋も立派で、余分な脂肪がない、鍛えられた頑丈な体。
生殖器も、体と見合って立派だった。
閉じた瞼を少し開かせて男の目を見る。
「まぁ、綺麗な青……宝石みたい……私好きよ」
女はそう言って瞼から手を離した。
そして再度抱きかかえて、男をくぼみに座らせるとくぼみは男の四肢を包み込み固定する。
触手が現れ、男の胸に張り付き、男の口に入り込み、男の後孔に液体を塗り付けて入り込み、男の雄を包み込み、睾丸に張り付いた。
「では、お願いね、私はそれまで少し準備をしているから」
女はそう言ってその空間を後にした。
ダンスホールへと戻ると、女はロボットを呼び出した。
「ここの方々に連絡して頂戴、もう嘘をつかなくていいと、演技はお終いにしていいと」
『畏まりました』
ロボットはそう言うとその場を後にした。
「……この恰好では駄目ね、せっかくのドレスが汚れてしまうわ、それにこれは初めてだもの、ちゃんと心構えをしないとアーサー様に失礼なってしまうわ」
女はそう言ってその場から立ち去った。
――体がおかしい――
――熱い、なんだコレは?――
アーサーが目を覚ますと、いつもつけているサングラスが無くなってるのに気づいた。
そして体を見れば一糸まとわぬ姿。
四肢は肉壁に包まれ動けず、口には何かが張り付いて、喉の奥まで何かが侵入していて液体が注がれているのを感じた。
雄は何かに包まれてるし、尿道に何か入ってて何かを注入させられているのを感じるし、睾丸にも張り付いてて、酷い射精欲が体を苛む。
同時に、腸内が、疼いてて酷い。
――勘弁してくれ、俺は突っ込まれる趣味をもってねぇし、ついでにレディとしかしたくねぇんだよ、なんでこんな気色わりぃのに……クソ――
「アーサー様、お目覚めになりました?」
女が立っていた。
薄手の青いランジェリーに身を包んでいた。
薄手であり、また下着であれば隠すべき場所を隠す役割をしていないそれは女の美しい肉体をただ包んでいるだけのものだった。
ショーツは履いてないので、下半身は丸見え状態だった。
口を覆い、喉の奥まで入っていた触手がずるずると抜かれる。
不思議なことに苦しさは感じなかった。
口が解放されアーサーは、はぁはぁと呼吸を繰り返し、呼吸が整ってから女を見る。
「レディ……一つ聞くが、此処に来た連中はこいつ等の餌にでもなったのか?」
「いいえ。あの方々は私がいなくなったらどうするかと聞いたら皆ここの人達をより苦しめる事しか言わないものですから、ケルベロスの餌に致しました」
アーサーは、女の言葉に、反応した。
「……レディ、今何と?」
「ええ、ですから、ケルベロスの餌に、と」
ケルベロス――エキドナと呼ばれる生物兵器が生み出すことができる、神話の冥府の番犬の如き、三つの頭を持つ怪物、クリーチャー。
エキドナしか使役できない恐ろしき生物兵器。
エキドナ――女の姿をした生物兵器。身体能力の高さ以上に、エキドナ以上の力を持つ怪物クリーチャーを生み出し、使役するという能力を持つ。
怪物女帝と呼ばれるエキドナを除いてすべて死に絶えたと言われている。
「……レディ、まさか……」
「アーサー様、誤解です。私は怪物女帝――リリス姉様ではありません。ですがエキドナです、貴方様の想像通り」
「エキドナは怪物女帝リリスを除いて絶滅した、それは違うのです、リリス姉さまがそう流したのです、私を守るために。夫と、我が子を失った私の存在を人々に知られないようにするために」
女は――エキドナは微笑んだ。
「自己紹介がまだでしたね、私はイヴ。世界で二人目のエキドナであり――リリス姉さま以外に生き残った、エキドナの一人です」
エキドナ――イヴは微笑みながらそう言った。
「……レディ……いや、イヴ。何が望みだい?」
「先ほどもおっしゃいましたがもう一度、アーサー様に私との『子ども』を産んでいただきたいのです」
イヴはそう言ってアーサーに近づき、細い指でアーサーの逞しい胸元をなぞった。
「……イヴ、貴方は人間の生殖を知らないのかい? 男は子どもを――」
「……知っていますわ、だって最初はそうやって私は我が子を産みましたもの。エキドナと知りながら愛してくれたあの人との子――でも、人間は私の娘と、あの人を殺したのですから」
イヴがアーサーの胸元に軽く爪を立てるのを感じた。
彼女の地雷を踏んだのだとアーサーは理解した、それを必死に抑えているのも。
「……悪いことを聞いた。が、俺は男だし、エキドナは女性、逆の立場は――」
「できるんです、ただ、効率が悪い。時間がかかるから、人間同様男の方から精液をもらって私の胎で育てる方が早い――でも、できないのです。怖くて、産んだ我が子が殺されるのが怖いのです、私は」
イヴはアーサーの胸元にそっと耳を当てるような体勢を取った。
「……そう、怖いのです。でも、私は我が子を抱きたい、ずっとずっと、それを願っていました。だから待っていた、此処を元々統治していた方を殺めて、搾取などを行わないかわりに嘘の情報を流してくれるよう、皆様に頼んだのです。いつか、正義感が強く優しい方が現れるのを待って」
「……」
――成る程、我が子と夫を失った結果、狂ったのか、このレディは――
「……下衆に我が子を産んで欲しくない、私もそんな輩は抱きたくない。でもアーサー様、貴方様は抱きたいと、私の子を産んで欲しいと思ったのです」
「……俺の意思は無視してかい?」
「ええ、だって仕方ないのですもの、私はエキドナ。昔の人間が作ったおぞましい怪物、あの人以外の誰が愛してくれましょうか?」
「……」
――確かに、レディなら愛せる俺でも、このレディ……イヴの事を愛せる気がしない――
イヴは相手からの愛を求めていない、ただ欲しいのは「自分の子どもを産んでくれるにふさわしい相手」それだけ。
今のイヴはアーサーが常日頃女性に与えるような愛を求めていない。
下手にその対応をすれば、何をするか、ますます分からない危険性がある。
「……レディ、愛してない、その上自分の夫と子どもを奪った人間に『子ども』を産ませて、貴方は満足なのか?」
「ええ、満足ですわだって――」
「私から全てを奪った人間に復讐できるし、私は愛する『子ども』をもう一度抱くことができるんですもの」
――このレディ、表面に出してないだけで、人間の事を憎んでいる、心の底から、自分の「子ども」を産むにふさわしいか否か、それだけで判断してる――
――そして、俺がその条件に当てはまった、という訳か、シャレにならねぇな……――
「アーサー様、ご安心を、私は人間のようにいたぶって苦しめて、泣き叫ぶのを見て楽しむ趣味は有りません」
「……」
アーサーはイヴの言葉から、彼女が人間を酷く醜いものとして見ているのを感じた。
「ですから、そう怯えないでくださいませ……ね?」
一見すると甘い女の囁き。
だが、アーサーは、イヴの願いの為に、自分の体が変えられているのを感じ、額からつぅ……と冷や汗が流れた。
「ああ、準備は既にできてます。ですのでアーサー様は楽になさっててください」
肉壁に取り込まれていた足が解放されるが、全く力が入らず、動けない事に気づいた。
「ご安心を、一時的に動けなくなってるだけです、時間が経てば動くようになりますので」
イヴがそう言うと、自分を拘束していた肉壁が倒れた。
「んぅ?!」
ぬぽっと腸内に入り込んでいた何かが抜ける感触に思わず声が上がる。
「アーサー様は男性なので、こちらに私の『卵』を植え付けさせていただきます」
後孔を指でつつかれる感触に、アーサーは焦った。
「ちょ、待ってくれ、其処はそう言う場所じゃ……」
「ええ、何もしなければただの排泄器官ですもの、でもアーサー様が寝ている間に『卵』を育てられるような場所になるよう手を加えさせていただきました」
つぷんと細い指が入ってくる。
「んん?!」
指は無理やり入ってきたという訳ではなく、まるで最初から受け入れるべき箇所に入ってくるように自然に入ってくるように、腸内に入った。
それに快感を感じている事が、アーサーにとって危険信号をだしていた。
――待て、俺はソッチの経験はない、ということは説明通り、俺の体は「孕む」為に改造されたってことか?!――
腸壁を撫でられると、甘い快感が走る、セックスで感じたことの無い甘い快感に、アーサーは動揺する。
「まだ『卵』は入れません、だってアーサー様の此処はまだ狭いですから、だから……」
後孔に、何かを押し付けられる感触に、アーサーは何とか顔を上げてみようとした。
そして目を疑った。
先ほどまで、普通の女性の形をしていた其処に――自分の物よりも太く長い男性器が生えていたのだ。
「な……?!」
――いや、無理だろ?!――
「大丈夫です、入りますし、痛くありませんから。痛かったらすぐ止めますから、ご安心を。私は人間とは違いますので」
イヴの優しい声と残酷な宣告。
アーサーは時間稼ぎにしかならないと思いながらも、痛みを感じることを祈った。
ゆっくりと雄の先端が入り込んでくる。
「っ……?!」
アーサーは体を僅かに震わせた。
痛みはなく、甘い快感だけが生まれ、そして腹の中の疼きが酷くなる。
「大丈夫みたいですね、では」
「んぅおぉおお?!?!♡」
一気に腹の奥まで入ってくる。
とんとんと、突かれる度に声が上がる。
「ふふ、結腸の箇所も柔らかくなってます、なのでもう少し挿れますね」
「へ……ま、待て、そこは不味い、止めろ、頼むから止めてくれ!!」
めりっと貫かれる感触なのに、痛みはなく、先端が奥まで入った。
「あぅぅぅ?!?!♡」
「ふふ、アーサー様のナカは私の生殖器をしゃぶってるみたいにです。絡みついてきて、温かくて気持ち良い。孕めるように沢山慣らしてあげますからね」
ずるりと抜かれ、奥まで貫かれる、その行為が繰り返される。
「おあぁああ!!⁇♡ やめ、そこはぁ♡」
「ふふ、アーサー様前立腺と結腸の箇所を刺激されるのが好きなんですね、どうぞ気持ち良くなってください、気持ち良くなっていただくほど、母体として質が良くなりますので」
突かれる度に、絶頂を繰り返している、だがアーサーは一度も射精をしていない。
射精欲は増しているのに、射精なしの絶頂――メスイキを繰り返していた。
自分の雄を包み込んでいる触手が原因な気がするがどうすることもできず、アーサーは何度も射精を封じられた絶頂を繰り返す。
絶頂させられる度に、雄はびくつき射精しようとするがそれを阻止される。
雄としての機能を壊すという感じではない、限界まで溜めさせる、そんな行為に感じられた――が、メスイキと射精できぬ絶頂を与えられるアーサーはそれに対してまともに言葉を紡いでイヴに言うことなどできなくなっていた。
ぬぽぉ……と漸く雄が抜かれる。
アーサーは何とかそれで、少しばかり正気を取り戻し、逃れようと足を動かそうとしたが肉壁から出てきた触手が足を固定して開かせる。
「アーサー様、射精はもう少しだけ我慢してくださいね」
包んでいた触手からアーサーの雄が一度開放され、指でなぞられる。
アーサーははっはっと短い呼吸を繰り返し、なぞられる感触に、歯ぎしりをする。
指でなぞられる感触でも快感を感じるのに、一向に射精ができないのだ。
アーサーも普通の男だ、少しの刺激で射精できるほどに、雄は膨張し、勃ち上がり、カウパー液をこぼしている状態なのに、一向に射精できないのは苦痛以外なにものでもない。
「では、予行練習です。孕み、産む快感を感じていただきますね」
「ま……た、のむ、い、っかい、ださ、せて、くれ」
「ごめんなさい、アーサー様に孕んでもらって、そして『卵』の育成をよくするためにはアーサー様の精液がたくさん必要なのです。だから、もう少しだけ我慢してくださいね、予行練習が終わったら、たくさん気持ちよく射精させてあげますから」
何もない時ならば美しいと褒めたたえ、口説いているであろう、女神のようなイヴの微笑みが、今のアーサーにとっては人間を拷問して楽しむ悪魔の笑みに見えた。
イヴの背中から触手とも尻尾とも取れる物が出現した。
太さとしては、先ほど入れられた雄よりも少しだけ細いがそれでもアーサーの雄より太い異物。
ぬちゅと細い先端が入ってくる。
ぐずぐずになった腸壁はそれを悦んで締め付け、甘い快感でアーサーを再び追いつめていく。
奥の奥――結腸部まで入り込んだのをアーサーは感じた。
「んお……♡」
「手順は逆ですけど、予行練習なので、では出しますね」
「へぁ……? あ、ま、あ゛づいぃいいい!?!?♡」
奥に容赦なく熱を持った液体が大量に注がれる感触に、アーサーは声を上げる。
どぷどぷと、重く熱を持った液体がアーサーの腸内を満たしていく。
「あ゛、あ゛づいぃ……も、はいら、なぃい……♡」
雄からぴゅっぴゅっと透明な液体を吹きだしながら、アーサーは液体を注がれる感触でも快楽を得て、それにどろどろに蕩かされていた。
「予行練習ですから、少しだけ多めにさせて頂きました。では卵の方を入れますね」
「え゛あ゛……あ゛っ♡ あ゛っ♡」
既にいっぱいになっている腹の中に球体が産みつけられていく度に、アーサーは濁った声を上げて、射精できない雄は透明な液体を吹きだして震えていた。
産み付けられるたびに、頭がおかしくなるような甘い快感と絶頂を感じる。
逃げなくてはいけないという思考はまだ何とか残っているが、それが徐々にすり減らされていくのを感じ、アーサーは徐々に自分を壊されているのに恐怖を感じながらも、快楽の前になすすべがなかった。
「ふぁ゛っ♡」
「はい、産み付けは終了です、あとは孵化して産むだけですので、それまでゆっくりなさってくださいね」
触手が抜かれると同時に、栓をされる。
その所為で排出はできなくなり、イヴの言う通り、卵から何かが孵化するまでこのままらしい。
イヴは愛おし気にアーサーの腹に顔を当て、わずかに膨らんだ腹を撫でていた。
しばらく何もしない為、少しだけ正気に戻ったアーサー周囲を見渡す。
出入口らしき場所は何処にもない。
相変わらず射精欲が酷い、脱出出来たら、速攻でヌこうと思いながら必死にこの状況から逃げ出す術を探す。
ちらりと視線を向ければ、イヴは歌を口ずさみながらアーサーの腹を撫でている。
予行練習、などと言っているのに、まるで胎にいる我が子に慈しむ母親そのものだ。
我が子でなくても、この様なのだ、殺された我が子への愛情は並々ならぬものだったろうし、同時に、愛した男への愛も相当のものであっただろう。
それらを奪われたから、奪った人間への憎しみも相当なもののはずだ。
最初はそれを言葉の端々に見せたが、それを今見せる気配はない。
――おそらく「子ども」を産めば俺はお役御免だ、その時隙をみて逃げるか、おそらく殺すことはしないだろう、自分達がされた事をレディは絶対しない――
――問題は、それまで、俺が自分を保てるかだ、クソ、これに自信がないのが厄介だ――
「おご⁈♡」
腹の中で何かが無数に蠢き、排泄器官から一種の性的快楽を感じる器官へと変化した腸内から、頭を蕩かすような甘い絶頂に、アーサーの頭の中が蕩けるようだった。
「ああ、孵化がはじまりましたね、では……」
栓をしていた触手が後孔から抜かれ、どろりと後孔から腸内に吐き出された液体がゆっくりと垂れていくのを感じた。
「うぅぁあ?!♡ う、ごい、てる?!♡ やめ、ろでてくるあ、ぅぅう!!♡」
腸壁を這いずるように蠢いて移動するそれの感触にアーサーは声を上げる。
快楽を受容する期間になった腸内を蠢いているそれらは、アーサーに甘い快感と絶頂を与える。
それは普通男が女とするセックスで感じる快楽ではない、絶頂ではない。
「ふふ、アーサー様、素敵で逞しい殿方でらっしゃるのに、女性の快楽を感じる素質もおありなんて素敵。甘い快楽、甘い絶頂、それなりに素質がないと感じられないのですよ、素質がおありの方は、一度この快楽をしったらもう、雄としての本能を捨てて偽の雌へと変化してしまう……のですが、アーサー様はそこまで堕とす気はありませんの。だってアーサー様の精液が、精子が必要なのですもの。偽の雌になってしまったら、そちらも弱くなってしまいますもの、ですから雄の要素も残しながら、雌の快楽を味わってくださいな……」
イヴの言葉を聞き取ることはアーサーにはできたが、意味を理解することはできなかった。
「あ゛っあ゛っ……で、でくるぁああああ!!♡」
ずりゅっと触手の赤子らしき生物が後孔から出てきた。
雄は精液を出すことなく透明な液体を吹きだして震えていた。
一匹が産まれると、次々と腸内から出て後孔から産まれる。
十匹程の触手の赤子が産み落とされ、アーサーの端正な顔は涙や鼻水、唾液でぐちゃぐちゃになっていた。
「ちゃんと全部産めましたね。では、ごはんをあげましょう」
イヴの言葉に、アーサーの胸に張り付いていた触手らしい物体がはがれた。
「あ゛……な゛……?!」
筋肉でがっちりとした胸はどこか柔らかさを持ち、また乳首や乳輪は肥大化していた。
触手達はアーサーの体を器用に上り、乳首へと群がった。
かぷり、かぷり♡
「ん゛ぅ゛う゛~~!!♡」
甘く触手達に乳首を噛まれ、アーサーは身もだえする。
ぢゅっぢゅと吸われる感触に首を振る。
「でないぃ!!♡」
「いいえ、でていますよ」
「え……?♡」
イヴに体を少しだけ起こされ、己の体を見て見れば、アーサーの乳首からは白い液体がだらだらと垂れ、触手達はそれを吸っていた。
「う、うそだ……」
その光景にアーサーは少しばかり正気に戻る。
「おかしいことではありませんわ。いえ……子を身ごもっても乳の出が悪い、出ないという母はいないわけではないのでそうでもないかもしれませんが……」
「そういう……んひぁ?!♡ らめ、ちくびがぁ!!♡」
再び、ぢゅっぢゅと吸われる感触にアーサーは濁った声を上げ、頭を振り長い金色の髪を乱れさせる。
「お゛あ゛……♡」
漸く触手に母乳を吸われる行為から解放されたアーサーは濁った声を上げて目を虚ろにさせていた。
触手達はアーサーの母乳を吸って三倍程の大きさになると、肉壁のナカに潜り込んでいった。
「さて、アーサー様、予行練習は終わりです」
イヴはそう言ってアーサーの頬にキスをした。
先ほどの触手とは違う触手が二本イヴの尻の当たりから生えているのがアーサーのぼんやりとした視界に入って来た。
その内の太い触手の先端が、アーサーの後孔に押し当てられる。
「お゛……あ゛……あ゛ぁ゛……♡」
今までで最も太く長い物体が入ってくる感触に、腸壁は悦んで締め付け、絡みつき、甘い快楽と絶頂でアーサーの思考をよりどろどろと溶かしていく。
「では、産み付けますね」
「あ゛……? ……?! お゛お゛お゛……♡」
質量のある物体が触手の中を通っているのか、それが直に伝わり、アーサーに快楽を与える。
「あ゛……」
重さのある物質が腹の奥に収まった途端、スーッとアーサーは正気を取り戻した。
――おも、い。これが、ほん、めい?――
腹が先ほどとは異なる形にぽこりと膨らんで、後孔からは「卵」を産み付ける際に出たと思われる透明な液体がだらだらと垂れていた。
先ほどの卵達とは比べ物にならない圧迫感と重さを感じた。
そして大きさもあって排出するのがどう考えても困難なのだ。
「今のままではそうですね鳥などの『無精卵』の状態です、ですので精液が必要なのです。私の精液だと産まれてくる子どもは人間達で言う『怪物』であり、私の子とは異なるのです、そう、だから――」
「ひぅ?!♡」
イヴから生えているもう一本の触手がアーサーの雄を包み込んだ。
「アーサー様、貴方様の精液、精子が必要なのです。これから今日のは『卵』に命を吹き込む為ですが、その後は栄養を送る為に。もちろん、それ以外にも栄養を送りますし、アーサー様が死なないようお世話いたしますわ。ではどうぞ、思う存分――」
「射精してくださいませ」
イヴの言葉に、雄がびくびくと震えるのを感じた。
そして包んでいる触手の肉壁が雄をしゃぶり吸い上げる。
「あ゛~~!!♡ ざーめん、でれるぅ……♡ お゛お゛……♡」
今まで射精を封じられていた雄は、精液を触手の中に吐き出し始めた。
触手は蠢き、精液を飲み込むような動きをしている。
「まだまだ、たくさん出してくださいね?」
睾丸に張り付いた触手が蠢き、更に射精欲は増し、射精が止まらない。
雄の快楽――だが、通常ならあり得ない程長く続く快楽に、アーサーの思考は蕩かされ、口から唾液を零して、淫欲の飲み込まれた表情を浮かべていた。
「も゛……れ゛な゛い゛ぃ゛……♡」
ずるりと触手から解放されたアーサーの雄はふにゃりと萎えて、ぴくぴくと震えていた。
「少し手を加えただけでこんなにたくさんの精液が取れるなんて素晴らしいですわ。では、今度はこれを、入れさせてもらいますね」
アーサーの雄を包んでいた触手が、アーサーの開きひくついた後孔へと入り、腸内の奥へと侵入する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛♡」
体を震えさせ、アーサーは濁った声を上げる。
そして奥、「卵」のある箇所の手前で止まると一気に溜めていたアーサーの精液を吐き出した。
「お゛あ゛~~?!♡ あづ、あづぃい♡」
「アーサー様が出した時の温度で保ってましたから、それに私の『卵』には温かい方がよいので」
イヴはそう言ってアーサーの膨らんだ腹を撫でながら微笑んだ。
イヴはじっとアーサーの膨らんだ腹を見つめ、溜めたアーサーの精液を全て腸内に吐き出し終えると、ゆっくりと触手を抜いて、精液が零れないよう急いで栓をした。
イヴが最初にやった「予行練習」よりも膨らんだ腹を、イヴは愛おしそうに撫でた。
「……後は育つまで待ちましょう、それまでアーサー様の御世話をいたしますから……」
イヴが紫の目で、アーサーの青い目をじっと見つめた。
「あ゛……」
アーサーの目はゆっくりと閉じられていった。
「では、お世話をお願いね。アーサー様が死なない様に、『卵』が死なない様に」
イヴはそう言うと、触手がアーサーの体を包み、口を覆い、体を覆い、雄を包み、肉壁が再度四肢を取り込んだ。
「――私が産んだ時は二週間だったけど、この場合はどれくらいかかるのかしら? 前例は人間の雌ばかりだったから分からないわ。でもそれでも私の子ども――エキドナが産まれるのは分かってるから、気長に待ちましょう」
イヴはその場を後にした。
「……?!」
アーサーは脂汗をかきながら、目を覚ました。
夢を見ていた、無数の化け物を孕まされて、産まされて、何度も絶頂して、よがり狂う夢。
「ぅ゛……」
触手に包まれているがそれでも分かる程度に歪に膨らんだ腹を見る、夢とは違うが自分の腹の中にいるのは夢で産んだ化け物たちよりももっと危険性が高い存在。
それに、自分に「卵」を産み付けた存在――イヴは「子ども」を産んだら何をするか分からない、自分の愛する子と夫や同胞を奪った人間への復讐をしないとも限らない。
自死するという手段は完全に奪われているし、体内の「卵」を排出するのはどうやってもできない、詰んでいる。
足音が聞こえた。
「アーサー様、おはようございます」
おっとりとした口調でイヴが近づいてきた。
どこから入って来たのか相変わらず分からない。
イヴが近づくと、体を腹を覆っていた触手が、動き、ぽこりと膨らんだ歪な腹が現れる。
イヴはアーサーに近づくと、愛おし気に腹に頬をすり寄せ、撫でる。
「……ああ、ちゃんと育ってる。私が産んだ時よりも成長は遅いけど、確かに育ってる……ああ……」
イヴの紫の目から透明な液体がつぅと流れるのが見えた。
状況を抜けば、彼女は間違いなく「生まれてくる自分の子を成長を喜ぶ母親」だろう。
「……」
「……アーサー様、何かおっしゃりたいことがございますか? ああでも、口を塞いでらっしゃいますものね……」
イヴがそう言うと、喉の奥まで侵入していた触手がずるずると抜かれる。
本来なら苦痛を感じる行為のはずなのだが――
――な、んできもち、いいぃ……♡――
抜かれる感触に快感を感じながら、口を開放される。
喉が再度犯されたがるように疼くのをおさえながら、アーサーは荒い呼吸をして何とか正気を保とうとしながら口を開く。
「……イヴ、俺に『子ども』を産ませて、何をするつもりだ?」
「何を……と言いますと?」
「……産んだ『子ども』と何をするか、を聞いている?」
アーサーの言葉にイヴは首を傾げた、その表情は「おかしなことを聞く人だ」と言いたげだった。
「子どもが生まれたら育てるに決まってるではないですか、愛して、抱きしめて、傍にいて、一緒に遊んで、一緒に本を読んで、色んな事を教えて、大人になるまでちゃんと守ってあげる。どうしてそんな事を聞くのです? 人間はそんな当たり前の事を態々聞くのですか?」
「……復讐、は考えないのか?」
アーサーの問いかけに、イヴは呆れたような顔をして首を振った。
「殆どの復讐はリリス姉さまがしてしまいました。そしてアーサー様に私の子どもを『孕んで』もらった今、私の復讐はお終いです。後はただ、私はこの子が産まれてくるのを待つだけ。この子に私達の――エキドナの『復讐』を持ちこす気はありませんわ」
イヴの言葉に、嘘が無いのはアーサーの経験と、彼女の性質から理解できた。
つまり、イヴはただ本当に自分の「子ども」が欲しかっただけなのだ。
全ての発言が真実なら、イヴは「自分が産んだ我が子」を失った事が相当なトラウマになっていて「産んだ子がまた殺されるんじゃないか」という現状ではないはずなのに、それが思い浮かんで自分が妊娠する事ができなくなってしまった。
だから、自分の代わりに「我が子」を産んでくれる存在を待っていた――その罠にアーサーが掛かり、そして現在に至る。
「他にも質問はありますか? 私がお答えできることならお答えします」
「……『子ども』を産んだら、俺をどうする?」
アーサーの言葉に、イヴはきょとんと目を丸くして、首を傾げた、反応から分かる、考えていなかったのだ。
イヴは「子どもを産んでもらう」事と「産んでもらった子」をどうするか、しか考えておらず、アーサーの処遇については何一つ考えていなかったのが反応から理解できた。
「……どうしましょう、困りました。アーサー様を殺す――というのはあの人間たちと同類になる気がして嫌ですし、かといって開放すると、私達の事がバレてしまう。困りました」
「……」
「そうですね、子どもが産まれるまで、ゆっくり考えさせていただきます。子どもの名前も考えなければいけませんしね」
イヴの言葉に、アーサーはため息をついた。
本人は考えさせてもらうと言っているが、もう答えは出ているようなものだ。
自分を死ぬまでここから出さないという答えをいずれイヴの口から聞くのをアーサーは予想できた。
「……質問は以上ですか? では、始めましょうか?」
「何を……んひぃ?!♡」
腸内に温かい液体が注がれる、雄が勃起し、酷い射精欲が沸き上がった。
「お忘れになられたようなのでもう一度、これから毎日『卵』に栄養を送る為に、アーサー様に快楽を感じていただき、アーサー様の精液を『卵』がる腸内に注ぎます。卵は快楽を感じたほうが成長が進み、また私以外の親――この場合はアーサー様の体液……特に精液が栄養になります。ええ『卵』はアーサー様の体からだけでなく、こうやって栄養を与えた方がよく育つのです」
温かい液体を注いでいたと思われる触手が抜けると、ずんっと一気に貫かれた。
「ん゛お゛ぉ゛~~?!♡」
排泄器官から「快感を感じる」箇所へと変貌させられている腸内は入って来た異物を締め付けて快感を得ようとしている。
取り戻したはずのアーサーの理性は、今までのセックスとは比べ物にならない快楽を与える行為の前にどろりと溶かされた。
「精液が溜まるまで、気持ちよくなっていただきますね。ああ『卵』があるから奥で気持ちよくなれないのは少し残念ですが、動き出すようになればそこでも気持ちよくなりますから、それまではここで……」
「あぁあ゛♡ だめ、そこ゛、だめ♡」
「ふふ、前立腺気持ち良いでしょう?」
「あ゛ぁ゛、ざーめん、ざーめんださせでぇ♡」
「溜まるまでお預けです、だから早くたくさん溜めてくださいね?」
射精できないまま、射精欲が溜まり、雄も爆発しそうな位なのに、まだ溜めろというイヴの非情な言葉。
「覚えていらっしゃいますか? 我慢して、我慢して、たくさん出した時、気持ち良かったでしょう? 今まで射精した経験の中で、同じ位気持ちよかったことはありますか?」
イヴは優しく微笑みながら、まるで犬の様に舌を出して荒い呼吸をする、アーサーの口を指で優しく触る。
「ぎもぢよがっだけどぉ♡ やだ、ざーめん、だしたぃい!!♡」
「……昨日よりも精液生成速度を上げる液体の濃度が濃かったかしら? でも、我慢してくださいね、アーサー様?」
「お゛お゛ぁ゛あ゛!!♡」
ばちゅんばちゅんと突かれ、前立腺を刺激され、アーサーは濁った声を出して喘いだ。
射精欲求が酷い中で、腸内の入る箇所までをぐちゃぐちゃと犯され、作り替えらえて肥大した乳首を抓られ、母乳を吹き出して、何度も絶頂する。
腸内を突いていた物がぬかれると、潤滑液らしき液体が後孔からとろとろと垂れる感触を感じながら、腹の中をもっと突いてと疼く感触と射精したいという欲求で哀願する。
射精ができない雄を触手に包まれる。
「やっぱり濃かったみたいですね、でもこれで沢山注入できますね」
そうして、長い射精をずっと味わい続ける、射精の快楽がずっとずっと続く。
へこへこと腰を動かして、柔らかくてしゃぶり絡みついてくる女の膣よりも気持ちの良いイヴの触手の中に射精をし続ける。
「も……れ゛ない゛ぃ……♡」
昨日同様睾丸で作られた精液を全て搾り取られると、触手がちゅぽりとアーサーのふにゃりと萎えた雄を開放する。
ぬぷりとその触手が腸内にゆっくりと入ってくる。
「あ゛あ゛♡」
――ぐる、あづいのぐるぅ……♡――
アーサーの腸内の「卵」の近くまで来ると、勢いよく搾り取ったアーサーの精液を吐き出した。
「あ゛あ゛~~!!♡」
アーサーは精液が出ない雄を勃起させて、透明な液を吹き出しながら、体を痙攣させた。
精液で腹は更に膨れ、そして抜かれるが栓をされるので零れることは無い。
「はいら、ないぃ……♡」
「アーサー様は本当に良いお体です、これなら成長も早いでしょう……では、少しお休みくださいね。お腹の『卵』が精液を吸収するのは、そこそこ時間がかかりますから……それが終わったら頃、また来ますね」
イヴがそう言って、紫の目でアーサーの目を見ると、アーサーの意識は朦朧としはじめ、そのまま目を閉じた。
快楽をただ与えられる日常がはじまった。
時間帯は聞けばイヴは答えてはくれる、それから数えると大体一日に三回程その行為は行われる、多い時は五回程。
空腹感はない、体内の「卵」への栄養も含めて、口の触手が胃袋に十分な栄養が入った液体を注いでいるらしい。
一時的に体を開放してもらった際、四肢など筋肉は低下はしていない、ただ乳首と乳輪が肥大したのに合わせて、胸が筋肉質なものからどこか柔らかいものになっていた。
腹はゆっくりとだが膨らんでいっている。普通なら死んでもおかしくないはずだが、アーサーの体はそれが可能なように改造されたらしく問題はない。
雄に関しては変化はない、何もなければ。
だが、一度行為がはじまると、腸内は性器へと変わり果てて、快楽を受け取る。
雄は限界まで精液を作らされ、そして射精し、精液を搾り取られ、搾り取られた精液はアーサーの腸内に注がれ「卵」の栄養となるらしい。
わずかな正気は快楽の前ではどろりと蕩け、意識が戻る度に、膨らんでいく腹に恐怖する。
だが、その恐怖も正気も、快楽の前では無力で、蕩け、イヴの言うがままに快楽を享受して絶頂し、射精をし、搾り取られた精液を腸内に全て注がれて絶頂し、眠る。
アーサーの心は、怪物の与える快楽という名前の毒に、どろりどろりと溶けて、崩れていった。
一ヶ月が経過した頃、どんと腹の中からの衝撃による快感でアーサーは目を覚ました。
「ん……う゛……♡」
腹の中に「子ども」が蠢いているのが分かった。
特殊な膜越しに、膨らんだアーサーの腹を刺激している。
口に入っていた触手がずるりと抜かれる感触に快感を感じながら、今はもう拘束されなくなった、手で腹を撫でる。
「あ゛……♡ おれの、あか、ちゃん、うごい、たぁ♡」
蕩けた表情で、妊婦の如く膨らんだ腹を撫でる。
足音が聞こえる、もう聞きなれた愛しい足音。
「お早うございます、アーサー様……」
仮面のような微笑みではない、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる愛しい存在の来訪にアーサーは笑みを浮かべた。
「い、う゛、あか、ちゃん、うごい、たぁ……♡」
「まぁ……!!」
イヴはアーサーの言葉に嬉しそうに笑みを浮かべて静かに近づき、膨らんだ腹をそっと撫でる。
「はやく、うまれ、ないかなぁ……♡」
アーサーの蕩けた表情に、イヴは笑みを浮かべる。
人々から慕われ、多くの者が名を知り、腕利きの賞金稼ぎだったアーサーの面影はもうなかった。
今はただ、雄と雌の快楽に浸り、種族的に起きるはずのない「子を腹に宿す」事に愛しさを覚え、自分を捕えて体を改造し「卵」を産み付けた、エキドナと呼ばれる最も恐ろしい存在であるイヴを愛して、愛と快楽を強請る存在へ、堕ちた。
「赤ん坊は生まれるのに時間がかかりますから」
イヴは優しく答えて、何時もの行為の準備をする。
「あ゛……♡ たくさんついてぇ……♡ ざぁめんいっぱいださせてぇ……♡ あかちゃんにいっぱいのませてぇ……」
人間の男性器を模した生殖器を生やして、アーサーの後孔に押し付けると、アーサーは足を絡めてきた。
「はい、今日もたくさん気持ち良くなってくださいね、私達の『子ども』の為に」
イヴは柔らかに微笑んだ。
容姿に関しては別に気にしていなかったが、アーサーは逞しく男らしい――人間的に言えばハンサム、色男の部類なのは分かった。
中身が今まで自分の所に来た書金稼ぎや盗賊崩れや、統治者になろうという野心家達と全く違った。
今までの連中は自分を見るなり、殺そうとしたり、犯そうとしたり、何も聞かず人質にとろうとしたり、悪意のある連中ばかりだった。
見るに堪えない、醜い連中ばかりだった。
だが、アーサーは自分の身を心配した、また統治者と言っても話だけで済ませようとした。
自分が近づいたら、刀を抜こうとしていたが、寸止めだったろう、こちらが殺意を見せなければ彼はイヴを傷つけないのが理解できた。
故にイヴは「子を産んでもらう」に相応しいと思った、だから捕えて肉体を改造した。
色々な意味で。
そしてアーサーの体内に「卵」を産み付け、精液を大量に絞り取り、その精液で「卵」を受精させた。
そして「卵」を育てる為に、口からも栄養を与えた、生殖行為のような行為を行って快楽を与え続け、精液を大量に搾り取って、その精液を「栄養」として「卵」に与え続けた。
ただ「子どもを産んでもらう為の存在」としか最初はイヴはアーサーを認識していなかった。
子どもを産んだら、どうしようか、記憶も改ざんして、体も元に戻して開放しようか、などと考えたりもした。
が、この一ヶ月、毎日のように性行為のような事をして、体を愛でて、子どもの育成のために精液を搾り取って中に出して。
日に日に大きくなる腹を、愛おしそうに見て、従順になったアーサーを手放すことが惜しくなった。
この感情、なんなのだろうと、疑問を持つが、イヴは答えを出すことはできなかった。
分からないけれども、手放すのが惜しい――否、手放したくなくなった。
――もっと、体を改造してしまいましょう、私とずっといられるようにしてしまいましょう、そして――
――たくさん、子どもを産んでもらいましょう――
――今の、アーサーさんなら喜んでくれるかしら?――
「アーサー様」
生殖器でぐちゅぐちゅと女の膣内よりも敏感な性器と化した腸内を突きながら、イヴはおっとりとした口調でアーサーに言葉をかける。
アーサーは蕩けた目でイヴを見た。
「アーサー様が嫌でなければ、これからも私の御傍にいてくださいませんか? そして子どもをもっと産んでいただけませんか? ずっと、心地よくしてさしあげますので……」
イヴの言葉に、アーサーは笑みを浮かべた。
「いるぅ♡ いっぱいうむぅ♡ ずっときもちよくさせてぇ……♡」
蕩けた声でイヴの望む言葉を言ってくれて、イヴは嬉しそうに笑ってご褒美と言わんばかりに、アーサーの前立腺を刺激する。
「お゛っ♡ あ゛♡ そこ、すきぃ♡ ごつごつっていっぱいついてぇ♡」
「ええ、アーサー様がこれから沢山気持ちよくなれるように致しますね」
イヴは妖艶に微笑んだ。
その日からイヴはアーサーに与える液体を少し変えることにした。
生存と「子ども」に必要な栄養と体で「卵」を育成できるように変質させる要素、体を衰えさせない要素、快楽をより感じやすくする媚薬的な要素等にもう一つ足すことにした。
人間があこがれて病まない不老不死――に少し近い存在に体を変質させる要素を混ぜた。
もともとエキドナは不老不死に近い存在だ、何もしなければ死なないという意味では完璧な不老不死に近い。
が、人間であるアーサーをそこまでにするには少々無理がある、不老に関しては全く問題ないが。
だが液体を定期的に摂取することで、不死に近い状態にすることならば可能だ。
人間は作ったエキドナの進化の速さと不老不死に近い存在である事を恐れて殺したのだ。
今もなお進化するエキドナであるイヴには、アーサーを不老不死に近い存在にする位簡単だった。
今は条件付きだが、いずれそれもなくなるだろうとイヴは思った。
「あ゛、あ゛♡ あづい、ざーめんではらがいっぱい……♡ お゛ほぉ゛?!♡ あか、ちゃん、うごいたぁ……♡ あ゛……あ゛……ざーめんなくなっていくぅ……もっと、もっとぉ……♡」
日に日に成長し、アーサーから搾り取った精液の吸収速度も上がっている、彼の腹の中にいる「我が子」の反応を見ながら、イヴは膨らんだ腹を撫でる。
「育成は順調ですね……食べ盛りなのでしょうかね? 少し栄養補給してからにしましょうか、溜めた精液は全部注いでしまいましたから」
イヴがそう言うと、肉壁から触手が出てきた。
前は口に張りついて、直接胃袋に注ぐタイプの触手だったが、アーサーが触手を悦んで咥えるようになったので、普通の触手にした。
「んぶ♡ んっ、んぶ、んぅ、んっ……♡」
アーサーはじゅぽじゅぽと触手を咥え舐り、ごくりごくりと液体を飲み干していく。
液体には質の良い精液を作らせる効果もある、人間的に言えば精力剤のような効果もある。
だが精液を作ったとしても、アーサーは自分の意思では射精はできない。
イヴが「許可」しない限り、射精できないのだ、精液だけは出せないのだ。
液体を飲み、勃起し始めたアーサーの雄をイヴはつぅと撫でる。
「あ゛、あ゛♡ しゃせー……しゃせー……♡ ざーめん、だしたいぃ♡」
「今射精したら気持ち良い時間は短いですし、量も少ないので、精液がたくさん溜まるまで、少し我慢しましょう? その代わり沢山気持ちよくしてあげますから……ね?」
指で雄を優しく撫でながら、イヴはいつものように優しい声色で言う。
「あ゛♡ あ゛♡ がまん、するぅ♡ だから、いっぱいきもちよくしてぇ♡」
「はい、気持ちよくいたしますね」
そう言って、再度雄を模した生殖器を生やすと、それを後孔にゆっくりと挿れた。
「ぁはぁ♡ あっあっ♡」
子どもを包んでいる膜は出る時以外は柔軟性と頑丈さ、衝撃を吸収し、周囲から栄養を取り込むという性質を持ち合わせている、それにエキドナの子どもは母体が快楽を感じる程育成もよいし、また体液――エキドナ以外の体液を吸収すると育成も良い、産まれた時から強い子が産まれる。
エキドナのイヴが孕んだ時、イヴの夫は腹の膨らんだイヴを抱く行為はしなかった、精々指を入れて愛撫する位。
エキドナに孕まされた人間の雌は孕んだ後も色んな者に犯されていたケースが多い。
愛した我が子より、そちらの子が強く人間的に言えば健康な子だったのがイヴとしては少し不満だった。
『どうして愛し合って生まれた私と夫の子どもよりも、実験で生まれた子の方が健康なのだろう』
と。
自分達の性質だからという意味では仕方ないことだった、けれども、いまだに納得しきれてない――が、アーサーの体内に「子ども」を宿して、その為に性行為じみたことをしてる内に、少しだけ受け止められるようになった。
だがその理由を、イヴは理解できなかった。
そして更に二ヶ月が経過し――領地は白い雪で覆われていた。
イヴは窓の外を見て、ふぅとため息をつく。
アーサーの腹はもういつ生まれてもいい大きさになっている。
だが、まだ産まれないし、アーサーは少しだけ痛みを感じているが、今のアーサーは嬉しそうな顔で腹を撫でている。
が、あまり大きくなりすぎては子を「宿している」アーサーに負担がかかる。
それは好ましくないとイヴは思った。
そしていつものようにアーサーの元へと向かった。
肉壁の部屋触手の集まりでできた部屋。
何時もの様にアーサーに近づくと、アーサーは荒い呼吸をしていた。
「……アーサー様?」
イヴはアーサーに近づく、明らかに腹の様子も、アーサーの様子もおかしい。
「いだぃのに、きもぢいぃ……」
後孔から、液体が少しずつ出ているのが分かった。
「アーサー様リラックスなさってください。産まれます」
「うまれる?♡ おれという゛の、あかちゃん……♡」
アーサーは蕩けた表情を浮かべた。
「お゛お゛……」
力の抜けたアーサーの腹に、負担にならない程度にイヴはゆっくりと押した。
少しずつ後孔から液体が出る量が増す。
「お゛♡ お゛♡」
声から苦しみの色が消えはじめた。
「うごいでるぅ♡ あ゛、で、で……う゛ぅあ゛あ゛あ゛!!♡」
膜に少し包まれたまま、エキドナの赤子がアーサーの後孔を目いっぱい広げて産まれた。
イヴは恐る恐るまだ体が全て出てない赤子をゆっくりとひっぱる、膜が肉の床に落ち、液体が床にびちゃびちゃと滴り広がった。
おぎゃおぎゃぁ
赤子は産声を上げた。
イヴはその声に安堵の息を吐きながら、アーサーに赤子を近づける。
「アーサー様、見てください。貴方様と同じ髪に、同じ目の子が産まれましたよ」
「あ゛……♡ おれのあかちゃん……♡」
アーサーに渡すとアーサーはいとおし気に赤子を抱いた。
ちょうど胸のあたりに口が当たったのか、赤子はアーサーの乳首に吸い付いた。
「ひゃぅ?!♡ ま゛っでぇ♡ おっぱい、でるけど、あ゛、つよひぃ゛!!♡」
赤子に乳を吸われ、濁った声を上げて身もだえするアーサーを見てイヴは笑みを浮かべた。
「あらあら、アーサー様のお腹にいたときから食いしん坊でしたのに、お外にでても食いしん坊なのですね」
心の底から嬉しそうに、イヴは笑った。
雪が溶け、春の季節が巡ってきた。
金髪に、赤い目の黒いコートを着た女が一人。
とある領地を訪れた。
嘗て「暴君がいる」という嘘の情報を流し、領民たちもそれに従い演技していた領地。
今は皆明るい表情で行きかい、春を満喫し、仕事に励んでいる姿を見る事ができた。
女はそれにちらりと目をやっただけで、誰かに声をかける事もなく、白亜の城へと向かった。
女は城の中に入ると、ロボットが姿を見せた。
『リリス様、ようこそいらっしゃいました』
「イヴは何処にいる」
『今は自室にいらっしゃいます』
「わかった」
女はそう言うとそのまま城の中を歩いた。
一つの部屋の前に着き、綺麗な扉をノックする。
「誰ですか? 今はゆっくり休みたいのですが……」
美しい女の声が部屋から聞こえた。
「イヴ、私だ。リリスだ」
「まぁ、まぁ、リリス姉様!! 今、扉を開けますね」
「疲れているのだろう、構わん。鍵は開いてるな?」
「ええ」
部屋の中の女――イヴの言葉に、金髪の女――リリスは扉を開けて部屋の中に入った。
リリスは部屋の中に入ると目を細めた。
広いベッドの上には体を起こしているイヴと、眠っている金髪の長い髪の逞しい――明らかに賞金稼ぎなどの仕事をしていたと思われる男と、眠っている金髪の幼子がいた。
「久しいな妹――元気そうで何よりだ」
「ええ、元気ですわ。そうだ、ご紹介しないとこちらは――」
「アーサー。賞金稼ぎのアーサー、だろう」
「……姉様ご存じでしたの?」
リリスの言葉に、イヴは驚いたような顔をした。
「多少面識はある、人に紛れていたからな、まさかエキドナが人に紛れて各地を放浪してるとは誰も思うまい」
リリスはそう言った。
「――で、その子どもは? いや、そのエキドナは?」
「ええ、聞いてくださいな。この子は私とアーサー様の子どもですの。スノウ、と名づけました」
「……産ませたのか?」
「ええ、体を改造して、卵を体内に入れて、アーサー様の精液で受精させて、それからずっと成長の為に栄養を与えました」
「……そうか」
嬉しそうに笑う妹に、リリスは静かに目を閉じてから口を暫く閉ざし、そして目を開き無表情で尋ねた。
「幸せか?」
「ええ、とても! 今はこの子の育児と、アーサー様の体が落ち着くまでゆっくりと過ごさせていただいてますが、落ち着いたら、アーサー様にまた子どもを産んでもらいますの」
イヴの幸せそうな笑顔を見て、リリスはアーサーを見た。
予想はできた、このアーサーは嘗て自分と酒場で酒を飲み交わした、あのアーサーではなくなっていると。
嫌いではなかった、自分はハンサムだと言うところは多少腹が立ったが、良い男だった。
リリスは妹の望みを知っていた。
もし会ったならば妹は確実にアーサーに自分の子どもを産ませようとするだろうと。
エキドナの子を身ごもった場合――快楽に敏感になり、脳は体は快楽に支配され、人格が変化する。
どんな人間であろうと、その快楽には耐えられず、快楽に溺れていく。
そしてエキドナに従順に従うようになる。
それも危険視され、エキドナと、エキドナに従う人間や守ろうとした人間は殺された。
生き残ったのは、リリスとイヴの二人だけ。
リリスは子も夫も居なかった、イヴには夫と子どもがいた。
イヴは夫と子を失った。
自分達は居ない方が良いとリリスはずっと思っていたが、嘆き悲しむイヴを――妹を見て怒りを覚えた。
幸せそうにしている妹の姿がリリスの荒んでいた心を唯一癒してくれた。
人間の男を夫にして子どもを作った時は、顎が外れるかと思った。
だが――その幸せそうな家族の光景はリリスの「人間に使い捨てられる武器である」という事を忘れさせ、癒しの一時をくれた。
それを、人間が壊したのだ。
許せなかった、憎いという感情が芽生え、怒りという感情が芽生え、気が付けば世界をめちゃくちゃにしていた。
人間全てを滅ぼそうかと思ったが、イヴに幸せな時間を与えたのも人間だったこともあり、滅ぼすのを止めた。
住める環境を残してやった。
しばらくの間は、嘆くイヴの傍でリリスは時を過ごした。
そして、イヴが落ち着いて過ごせる場所を探した。
イヴは四季が好きだった。
だから四季の巡る場所を探した。
そこで、愚かな統治者がいる場所があった。
リリスは統治者とその蜜をすする連中を皆殺しにして、イヴを統治者にした。
だが、そのイヴは何を思ったのか領民に命令を出した。
『ここには暴君がいる、民は皆怯えていると情報を流して、貴方達は演技をしてください。情報は分かる人が分かる程度にのみ流してください。お願いします。』
リリスは、イヴが何故それを言い出したのか最初は分からなかった。
だが、来る連中を殺しているイヴの「違う、貴方様では嫌」という発言を聞いて理解した。
イヴは、自分の子どもを「産んで」くれる存在を待っているのだと。
正義感が強く、だがそれは独善ではなく、真っ当な人間が来るのを待っていたのだ。
嘗て自分を愛してくれた人間の男ではなくともそれに近しい存在を、ずっと――
『姉様、私は――我が子をもう一度抱きたいのです』
イヴはそう言っていた、ただ「我が子」を抱きたいと。
けれど、己の胎から産み落とした「我が子」を無残に殺された故に、自分が「産み落とす」事が心の傷となった。
だから、イヴはずっと「産んでくれる」存在を待っていた、我が子を産んでくれる相応しい存在を。
待ち続けて、どれくらい年月が経っただろうか、世界が変わったあの日からどれ程年月が経っただろうかとリリスは思った。
ただ、永い時間が経過したと思った。
イヴは諦めず、待ち続けた。
たとえ話をした時大抵の者が「待つのを止めて外に出ればいいのではないか? 自分から探しにいけばいいのではないか?」と答えた。
だが、イヴはできない。
イヴにとって外の世界は「恐ろしい場所」、自分の子どもと夫を奪った「恐ろしい場所」なのだ。
この領地、この城をリリスが見つけるまで、イヴは一人リリスを待ち続けた。
見つけた時も、空間転移装置を起動させて、なるべく外を出歩かないようにさせた。
そして、イヴは城でただ、ロボット達と日々を過ごし、定期的に城に来る領地内の役人達と話をして領地を運営した。
それを永い間ずっと続けて、待ち続けた。
リリスは眠るアーサーを見て思い出した。
ああ、この男はたとえ話でも他とは違う答えを出した、と。
『俺なら、そのお姫様を連れ出して綺麗なものをたくさん見せるね。そして言うんだ、世界は恐ろしくないと、美しいと。そして、お姫様がもっと世界を見たいというなら、俺はその願いを叶えるとも。その間に俺の事を愛してくれたなら、俺は愛そう、お姫様が愛した相手がお姫様を幸せにできそうなら、託そう』
確かそんな答えだったとリリスは思った。
確かにそんなアーサーなら、イヴの望み続けた存在になるだろう。
もう、今のアーサーはそのアーサーではないだろうが。
少しだけ、人間だが腹立たしい程眩しくて、頼りがいになる男がもう「居ない」ことに心が痛んだ。
もういないのだ、あの眩しい男は、今そこで眠っている男はその男の名前の全くの別人に等しい。
話してなくても分かる、そして話すつもりはない、言葉を交わすつもりはない。
――あれ程鬱陶しくてそして眩しかった、羨ましかった男が、今は壊れた姿など見たくない。見たら心が平静でいられなくなる――
「では私行こう」
「もっとゆっくりしてくださっていいのに」
「……旅に、飽きたらな」
「姉様はそればかり……スノウだって挨拶してないのに」
「寝た子は起こすな、というだろう……ああ、そうだイヴ」
「何ですか、姉様」
「……お前はこれからどうするつもりだ?」
リリスの問いかけに、イヴはきょとんとしてから微笑んで、眠るアーサーを抱きしめて笑った、無邪気な子どもの様に。
「アーサー様に、たくさん子どもを産んでもらいますの。たくさん、ええ!!」
「……そうか、ではな」
リリスはそう言って部屋を後にした。
城を出て、領地から離れ、一人道を歩きながらリリスは考えた。
次ここに来るのはどれくらい時が経ってからだろうかと。
――ここからおかしな噂が流れだしたら?――
――それとも、受け止めることができるようになってから?――
未来のことなど、リリスには分からなかった、後者に関しては少しだけ時間がかかるのは感じた。
だが前者――イヴの子ども、エキドナが増えた結果噂が流れだしたらどうなるのだろうか。
リリスは目を閉じ、息を吐いた。
もう、人間にはどうする事もできないだろう。
エキドナが増えたら――人間はエキドナの為に生きる以外選択肢はなくなるだろう。
エキドナが人間に取って代わることは無い、エキドナが産まれるのは他の種族が必要だ、それが女か男かは関係ない。
エキドナ単体では「怪物」しか生まれないし、エキドナ同士でも「怪物」しか生まれない。
――人間は愚かだ――
――下らぬことに勝つために私達のような「化け物」を作り、それを殺そうとした結果、お前達は生物の頂点から引きずり落とされたのだ――
リリスは目を開け、歩き出した。
――いつ来るか、か……――
――来年の春、またここに来るとしよう、そして、受け止めるとしよう、それが私の役割だ――
来年の春此処に来る、それ以外は行く先も何もない、リリスの――一人のエキドナの旅がまた始まった。
「……姉様行ってしまわれたわ。次はいつ来てくれるのかしら?」
領地を監視している鳥の姿の怪物の視界に映る、リリスの姿を見て、イヴはふぅとため息をついた。
「……どうしたのかしら」
「んぅ……」
イヴの子――スノウの頭を撫でていると、体を動かし、青い目を開けて起き上がった。
「ままぁ……」
少し眠そうな表情をしている。
白いワンピースの裾を掴んで焦れているようにも見えた。
「どうしたのスノウ? まだ眠いの?」
「……おなかすいたの……」
「そう、じゃあご飯を――」
「ぱぱのがいい」
スノウはいやいやと言わんばかりに首をふった。
「あらあら、まだミルクの方がすきなのね、なら仕方ないわ」
イヴは人間ではもう四つ程の年の大きさに育った我が子の言葉に、微笑んで頭を撫でる。
「アーサー様」
イヴは眠っている、アーサーを揺さぶる。
スノウは、アーサーの上に乗っかって、胸元のボタンを器用に外した。
「う……あ……」
揺さぶられる感触にゆっくりとアーサーは目を開けた。
「アーサー様、スノウがミルクが欲しい、と」
「ぱぱのおっぱいほしい」
言葉を理解する前に、露わになった乳首を吸われる事による快感が頭を直撃した。
「ひぃ!!♡ れ゛な゛いぃ゛♡ も゛う゛れ゛な゛い゛ぃ゛♡」
「……そうですね、出が悪くなってますものね、スノウそろそろおっぱいは卒業できない?」
「ん゛~~!!」
「ひぎぃ!!♡」
より強く乳首を吸われるが、アーサーは幼子を――我が子をどけるなど出来ない、ただ喘いで、喉を反して、みっともない顔を晒すだけ。
子を産んだあの日から、アーサーは子が腹を空かすと乳首を吸われ、乳を吸われた。
見た目なら乳離れしてもいい位の大きさに育った子は、相変わらずアーサーの乳を強請り、吸い続けていた。
普通ならあり得ない事ばかりなのに、今のアーサーはもうそれを判断し、考える事ができなくなるほど、脳を犯され、改変されていた。
「ひっあ……♡」
だらしなく口から唾液を零し、黒いズボンの股間の箇所が盛り上げ、透明な液を滲ませていた。
ちゅぱっと子が乳首から口を離す。
乳首は勃起しているかのように立ち上がり、赤くなっていた。
「……たりない、こっちはだめ?」
子が射精したがっている雄を布越しに触る。
「ひぁ゛?!♡」
射精できない状態で射精欲が限界まで達している勃起した雄を布越しに触れ、アーサーは声を上げてだらしなく舌を出した。
乳までは別に構わないが、今の我が子に精液を飲ませるのは不味いのを理解しているイヴは優しく我が子スノウを諭す。
「子どもの貴方はまだ駄目よ。大人になってからね?」
「ぱぱのおなかのなかにいたときはたくさんくれたのに……」
「今の貴方が飲んだら、一気に成長して体がとっても痛くなるの、痛いのは嫌でしょう?」
「いたいのはいや……」
「だから、普通のご飯も食べましょう? ね?」
「うん……」
ガチャリと部屋の扉が開く、ロボットがやってきた。
『スノウ様、お食事に致しましょう』
「わかった……ままは?」
「『パパ』が少し辛そうだから、お世話が終わったら行きますからね」
「うん」
スノウはロボットに手を引かれて部屋を出て行った。
扉の閉まる音を聞き、イヴはアーサーを寝かせて、するりとズボンを少し下げた。
今にも射精しそうなのに、出来ずにびくびくと震えて、透明な汁を垂らす雄があった。
「しゃせー……しゃせーしたいぃ……♡」
「ふふ、いいですよ」
イヴのスカートの下から触手が伸び、アーサーの雄を包んだ。
「お゛♡」
「はい、たくさん射精してくださいな」
「あ゛あ゛~~♡ ざーめんでれるぅ♡ お゛お゛……♡」
イヴは、子を産んだ後もアーサーの精液を搾り取っている。
目的は二つ。
一つはアーサーの「雄」の機能を維持しつつより質のよい状態を保つこと、もう一つは――
「――ええ、気まぐれに付けられた男性兵士たちの性欲解消として作られた性質の所為で、人間の精液を美味と感じられるなんて、最初は困惑しまし、あの人といる時も慣れませんでしたけど、慣れてしまえばよい栄養補給になりますね、これは」
アーサーの精液を吸収し、自分の栄養にすること。
本能的に分かるのだ、自分の体の状態が良くなっていると。
「も゛……れない゛ぃ♡」
精液を吐き出さなくなった雄を触手から解放し、萎えた雄を仕舞って毛布をかけてイヴはアーサーの額に口づける。
「では夜までゆっくり休んでいてくださいませ……」
イヴの言葉に従うようにアーサーは目を閉じ、再び眠りに落ちた。
イヴはアーサーが眠ったのを確認してから部屋を後にした。
イヴは我が子の食事を見守り、遊び、学ばせた。
だが、城の外へは決して出さなかった。
「まま、どうしておしろのそとはだめなの?」
「……外はね、危険なの、貴方のお姉さんや、私の姉妹達、味方をしてくれた優しい人は皆、外で殺されたの……だから、お願いスノウ、外へは出ないで……」
スノウを抱きしめ、悲哀の色に染まった声で言う。
「……うん」
スノウは、母親であるイヴの怯えを感じ取ったのか、外には出ようとしなかったが、時折聞いてその度に、怯えた声で言う母の言うことに従った。
夜、イヴはスノウを子ども部屋のベッドに寝かせ、眠るまで傍にいてあげた。
スノウが眠ると、そっと部屋から立ち去り、自室へと戻る。
扉を開けると、匂いがした、発情した人間の匂い。
ぐちゅぐちゅという粘質的な音、荒い呼吸の音。
「アーサー様、遅くなってしまってごめんなさい。今日はスノウを寝付かせるのに時間がかかってしまったの」
「うう゛ん゛♡ こども、は、なかなか、ねつか、ないから、しかたない、もん、なぁ♡」
「有難うございます」
イヴはベッドへと静かに近づく。
ベッドの上では、後孔に男らしい自身の指を入れてぐちゃぐちゃと腸内をいじり、透明な液体を勃起した雄から垂れ流し、雌の絶頂に浸っていた「夫」の姿があった。
「一人は寂しかったですか?」
「さびしぃ゛♡ いう゛がいなかったからぁ゛♡」
指を抜いて蕩けた顔をアーサーはイヴに向けてきた。
濡れていない手を伸ばしている。
「では、これからは『夫婦』の時間……アーサー様、たっぷり愛し合いましょう?」
イヴはするりとドレスを脱ぎ、美しい女性的な裸体と――それに不釣り合いな雄露わにする。
わざわざ生やすのが手間がが掛かっているが、愛する「夫」の為だ、これくらいの手間は別に良いだろうと、イヴはその雄の存在を認識している。
仰向けになったアーサーに覆いかぶさるような体勢を取り、舌を伸ばすアーサーの口に口づけをする。
舌を絡ませあって、確かめ合うような口づけをしたあと、勃ち上がった雄を、開きひくつく後孔に押し付け、焦れている其処に一気に挿れた。
「い゛~~~~!!♡」
腸内がぎゅうと締め付けてきた、温かく、しゃぶりつくように雄に絡みついてくる其処の感触に、この箇所を使った性行為を好む人間がいる理由をイヴはいつもこれで納得する。
「けっちょうまで、ずんってきたぁ♡ いう゛、ざぁめんたくさんごくごくさせてぇ♡ いっぱいきもちよくさせてぇ♡」
アーサーは腰を動かしながら、足を絡ませてきた。
「はい、たくさん気持ち良くなってそして、それが終わったら、いっぱい射精してくださいね」
イヴは笑みを浮かべて、腰を動かした。
「ふぁ゛あ゛あ゛っ♡ いぐ、いぐぅ♡」
アーサーは透明な液体を雄から出しながら、舌を出して、絶頂に至った事を言う。
実際腸内も、ぎゅうと締め付け、精液を強請るような蠢きをしている。
「アーサー様、私まだ子どもが欲しいんです、スノウの育児が落ち着いたら、また子作りしても宜しいですか?」
「あ゛っ♡ うむ、うませでぇ♡」
「有難うございます、アーサー様」
自分の願いを受け入れてくれるアーサーにご褒美と言わんばかりに、結腸まで雄を突っ込み、其処で精液を吐き出す。
「お゛お゛っ♡ ざーめんれでるぅ♡ おくでぇ、あづい、あづい、ぎもぢい゛ぃ゛……♡」
蕩けた表情のアーサーを見て、イヴは穏やかに笑う。
「アーサー様」
「愛しています。だからずっと、私の御傍にいてくださいな」
イヴはそう言ってアーサーに再び口づけをした。
人に作られたエキドナ。
一人のエキドナは願いを持っていた、二つ。
一つは、もう一度我が子を抱きしめ育て愛すること。
もう一つはエキドナは気づいていなかった。
もう一つの願いは、愛することができる者が欲しい、愛してくれる者が欲しい、その存在にずっと傍にいて欲しいということ。
エキドナの願いは叶った。
愛する我が子を、再び抱き、育てることができている。
そして、愛することができた存在が自分の傍から離れることなく、自分を愛し続けてくれる求め続けてくれる。
エキドナは――イヴは哀れだった。
人間を元に作られ、女しか生まれぬ存在として作られた。
番となった最初の男は人間に殺され、子どもも殺された。
それでも、その時の幸福を忘れられず、取り戻そうと彼女は待ち続けた。
そして、永い時を経て現れた男を捕まえ、堕とした。
かつて、手にした幸福とは違う幸福。
だが、イヴは満足した。
幸せなのは、変わりないからだ。
イヴはこれから繰り返すだろう。
男を――アーサーに子を産ませ、育てるという行為を。
最初あった時とは別人となったアーサーを愛し続ける行為を、まぐわい続ける行為を。
幾度も繰り返すだろう。
誰もそれをとめることはしない。
何故ならこれは、彼女の城――箱庭だけで完結する世界だから。
彼女の世界はそれだけで十分だった。
箱庭で、イヴはアーサーと愛し合う。
蕩けるような快楽を彼に与えて堕とし続ける。
体内に子どもの「卵」を産み付けて育て、産んでもらう。
そして産んだ子どもを共に育てる。
それを、繰り返し、幸せな世界にイヴは浸り続ける。
彼女の「願い」は叶った、たった一人の男が贄になったが――
それを知り、理解するのは、彼女ではなく、彼女の姉――リリスのみ。
それ以外誰も理解し、知ることは無い――
――私は今、とても、幸せです――
人間に利用されるためだけに作られた一人のエキドナは、こうして幸せになりました。
エキドナはとても幸せです。
愛する家族と安全な場所で穏やかに暮らすことができるのですから。
誰かを傷つける事をもうする必要もないのです。
だから、彼女はとても幸せです――
遥か未来、人間同士の大きな戦争がありました。
人間たちは様々な人を殺す物を用いて殺し合いましたが、土地を汚染したり、終結後に処分に手惑う物は使いませんでした。
ですが、武器には限りがあります。
そこで人間たちは、人のように産み、増える武器を作ることにしました。
ある科学者が人を元に作ったソレは「エキドナ」と呼ばれました。
エキドナ――彼女たちは、怪物を生み、敵を殺しました。
エキドナがいない人間達が殺されるのにそう時間がかかりませんでした。
戦争が終結後、エキドナを利用していた人間たちは思いました。
『エキドナが自分達に反抗の意識をもったらどうなる?』
と。
人間たちはエキドナを恐れ、エキドナと彼女らが生み出した怪物たちを殺処分していきました。
殺処分から免れた――殺処分できなかったエキドナは二人。
一人は我が子を失い、悲嘆にくれ、絶望しました。
もう一人は、怒り狂い、人間たちへと牙を向けました。
戦争では出さなかった程に恐ろしい怪物無数生み出し、破壊しつくしました。
一人のエキドナが、そのエキドナが使役する怪物達が破壊しつくすのを見て、人々は「たった一体、生き残ったエキドナによって世界が壊れた」とそのエキドナを「怪物女帝」と呼ぶようになりました。
もう一人、エキドナが生きてる事など人間たちは知りません。
世界の大部分は怪物が支配し、人間たちは残された安全な場所に集まって暮らすようになりました。
それ自体が、エキドナの数少ない慈悲だと気づくことなく。
これは生き残った一人のエキドナが願いを叶える物語。
エキドナの願いを叶えるために、一人の男が堕ちる物語。
遥か未来、人間同士の大きな戦争がありました。
人間たちは様々な人を殺す物を用いて殺し合いましたが、土地を汚染したり、終結後に処分に手惑う物は使いませんでした。
ですが、武器には限りがあります。
そこで人間たちは、人のように産み、増える武器を作ることにしました。
ある科学者が人を元に作ったソレは「エキドナ」と呼ばれました。
エキドナ――彼女たちは、怪物を生み、敵を殺しました。
エキドナがいない人間達が殺されるのにそう時間がかかりませんでした。
戦争が終結後、エキドナを利用していた人間たちは思いました。
『エキドナが自分達に反抗の意識をもったらどうなる?』
と。
人間たちはエキドナを恐れ、エキドナと彼女らが生み出した怪物たちを殺処分していきました。
殺処分から免れた――殺処分できなかったエキドナは二人。
一人は我が子を失い、悲嘆にくれ、絶望しました。
もう一人は、怒り狂い、人間たちへと牙を向けました。
戦争では出さなかった程に恐ろしい怪物無数生み出し、破壊しつくしました。
一人のエキドナが、そのエキドナが使役する怪物達が破壊しつくすのを見て、人々は「たった一体、生き残ったエキドナによって世界が壊れた」とそのエキドナを「怪物女帝」と呼ぶようになりました。
もう一人、エキドナが生きてる事など人間たちは知りません。
世界の大部分は怪物が支配し、人間たちは残された安全な場所に集まって暮らすようになりました。
それ自体が、エキドナの数少ない慈悲だと気づくことなく。
エキドナが生み出した怪物たちは、繁殖し増殖していった。
また、過去の遺産を元に人外的な力をもってそれらと対峙する者や、戦争の過程で肉体を強化した人間の子孫など、様々なものが現れた。
賞金稼ぎとして、人間を救う者もあれば――生きるのに精いっぱいな彼らからむしり取る者もいた。
統治者として、人々の安全の為に尽力を尽くす者もいれば――統治者故に統治場所の人々を苦しめる者もいた。
力を持たぬ人々は、どちらにせよ、それを受け入れるしかなかった。
「――っと着いたか。別に道中は特に問題はなかったんだが、距離があるってのは問題だ。小型飛行機だと空を飛んでる連中が危険すぎると却下される、車とかだと反応してクリーチャー共が襲ってくる、安全に行き来には徒歩のみ――確かにそれだと逃げられないな」
黒いスーツに、黒い刀を腰に下げ、サングラスをかけ、金髪のオールバックのロングヘアーの男がその「領地」へと入って来た。
はしゃぐ声などはなく、何処か暗く、怯えた雰囲気のこの領地の人々を見る。
――噂は本当か、そして、この様子だと、誰も「統治者」を倒すもしくは、説得することができなかった、という訳か――
男はふぅと息を吐いた。
同時に悲鳴が聞こえた、獣の雄たけびと共に。
男は迷うことなく、声が聞こえた方向へと走った。
子どもと母親らしき女性を喰らおうとしている巨大な狼のような怪物がいた。
男は怪物の腹を蹴り飛ばした。
怪物はそのままひっくり返り、藻掻いていた。
男は迷うことなく、怪物の頭と胴体を切断した。
「……やれやれ、こいつは厄介な場所だな」
男は呆れたように、呟いて刀を鞘に納めた。
「奥さんとお子さん、大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」
「そうか、それは良かった。ところでここの統治者は――」
男は奥にそびえる城を指さした。
今は殆どなくなった、データでしか残ってない城――そのどの城よりも美しい白亜の城がそこにはそびえたっていた。
「あの城にいるのかい?」
「は、はい、その、通りです」
「そうか、ありがとう」
男はそう言うと城へと走って向かって言った。
「あ……!!」
子どもの母親は思わず手を伸ばしかけたが、後ろから父親らしい男が彼女の肩を叩いて首を振った。
「……駄目だ、あの御方の言う通り、時が来るまで私達は『演じ続け』なければいけない……『恐ろしい統治者の統治に怯える領民』を。それがあの御方との約束だろう……」
「でも、あんないい人今まで来なかったわ、皆強欲な奴ら……あんないい人が……」
「……命を取ることはしないと願おう」
夫の言葉に、女は項垂れて子どもを抱きしめた。
男は城の前に来ていた、が違和感を感じていた。
どこの統治者も、警備や監視などがあるのに、この城にはそれらしいものがない。
護衛獣も、兵すら見当たらない。
そしてセンサーらしきものすらない。
男は此処にかなりの数の賞金稼ぎや「統治者になることを目論む」連中が来ていた事は耳にしている、だが誰一人として戻ってきていない。
だからそれなりに警備が厳しいと思ったら、警備も、防衛設備もなにもない、ただの飾りのような空間だった。
「……」
男は開いたままの門から城へと向かう。
周囲を見渡すが、やはり警備兵などの姿はない。
ただ手入れされた、庭園が広がっているだけ。
庭園を抜けて、城の入り口に男はついた。
庭園にもなにもなく、今では見かけることの無い花々が咲いているのが見れただけだった。
男が城の扉に手を当てると、扉はゆっくりと開いた。
「……余程腕に自信がある、ってことか?」
男はそう言って舌打ちすると、城の中へと入っていった。
外観も美しい城は、中も美しかった。
これらが領民を苦役を与えた結果得た物だとしたら男にとってそれは許しがたいことだった。
城の中も、城の外同様、警備兵も、センサーなどの類は無かった。
今まで入った統治者の住まう場所は警備兵、警備獣、センサーの類で寄せ付けないようになっていたが、この城は真逆だった。
――さて、どんな統治者かね?――
男が警戒していると、音楽が聞こえてきた。
曲名は覚えていなかったがワルツであることは分かった。
男は罠の予感を感じながらも、手掛かりもないし何もないこの綺麗なだけの空間の手がかりは音楽だけだったので、そちらへと脚を向けた。
音楽を頼りに歩き続け、扉を開けると、広いダンスホールがあった。
ホールの中央でプラチナブロンド長い髪に青いドレスを着た美しい女がロボットと踊っていた。
音楽が止む。
女とロボットの動きが止まり、ロボットが女から離れ、会釈をするとその場を後にした。
女はこちらを向いた。
「……あら……貴方様は……」
女は柔らかな笑みを浮かべて、男を見た。
「先ほど、領地に入った獣から母子を守ってくださった御方ですね」
おっとりとした口調で女は口を開いた。
男はその言葉に自分は最初から「監視されていた」ことに気づいた。
――監視カメラも、警備兵らしい連中もいない、どうやって見ていた?――
「……レディ、お聞きしたい。貴方がこの領地の統治者か?」
男は一旦その疑問を頭の隅に追いやり、聞かねばならないことを女に問いかけた。
もし女が統治者ではなく、この城に監禁された存在、もしくは何も知らぬ娘や妻ならここから出して別の安全な場所で保護してもらう必要がある。
「もし、私がそうでないとおっしゃったら?」
「貴方を安全な場所に避難させたい、それが終わり次第俺はここの統治者と『話』をつける」
男の言葉に、女は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「嬉しい、心の底からそう思って、そう言ってくださる方なんて久しぶり」
女はくるりと回った。
「でも、ごめんなさい。ここの統治者は――私ですもの」
女は微笑みながら、会釈をした。
「――レディを殺すのは趣味じゃない、なら俺の話を聞いてほしい。ここの統治の方法を見直して欲しい」
「まぁまぁ、貴方の様な御方は初めてです」
女は男の言葉に嬉しそうに笑った。
そしてゆっくりと近づいてきた。
男は気は進まなかったが、刀に手をかけ、即座に抜刀できるような状態にしておいた。
「私、貴方の様な方をずっとずっとお待ちしておりましたの、そう――」
「領民の方々に『恐ろしい統治をする統治者がいる』という嘘をついてもらったあの日から――」
女の言葉に、男は耳を疑った。
男が聞いた情報や領民の仕草が全て「嘘」だと女は言ったのだ。
――このレディは何を考えている?――
そう、考えた一瞬。
その一瞬で女は男の前に立っていた。
何かが男の刀をはじいた。
「?!」
女は――その華奢な体に相応しくない怪力をもって、男の手を掴むと押し倒した。
「押し倒してごめんなさい。ところで貴方様のお名前は?」
「レディに押し倒されるのは男冥利に尽きるが、今はあまり嬉しくないな。……アーサー、賞金稼ぎの色男さ。危険な統治者がいないなら、俺は此処に用はないんでな、開放してくれないか、レディ」
男――アーサーはそう言ってサングラス越しに女を見る。
女は淡い笑みを浮かべたまま、退く気配を見せない。
「ごめんなさい、それはできないの。だって私が夢見ていた御方が来たのですもの、アーサー様」
女はアーサーの唇のなぞる。
「レディ、貴方は囚われのお姫様か何かかい?」
「いいえいいえ、囚われるのはアーサー様です。だって貴方様にはこれから――」
「私の子どもを『産んで』貰うんですから」
女はそう言ってアーサーの唇に口づけをした。
力が抜け、意識が朦朧としていく、何とか意識を保たせようする行動は全て女に塞がれ、アーサーの意識はぶつりと途切れた。
女は男――アーサーの意識が無くなったのを確認すると、唇を離した。
「ああ、漸く私の願いが叶うの、もう一度『我が子』を抱けるの、ああ嬉しい」
女は言うと、手につけていたブレスレッドを操作した。
何もない場所に別の空間と繋がる穴ができた。
女はアーサーを抱きかかえると、穴の向こうの空間へと移動した。
そこ自分の子どもを身ごもる為の存在に作り替える場所であり、母体の命をつなぐ場所であり世話をする場所でもあった。
肉壁の人ならおぞましく恐ろしく感じる空間だが、女にとっては大事な空間だった。
人が座れるようなくぼみをもつ肉壁が蠢いていた。
女は男の衣服を脱がし、サングラスも外した。
裸の男の体を見つめる。
筋肉質、胸筋も立派で、余分な脂肪がない、鍛えられた頑丈な体。
生殖器も、体と見合って立派だった。
閉じた瞼を少し開かせて男の目を見る。
「まぁ、綺麗な青……宝石みたい……私好きよ」
女はそう言って瞼から手を離した。
そして再度抱きかかえて、男をくぼみに座らせるとくぼみは男の四肢を包み込み固定する。
触手が現れ、男の胸に張り付き、男の口に入り込み、男の後孔に液体を塗り付けて入り込み、男の雄を包み込み、睾丸に張り付いた。
「では、お願いね、私はそれまで少し準備をしているから」
女はそう言ってその空間を後にした。
ダンスホールへと戻ると、女はロボットを呼び出した。
「ここの方々に連絡して頂戴、もう嘘をつかなくていいと、演技はお終いにしていいと」
『畏まりました』
ロボットはそう言うとその場を後にした。
「……この恰好では駄目ね、せっかくのドレスが汚れてしまうわ、それにこれは初めてだもの、ちゃんと心構えをしないとアーサー様に失礼なってしまうわ」
女はそう言ってその場から立ち去った。
――体がおかしい――
――熱い、なんだコレは?――
アーサーが目を覚ますと、いつもつけているサングラスが無くなってるのに気づいた。
そして体を見れば一糸まとわぬ姿。
四肢は肉壁に包まれ動けず、口には何かが張り付いて、喉の奥まで何かが侵入していて液体が注がれているのを感じた。
雄は何かに包まれてるし、尿道に何か入ってて何かを注入させられているのを感じるし、睾丸にも張り付いてて、酷い射精欲が体を苛む。
同時に、腸内が、疼いてて酷い。
――勘弁してくれ、俺は突っ込まれる趣味をもってねぇし、ついでにレディとしかしたくねぇんだよ、なんでこんな気色わりぃのに……クソ――
「アーサー様、お目覚めになりました?」
女が立っていた。
薄手の青いランジェリーに身を包んでいた。
薄手であり、また下着であれば隠すべき場所を隠す役割をしていないそれは女の美しい肉体をただ包んでいるだけのものだった。
ショーツは履いてないので、下半身は丸見え状態だった。
口を覆い、喉の奥まで入っていた触手がずるずると抜かれる。
不思議なことに苦しさは感じなかった。
口が解放されアーサーは、はぁはぁと呼吸を繰り返し、呼吸が整ってから女を見る。
「レディ……一つ聞くが、此処に来た連中はこいつ等の餌にでもなったのか?」
「いいえ。あの方々は私がいなくなったらどうするかと聞いたら皆ここの人達をより苦しめる事しか言わないものですから、ケルベロスの餌に致しました」
アーサーは、女の言葉に、反応した。
「……レディ、今何と?」
「ええ、ですから、ケルベロスの餌に、と」
ケルベロス――エキドナと呼ばれる生物兵器が生み出すことができる、神話の冥府の番犬の如き、三つの頭を持つ怪物、クリーチャー。
エキドナしか使役できない恐ろしき生物兵器。
エキドナ――女の姿をした生物兵器。身体能力の高さ以上に、エキドナ以上の力を持つ怪物クリーチャーを生み出し、使役するという能力を持つ。
怪物女帝と呼ばれるエキドナを除いてすべて死に絶えたと言われている。
「……レディ、まさか……」
「アーサー様、誤解です。私は怪物女帝――リリス姉様ではありません。ですがエキドナです、貴方様の想像通り」
「エキドナは怪物女帝リリスを除いて絶滅した、それは違うのです、リリス姉さまがそう流したのです、私を守るために。夫と、我が子を失った私の存在を人々に知られないようにするために」
女は――エキドナは微笑んだ。
「自己紹介がまだでしたね、私はイヴ。世界で二人目のエキドナであり――リリス姉さま以外に生き残った、エキドナの一人です」
エキドナ――イヴは微笑みながらそう言った。
「……レディ……いや、イヴ。何が望みだい?」
「先ほどもおっしゃいましたがもう一度、アーサー様に私との『子ども』を産んでいただきたいのです」
イヴはそう言ってアーサーに近づき、細い指でアーサーの逞しい胸元をなぞった。
「……イヴ、貴方は人間の生殖を知らないのかい? 男は子どもを――」
「……知っていますわ、だって最初はそうやって私は我が子を産みましたもの。エキドナと知りながら愛してくれたあの人との子――でも、人間は私の娘と、あの人を殺したのですから」
イヴがアーサーの胸元に軽く爪を立てるのを感じた。
彼女の地雷を踏んだのだとアーサーは理解した、それを必死に抑えているのも。
「……悪いことを聞いた。が、俺は男だし、エキドナは女性、逆の立場は――」
「できるんです、ただ、効率が悪い。時間がかかるから、人間同様男の方から精液をもらって私の胎で育てる方が早い――でも、できないのです。怖くて、産んだ我が子が殺されるのが怖いのです、私は」
イヴはアーサーの胸元にそっと耳を当てるような体勢を取った。
「……そう、怖いのです。でも、私は我が子を抱きたい、ずっとずっと、それを願っていました。だから待っていた、此処を元々統治していた方を殺めて、搾取などを行わないかわりに嘘の情報を流してくれるよう、皆様に頼んだのです。いつか、正義感が強く優しい方が現れるのを待って」
「……」
――成る程、我が子と夫を失った結果、狂ったのか、このレディは――
「……下衆に我が子を産んで欲しくない、私もそんな輩は抱きたくない。でもアーサー様、貴方様は抱きたいと、私の子を産んで欲しいと思ったのです」
「……俺の意思は無視してかい?」
「ええ、だって仕方ないのですもの、私はエキドナ。昔の人間が作ったおぞましい怪物、あの人以外の誰が愛してくれましょうか?」
「……」
――確かに、レディなら愛せる俺でも、このレディ……イヴの事を愛せる気がしない――
イヴは相手からの愛を求めていない、ただ欲しいのは「自分の子どもを産んでくれるにふさわしい相手」それだけ。
今のイヴはアーサーが常日頃女性に与えるような愛を求めていない。
下手にその対応をすれば、何をするか、ますます分からない危険性がある。
「……レディ、愛してない、その上自分の夫と子どもを奪った人間に『子ども』を産ませて、貴方は満足なのか?」
「ええ、満足ですわだって――」
「私から全てを奪った人間に復讐できるし、私は愛する『子ども』をもう一度抱くことができるんですもの」
――このレディ、表面に出してないだけで、人間の事を憎んでいる、心の底から、自分の「子ども」を産むにふさわしいか否か、それだけで判断してる――
――そして、俺がその条件に当てはまった、という訳か、シャレにならねぇな……――
「アーサー様、ご安心を、私は人間のようにいたぶって苦しめて、泣き叫ぶのを見て楽しむ趣味は有りません」
「……」
アーサーはイヴの言葉から、彼女が人間を酷く醜いものとして見ているのを感じた。
「ですから、そう怯えないでくださいませ……ね?」
一見すると甘い女の囁き。
だが、アーサーは、イヴの願いの為に、自分の体が変えられているのを感じ、額からつぅ……と冷や汗が流れた。
「ああ、準備は既にできてます。ですのでアーサー様は楽になさっててください」
肉壁に取り込まれていた足が解放されるが、全く力が入らず、動けない事に気づいた。
「ご安心を、一時的に動けなくなってるだけです、時間が経てば動くようになりますので」
イヴがそう言うと、自分を拘束していた肉壁が倒れた。
「んぅ?!」
ぬぽっと腸内に入り込んでいた何かが抜ける感触に思わず声が上がる。
「アーサー様は男性なので、こちらに私の『卵』を植え付けさせていただきます」
後孔を指でつつかれる感触に、アーサーは焦った。
「ちょ、待ってくれ、其処はそう言う場所じゃ……」
「ええ、何もしなければただの排泄器官ですもの、でもアーサー様が寝ている間に『卵』を育てられるような場所になるよう手を加えさせていただきました」
つぷんと細い指が入ってくる。
「んん?!」
指は無理やり入ってきたという訳ではなく、まるで最初から受け入れるべき箇所に入ってくるように自然に入ってくるように、腸内に入った。
それに快感を感じている事が、アーサーにとって危険信号をだしていた。
――待て、俺はソッチの経験はない、ということは説明通り、俺の体は「孕む」為に改造されたってことか?!――
腸壁を撫でられると、甘い快感が走る、セックスで感じたことの無い甘い快感に、アーサーは動揺する。
「まだ『卵』は入れません、だってアーサー様の此処はまだ狭いですから、だから……」
後孔に、何かを押し付けられる感触に、アーサーは何とか顔を上げてみようとした。
そして目を疑った。
先ほどまで、普通の女性の形をしていた其処に――自分の物よりも太く長い男性器が生えていたのだ。
「な……?!」
――いや、無理だろ?!――
「大丈夫です、入りますし、痛くありませんから。痛かったらすぐ止めますから、ご安心を。私は人間とは違いますので」
イヴの優しい声と残酷な宣告。
アーサーは時間稼ぎにしかならないと思いながらも、痛みを感じることを祈った。
ゆっくりと雄の先端が入り込んでくる。
「っ……?!」
アーサーは体を僅かに震わせた。
痛みはなく、甘い快感だけが生まれ、そして腹の中の疼きが酷くなる。
「大丈夫みたいですね、では」
「んぅおぉおお?!?!♡」
一気に腹の奥まで入ってくる。
とんとんと、突かれる度に声が上がる。
「ふふ、結腸の箇所も柔らかくなってます、なのでもう少し挿れますね」
「へ……ま、待て、そこは不味い、止めろ、頼むから止めてくれ!!」
めりっと貫かれる感触なのに、痛みはなく、先端が奥まで入った。
「あぅぅぅ?!?!♡」
「ふふ、アーサー様のナカは私の生殖器をしゃぶってるみたいにです。絡みついてきて、温かくて気持ち良い。孕めるように沢山慣らしてあげますからね」
ずるりと抜かれ、奥まで貫かれる、その行為が繰り返される。
「おあぁああ!!⁇♡ やめ、そこはぁ♡」
「ふふ、アーサー様前立腺と結腸の箇所を刺激されるのが好きなんですね、どうぞ気持ち良くなってください、気持ち良くなっていただくほど、母体として質が良くなりますので」
突かれる度に、絶頂を繰り返している、だがアーサーは一度も射精をしていない。
射精欲は増しているのに、射精なしの絶頂――メスイキを繰り返していた。
自分の雄を包み込んでいる触手が原因な気がするがどうすることもできず、アーサーは何度も射精を封じられた絶頂を繰り返す。
絶頂させられる度に、雄はびくつき射精しようとするがそれを阻止される。
雄としての機能を壊すという感じではない、限界まで溜めさせる、そんな行為に感じられた――が、メスイキと射精できぬ絶頂を与えられるアーサーはそれに対してまともに言葉を紡いでイヴに言うことなどできなくなっていた。
ぬぽぉ……と漸く雄が抜かれる。
アーサーは何とかそれで、少しばかり正気を取り戻し、逃れようと足を動かそうとしたが肉壁から出てきた触手が足を固定して開かせる。
「アーサー様、射精はもう少しだけ我慢してくださいね」
包んでいた触手からアーサーの雄が一度開放され、指でなぞられる。
アーサーははっはっと短い呼吸を繰り返し、なぞられる感触に、歯ぎしりをする。
指でなぞられる感触でも快感を感じるのに、一向に射精ができないのだ。
アーサーも普通の男だ、少しの刺激で射精できるほどに、雄は膨張し、勃ち上がり、カウパー液をこぼしている状態なのに、一向に射精できないのは苦痛以外なにものでもない。
「では、予行練習です。孕み、産む快感を感じていただきますね」
「ま……た、のむ、い、っかい、ださ、せて、くれ」
「ごめんなさい、アーサー様に孕んでもらって、そして『卵』の育成をよくするためにはアーサー様の精液がたくさん必要なのです。だから、もう少しだけ我慢してくださいね、予行練習が終わったら、たくさん気持ちよく射精させてあげますから」
何もない時ならば美しいと褒めたたえ、口説いているであろう、女神のようなイヴの微笑みが、今のアーサーにとっては人間を拷問して楽しむ悪魔の笑みに見えた。
イヴの背中から触手とも尻尾とも取れる物が出現した。
太さとしては、先ほど入れられた雄よりも少しだけ細いがそれでもアーサーの雄より太い異物。
ぬちゅと細い先端が入ってくる。
ぐずぐずになった腸壁はそれを悦んで締め付け、甘い快感でアーサーを再び追いつめていく。
奥の奥――結腸部まで入り込んだのをアーサーは感じた。
「んお……♡」
「手順は逆ですけど、予行練習なので、では出しますね」
「へぁ……? あ、ま、あ゛づいぃいいい!?!?♡」
奥に容赦なく熱を持った液体が大量に注がれる感触に、アーサーは声を上げる。
どぷどぷと、重く熱を持った液体がアーサーの腸内を満たしていく。
「あ゛、あ゛づいぃ……も、はいら、なぃい……♡」
雄からぴゅっぴゅっと透明な液体を吹きだしながら、アーサーは液体を注がれる感触でも快楽を得て、それにどろどろに蕩かされていた。
「予行練習ですから、少しだけ多めにさせて頂きました。では卵の方を入れますね」
「え゛あ゛……あ゛っ♡ あ゛っ♡」
既にいっぱいになっている腹の中に球体が産みつけられていく度に、アーサーは濁った声を上げて、射精できない雄は透明な液体を吹きだして震えていた。
産み付けられるたびに、頭がおかしくなるような甘い快感と絶頂を感じる。
逃げなくてはいけないという思考はまだ何とか残っているが、それが徐々にすり減らされていくのを感じ、アーサーは徐々に自分を壊されているのに恐怖を感じながらも、快楽の前になすすべがなかった。
「ふぁ゛っ♡」
「はい、産み付けは終了です、あとは孵化して産むだけですので、それまでゆっくりなさってくださいね」
触手が抜かれると同時に、栓をされる。
その所為で排出はできなくなり、イヴの言う通り、卵から何かが孵化するまでこのままらしい。
イヴは愛おし気にアーサーの腹に顔を当て、わずかに膨らんだ腹を撫でていた。
しばらく何もしない為、少しだけ正気に戻ったアーサー周囲を見渡す。
出入口らしき場所は何処にもない。
相変わらず射精欲が酷い、脱出出来たら、速攻でヌこうと思いながら必死にこの状況から逃げ出す術を探す。
ちらりと視線を向ければ、イヴは歌を口ずさみながらアーサーの腹を撫でている。
予行練習、などと言っているのに、まるで胎にいる我が子に慈しむ母親そのものだ。
我が子でなくても、この様なのだ、殺された我が子への愛情は並々ならぬものだったろうし、同時に、愛した男への愛も相当のものであっただろう。
それらを奪われたから、奪った人間への憎しみも相当なもののはずだ。
最初はそれを言葉の端々に見せたが、それを今見せる気配はない。
――おそらく「子ども」を産めば俺はお役御免だ、その時隙をみて逃げるか、おそらく殺すことはしないだろう、自分達がされた事をレディは絶対しない――
――問題は、それまで、俺が自分を保てるかだ、クソ、これに自信がないのが厄介だ――
「おご⁈♡」
腹の中で何かが無数に蠢き、排泄器官から一種の性的快楽を感じる器官へと変化した腸内から、頭を蕩かすような甘い絶頂に、アーサーの頭の中が蕩けるようだった。
「ああ、孵化がはじまりましたね、では……」
栓をしていた触手が後孔から抜かれ、どろりと後孔から腸内に吐き出された液体がゆっくりと垂れていくのを感じた。
「うぅぁあ?!♡ う、ごい、てる?!♡ やめ、ろでてくるあ、ぅぅう!!♡」
腸壁を這いずるように蠢いて移動するそれの感触にアーサーは声を上げる。
快楽を受容する期間になった腸内を蠢いているそれらは、アーサーに甘い快感と絶頂を与える。
それは普通男が女とするセックスで感じる快楽ではない、絶頂ではない。
「ふふ、アーサー様、素敵で逞しい殿方でらっしゃるのに、女性の快楽を感じる素質もおありなんて素敵。甘い快楽、甘い絶頂、それなりに素質がないと感じられないのですよ、素質がおありの方は、一度この快楽をしったらもう、雄としての本能を捨てて偽の雌へと変化してしまう……のですが、アーサー様はそこまで堕とす気はありませんの。だってアーサー様の精液が、精子が必要なのですもの。偽の雌になってしまったら、そちらも弱くなってしまいますもの、ですから雄の要素も残しながら、雌の快楽を味わってくださいな……」
イヴの言葉を聞き取ることはアーサーにはできたが、意味を理解することはできなかった。
「あ゛っあ゛っ……で、でくるぁああああ!!♡」
ずりゅっと触手の赤子らしき生物が後孔から出てきた。
雄は精液を出すことなく透明な液体を吹きだして震えていた。
一匹が産まれると、次々と腸内から出て後孔から産まれる。
十匹程の触手の赤子が産み落とされ、アーサーの端正な顔は涙や鼻水、唾液でぐちゃぐちゃになっていた。
「ちゃんと全部産めましたね。では、ごはんをあげましょう」
イヴの言葉に、アーサーの胸に張り付いていた触手らしい物体がはがれた。
「あ゛……な゛……?!」
筋肉でがっちりとした胸はどこか柔らかさを持ち、また乳首や乳輪は肥大化していた。
触手達はアーサーの体を器用に上り、乳首へと群がった。
かぷり、かぷり♡
「ん゛ぅ゛う゛~~!!♡」
甘く触手達に乳首を噛まれ、アーサーは身もだえする。
ぢゅっぢゅと吸われる感触に首を振る。
「でないぃ!!♡」
「いいえ、でていますよ」
「え……?♡」
イヴに体を少しだけ起こされ、己の体を見て見れば、アーサーの乳首からは白い液体がだらだらと垂れ、触手達はそれを吸っていた。
「う、うそだ……」
その光景にアーサーは少しばかり正気に戻る。
「おかしいことではありませんわ。いえ……子を身ごもっても乳の出が悪い、出ないという母はいないわけではないのでそうでもないかもしれませんが……」
「そういう……んひぁ?!♡ らめ、ちくびがぁ!!♡」
再び、ぢゅっぢゅと吸われる感触にアーサーは濁った声を上げ、頭を振り長い金色の髪を乱れさせる。
「お゛あ゛……♡」
漸く触手に母乳を吸われる行為から解放されたアーサーは濁った声を上げて目を虚ろにさせていた。
触手達はアーサーの母乳を吸って三倍程の大きさになると、肉壁のナカに潜り込んでいった。
「さて、アーサー様、予行練習は終わりです」
イヴはそう言ってアーサーの頬にキスをした。
先ほどの触手とは違う触手が二本イヴの尻の当たりから生えているのがアーサーのぼんやりとした視界に入って来た。
その内の太い触手の先端が、アーサーの後孔に押し当てられる。
「お゛……あ゛……あ゛ぁ゛……♡」
今までで最も太く長い物体が入ってくる感触に、腸壁は悦んで締め付け、絡みつき、甘い快楽と絶頂でアーサーの思考をよりどろどろと溶かしていく。
「では、産み付けますね」
「あ゛……? ……?! お゛お゛お゛……♡」
質量のある物体が触手の中を通っているのか、それが直に伝わり、アーサーに快楽を与える。
「あ゛……」
重さのある物質が腹の奥に収まった途端、スーッとアーサーは正気を取り戻した。
――おも、い。これが、ほん、めい?――
腹が先ほどとは異なる形にぽこりと膨らんで、後孔からは「卵」を産み付ける際に出たと思われる透明な液体がだらだらと垂れていた。
先ほどの卵達とは比べ物にならない圧迫感と重さを感じた。
そして大きさもあって排出するのがどう考えても困難なのだ。
「今のままではそうですね鳥などの『無精卵』の状態です、ですので精液が必要なのです。私の精液だと産まれてくる子どもは人間達で言う『怪物』であり、私の子とは異なるのです、そう、だから――」
「ひぅ?!♡」
イヴから生えているもう一本の触手がアーサーの雄を包み込んだ。
「アーサー様、貴方様の精液、精子が必要なのです。これから今日のは『卵』に命を吹き込む為ですが、その後は栄養を送る為に。もちろん、それ以外にも栄養を送りますし、アーサー様が死なないようお世話いたしますわ。ではどうぞ、思う存分――」
「射精してくださいませ」
イヴの言葉に、雄がびくびくと震えるのを感じた。
そして包んでいる触手の肉壁が雄をしゃぶり吸い上げる。
「あ゛~~!!♡ ざーめん、でれるぅ……♡ お゛お゛……♡」
今まで射精を封じられていた雄は、精液を触手の中に吐き出し始めた。
触手は蠢き、精液を飲み込むような動きをしている。
「まだまだ、たくさん出してくださいね?」
睾丸に張り付いた触手が蠢き、更に射精欲は増し、射精が止まらない。
雄の快楽――だが、通常ならあり得ない程長く続く快楽に、アーサーの思考は蕩かされ、口から唾液を零して、淫欲の飲み込まれた表情を浮かべていた。
「も゛……れ゛な゛い゛ぃ゛……♡」
ずるりと触手から解放されたアーサーの雄はふにゃりと萎えて、ぴくぴくと震えていた。
「少し手を加えただけでこんなにたくさんの精液が取れるなんて素晴らしいですわ。では、今度はこれを、入れさせてもらいますね」
アーサーの雄を包んでいた触手が、アーサーの開きひくついた後孔へと入り、腸内の奥へと侵入する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛♡」
体を震えさせ、アーサーは濁った声を上げる。
そして奥、「卵」のある箇所の手前で止まると一気に溜めていたアーサーの精液を吐き出した。
「お゛あ゛~~?!♡ あづ、あづぃい♡」
「アーサー様が出した時の温度で保ってましたから、それに私の『卵』には温かい方がよいので」
イヴはそう言ってアーサーの膨らんだ腹を撫でながら微笑んだ。
イヴはじっとアーサーの膨らんだ腹を見つめ、溜めたアーサーの精液を全て腸内に吐き出し終えると、ゆっくりと触手を抜いて、精液が零れないよう急いで栓をした。
イヴが最初にやった「予行練習」よりも膨らんだ腹を、イヴは愛おしそうに撫でた。
「……後は育つまで待ちましょう、それまでアーサー様の御世話をいたしますから……」
イヴが紫の目で、アーサーの青い目をじっと見つめた。
「あ゛……」
アーサーの目はゆっくりと閉じられていった。
「では、お世話をお願いね。アーサー様が死なない様に、『卵』が死なない様に」
イヴはそう言うと、触手がアーサーの体を包み、口を覆い、体を覆い、雄を包み、肉壁が再度四肢を取り込んだ。
「――私が産んだ時は二週間だったけど、この場合はどれくらいかかるのかしら? 前例は人間の雌ばかりだったから分からないわ。でもそれでも私の子ども――エキドナが産まれるのは分かってるから、気長に待ちましょう」
イヴはその場を後にした。
「……?!」
アーサーは脂汗をかきながら、目を覚ました。
夢を見ていた、無数の化け物を孕まされて、産まされて、何度も絶頂して、よがり狂う夢。
「ぅ゛……」
触手に包まれているがそれでも分かる程度に歪に膨らんだ腹を見る、夢とは違うが自分の腹の中にいるのは夢で産んだ化け物たちよりももっと危険性が高い存在。
それに、自分に「卵」を産み付けた存在――イヴは「子ども」を産んだら何をするか分からない、自分の愛する子と夫や同胞を奪った人間への復讐をしないとも限らない。
自死するという手段は完全に奪われているし、体内の「卵」を排出するのはどうやってもできない、詰んでいる。
足音が聞こえた。
「アーサー様、おはようございます」
おっとりとした口調でイヴが近づいてきた。
どこから入って来たのか相変わらず分からない。
イヴが近づくと、体を腹を覆っていた触手が、動き、ぽこりと膨らんだ歪な腹が現れる。
イヴはアーサーに近づくと、愛おし気に腹に頬をすり寄せ、撫でる。
「……ああ、ちゃんと育ってる。私が産んだ時よりも成長は遅いけど、確かに育ってる……ああ……」
イヴの紫の目から透明な液体がつぅと流れるのが見えた。
状況を抜けば、彼女は間違いなく「生まれてくる自分の子を成長を喜ぶ母親」だろう。
「……」
「……アーサー様、何かおっしゃりたいことがございますか? ああでも、口を塞いでらっしゃいますものね……」
イヴがそう言うと、喉の奥まで侵入していた触手がずるずると抜かれる。
本来なら苦痛を感じる行為のはずなのだが――
――な、んできもち、いいぃ……♡――
抜かれる感触に快感を感じながら、口を開放される。
喉が再度犯されたがるように疼くのをおさえながら、アーサーは荒い呼吸をして何とか正気を保とうとしながら口を開く。
「……イヴ、俺に『子ども』を産ませて、何をするつもりだ?」
「何を……と言いますと?」
「……産んだ『子ども』と何をするか、を聞いている?」
アーサーの言葉にイヴは首を傾げた、その表情は「おかしなことを聞く人だ」と言いたげだった。
「子どもが生まれたら育てるに決まってるではないですか、愛して、抱きしめて、傍にいて、一緒に遊んで、一緒に本を読んで、色んな事を教えて、大人になるまでちゃんと守ってあげる。どうしてそんな事を聞くのです? 人間はそんな当たり前の事を態々聞くのですか?」
「……復讐、は考えないのか?」
アーサーの問いかけに、イヴは呆れたような顔をして首を振った。
「殆どの復讐はリリス姉さまがしてしまいました。そしてアーサー様に私の子どもを『孕んで』もらった今、私の復讐はお終いです。後はただ、私はこの子が産まれてくるのを待つだけ。この子に私達の――エキドナの『復讐』を持ちこす気はありませんわ」
イヴの言葉に、嘘が無いのはアーサーの経験と、彼女の性質から理解できた。
つまり、イヴはただ本当に自分の「子ども」が欲しかっただけなのだ。
全ての発言が真実なら、イヴは「自分が産んだ我が子」を失った事が相当なトラウマになっていて「産んだ子がまた殺されるんじゃないか」という現状ではないはずなのに、それが思い浮かんで自分が妊娠する事ができなくなってしまった。
だから、自分の代わりに「我が子」を産んでくれる存在を待っていた――その罠にアーサーが掛かり、そして現在に至る。
「他にも質問はありますか? 私がお答えできることならお答えします」
「……『子ども』を産んだら、俺をどうする?」
アーサーの言葉に、イヴはきょとんと目を丸くして、首を傾げた、反応から分かる、考えていなかったのだ。
イヴは「子どもを産んでもらう」事と「産んでもらった子」をどうするか、しか考えておらず、アーサーの処遇については何一つ考えていなかったのが反応から理解できた。
「……どうしましょう、困りました。アーサー様を殺す――というのはあの人間たちと同類になる気がして嫌ですし、かといって開放すると、私達の事がバレてしまう。困りました」
「……」
「そうですね、子どもが産まれるまで、ゆっくり考えさせていただきます。子どもの名前も考えなければいけませんしね」
イヴの言葉に、アーサーはため息をついた。
本人は考えさせてもらうと言っているが、もう答えは出ているようなものだ。
自分を死ぬまでここから出さないという答えをいずれイヴの口から聞くのをアーサーは予想できた。
「……質問は以上ですか? では、始めましょうか?」
「何を……んひぃ?!♡」
腸内に温かい液体が注がれる、雄が勃起し、酷い射精欲が沸き上がった。
「お忘れになられたようなのでもう一度、これから毎日『卵』に栄養を送る為に、アーサー様に快楽を感じていただき、アーサー様の精液を『卵』がる腸内に注ぎます。卵は快楽を感じたほうが成長が進み、また私以外の親――この場合はアーサー様の体液……特に精液が栄養になります。ええ『卵』はアーサー様の体からだけでなく、こうやって栄養を与えた方がよく育つのです」
温かい液体を注いでいたと思われる触手が抜けると、ずんっと一気に貫かれた。
「ん゛お゛ぉ゛~~?!♡」
排泄器官から「快感を感じる」箇所へと変貌させられている腸内は入って来た異物を締め付けて快感を得ようとしている。
取り戻したはずのアーサーの理性は、今までのセックスとは比べ物にならない快楽を与える行為の前にどろりと溶かされた。
「精液が溜まるまで、気持ちよくなっていただきますね。ああ『卵』があるから奥で気持ちよくなれないのは少し残念ですが、動き出すようになればそこでも気持ちよくなりますから、それまではここで……」
「あぁあ゛♡ だめ、そこ゛、だめ♡」
「ふふ、前立腺気持ち良いでしょう?」
「あ゛ぁ゛、ざーめん、ざーめんださせでぇ♡」
「溜まるまでお預けです、だから早くたくさん溜めてくださいね?」
射精できないまま、射精欲が溜まり、雄も爆発しそうな位なのに、まだ溜めろというイヴの非情な言葉。
「覚えていらっしゃいますか? 我慢して、我慢して、たくさん出した時、気持ち良かったでしょう? 今まで射精した経験の中で、同じ位気持ちよかったことはありますか?」
イヴは優しく微笑みながら、まるで犬の様に舌を出して荒い呼吸をする、アーサーの口を指で優しく触る。
「ぎもぢよがっだけどぉ♡ やだ、ざーめん、だしたぃい!!♡」
「……昨日よりも精液生成速度を上げる液体の濃度が濃かったかしら? でも、我慢してくださいね、アーサー様?」
「お゛お゛ぁ゛あ゛!!♡」
ばちゅんばちゅんと突かれ、前立腺を刺激され、アーサーは濁った声を出して喘いだ。
射精欲求が酷い中で、腸内の入る箇所までをぐちゃぐちゃと犯され、作り替えらえて肥大した乳首を抓られ、母乳を吹き出して、何度も絶頂する。
腸内を突いていた物がぬかれると、潤滑液らしき液体が後孔からとろとろと垂れる感触を感じながら、腹の中をもっと突いてと疼く感触と射精したいという欲求で哀願する。
射精ができない雄を触手に包まれる。
「やっぱり濃かったみたいですね、でもこれで沢山注入できますね」
そうして、長い射精をずっと味わい続ける、射精の快楽がずっとずっと続く。
へこへこと腰を動かして、柔らかくてしゃぶり絡みついてくる女の膣よりも気持ちの良いイヴの触手の中に射精をし続ける。
「も……れ゛ない゛ぃ……♡」
昨日同様睾丸で作られた精液を全て搾り取られると、触手がちゅぽりとアーサーのふにゃりと萎えた雄を開放する。
ぬぷりとその触手が腸内にゆっくりと入ってくる。
「あ゛あ゛♡」
――ぐる、あづいのぐるぅ……♡――
アーサーの腸内の「卵」の近くまで来ると、勢いよく搾り取ったアーサーの精液を吐き出した。
「あ゛あ゛~~!!♡」
アーサーは精液が出ない雄を勃起させて、透明な液を吹き出しながら、体を痙攣させた。
精液で腹は更に膨れ、そして抜かれるが栓をされるので零れることは無い。
「はいら、ないぃ……♡」
「アーサー様は本当に良いお体です、これなら成長も早いでしょう……では、少しお休みくださいね。お腹の『卵』が精液を吸収するのは、そこそこ時間がかかりますから……それが終わったら頃、また来ますね」
イヴがそう言って、紫の目でアーサーの目を見ると、アーサーの意識は朦朧としはじめ、そのまま目を閉じた。
快楽をただ与えられる日常がはじまった。
時間帯は聞けばイヴは答えてはくれる、それから数えると大体一日に三回程その行為は行われる、多い時は五回程。
空腹感はない、体内の「卵」への栄養も含めて、口の触手が胃袋に十分な栄養が入った液体を注いでいるらしい。
一時的に体を開放してもらった際、四肢など筋肉は低下はしていない、ただ乳首と乳輪が肥大したのに合わせて、胸が筋肉質なものからどこか柔らかいものになっていた。
腹はゆっくりとだが膨らんでいっている。普通なら死んでもおかしくないはずだが、アーサーの体はそれが可能なように改造されたらしく問題はない。
雄に関しては変化はない、何もなければ。
だが、一度行為がはじまると、腸内は性器へと変わり果てて、快楽を受け取る。
雄は限界まで精液を作らされ、そして射精し、精液を搾り取られ、搾り取られた精液はアーサーの腸内に注がれ「卵」の栄養となるらしい。
わずかな正気は快楽の前ではどろりと蕩け、意識が戻る度に、膨らんでいく腹に恐怖する。
だが、その恐怖も正気も、快楽の前では無力で、蕩け、イヴの言うがままに快楽を享受して絶頂し、射精をし、搾り取られた精液を腸内に全て注がれて絶頂し、眠る。
アーサーの心は、怪物の与える快楽という名前の毒に、どろりどろりと溶けて、崩れていった。
一ヶ月が経過した頃、どんと腹の中からの衝撃による快感でアーサーは目を覚ました。
「ん……う゛……♡」
腹の中に「子ども」が蠢いているのが分かった。
特殊な膜越しに、膨らんだアーサーの腹を刺激している。
口に入っていた触手がずるりと抜かれる感触に快感を感じながら、今はもう拘束されなくなった、手で腹を撫でる。
「あ゛……♡ おれの、あか、ちゃん、うごい、たぁ♡」
蕩けた表情で、妊婦の如く膨らんだ腹を撫でる。
足音が聞こえる、もう聞きなれた愛しい足音。
「お早うございます、アーサー様……」
仮面のような微笑みではない、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる愛しい存在の来訪にアーサーは笑みを浮かべた。
「い、う゛、あか、ちゃん、うごい、たぁ……♡」
「まぁ……!!」
イヴはアーサーの言葉に嬉しそうに笑みを浮かべて静かに近づき、膨らんだ腹をそっと撫でる。
「はやく、うまれ、ないかなぁ……♡」
アーサーの蕩けた表情に、イヴは笑みを浮かべる。
人々から慕われ、多くの者が名を知り、腕利きの賞金稼ぎだったアーサーの面影はもうなかった。
今はただ、雄と雌の快楽に浸り、種族的に起きるはずのない「子を腹に宿す」事に愛しさを覚え、自分を捕えて体を改造し「卵」を産み付けた、エキドナと呼ばれる最も恐ろしい存在であるイヴを愛して、愛と快楽を強請る存在へ、堕ちた。
「赤ん坊は生まれるのに時間がかかりますから」
イヴは優しく答えて、何時もの行為の準備をする。
「あ゛……♡ たくさんついてぇ……♡ ざぁめんいっぱいださせてぇ……♡ あかちゃんにいっぱいのませてぇ……」
人間の男性器を模した生殖器を生やして、アーサーの後孔に押し付けると、アーサーは足を絡めてきた。
「はい、今日もたくさん気持ち良くなってくださいね、私達の『子ども』の為に」
イヴは柔らかに微笑んだ。
容姿に関しては別に気にしていなかったが、アーサーは逞しく男らしい――人間的に言えばハンサム、色男の部類なのは分かった。
中身が今まで自分の所に来た書金稼ぎや盗賊崩れや、統治者になろうという野心家達と全く違った。
今までの連中は自分を見るなり、殺そうとしたり、犯そうとしたり、何も聞かず人質にとろうとしたり、悪意のある連中ばかりだった。
見るに堪えない、醜い連中ばかりだった。
だが、アーサーは自分の身を心配した、また統治者と言っても話だけで済ませようとした。
自分が近づいたら、刀を抜こうとしていたが、寸止めだったろう、こちらが殺意を見せなければ彼はイヴを傷つけないのが理解できた。
故にイヴは「子を産んでもらう」に相応しいと思った、だから捕えて肉体を改造した。
色々な意味で。
そしてアーサーの体内に「卵」を産み付け、精液を大量に絞り取り、その精液で「卵」を受精させた。
そして「卵」を育てる為に、口からも栄養を与えた、生殖行為のような行為を行って快楽を与え続け、精液を大量に搾り取って、その精液を「栄養」として「卵」に与え続けた。
ただ「子どもを産んでもらう為の存在」としか最初はイヴはアーサーを認識していなかった。
子どもを産んだら、どうしようか、記憶も改ざんして、体も元に戻して開放しようか、などと考えたりもした。
が、この一ヶ月、毎日のように性行為のような事をして、体を愛でて、子どもの育成のために精液を搾り取って中に出して。
日に日に大きくなる腹を、愛おしそうに見て、従順になったアーサーを手放すことが惜しくなった。
この感情、なんなのだろうと、疑問を持つが、イヴは答えを出すことはできなかった。
分からないけれども、手放すのが惜しい――否、手放したくなくなった。
――もっと、体を改造してしまいましょう、私とずっといられるようにしてしまいましょう、そして――
――たくさん、子どもを産んでもらいましょう――
――今の、アーサーさんなら喜んでくれるかしら?――
「アーサー様」
生殖器でぐちゅぐちゅと女の膣内よりも敏感な性器と化した腸内を突きながら、イヴはおっとりとした口調でアーサーに言葉をかける。
アーサーは蕩けた目でイヴを見た。
「アーサー様が嫌でなければ、これからも私の御傍にいてくださいませんか? そして子どもをもっと産んでいただけませんか? ずっと、心地よくしてさしあげますので……」
イヴの言葉に、アーサーは笑みを浮かべた。
「いるぅ♡ いっぱいうむぅ♡ ずっときもちよくさせてぇ……♡」
蕩けた声でイヴの望む言葉を言ってくれて、イヴは嬉しそうに笑ってご褒美と言わんばかりに、アーサーの前立腺を刺激する。
「お゛っ♡ あ゛♡ そこ、すきぃ♡ ごつごつっていっぱいついてぇ♡」
「ええ、アーサー様がこれから沢山気持ちよくなれるように致しますね」
イヴは妖艶に微笑んだ。
その日からイヴはアーサーに与える液体を少し変えることにした。
生存と「子ども」に必要な栄養と体で「卵」を育成できるように変質させる要素、体を衰えさせない要素、快楽をより感じやすくする媚薬的な要素等にもう一つ足すことにした。
人間があこがれて病まない不老不死――に少し近い存在に体を変質させる要素を混ぜた。
もともとエキドナは不老不死に近い存在だ、何もしなければ死なないという意味では完璧な不老不死に近い。
が、人間であるアーサーをそこまでにするには少々無理がある、不老に関しては全く問題ないが。
だが液体を定期的に摂取することで、不死に近い状態にすることならば可能だ。
人間は作ったエキドナの進化の速さと不老不死に近い存在である事を恐れて殺したのだ。
今もなお進化するエキドナであるイヴには、アーサーを不老不死に近い存在にする位簡単だった。
今は条件付きだが、いずれそれもなくなるだろうとイヴは思った。
「あ゛、あ゛♡ あづい、ざーめんではらがいっぱい……♡ お゛ほぉ゛?!♡ あか、ちゃん、うごいたぁ……♡ あ゛……あ゛……ざーめんなくなっていくぅ……もっと、もっとぉ……♡」
日に日に成長し、アーサーから搾り取った精液の吸収速度も上がっている、彼の腹の中にいる「我が子」の反応を見ながら、イヴは膨らんだ腹を撫でる。
「育成は順調ですね……食べ盛りなのでしょうかね? 少し栄養補給してからにしましょうか、溜めた精液は全部注いでしまいましたから」
イヴがそう言うと、肉壁から触手が出てきた。
前は口に張りついて、直接胃袋に注ぐタイプの触手だったが、アーサーが触手を悦んで咥えるようになったので、普通の触手にした。
「んぶ♡ んっ、んぶ、んぅ、んっ……♡」
アーサーはじゅぽじゅぽと触手を咥え舐り、ごくりごくりと液体を飲み干していく。
液体には質の良い精液を作らせる効果もある、人間的に言えば精力剤のような効果もある。
だが精液を作ったとしても、アーサーは自分の意思では射精はできない。
イヴが「許可」しない限り、射精できないのだ、精液だけは出せないのだ。
液体を飲み、勃起し始めたアーサーの雄をイヴはつぅと撫でる。
「あ゛、あ゛♡ しゃせー……しゃせー……♡ ざーめん、だしたいぃ♡」
「今射精したら気持ち良い時間は短いですし、量も少ないので、精液がたくさん溜まるまで、少し我慢しましょう? その代わり沢山気持ちよくしてあげますから……ね?」
指で雄を優しく撫でながら、イヴはいつものように優しい声色で言う。
「あ゛♡ あ゛♡ がまん、するぅ♡ だから、いっぱいきもちよくしてぇ♡」
「はい、気持ちよくいたしますね」
そう言って、再度雄を模した生殖器を生やすと、それを後孔にゆっくりと挿れた。
「ぁはぁ♡ あっあっ♡」
子どもを包んでいる膜は出る時以外は柔軟性と頑丈さ、衝撃を吸収し、周囲から栄養を取り込むという性質を持ち合わせている、それにエキドナの子どもは母体が快楽を感じる程育成もよいし、また体液――エキドナ以外の体液を吸収すると育成も良い、産まれた時から強い子が産まれる。
エキドナのイヴが孕んだ時、イヴの夫は腹の膨らんだイヴを抱く行為はしなかった、精々指を入れて愛撫する位。
エキドナに孕まされた人間の雌は孕んだ後も色んな者に犯されていたケースが多い。
愛した我が子より、そちらの子が強く人間的に言えば健康な子だったのがイヴとしては少し不満だった。
『どうして愛し合って生まれた私と夫の子どもよりも、実験で生まれた子の方が健康なのだろう』
と。
自分達の性質だからという意味では仕方ないことだった、けれども、いまだに納得しきれてない――が、アーサーの体内に「子ども」を宿して、その為に性行為じみたことをしてる内に、少しだけ受け止められるようになった。
だがその理由を、イヴは理解できなかった。
そして更に二ヶ月が経過し――領地は白い雪で覆われていた。
イヴは窓の外を見て、ふぅとため息をつく。
アーサーの腹はもういつ生まれてもいい大きさになっている。
だが、まだ産まれないし、アーサーは少しだけ痛みを感じているが、今のアーサーは嬉しそうな顔で腹を撫でている。
が、あまり大きくなりすぎては子を「宿している」アーサーに負担がかかる。
それは好ましくないとイヴは思った。
そしていつものようにアーサーの元へと向かった。
肉壁の部屋触手の集まりでできた部屋。
何時もの様にアーサーに近づくと、アーサーは荒い呼吸をしていた。
「……アーサー様?」
イヴはアーサーに近づく、明らかに腹の様子も、アーサーの様子もおかしい。
「いだぃのに、きもぢいぃ……」
後孔から、液体が少しずつ出ているのが分かった。
「アーサー様リラックスなさってください。産まれます」
「うまれる?♡ おれという゛の、あかちゃん……♡」
アーサーは蕩けた表情を浮かべた。
「お゛お゛……」
力の抜けたアーサーの腹に、負担にならない程度にイヴはゆっくりと押した。
少しずつ後孔から液体が出る量が増す。
「お゛♡ お゛♡」
声から苦しみの色が消えはじめた。
「うごいでるぅ♡ あ゛、で、で……う゛ぅあ゛あ゛あ゛!!♡」
膜に少し包まれたまま、エキドナの赤子がアーサーの後孔を目いっぱい広げて産まれた。
イヴは恐る恐るまだ体が全て出てない赤子をゆっくりとひっぱる、膜が肉の床に落ち、液体が床にびちゃびちゃと滴り広がった。
おぎゃおぎゃぁ
赤子は産声を上げた。
イヴはその声に安堵の息を吐きながら、アーサーに赤子を近づける。
「アーサー様、見てください。貴方様と同じ髪に、同じ目の子が産まれましたよ」
「あ゛……♡ おれのあかちゃん……♡」
アーサーに渡すとアーサーはいとおし気に赤子を抱いた。
ちょうど胸のあたりに口が当たったのか、赤子はアーサーの乳首に吸い付いた。
「ひゃぅ?!♡ ま゛っでぇ♡ おっぱい、でるけど、あ゛、つよひぃ゛!!♡」
赤子に乳を吸われ、濁った声を上げて身もだえするアーサーを見てイヴは笑みを浮かべた。
「あらあら、アーサー様のお腹にいたときから食いしん坊でしたのに、お外にでても食いしん坊なのですね」
心の底から嬉しそうに、イヴは笑った。
雪が溶け、春の季節が巡ってきた。
金髪に、赤い目の黒いコートを着た女が一人。
とある領地を訪れた。
嘗て「暴君がいる」という嘘の情報を流し、領民たちもそれに従い演技していた領地。
今は皆明るい表情で行きかい、春を満喫し、仕事に励んでいる姿を見る事ができた。
女はそれにちらりと目をやっただけで、誰かに声をかける事もなく、白亜の城へと向かった。
女は城の中に入ると、ロボットが姿を見せた。
『リリス様、ようこそいらっしゃいました』
「イヴは何処にいる」
『今は自室にいらっしゃいます』
「わかった」
女はそう言うとそのまま城の中を歩いた。
一つの部屋の前に着き、綺麗な扉をノックする。
「誰ですか? 今はゆっくり休みたいのですが……」
美しい女の声が部屋から聞こえた。
「イヴ、私だ。リリスだ」
「まぁ、まぁ、リリス姉様!! 今、扉を開けますね」
「疲れているのだろう、構わん。鍵は開いてるな?」
「ええ」
部屋の中の女――イヴの言葉に、金髪の女――リリスは扉を開けて部屋の中に入った。
リリスは部屋の中に入ると目を細めた。
広いベッドの上には体を起こしているイヴと、眠っている金髪の長い髪の逞しい――明らかに賞金稼ぎなどの仕事をしていたと思われる男と、眠っている金髪の幼子がいた。
「久しいな妹――元気そうで何よりだ」
「ええ、元気ですわ。そうだ、ご紹介しないとこちらは――」
「アーサー。賞金稼ぎのアーサー、だろう」
「……姉様ご存じでしたの?」
リリスの言葉に、イヴは驚いたような顔をした。
「多少面識はある、人に紛れていたからな、まさかエキドナが人に紛れて各地を放浪してるとは誰も思うまい」
リリスはそう言った。
「――で、その子どもは? いや、そのエキドナは?」
「ええ、聞いてくださいな。この子は私とアーサー様の子どもですの。スノウ、と名づけました」
「……産ませたのか?」
「ええ、体を改造して、卵を体内に入れて、アーサー様の精液で受精させて、それからずっと成長の為に栄養を与えました」
「……そうか」
嬉しそうに笑う妹に、リリスは静かに目を閉じてから口を暫く閉ざし、そして目を開き無表情で尋ねた。
「幸せか?」
「ええ、とても! 今はこの子の育児と、アーサー様の体が落ち着くまでゆっくりと過ごさせていただいてますが、落ち着いたら、アーサー様にまた子どもを産んでもらいますの」
イヴの幸せそうな笑顔を見て、リリスはアーサーを見た。
予想はできた、このアーサーは嘗て自分と酒場で酒を飲み交わした、あのアーサーではなくなっていると。
嫌いではなかった、自分はハンサムだと言うところは多少腹が立ったが、良い男だった。
リリスは妹の望みを知っていた。
もし会ったならば妹は確実にアーサーに自分の子どもを産ませようとするだろうと。
エキドナの子を身ごもった場合――快楽に敏感になり、脳は体は快楽に支配され、人格が変化する。
どんな人間であろうと、その快楽には耐えられず、快楽に溺れていく。
そしてエキドナに従順に従うようになる。
それも危険視され、エキドナと、エキドナに従う人間や守ろうとした人間は殺された。
生き残ったのは、リリスとイヴの二人だけ。
リリスは子も夫も居なかった、イヴには夫と子どもがいた。
イヴは夫と子を失った。
自分達は居ない方が良いとリリスはずっと思っていたが、嘆き悲しむイヴを――妹を見て怒りを覚えた。
幸せそうにしている妹の姿がリリスの荒んでいた心を唯一癒してくれた。
人間の男を夫にして子どもを作った時は、顎が外れるかと思った。
だが――その幸せそうな家族の光景はリリスの「人間に使い捨てられる武器である」という事を忘れさせ、癒しの一時をくれた。
それを、人間が壊したのだ。
許せなかった、憎いという感情が芽生え、怒りという感情が芽生え、気が付けば世界をめちゃくちゃにしていた。
人間全てを滅ぼそうかと思ったが、イヴに幸せな時間を与えたのも人間だったこともあり、滅ぼすのを止めた。
住める環境を残してやった。
しばらくの間は、嘆くイヴの傍でリリスは時を過ごした。
そして、イヴが落ち着いて過ごせる場所を探した。
イヴは四季が好きだった。
だから四季の巡る場所を探した。
そこで、愚かな統治者がいる場所があった。
リリスは統治者とその蜜をすする連中を皆殺しにして、イヴを統治者にした。
だが、そのイヴは何を思ったのか領民に命令を出した。
『ここには暴君がいる、民は皆怯えていると情報を流して、貴方達は演技をしてください。情報は分かる人が分かる程度にのみ流してください。お願いします。』
リリスは、イヴが何故それを言い出したのか最初は分からなかった。
だが、来る連中を殺しているイヴの「違う、貴方様では嫌」という発言を聞いて理解した。
イヴは、自分の子どもを「産んで」くれる存在を待っているのだと。
正義感が強く、だがそれは独善ではなく、真っ当な人間が来るのを待っていたのだ。
嘗て自分を愛してくれた人間の男ではなくともそれに近しい存在を、ずっと――
『姉様、私は――我が子をもう一度抱きたいのです』
イヴはそう言っていた、ただ「我が子」を抱きたいと。
けれど、己の胎から産み落とした「我が子」を無残に殺された故に、自分が「産み落とす」事が心の傷となった。
だから、イヴはずっと「産んでくれる」存在を待っていた、我が子を産んでくれる相応しい存在を。
待ち続けて、どれくらい年月が経っただろうか、世界が変わったあの日からどれ程年月が経っただろうかとリリスは思った。
ただ、永い時間が経過したと思った。
イヴは諦めず、待ち続けた。
たとえ話をした時大抵の者が「待つのを止めて外に出ればいいのではないか? 自分から探しにいけばいいのではないか?」と答えた。
だが、イヴはできない。
イヴにとって外の世界は「恐ろしい場所」、自分の子どもと夫を奪った「恐ろしい場所」なのだ。
この領地、この城をリリスが見つけるまで、イヴは一人リリスを待ち続けた。
見つけた時も、空間転移装置を起動させて、なるべく外を出歩かないようにさせた。
そして、イヴは城でただ、ロボット達と日々を過ごし、定期的に城に来る領地内の役人達と話をして領地を運営した。
それを永い間ずっと続けて、待ち続けた。
リリスは眠るアーサーを見て思い出した。
ああ、この男はたとえ話でも他とは違う答えを出した、と。
『俺なら、そのお姫様を連れ出して綺麗なものをたくさん見せるね。そして言うんだ、世界は恐ろしくないと、美しいと。そして、お姫様がもっと世界を見たいというなら、俺はその願いを叶えるとも。その間に俺の事を愛してくれたなら、俺は愛そう、お姫様が愛した相手がお姫様を幸せにできそうなら、託そう』
確かそんな答えだったとリリスは思った。
確かにそんなアーサーなら、イヴの望み続けた存在になるだろう。
もう、今のアーサーはそのアーサーではないだろうが。
少しだけ、人間だが腹立たしい程眩しくて、頼りがいになる男がもう「居ない」ことに心が痛んだ。
もういないのだ、あの眩しい男は、今そこで眠っている男はその男の名前の全くの別人に等しい。
話してなくても分かる、そして話すつもりはない、言葉を交わすつもりはない。
――あれ程鬱陶しくてそして眩しかった、羨ましかった男が、今は壊れた姿など見たくない。見たら心が平静でいられなくなる――
「では私行こう」
「もっとゆっくりしてくださっていいのに」
「……旅に、飽きたらな」
「姉様はそればかり……スノウだって挨拶してないのに」
「寝た子は起こすな、というだろう……ああ、そうだイヴ」
「何ですか、姉様」
「……お前はこれからどうするつもりだ?」
リリスの問いかけに、イヴはきょとんとしてから微笑んで、眠るアーサーを抱きしめて笑った、無邪気な子どもの様に。
「アーサー様に、たくさん子どもを産んでもらいますの。たくさん、ええ!!」
「……そうか、ではな」
リリスはそう言って部屋を後にした。
城を出て、領地から離れ、一人道を歩きながらリリスは考えた。
次ここに来るのはどれくらい時が経ってからだろうかと。
――ここからおかしな噂が流れだしたら?――
――それとも、受け止めることができるようになってから?――
未来のことなど、リリスには分からなかった、後者に関しては少しだけ時間がかかるのは感じた。
だが前者――イヴの子ども、エキドナが増えた結果噂が流れだしたらどうなるのだろうか。
リリスは目を閉じ、息を吐いた。
もう、人間にはどうする事もできないだろう。
エキドナが増えたら――人間はエキドナの為に生きる以外選択肢はなくなるだろう。
エキドナが人間に取って代わることは無い、エキドナが産まれるのは他の種族が必要だ、それが女か男かは関係ない。
エキドナ単体では「怪物」しか生まれないし、エキドナ同士でも「怪物」しか生まれない。
――人間は愚かだ――
――下らぬことに勝つために私達のような「化け物」を作り、それを殺そうとした結果、お前達は生物の頂点から引きずり落とされたのだ――
リリスは目を開け、歩き出した。
――いつ来るか、か……――
――来年の春、またここに来るとしよう、そして、受け止めるとしよう、それが私の役割だ――
来年の春此処に来る、それ以外は行く先も何もない、リリスの――一人のエキドナの旅がまた始まった。
「……姉様行ってしまわれたわ。次はいつ来てくれるのかしら?」
領地を監視している鳥の姿の怪物の視界に映る、リリスの姿を見て、イヴはふぅとため息をついた。
「……どうしたのかしら」
「んぅ……」
イヴの子――スノウの頭を撫でていると、体を動かし、青い目を開けて起き上がった。
「ままぁ……」
少し眠そうな表情をしている。
白いワンピースの裾を掴んで焦れているようにも見えた。
「どうしたのスノウ? まだ眠いの?」
「……おなかすいたの……」
「そう、じゃあご飯を――」
「ぱぱのがいい」
スノウはいやいやと言わんばかりに首をふった。
「あらあら、まだミルクの方がすきなのね、なら仕方ないわ」
イヴは人間ではもう四つ程の年の大きさに育った我が子の言葉に、微笑んで頭を撫でる。
「アーサー様」
イヴは眠っている、アーサーを揺さぶる。
スノウは、アーサーの上に乗っかって、胸元のボタンを器用に外した。
「う……あ……」
揺さぶられる感触にゆっくりとアーサーは目を開けた。
「アーサー様、スノウがミルクが欲しい、と」
「ぱぱのおっぱいほしい」
言葉を理解する前に、露わになった乳首を吸われる事による快感が頭を直撃した。
「ひぃ!!♡ れ゛な゛いぃ゛♡ も゛う゛れ゛な゛い゛ぃ゛♡」
「……そうですね、出が悪くなってますものね、スノウそろそろおっぱいは卒業できない?」
「ん゛~~!!」
「ひぎぃ!!♡」
より強く乳首を吸われるが、アーサーは幼子を――我が子をどけるなど出来ない、ただ喘いで、喉を反して、みっともない顔を晒すだけ。
子を産んだあの日から、アーサーは子が腹を空かすと乳首を吸われ、乳を吸われた。
見た目なら乳離れしてもいい位の大きさに育った子は、相変わらずアーサーの乳を強請り、吸い続けていた。
普通ならあり得ない事ばかりなのに、今のアーサーはもうそれを判断し、考える事ができなくなるほど、脳を犯され、改変されていた。
「ひっあ……♡」
だらしなく口から唾液を零し、黒いズボンの股間の箇所が盛り上げ、透明な液を滲ませていた。
ちゅぱっと子が乳首から口を離す。
乳首は勃起しているかのように立ち上がり、赤くなっていた。
「……たりない、こっちはだめ?」
子が射精したがっている雄を布越しに触る。
「ひぁ゛?!♡」
射精できない状態で射精欲が限界まで達している勃起した雄を布越しに触れ、アーサーは声を上げてだらしなく舌を出した。
乳までは別に構わないが、今の我が子に精液を飲ませるのは不味いのを理解しているイヴは優しく我が子スノウを諭す。
「子どもの貴方はまだ駄目よ。大人になってからね?」
「ぱぱのおなかのなかにいたときはたくさんくれたのに……」
「今の貴方が飲んだら、一気に成長して体がとっても痛くなるの、痛いのは嫌でしょう?」
「いたいのはいや……」
「だから、普通のご飯も食べましょう? ね?」
「うん……」
ガチャリと部屋の扉が開く、ロボットがやってきた。
『スノウ様、お食事に致しましょう』
「わかった……ままは?」
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「うん」
スノウはロボットに手を引かれて部屋を出て行った。
扉の閉まる音を聞き、イヴはアーサーを寝かせて、するりとズボンを少し下げた。
今にも射精しそうなのに、出来ずにびくびくと震えて、透明な汁を垂らす雄があった。
「しゃせー……しゃせーしたいぃ……♡」
「ふふ、いいですよ」
イヴのスカートの下から触手が伸び、アーサーの雄を包んだ。
「お゛♡」
「はい、たくさん射精してくださいな」
「あ゛あ゛~~♡ ざーめんでれるぅ♡ お゛お゛……♡」
イヴは、子を産んだ後もアーサーの精液を搾り取っている。
目的は二つ。
一つはアーサーの「雄」の機能を維持しつつより質のよい状態を保つこと、もう一つは――
「――ええ、気まぐれに付けられた男性兵士たちの性欲解消として作られた性質の所為で、人間の精液を美味と感じられるなんて、最初は困惑しまし、あの人といる時も慣れませんでしたけど、慣れてしまえばよい栄養補給になりますね、これは」
アーサーの精液を吸収し、自分の栄養にすること。
本能的に分かるのだ、自分の体の状態が良くなっていると。
「も゛……れない゛ぃ♡」
精液を吐き出さなくなった雄を触手から解放し、萎えた雄を仕舞って毛布をかけてイヴはアーサーの額に口づける。
「では夜までゆっくり休んでいてくださいませ……」
イヴの言葉に従うようにアーサーは目を閉じ、再び眠りに落ちた。
イヴはアーサーが眠ったのを確認してから部屋を後にした。
イヴは我が子の食事を見守り、遊び、学ばせた。
だが、城の外へは決して出さなかった。
「まま、どうしておしろのそとはだめなの?」
「……外はね、危険なの、貴方のお姉さんや、私の姉妹達、味方をしてくれた優しい人は皆、外で殺されたの……だから、お願いスノウ、外へは出ないで……」
スノウを抱きしめ、悲哀の色に染まった声で言う。
「……うん」
スノウは、母親であるイヴの怯えを感じ取ったのか、外には出ようとしなかったが、時折聞いてその度に、怯えた声で言う母の言うことに従った。
夜、イヴはスノウを子ども部屋のベッドに寝かせ、眠るまで傍にいてあげた。
スノウが眠ると、そっと部屋から立ち去り、自室へと戻る。
扉を開けると、匂いがした、発情した人間の匂い。
ぐちゅぐちゅという粘質的な音、荒い呼吸の音。
「アーサー様、遅くなってしまってごめんなさい。今日はスノウを寝付かせるのに時間がかかってしまったの」
「うう゛ん゛♡ こども、は、なかなか、ねつか、ないから、しかたない、もん、なぁ♡」
「有難うございます」
イヴはベッドへと静かに近づく。
ベッドの上では、後孔に男らしい自身の指を入れてぐちゃぐちゃと腸内をいじり、透明な液体を勃起した雄から垂れ流し、雌の絶頂に浸っていた「夫」の姿があった。
「一人は寂しかったですか?」
「さびしぃ゛♡ いう゛がいなかったからぁ゛♡」
指を抜いて蕩けた顔をアーサーはイヴに向けてきた。
濡れていない手を伸ばしている。
「では、これからは『夫婦』の時間……アーサー様、たっぷり愛し合いましょう?」
イヴはするりとドレスを脱ぎ、美しい女性的な裸体と――それに不釣り合いな雄露わにする。
わざわざ生やすのが手間がが掛かっているが、愛する「夫」の為だ、これくらいの手間は別に良いだろうと、イヴはその雄の存在を認識している。
仰向けになったアーサーに覆いかぶさるような体勢を取り、舌を伸ばすアーサーの口に口づけをする。
舌を絡ませあって、確かめ合うような口づけをしたあと、勃ち上がった雄を、開きひくつく後孔に押し付け、焦れている其処に一気に挿れた。
「い゛~~~~!!♡」
腸内がぎゅうと締め付けてきた、温かく、しゃぶりつくように雄に絡みついてくる其処の感触に、この箇所を使った性行為を好む人間がいる理由をイヴはいつもこれで納得する。
「けっちょうまで、ずんってきたぁ♡ いう゛、ざぁめんたくさんごくごくさせてぇ♡ いっぱいきもちよくさせてぇ♡」
アーサーは腰を動かしながら、足を絡ませてきた。
「はい、たくさん気持ち良くなってそして、それが終わったら、いっぱい射精してくださいね」
イヴは笑みを浮かべて、腰を動かした。
「ふぁ゛あ゛あ゛っ♡ いぐ、いぐぅ♡」
アーサーは透明な液体を雄から出しながら、舌を出して、絶頂に至った事を言う。
実際腸内も、ぎゅうと締め付け、精液を強請るような蠢きをしている。
「アーサー様、私まだ子どもが欲しいんです、スノウの育児が落ち着いたら、また子作りしても宜しいですか?」
「あ゛っ♡ うむ、うませでぇ♡」
「有難うございます、アーサー様」
自分の願いを受け入れてくれるアーサーにご褒美と言わんばかりに、結腸まで雄を突っ込み、其処で精液を吐き出す。
「お゛お゛っ♡ ざーめんれでるぅ♡ おくでぇ、あづい、あづい、ぎもぢい゛ぃ゛……♡」
蕩けた表情のアーサーを見て、イヴは穏やかに笑う。
「アーサー様」
「愛しています。だからずっと、私の御傍にいてくださいな」
イヴはそう言ってアーサーに再び口づけをした。
人に作られたエキドナ。
一人のエキドナは願いを持っていた、二つ。
一つは、もう一度我が子を抱きしめ育て愛すること。
もう一つはエキドナは気づいていなかった。
もう一つの願いは、愛することができる者が欲しい、愛してくれる者が欲しい、その存在にずっと傍にいて欲しいということ。
エキドナの願いは叶った。
愛する我が子を、再び抱き、育てることができている。
そして、愛することができた存在が自分の傍から離れることなく、自分を愛し続けてくれる求め続けてくれる。
エキドナは――イヴは哀れだった。
人間を元に作られ、女しか生まれぬ存在として作られた。
番となった最初の男は人間に殺され、子どもも殺された。
それでも、その時の幸福を忘れられず、取り戻そうと彼女は待ち続けた。
そして、永い時を経て現れた男を捕まえ、堕とした。
かつて、手にした幸福とは違う幸福。
だが、イヴは満足した。
幸せなのは、変わりないからだ。
イヴはこれから繰り返すだろう。
男を――アーサーに子を産ませ、育てるという行為を。
最初あった時とは別人となったアーサーを愛し続ける行為を、まぐわい続ける行為を。
幾度も繰り返すだろう。
誰もそれをとめることはしない。
何故ならこれは、彼女の城――箱庭だけで完結する世界だから。
彼女の世界はそれだけで十分だった。
箱庭で、イヴはアーサーと愛し合う。
蕩けるような快楽を彼に与えて堕とし続ける。
体内に子どもの「卵」を産み付けて育て、産んでもらう。
そして産んだ子どもを共に育てる。
それを、繰り返し、幸せな世界にイヴは浸り続ける。
彼女の「願い」は叶った、たった一人の男が贄になったが――
それを知り、理解するのは、彼女ではなく、彼女の姉――リリスのみ。
それ以外誰も理解し、知ることは無い――
――私は今、とても、幸せです――
人間に利用されるためだけに作られた一人のエキドナは、こうして幸せになりました。
エキドナはとても幸せです。
愛する家族と安全な場所で穏やかに暮らすことができるのですから。
誰かを傷つける事をもうする必要もないのです。
だから、彼女はとても幸せです――
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保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
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大衆娯楽
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