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とりっくおあとりーと~おひめさまとおかしの花~
しおりを挟むとある人の住まない土地に建てられた塔にお姫様が暮らしていました。
お姫様はいつも塔の中で付き人達と暮らしていました。
退屈な毎日。
そんなお姫様が待ち望んでいた日があります。
ハロウィンの日です。
その日だけは父である王様から外に出ることを許されました。
お姫様は町に向かい大人達に声をかけます。
「とりっくおあとりーと!」
可愛らしいお姫様に皆「まぁこわい!」と笑いながら帰してお菓子で作られたお花をプレゼントしました。
この町ではハロウィンのお菓子は皆花の形をしているのです。
お姫様はたくさんのお菓子を手に持って満足げ。
でも、そのお菓子は他の子ども達と違い、お姫様にとっては食べる為のものではありませんでした。
お姫様はハロウィンの日、最後に向かう場所に行きました。
お墓が建てられた場所です。
お姫様はお墓を綺麗にすると、持っていたお菓子全てをお墓にお供えしました。
「おかーさま、このおかしならたべられるでしょう?」
お花のお菓子は幽霊でも食べられると言われているお菓子だからお姫様は集めていたのです。
お姫様はにこにこと笑ってお墓に語りかけます。
このお墓の下にはお姫様の母親が眠っているのです。
永遠の眠りについているのです。
お姫様は少しおしゃべりしてから、こぼれた涙を拭って笑顔で立ち上がります。
「おかーさま、らいねんもあつめてくるね」
そう言うと迎えに来た付き人と帰っていきました。
来年もお姫様は集めます、大好きなお母さんの為に──
お姫様がいなくなったお墓の前に、お姫様の父親である王様が立っていました。
お姫様が集めたお菓子を一つ残らず食べてしまいました。
王様は知ってたからです、幽霊が食べられるなんて嘘だと。
また、お姫様の母親のお妃様はハロウィンの日も決して地上の人々に紛れてくることがないことも知っていました。
でも、母親が食べていると信じているお姫様の為に、娘の為に王様は嘘をつくことにしたのです。
娘を庇って死んだ妻と、そのショックで年を取らなくなった娘の為に。
王様はお姫様が集めたお菓子を食べます。
全て食べ終えると、食べた時に出たゴミを配下に捨てるように命じてお墓に一輪の本当の花を添えました。
「今でも君とあの子を愛している。だから嘘をつき続ける私を許してくれ」
「あの子の命を狙う者がいるからこの日以外外に出せない私の無力さを許さないでくれ」
お墓に向かってそう言うと、王様は立ち去りました。
ハロウィンがもうすぐ終わるからです。
終わったら王様の姿が目立ってしまいます。
だから王様は町から姿を消しました。
人のいない土地の王様。
人ならざる王とその娘は、一年に一度のハロウィンの日を待ち望みます。
最愛の妻/母親の墓参りにいけるから。
王と、母が出会った場所に建てられた墓に堂々といくことができるハロウィンの日を、待ち望んでいるのです──
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