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悲しいおとぎ話のように
止められない
しおりを挟む「う……」
「大丈夫かい……? 無理なら、もう止めよう。私は君を苦しめたくない……」
ニュクスは私の胸に顔をうずめながら、首を横に振る。
ニュクスの「月の血」は終わったばかりだ。
そんな、負担が残っている、傷が癒えていない女性器に挿れるなど私はできない。
けれど君はまぐわいを求める。
繋がりを欲する。
自分の「普通と異なる体」でもいいと安心したいと言って。
ニュクスの壊れている心が、より歪になっているのが分かる。
私の所為だ。
こんな状態の君と自分は離れた方が良いと言ってそれを行った結果、君は自分の価値をより下げてしまった。
傍にいるだけでは、何も役に立たないと、思うようになってしまっている。
口で言っても、今のニュクスには伝わらないだろう。
私は傍にいたニュクスに傷を負わせた。
自分が憎くてたまらなくて行った行為の結果、意識がない状態ですらニュクスに傷をつけても自分の自傷行為を止めることができなかった。
それもあって、ニュクスはより「自分は役に立たない」と己を責めている。
だから、少しでも繋がりを求める、必要とされたいと願う。
居てもいいんだと信じたいのだろう。
私が突き放せば、もうそこでニュクスのヒビだらけの心は一瞬で壊れて、もう戻らなくなる。
だから私は君の事を否定しかねない言葉や行為はできない。
傷つけに傷つけて、追いつめたのは、私、なのだから。
今のニュクスとするのは初めての箇所。
おそらく……玩具などを使用したら今の君の体は受け付けない箇所。
潤滑液を注いだ其処に、潤滑液で濡らした指を入れて、窄んでいる其処を少しずつ広げてほぐすように指で慣らしていく。
体を震わせて、か細い息を吐きだしながら、私の胸に顔をうずめているニュクスの反応を見ながらというのはそれなりに難易度が高かった。
表情を決して見せてくれない、必死に声を殺そうとする。
私の服を握っているけど、私の肌が露出している箇所を触ろうとしない。
女性器の箇所でまぐわうのとは明らかに違う感覚に、酷く怯えているのに、それを言おうとしない。
分かってるのだろう、言えば、私が止めることを。
だから君は言わない。
君は今、怖くてたまらないから、繋がりを欲しがってる。
言葉でどれほど伝えようとも、抱きしめようとも、安心できないのだ。
自分が「異常」だと、「異質」だと思い込んでいるから。
そう思わされる傷が残ってしまっているから。
「……ニュクス、顔を、見せてくれないか?」
ほぐれた後孔から指を抜いて、私はお願いをする。
けれども、ニュクスは首を横に振る。
「……お願いだ、ニュクス……私は君を傷つけたくないんだ……」
何度も、何度も言い聞かせる。
けれども、ニュクスは首を横に振って、答えようとしない。
苦しくても、痛みが伴っても、今のニュクスは「繋がり」を欲しがっている。
肉体での「繋がり」が強固ではないことを私は知っている。
けれど、今のニュクスは知らないのだろう。
だから、それを口にすることはない。
それを知ったら、君はどうすればいいか分からなくなる。
君は「必要とされなくなる」事に「いらない」と言われる事に今まで以上に怯えて生きることになる。
――それだけは、嫌だ――
ニュクスの体が苦しいと痛いと、辛いと感じるのは、嫌だ。
けれども、それ以上に心が苦しむ方がもっと嫌だった。
そうしたのは、他でもない私自身だから、私は私が憎くてたまらなかった。
けれど、君は私以外に怯えて、近寄ることすらできない。
死にたがっていた君は、今は殺される恐怖に怯え続けている。
忘れて、忘れて、他と「違うことはおかしい」という事も、自分が「命を根われ続けた」という事も、全て忘れて欲しかった。
忘れるなら、いっそ、全て忘れてくれて欲しかった。
何も思い出さないで欲しかった。
そうすれば、君は明るい笑顔で、家族と新しい関係を築き、幸せになれただろう。
この国で、幸せに生きられただろう。
だけど、そうならなかった。
そうならなかった結果がこの様だ。
どうして君ばかりが苦しむのだろう?
私はどうしてそれを少しでも和らげることができないのだろう?
ほぐした後孔に雄の先端を少しだけ挿れれば、体をびくりと震わせた。
「……ニュクス、無理なら、言ってくれ、傷つけたくない。私はもう君を傷つけたくないんだ……」
君はそれでも何も言わず、首を横に振るだけ。
この状態でやめれば、君は傷つく。
だから続けるしかない。
久しぶりのまぐわい。
本来まぐわいの為に使う箇所ではない。
締め付けが強いけれども、拒絶しているような感触はない。
ゆっくりと動かすと、ニュクスは私にしがみついてきた。
反応的に分かる。
唇を噛んでいる。
声を上げるのを怖がるように。
声を聞かれるのを怯えているように。
「……ニュクス、お願いだ、君の声を聞かせてくれ……私は、君の声が聞きたい、君の顔が、見たいんだ……君の声が無いのが、顔が見えないのが……不安なんだ……怖いんだ……」
卑怯な手だろう、もっと早めに言うべき言葉だっただろう。
私が不安を、恐怖を訴えれば、ニュクスは従ってくれる。
つくづく自分の薄汚さに反吐が出る。
その言葉に、漸くニュクスが恐る恐る顔をこちらに向けてくれた。
赤く染まった顔、涙で潤んだ目元、熱帯びた息。
ぞくりとした。
唇を口づけで塞いで、貪って、孕まぬ其処に薄い腹が膨らむ程に精液を注いでしまいたい――それを私は我慢できなかった。
唇を貪ると、酷く甘く感じた。
少しだけましになったが、まだ痩せている体の、感触を汚れてない手で、なぞる。
口づけを止めて、首筋を舐め、吸い付いて痕をつける。
ぐちゃぐちゃという音と、ニュクスの引きつった嬌声じみた声に興奮してしまう。
あまり触ることをしなかったニュクスの雄を扱きながら、腸内を突き上げれば、ニュクスの男のソレにしてはあまりにも綺麗な形の雄から白い液体を吐き出した。
奥の奥までこじ開けて、精液を注げば、喉を反らして、赤い舌を出して声にならない声を上げて、体を震わせて、綺麗なソレも震わせて、ぎゅうと締め付けを強めてきた。
奥はまるで吸い付くように、先端に絡みついて、しゃぶるような感触さえ感じて、酷く心地よかった。
狂った愛の言葉を何度も言って、抱いて、口づけて、貪って、精液を吐き出して――それを繰り返した。
ニュクスが意識を失っても、無理やり覚醒させて、抱き続けた。
翌朝――私は酷い自己嫌悪に苛まれた。
自分の薄汚い精液で薄い腹を膨らませた、ニュクスの様を見て――
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