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壊れた祝福者

ままならぬ体

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 俺が五ヶ月、ある意味「眠り続けて」た状態から目覚めて五日が経過した。
 目覚めた初日の夜から寝る時俺は両腕を動かせないように拘束されるようになった。
 リアンに理由を聞いたけど。

『危ないから』

 としか言ってくれない。
 まぁ、確かに俺以前自殺しようとした前科あるから文句は言えない。
 でも、ロクに動けないから過剰のような気もするけど。
 寝る時は起きてた時同様睡眠薬を飲んでるから、気にならないけど。
 リアンにそのまま抱きしめられて、眠った。

 そして、朝起きたら――口枷つけられてた。

 流石にこれには疑問符が湧く。
 リアンは俺が起きたのに反応するかのように目を覚まして口枷を外した。

 何で口枷なんかするんだよ。

「――」
「……眠ってすぐ、君は自分の舌を噛み切ろうとした」

 え?

 リアンは酷く重い表情をしていた、嘘ではないようだ。

 かなりその副作用が出にくい睡眠薬らしいが、それでも、寝ている間に何かしようとする服用者はいるらしい。
 問題がない限り基本気にしない方向がらしい、ただ何かを食べて腹を壊すなどの健康被害を起こした場合には処方を見直すらしいが。
 今まで服用した時、そういう事は無かったから今回急に出たということになる。

 リアンの食事の時――俺は点滴を受ける間に、セイアが俺の状態を見る。
 リアンは食事を少し急ぎめに取ってから、昔のような口調でセイアに俺に起きたことを説明した。
 俺の「言葉」をセイアに伝えた。
 説明とか終わると一旦セイアとリアンは部屋を出た。

 どうやら俺には聞かせられない内容っぽい。
 なら、俺はそれが聞けるようになるまで、大人しく言う通りしておこう、どうせままならない身だしと、諦めのため息を吐き出す。

 リアンだけが戻ってきた。
 リアンは少し顔色が悪くなっていた。
 疲れたようにベッド上に乗り、俺を抱きしめてきた。

 大丈夫か?

「――」
「……ああ、少し。この部屋から出るのは、怖くてたまらない……君がいないと怖くてたまらない……」

 それでも、アンタは俺には聞かせられないからと、選んだのか、それを。
 そんなに辛いなら捨ててくれと思うのに、リアンは酷い、俺がいないと怖くてたまらないとか言うから、言えなくなったじゃないか。

「……とりあえず、これ以上副作用が出にくい薬はないらしい現状は。だからその、すまない、就寝前は腕の拘束だけでなく口に枷をつける事を今後は行う……ニュクスすまない、こんな事、したくはないんだ」

 まぁ、リアンもされてそうだしなぁ。
 拘束されてた俺見た時、酷く不安そうだったから、やっぱり拘束とか枷つけられるの怖いんだろうししたくないし見たくもないんだろうなぁ。

 いいよ、気にしないから、俺にはお似合いだよ、そういう扱いが。

「――」

 リアンは悲しそうな、痛々しい感じも見える表情をして俺を見つめている。
 手を伸ばしたくても、腕が酷く重くて動かない。


 大事な事に鍵をかけていた時は、自由に動かして――傷つけるだけ傷つけていたというのに、なんで思い出して触れたいと願う時はロクに動いてくれないんだろう。
 それだけ体を動かしてなかったというのが原因なのは分かってるが、腹立たしい。
 勝手に舌を噛み切ろうとかして、リアンに心配をかけてしまう自分が憎くてたまらない。
 俺は、本当、誰も幸せにできない。

 どうして、俺はこんな風に蓋をしていたんだろう。
 あの記憶を思い出さない方がよかったとは思わない、どちらかと言えばもっと早く思い出したかった。

 自分の抑えつけて壊れていた箇所が表面に出てしまうよりも先に。

 そうすれば、俺はリアンの事傷つけずに済んだかもしれないのに。
 他の皆も傷つけずに、苦しめずに済んだかもしれないのに。
 もう少し、マシな方向に進んでたかもしれないのに。

 嫌になる。


「ニュクス……」
 抱きしめられ、頬に口づけをされる。
 俺は自分からそれをすることはできない。
 顔を動かすくらいならできる、でも――
 自分からリアンに口づけをしようと思うと、まるで綺麗なものを汚してしまうような、罪悪感が酷くてできない。
 正直抱きしめられてる時も、色々と気分が憂鬱になる。

 周囲を不幸にしてきて、大事な人達を傷つけて、そんな薄汚れた俺に触るリアンが、汚れてしまうような気がして辛い。

「綺麗だよ、ニュクス」

 リアン、俺は綺麗なんかじゃないよ、汚いよ、穢れてるよ、醜いよ。

 汚れるから、触らないでくれよ、抱かないでくれよ。

「――」

 俺の言葉にリアンは首を振った。
「君は汚れてなんかない、綺麗だ、とても綺麗だよ。……汚したのは私の方だ、君を汚して、追いつめて……そしてこれからも汚し続ける」
 服越しに胸元をなぞられる。
 服の紐を外される。
 色々あって、前よりも脱がしやすい服にされたから、それだけでやせ細った醜い俺の体は露わになる。

 前みたく、自分の身も守れない。
 自分で自分の事をすることもできない。
 役に立たない俺の体。
 ああ、でも、リアンの性欲吐き出す、はけ口位には、なれるか。

 こんな体に良く勃起できるよなぁ、本当。

 触られるだけで酷く心地いい、マイラ達に触られても何も感じないのに、針の痛みとかも、点滴の時、少し冷たいなとかは感じるけど、それ以外は何も感じない。

 膣内で軽く指が動く感触で頭がおかしくなる、ナカが指を締め付けてしまってそれで敏感なナカの肉をいじられるのだけで何回イったんだ?
 少しだけ何か違和感があった、尻の穴の方、ああ、そっちにも挿れたいのかよ。

 いいよ、好きにすれば。

 指で尻の穴をほぐされる感触にも、快感を感じて、リアンの指を締め付けてしまう。
 ぬるりと抜かれると、くぱくぱと開いてるのが分かって結構恥ずかしい、酷くみっともない体なのが分かって。

 ひゅーひゅーと息を繰り返しているとぬるりとした異物が尻の方に入ってくる。
 ぼこぼこしてるのがわかる、酷く不快で、異物感が酷くて、腹が苦しい。
 その状態で女性器の方――膣内にリアンの雄が入ってくる。
 気持ちいいのと苦しいので頭がぐちゃぐちゃだ。
 ごりごりと異物の与える感じが痛いし、苦しい、辛い。

 でも、我慢しないと。
 リアンがしてることだから、我慢、しないと。

 ああ、でも、苦しい、痛い。
 リアンと繋がってる箇所での気持ち良さより、そっちの方が強くて、苦しい。
 体が不快感でべとついている感じがする。

 吐き気がしてきた。

 ああ、苦しい。
 気持ちが悪い。

 呼吸もおかしくなってきた。
 酷く辛い。

 ああ、本当面倒な体。
 でも、別に、問題ないか――
 ああ、でも苦しくて視界がぼやけてよく分からない。
 少し、怖い、な……

 ずるっと、膣内から雄が抜かれる。
 どろりと液体が零れる感触を感じながら、腹の中を責める異物の苦しみに呼吸は乱れたまま。

 その異物がゆっくりと抜かれていく。

 気持ち良くない、痛い、苦しい。

 ぐぽっと音がする、尻の方はずきずきしてひりひりして痛い。
 荒い呼吸を繰り返してると、リアンが申し訳ないと言わんばかりの表情をして、俺の頬を撫でてきた。
「……もう道具は使わない、すまない……」
 なんで、リアンが謝るんだろう。

 悪いの、全部俺なのに。




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