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君を守るため
鈍くなる体 ~お前らに任せた俺がバカだった!!~
しおりを挟むルリは目を覚ます。
自分にあてがわれた部屋ではない、真祖の部屋だ。
近くにスマートフォンは無い。
声がでない今、誰かに何かを伝える手段は近くに一切ない。
服も最低限の物のみ、部屋の空気が温かいのが幸いだった。
なんとか動こうとするが起き上がるのもままならず再びベッドに倒れこんだ。
何でこの部屋にいるのだろうと、ぼんやり考えて、自分の恰好を最初のこと思い出して、答えが出た。
――ああ、最初の扱いに戻ったのか――
絶望感や、悲壮感はない。
どうでもよくなったのだ、今の自分にお似合いの扱いだ、人形のようにロクに動けもしない話もできない自分には、と心の中で自虐にふける。
少し暗くなり、視線をやれば真祖の姿が見えた。
「ルリ」
名前を呼ばれるが、顔を向けること位しかできない。
声が出ないのだから。
真祖はまるで慈しむような表情を浮かべて自分の頬や唇、体に触れてくる。
唇を少しひんやりした唇で塞がれた。
ほんのわずかな時間だが。
その後、首筋に口づけの感触を感じた直後、牙が食い込む感触を感じた。
痛みも、快感も、何もない、何も感じない、感触がするだけ。
感覚も鈍くなっているのかと考えた。
それならどうでもいいや、とルリは目を閉じた。
ヴァイスは久しぶりのルリの血を堪能した後、目を閉じているルリの頬を撫でる。
「ルリ」
反応はない。
目を閉じたままだ、眠っているわけではないようだ。
「ルリ、どうか私を愛してくれ」
抱きしめる。
反応はない、声も返ってこない、声は失われているからだ。
再びベッドに寝かせると、ルリの目は開いていた。
相変わらず、生気がない。
するりとショーツを脱がせる、今までなら羞恥から抵抗などをしていたが、全く反応がない。
脚に口づけ、舌を這わせる。
反応はない。
膣内に指を入れ、もう片方の手で胸を触る。
わずかにだけ反応があったが、声はない。
愛撫を続けるが、わずかにぴくぴくと反応するだけ。
指を抜き、雄を膣内に挿入する。
締め付ける感触は依然と変わらない、わずかにルリはのけ反った。
口が開いてるが声は聞こえてこない。
腰を動かし、突き上げ、再び口づけをする。
舌を絡ませるが向こうは何もしてこない。
膣内がぎゅうと締まりその感触にどろりと、最奥に精液を放ってから唇を開放し、薬を飲ませる。
「……ルリ」
虚ろな目をしたままだ、ずるりと雄を抜き、再び抱きしめる。
「どうか、愛してくれ……頼む……」
反応が全く返ってこない。
ヴァイスはまるで人形を抱いているようで、酷い虚しさを感じた。
――愛って何?――
――わからない……お願い他の人にそれは願って……――
ルリはヴァイスに抱かれながらぼんやりと考えていた。
ルリは部屋に戻るとベッドの上に寝かされた。
「……アルジェント、後はお前の好きに任せる」
ヴァイスはそう暗い声で言ってその場から姿を消した。
「畏まりました」
アルジェントの声が聞こえる。
何か音が聞こえたが、何の音かはわからなかった。
アルジェントがベッドの上に乗っかり、自分を押し倒すような体勢を取っている。
頬を撫でられる感触が伝わった。
「ルリ様、どうか真祖様を――」
アルジェントは真面目な表情でいつものように言葉を言っているのを突然口をつぐんで、懇願するかのような表情でルリを見た。
「嗚呼、もう嘘はつけません。ルリ様、どうか、どうか私を愛してください」
深く口づけられる。
少しばかり呼吸が苦しい。
でもその程度だ、抵抗する気力もないし、そもそも体が思うように動いてくれない。
口づけから解放されたと思うと、首筋に口づけをされたかと思うとわずかに痛みが走った。
感触から噛みつかれているのが分かった。
血がにじむほど噛まれ、血を舐められる感触がした。
「――嗚呼、血の味しかしない。貴方の全てが欲しい、ルリ様、どうかお慈悲をください、貴方を私にください」
再び口づけをされる、血の味がした。
――何で私を欲しがるの?――
ルリは口づけをされながら、ぼんやりと考えた。
三日間、毎晩のように真祖に「愛してくれ」と体を抱かれ、体のナカに精液を吐き出され、血を吸われ。
その後に、アルジェントに「愛してください」、「貴方の全てが欲しい」と願われ、口づけをされ、体のどこかを噛みつかれる。
そんな三日間を送っていた。
その行為は静かにルリの精神を蝕み、傷を増やしていった。
「――俺言ったよな、ふざけた行動すんなって!!」
四日目、グリースはルリを見るなり、アルジェントとヴァイスを呼び出して怒鳴った。
「なんなのお前ら、押すなってボタン押しちゃうタイプなの? 押すなって書いてるんだから押すんじゃねぇよ!! フリじゃねぇんだから!! ふざけた行為するんじゃねぇよ!! もっと大事にしろよルリちゃんを!!」
グリースはベッドの上でぐったりしているルリの上半身を抱き起し、髪を撫でながら二人を怒鳴りつける。
「~~このロクデナシ共、死なない程度に焼いてやろうか?」
グリースの怒りはかなり頂点に達していた、正確には天元突破レベルだった。
グリースは自分の服を弱くだが引っ張る感触を感じてルリを見る。
ルリは弱弱しく首を振っている。
口を僅かに動かしている。
『だめ』
スマートフォンを操作するのも辛いのか、口を必死に動かしてルリは伝えようとしているのでグリースは二千年の間暇つぶしに覚えた読唇術に今感謝した。
「でも、こいつ等ルリちゃんの扱いアレだったじゃないか?」
『いいの、みんなにとってそれがつごうがいいから』
「ルリちゃんにとって都合が良くない!!」
グリースはルリを叱った。
――ああ、なんでこんな事になったんだ、行かなきゃよかった畜生!!――
ルリは「愛が分からない」「自分を求められる意味も分からない」、グリースが居ない間ヴァイスとアルジェントはそれらを望んでルリに求めた。
できないこと、わからないことを求められ、精神は少しずつ軋んでいき、日に日に感覚が鈍くなっていき、動くのも辛くなり、声を伝える手段が一つ減った。
グリースはやりたくなかったが、最終手段に出ることにした。
「ルリちゃんはしばらく俺が、預かる」
「グリース何をする気だ!?」
黙っていたアルジェントが声を荒げた。
「うるせぇ!! こんなところにいるより、俺の所で少し休ませた方が回復するわ!!」
グリースはルリのスマートフォンをポケットに突っ込みルリになんとかお気に入りのぬいぐるみを抱かせてから、抱きかかえてその場から姿を消した。
「ルリ様!!」
「――アルジェント」
「はい、すぐに追跡を――」
「……やめよ」
「な?!」
主の言葉にアルジェントは耳を疑った。
「グリースの事だ、悪いことはせぬ」
「ですが……!!」
「……私は、ルリに愛されたいのだ。お前とてそうだろう」
「……!!」
主の言葉にアルジェントは言葉を失う、恐れ多いと即答することが今までならできた、だが今はもうできない。
頭がおかしくなってしまいそうなほど、ルリを愛して欲してしまっているからだ。
「……今はしばしグリースに任せるべきだ」
主はそう言って姿を消した。
アルジェントはルリが居なくなった部屋で呆然とするしかなかった。
ルリが目を開けると、黒一色の部屋とは全く異なる綺麗な寝室が目に入った。
「ベッドは悪いけど俺と一緒で寝てくれる? 俺床じゃ寝れないんだよどうしても、二千年間何度も練習したんだけど寝れなくてさあ、布団も寝袋もダメで」
グリースが困ったように言う。
『かまわ、ないよ』
「本当? ごめんな」
グリースは枕が三つ並んだベッドにルリを寝かせた。
「何か食べたいものはある?」
『おかあさんのごはん』
「――分かった。しばらく待っててな」
グリースはそう言って部屋から姿を消した。
かなり時間がたった、何かあったのかと不安になったころ、グリースが何か色々抱えて帰ってきた。
「ルリちゃん、遅くなってごめん!! ルリちゃんの状況は説明してないけど、とにかくルリちゃんがお母さんの手料理食べたい!! って言ってるって伝えたら買い物から始まってこんなに時間がかかった!! ところで君のお母さん買い物結構優柔不断じゃねぇ?!」
グリースはそう言いながら料理をテーブルに並べる。
「あ、日持ちするような料理が多いからゆっくり食べようね?」
グリースは料理を並べ終えると、ルリを抱きかかえて椅子に座らせ、固定し、口に入るサイズにしたものをルリの口に運んだ。
「どう?」
グリースは尋ねた。
ぼろぼろと、ルリの瑠璃色の目から涙が零れ落ちた。
ルリは声なき声を上げながら泣いた。
グリースはそんなルリを抱きしめながら優しく頭を撫でた。
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