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チョコレート空騒ぎ
しおりを挟む「「……」」
番い達がずーんと沈んでいた。
隼斗、ジンの二名が沈んでいた。
「どうしたんだ、あの二人は?」
康陽が少し呆れたように言った。
するとマヨイが近づいてきて──
「あのねあのね、このあいだばれんたいんだったでしょう? でもちょこもらえなかったってすねちゃったの」
と、言った。
「ガキか」
呆れて言った。
「お前はもらえたんだろう⁈」
「いや?」
噛みつくように言う隼斗に、康陽は否定した。
「蓮がチョコレートを俺に渡せると思うか?」
「じゃあ、何故……」
「こっちから渡したんだよ」
「「‼」」
康陽の発言にその手があったかと二人は気づいた。
「ジン、お前が気づかないのはおかしいぞ」
「いえ、その、エル様がフエ様とチョコ作りをしてたのでもしやと」
「あのチョコは零用だ、異形の子等は零に毎年チョコを送ってるぞ」
「そんな……!」
がくりとジンが項垂れる。
「まぁ、だからバレンタインは零にチョコをあげる日と認識してるんだろう、凹む位なら今からでもチョコを作れ、レクチャーするぞ」
「お願いします!」
「頼む……!」
必死に言う二人に、康陽は何だかなぁという顔をした。
「な、なんとかできました……!」
「スパルタだった……!」
「当然だろう、嫌ならフエに頼め次からは」
そう言うと、隼斗はぶんぶんと首を振った。
隼斗はフエにトラウマ的なものを抱えている。
それは隼斗が全て悪いのだが。
だからあまり関わらないようにしているのだ。
「じゃあ、チョコ渡して来い」
「はい!」
「わかった……!」
そう言って素早く走り去る二人を見て、隼斗の方に普段からこの行動力があればマシなのになぁと遠い目をした。
「エル様!」
「あ、お兄ちゃん。なあに?」
「今日の三時のおやつはチョコレートでございます」
「チョコ? やったぁ!」
そう言って三時のおやつとして、チョコレートを頬張るエルを、ジンは愛おしげに眺めた。
「ま、マヨイ」
「う? どうしたの隼斗さん?」
「その……チョコレートを作ったんだ、食べてくれるか?」
「! うん!」
マヨイは満面の笑みを浮かべて箱を受け取った。
「あけていい?」
「ああ」
マヨイは箱を開けてチョコを食べ始めた。
「おいしい!」
「そうか、それは良かった……」
隼斗は安堵の表情を浮かべた。
「康陽さん、お疲れ様」
「ああ」
蓮は康陽に珈琲を渡した。
「で、俺のチョコはどうだ?」
「美味しいよ、もったいないから少しずつしか食べれないけど」
「早めに食えよ」
「うん」
蓮はそう言ってホットミルクを口にした。
「本当、うちの番い達って康陽さん以外ぐだめているわね」
フエが会議室で一人呟く。
「まぁ、そこが面白いんだけど」
フエはにんまりと笑って試作品のチョコを口にした。
「ちょっとほろ苦ね」
そう言ってホットミルクを飲んだ──
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