230 / 238
依存~異形の力の代償~
しおりを挟む「助けてくれ……!」
痣だらけの青年が探偵事務所に駆け込んできた。
「その前に傷の手当てを、クラル」
「分かった」
二階から現れたペスト医師の格好のクラルに驚きながらも、青年は手当を受けた。
「では、お話を」
「それが──」
青年は言うにはこうだ。
扉の向こうで弟が力を得て自分に暴力を振るってきた。
が、その力を失ったといい、また暴力を振るってきたそうだ。
このままでは死んでしまう。
助けてくれる人間はいない。
「分かりました、依頼、お受けいたしましょう」
「ほ、本当ですか⁈」
「ただし、その間依頼主の貴方にはシェルターに入っていて貰います」
「は、はい!」
依頼主は何度も頷いた。
「レオン」
「分かりました」
レオンは依頼主を連れて出て行った。
「前回の問題の余波がこんな形で出ているとはな」
「本当、異形ってろくなことしないねー」
フエが現れ、床に着地した。
「それで『花嫁』さんは私に何をご所望で?」
「依頼主の弟を再起不能にしてやれ、殺すなよ?」
「あいあいさー!」
フエは居なくなった。
「うっかり殺っちまうに賭けるぞ俺は」
「私は今回は言うこと聞いてくれるに賭けている」
「……後悔すんなよ」
「後悔しそうだな」
「だが、殺してもいいと思ってるだろ、実は」
「バレたか」
「ああ」
「力を得たからと言って暴力を振るうのは良くない」
「向こうは何もしてないのが分かってたのか」
「ああ、いい兄だったのに、それを鬱陶しく思って居たようだ」
「悲しいな」
「ああ」
零はそう言って慎次の入れた紅茶を飲んだ。
「あいつ、何処に逃げやがった‼ 警察に逃げてたら承知しねぇぞ‼」
厳つい男が夜のアパート前をうろうろと彷徨いていた。
「お兄さん、誰、探しているの」
「ああん?」
15歳ほどの少女が、にこりと笑って男に声をかける。
男はにたりと笑った。
「ちょうど良い、嬢ちゃんで気晴らしでも──」
『人間のくずになりさがったか……』
「ああん⁈ あの野郎、何処だ⁈」
「お兄さん」
「うお⁈」
兄の声に反応した男だったが、振り向くと少女が近くに居た。
「あそぼう⁇⁇」
どろり、ぐちゃ。
少女の顔が溶け、黒い液体のような物が広がり、男に絡みつく。
「あそぼう?」
「あそぼう」
「あ、そ、ぼ、う⁇」
絡みついた黒い液体から少女の顔が洗われ、ケタケタと笑い出した。
「ひ、ひぎゃあああああ‼」
液体は男の体に噛みつきだし、だらだらと血を流させた──
「依頼人の弟さん、兄への暴行容疑と、薬物やってるんじゃないかとか色々あって、向こう側いったとさ」
「依頼人は複雑そうだったが、出て来て頼られると困るから地方に移住するらしい」
「賢明だな」
「まぁ、弟は精神の方も異常を来してるから刑期が下りたら、病院行きだな」
そこまで零は言って慎次を見る。
「私の勝ちだな、今度パフェをおごって貰おう」
「それくらいならいくらでも」
慎次は苦笑して言った。
零は淡い笑みを浮かべた。
「なーんか良いように使われた気分」
プラスチックのストローでずずずとコーラを飲んでいるフエが不服そうに二人を見ていた──
10
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。



転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる