クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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依存~異形の力の代償~

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「助けてくれ……!」

 痣だらけの青年が探偵事務所に駆け込んできた。

「その前に傷の手当てを、クラル」
「分かった」

 二階から現れたペスト医師の格好のクラルに驚きながらも、青年は手当を受けた。

「では、お話を」
「それが──」

 青年は言うにはこうだ。
 扉の向こうで弟が力を得て自分に暴力を振るってきた。
 が、その力を失ったといい、また暴力を振るってきたそうだ。
 このままでは死んでしまう。
 助けてくれる人間はいない。

「分かりました、依頼、お受けいたしましょう」
「ほ、本当ですか⁈」
「ただし、その間依頼主の貴方にはシェルターに入っていて貰います」
「は、はい!」

 依頼主は何度も頷いた。

「レオン」
「分かりました」

 レオンは依頼主を連れて出て行った。




「前回の問題の余波がこんな形で出ているとはな」
「本当、異形ってろくなことしないねー」

 フエが現れ、床に着地した。

「それで『花嫁』さんは私に何をご所望で?」
「依頼主の弟を再起不能にしてやれ、殺すなよ?」
「あいあいさー!」

 フエは居なくなった。

「うっかり殺っちまうに賭けるぞ俺は」
「私は今回は言うこと聞いてくれるに賭けている」
「……後悔すんなよ」
「後悔しそうだな」
「だが、殺してもいいと思ってるだろ、実は」
「バレたか」
「ああ」
「力を得たからと言って暴力を振るうのは良くない」
「向こうは何もしてないのが分かってたのか」
「ああ、いい兄だったのに、それを鬱陶しく思って居たようだ」
「悲しいな」
「ああ」

 零はそう言って慎次の入れた紅茶を飲んだ。




「あいつ、何処に逃げやがった‼ 警察に逃げてたら承知しねぇぞ‼」

 厳つい男が夜のアパート前をうろうろと彷徨いていた。

「お兄さん、誰、探しているの」
「ああん?」

 15歳ほどの少女が、にこりと笑って男に声をかける。
 男はにたりと笑った。

「ちょうど良い、嬢ちゃんで気晴らしでも──」
『人間のくずになりさがったか……』
「ああん⁈ あの野郎、何処だ⁈」
「お兄さん」
「うお⁈」

 兄の声に反応した男だったが、振り向くと少女が近くに居た。

「あそぼう⁇⁇」

 どろり、ぐちゃ。

 少女の顔が溶け、黒い液体のような物が広がり、男に絡みつく。

「あそぼう?」
「あそぼう」
「あ、そ、ぼ、う⁇」

 絡みついた黒い液体から少女の顔が洗われ、ケタケタと笑い出した。

「ひ、ひぎゃあああああ‼」

 液体は男の体に噛みつきだし、だらだらと血を流させた──




「依頼人の弟さん、兄への暴行容疑と、薬物やってるんじゃないかとか色々あって、向こう側いったとさ」
「依頼人は複雑そうだったが、出て来て頼られると困るから地方に移住するらしい」
「賢明だな」
「まぁ、弟は精神の方も異常を来してるから刑期が下りたら、病院行きだな」

 そこまで零は言って慎次を見る。

「私の勝ちだな、今度パフェをおごって貰おう」
「それくらいならいくらでも」

 慎次は苦笑して言った。
 零は淡い笑みを浮かべた。

「なーんか良いように使われた気分」

 プラスチックのストローでずずずとコーラを飲んでいるフエが不服そうに二人を見ていた──





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