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依存~異形の力の代償~
しおりを挟む「助けてくれ……!」
痣だらけの青年が探偵事務所に駆け込んできた。
「その前に傷の手当てを、クラル」
「分かった」
二階から現れたペスト医師の格好のクラルに驚きながらも、青年は手当を受けた。
「では、お話を」
「それが──」
青年は言うにはこうだ。
扉の向こうで弟が力を得て自分に暴力を振るってきた。
が、その力を失ったといい、また暴力を振るってきたそうだ。
このままでは死んでしまう。
助けてくれる人間はいない。
「分かりました、依頼、お受けいたしましょう」
「ほ、本当ですか⁈」
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「は、はい!」
依頼主は何度も頷いた。
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「分かりました」
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「あいあいさー!」
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「うっかり殺っちまうに賭けるぞ俺は」
「私は今回は言うこと聞いてくれるに賭けている」
「……後悔すんなよ」
「後悔しそうだな」
「だが、殺してもいいと思ってるだろ、実は」
「バレたか」
「ああ」
「力を得たからと言って暴力を振るうのは良くない」
「向こうは何もしてないのが分かってたのか」
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「悲しいな」
「ああ」
零はそう言って慎次の入れた紅茶を飲んだ。
「あいつ、何処に逃げやがった‼ 警察に逃げてたら承知しねぇぞ‼」
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「お兄さん、誰、探しているの」
「ああん?」
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男はにたりと笑った。
「ちょうど良い、嬢ちゃんで気晴らしでも──」
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「お兄さん」
「うお⁈」
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どろり、ぐちゃ。
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「あそぼう?」
「あそぼう」
「あ、そ、ぼ、う⁇」
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「ひ、ひぎゃあああああ‼」
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「賢明だな」
「まぁ、弟は精神の方も異常を来してるから刑期が下りたら、病院行きだな」
そこまで零は言って慎次を見る。
「私の勝ちだな、今度パフェをおごって貰おう」
「それくらいならいくらでも」
慎次は苦笑して言った。
零は淡い笑みを浮かべた。
「なーんか良いように使われた気分」
プラスチックのストローでずずずとコーラを飲んでいるフエが不服そうに二人を見ていた──
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