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通り魔とDV~お前らは許さない~
しおりを挟むその温もりを失わせはしない。
慎次と零は夜、見廻りをしていた。
すると血の臭いがかすかにした。
急いでその場に向かうと、赤ん坊を抱いて、腹部から血を流している女性がいた。
「クラル!」
零がそう叫ぶとクラルが現れ、女性の治療を始めた。
「あ、あかちゃんは……」
「無事です、だから貴方もしっかりして下さい!」
「は、はい……」
そう言ってクラルは女性に檄を飛ばす。
零は赤ん坊を抱きながらしっかりと女性の様子を見守る。
「……これで大丈夫だ」
「た、助かりました」
「いいえ」
零とクラルは首を振る。
そして母親と赤ん坊が無事な事を喜ぶ。
「おい! いつまで散歩してんだよ‼ 俺の食事はまだか!」
男の叫ぶ声が聞こえた。
「っ……」
赤ん坊を抱いてうつむく女性に零は何かを差しだし、クラルは男の頬を容赦なくビンタした。
「いっでぇ!」
「痛い? 先ほどまで、この女性は通り魔か何かに刺されて大けがを負っていたのだよ、この程度の痛み可愛いものだろう」
クラルはそう言いながら男の顎を掴んで何度もビンタを繰り返す。
「これ、私の知り合いの避難所です、携帯没収とかそういうのもないし、お子さんと一緒に入れます」
「ですが……」
「DVで訴える弁護士を紹介し、その後の仕事を紹介できます」
「……! 有り難うございます! マンションに寝ている息子がいるので」
「分かりましたついて行きましょう」
零はそう言って女性の後についていった。
そしてマンションの鍵を開けて貰い、子どもを抱っこすると荷物を慎次に入れて貰い、その施設にタクシーで直行した。
施設の門番が零を見ると一礼し、そのまま門を開けてくれた。
施設に入ると、部屋に案内され、女性は一礼し、零はそのまま立ち去った。
「クラルはどうした?」
「男を放置して帰ったよ」
「やれやれ、男は?」
「伸びてた」
零は呆れた表情をした。
「今回の件は異形の仕業か?」
「いや通り魔のようだ、フエがそう言って居た」
「そうか……」
零は考え込む。
「通り魔、私達で捕まえられないか?」
「可能だろう」
慎次の言葉に、零は満足げに頷いた。
夜、赤ん坊の泣き声がする。
「よしよし」
女らしき存在が赤ん坊をあやしている。
それに近づく影に──
慎次が後ろから押し倒し、捕まえた。
手には刃物が持ってある。
「こんな物で捕まえられるとは」
女らしき存在──零はそう言って赤ん坊の人形とボイスレコーダーを見せた。
「ち、畜生!」
「被害がこれ以上出る前に捕まえて良かったな、警察に突き出すぞ」
零と慎次は男を警察に突き出した。
既に一件女性を襲っているのを男は認めた。
その際おびえているようだったと警察から聞かされ、零はため息をつく。
「フエ?」
「イエーイ、警察署に行くまでに脅してやりました!」
「構わんが、ほどほどにな」
「そう言えば女の人だけど……」
「無事離婚と慰謝料請求ができたそうだ、仕事も見つかり、紹介された保育園に子どもを預けて安心して言ってるようだ」
「それは何より、で、屑男は」
「クラルが何か見せたらしく、ガタガタ震えてマンションから出てこないらしい」
「クラルは男女ともにそういう屑は嫌いだからね」
「私もだよ」
「私もー」
フエは零に満面の笑みを見せ、零は苦笑を浮かべた──
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