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「花嫁」を傷つけた報復~破滅と混沌を望む者~
しおりを挟む「……はぁ」
ベッドに寝込んだまま、零はため息をついた。
クラルが手当をしている。
「傷が深いが大丈夫だ」
「私の事はいい、瑞穂だ」
「彼女は無事だ、今慎次が精神面のケアをしている」
「ならよかった……」
クラルは手当をしながら、不満そうな声を出す。
「全く、わざわざこちらに来てまで我らが『花嫁』に手を出すとは、よほど死にたいとみた」
「連中からすれば、私は悪魔の使役者なんだよ」
「私達を悪魔だとは片腹痛い。悪魔が逃げ出すのが異形の子等だ」
「確かに」
零は静かに頷いた。
「そう言えばフエは?」
「盛大に呪いまくってる所だろう」
「フエに呪われるなんて……哀れだ、死ぬより辛いぞ」
「……そうだな」
哀れむように言う零に、クラルは苦く返した。
言える訳も無い。
『花嫁』である、零を傷つけたもの達とその仲間は既に惨く殺され、一族は末代になるほどの強力な呪いを受けている事に。
創造の邪神フエ。
神話で神に逆らったりしたら惨い罰が与えられていた。
その通りに、創造の邪神であるフエは罰を与える。
笑いながら、無邪気に、悪辣に。
破滅と混沌を望む者の側面を出しながら。
「クラルー零さんの治療終わったー?」
「今完了したところだ」
包帯などを鳥、傷が無くなったのをクラルは確かめていた。
「フエ、連中はどうした?」
「盛大に呪ったので呪い死にしました!」
「そうか……」
「これで当分来ないといいなぁ」
「そうだな……」
フエの言葉に零は遠くを見つめた。
「私をかばって零さんが……」
探偵事務所を特別閉店表示に切り替え、慎次は瑞穂を宥めていた。
「安心しろ、零は『花嫁』だ。普通の人間では殺せん」
「でも、怪我の痕が……!」
「クラルが治療している、綺麗に消える」
そのような事を何度も根気よく慎次は瑞穂に言い聞かせた。
しばらくして──
「瑞穂」
「零さん!」
二階から下りてきた零に瑞穂は抱きついた。
頭や顔の傷などは綺麗に消えていた。
「本当です、傷が……」
「クラルの治療のおかげだ」
「私が人質になったから、零さん暴力を振るわれたんですよね、ごめんなさい……」
「いいんだ、君が無事なら」
そう言って零は瑞穂の頭を撫でた。
「聞いてないよ~~?」
「言ってないからな」
瑞穂の発言を聞いたフエがクラルに言う。
「人質取られなければ零自身で多少はどうにかなっただろう」
「よし、決めた。同じ組織の連中も玩具のように遊んで殺して、呪ってくる」
「行ってらっしゃい」
住処から姿を消したフエ。
「クラル様」
「なんだ、ジン」
首をかしげたジンがやって来た。
「肉の量が質は悪いですが増えているんです」
「フエがぶちギレて惨殺した結果だ」
「そうですか、分かりました」
過度な正義は悪でしかない。
故に、悪人の血肉をフエはジンに提供したのだ。
可愛い妹のエルが飢えないように。
エルの飢えをなんとかできるのと。
ストレス発散。
そして「花嫁」である零を守る結果につながるので、フエにとって良い条件であった。
零が傷つく以外は──
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