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フエの本体~眠りを妨げる者~
しおりを挟むくるくるくるりと世界は回る。
私の本体は眠り続けたまま。
「あ゛──……」
フエはぐったりとベッドに横になっていた。
「フエ、大丈夫か?」
「んー……あんまし良くない」
フエの顔色は悪かった。
「ちょっと本体の所に行ってくる」
「そうか……」
そう言ってフエは姿を消した。
「フエ……無事で居てくれ……」
一人部屋に残された柊は、フエの無事を願った。
「あ゛──やっばり」
フエは頭を抱えた。
フエの本体に触ろうと、ぶよぶよとした形容しがたい異形が本体周辺を蠢き、歌い手達を拘束しているのだ。
「アンタら、消えろ!」
フエがそう叫び、歯をかみ合わせた。
ぐちょ!
異形は噛み潰されたようになり、そのまま消滅した。
「ぺっぺ、まっず!」
フエはその場でつばを吐くような仕草をして、消えていく異形を見る。
そして、拘束が無くなり歌い出す歌い手達を見て息を吐く。
「私が目覚めたら世界はヤバいんだからお願いよ、本当」
そう言ってその場を後にした。
残されたのは歌い続ける歌い手達と、眠り続ける巨大な異形のみ──
「ただいまー」
「お帰り」
「お帰りなさいー」
「お帰り……」
「あれ、なんで紅姉さんと、蓮がいるの?」
戻って来たフエは柊だけでなく、紅と蓮がいるのに驚いた。
「お前が居なくなって不安そうに部屋の前を歩き回っていたからな」
紅がそう言って柊を指さす。
「う……」
「戻ってこないって思ったの?」
「……」
柊はこくりと頷いた。
「もう、心配症だなぁ、柊さんは」
フエはカラカラと笑う。
「何かあっても必ず柊さんの所に帰ってくるよ」
「本当か?」
「本当」
フエがそう言うと柊がフエに抱きついた。
「熱いことですな」
「だな」
抱きしめ合う二人と見て、紅たちはその場を後にした──
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