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異形化とマヨイ
しおりを挟む「──そもそも、マヨイが普通にしゃべればいいんでね?」
異形の子等の住処で、マヨイが相談するとフエはばっさりと切り捨てた。
「でもでも、そうしたら隼斗さんが……」
「あーの精神ぶっこわれおじさんかぁ」
フエが黄昏れる。
「悪く言わないで」
マヨイはむくれてフエをぽかぽかと叩く。
「いや、事実なんだからしょうがないでしょう。それにあんまりしゃべらないと異形よりになっちゃうよマヨイが」
「うー……」
「ただでさえ、異形の本質が父親よりなんだから、異形よりになっても問題はそんな多くないけど、破壊と混沌衝動が強く出るのは嫌でしょう?」
「いやー……」
「だから、それを隼斗さんにしゃべりなさい」
「でも……」
マヨイは渋っているようだった。
「あーもう、じゃあお姉ちゃんが言ったげる!」
フエは立ち上がりドスドスと足音を立てて歩いていった。
「あ、うー……」
「マヨイしくじったな」
「慎次お兄ちゃん」
会議室にはいつの間にか慎次が居た。
慎次はクッキーと紅茶をマヨイの前に出す。
マヨイはちびちびと飲み食いを始めた。
「お前は番いの言うことを聞きすぎだ」
「でも……」
「『自分以外と話して欲しくない』と言われて外では会話が成り立たなくなる、まぁ『花嫁』たる零なら平気だろうが」
「うん……」
「だが、他の者と話をするなら今のままでは駄目だ、お前は異形よりなのだからな」
「……」
「どんなに人の姿をとろうとも異形よりなのだ、だから普段は一掃人の姿を真似ねば異形に成り果てるぞ」
「慎次お兄ちゃん……」
「まぁ、フエがどんな物言いで説得するのかには疑問は残るが、其処はまぁ、アレだ」
「うん……」
マヨイは少しおびえたように言った。
「嘘だ!」
隼斗は焦ったように怒鳴った、それを見てフエははぁとため息をつく。
「嘘じゃないわよー、マヨイの異形度はアンタの所為で進行中、完全に異形化すれば二度とあの姿にはなれないし、話す事もできない、そしてアンタが番いだったことすら認識できない」
「……⁈」
隼斗は目を見開いた。
「マヨイはそんなこと──」
「言えなかったんでしょうね、アンタを不安にさせるから。ただでさえ不安にさせているというのに」
「……」
「で、どうする?」
フエがジト目で隼斗を見る。
「このままマヨイに外での会話をさせないで、異形化を進めるか。それとも会話を解禁して異形化を止めるか」
「……」
隼斗の答えは一つだけだった。
「零さん、ホットケーキ、食べたい」
「私も食べたい、慎次──」
「もう作ってある」
慎次は二人のホットケーキを出した。
「おいしー!」
「うむ、美味い」
のんびりと食べる二人を見て瑞穂が口を開いた。
「あの、マヨイさん普通にしゃべってるんですか?」
「まぁ、色々あってしゃべれるようになった」
「そうなんですか……」
「良かったな、会話が成り立つようになって」
「……はい!」
瑞穂は嬉しそうに笑った。
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