217 / 238
異形化とマヨイ
しおりを挟む「──そもそも、マヨイが普通にしゃべればいいんでね?」
異形の子等の住処で、マヨイが相談するとフエはばっさりと切り捨てた。
「でもでも、そうしたら隼斗さんが……」
「あーの精神ぶっこわれおじさんかぁ」
フエが黄昏れる。
「悪く言わないで」
マヨイはむくれてフエをぽかぽかと叩く。
「いや、事実なんだからしょうがないでしょう。それにあんまりしゃべらないと異形よりになっちゃうよマヨイが」
「うー……」
「ただでさえ、異形の本質が父親よりなんだから、異形よりになっても問題はそんな多くないけど、破壊と混沌衝動が強く出るのは嫌でしょう?」
「いやー……」
「だから、それを隼斗さんにしゃべりなさい」
「でも……」
マヨイは渋っているようだった。
「あーもう、じゃあお姉ちゃんが言ったげる!」
フエは立ち上がりドスドスと足音を立てて歩いていった。
「あ、うー……」
「マヨイしくじったな」
「慎次お兄ちゃん」
会議室にはいつの間にか慎次が居た。
慎次はクッキーと紅茶をマヨイの前に出す。
マヨイはちびちびと飲み食いを始めた。
「お前は番いの言うことを聞きすぎだ」
「でも……」
「『自分以外と話して欲しくない』と言われて外では会話が成り立たなくなる、まぁ『花嫁』たる零なら平気だろうが」
「うん……」
「だが、他の者と話をするなら今のままでは駄目だ、お前は異形よりなのだからな」
「……」
「どんなに人の姿をとろうとも異形よりなのだ、だから普段は一掃人の姿を真似ねば異形に成り果てるぞ」
「慎次お兄ちゃん……」
「まぁ、フエがどんな物言いで説得するのかには疑問は残るが、其処はまぁ、アレだ」
「うん……」
マヨイは少しおびえたように言った。
「嘘だ!」
隼斗は焦ったように怒鳴った、それを見てフエははぁとため息をつく。
「嘘じゃないわよー、マヨイの異形度はアンタの所為で進行中、完全に異形化すれば二度とあの姿にはなれないし、話す事もできない、そしてアンタが番いだったことすら認識できない」
「……⁈」
隼斗は目を見開いた。
「マヨイはそんなこと──」
「言えなかったんでしょうね、アンタを不安にさせるから。ただでさえ不安にさせているというのに」
「……」
「で、どうする?」
フエがジト目で隼斗を見る。
「このままマヨイに外での会話をさせないで、異形化を進めるか。それとも会話を解禁して異形化を止めるか」
「……」
隼斗の答えは一つだけだった。
「零さん、ホットケーキ、食べたい」
「私も食べたい、慎次──」
「もう作ってある」
慎次は二人のホットケーキを出した。
「おいしー!」
「うむ、美味い」
のんびりと食べる二人を見て瑞穂が口を開いた。
「あの、マヨイさん普通にしゃべってるんですか?」
「まぁ、色々あってしゃべれるようになった」
「そうなんですか……」
「良かったな、会話が成り立つようになって」
「……はい!」
瑞穂は嬉しそうに笑った。
10
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした
鈴木竜一
ファンタジー
健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。
しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。
魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ!
【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】
※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。

神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる