クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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「花嫁」療養中

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「うー♩ うー♩」

 マヨイは零の膝の上に乗っかり歌を歌っていた。
 当の零本人は、ベッドから上半身を起こしてゆっくりしていた。

「雨だな」
「出たいのはやまやまだが、この足ではな」

 零はギプスをはめられている足を見せた。

「まぁ、クラルがはめたものだから明日には解いてくれるだろうが」
「無茶はするなよ」
「分かってる」
「う!」
「ほら、マヨイも言ってる」
「分かっているよ」




 零が両足にギプスをはめてるのには理由がある。
 異形を子どもから守ろうと外へ飛び出したら、信号無視の車と激突して大けがを負ったのだ。
 幸い子どもは無事で、異形は狩られた。

 零を引いた車の連中は信号無視をしていたので、フエにたっぷり恐怖を味合わされ、真人間に更生させられた。

 零は大けがをしたがマヨイの治療とクラルの治療で幸い足に一日だけギプスをつけるだけですんだ。
 これはクラルが──

『一日くらいおとなしくしてくれ』

 というのが込められている。
 結果、零は今、この状態にある。




「それにしても、クラルも面倒な事をする」
「お前が無茶するからだろう」
「う!」
「むぅ」

 零はギプスの箇所を撫でた。

「もう痛くないのだがな」
「言っとくがマヨイに頼んで外して貰うのは無しだからな」
「分かってる」
「うー!」
「不正はしないよ」

 零はマヨイの頭を撫でた。
 マヨイは嬉しそうに額を擦り付ける。

「マヨイは可愛いな」
「まぁ、そうだろうよ」
「私は⁈」

 フエがいきなり現れた。

「見目は可愛いんだが……中身がな」
「同感だ」

 零は言葉を濁し、慎次はそれに同意した。

「何でよー!」
「マヨイは無垢な所が可愛いんだ」
「じゃあ私はどうなの零さん!」

 身を乗り出してフエが聞くと、零はしばし考えて──

「愉快犯、トラブルメーカー、苦労人、苦労を他者に押しつける」
「うがー!」
「いや、事実だろう」
「苦労人なところはあるが、それ以上に他者に苦労をさせる」
「そして何より本質は愉快犯だしな」
「慎次達から聞いたぞ、マヨイの社の件、もっと良い方法は無かったのか」
「あった」
「ほれ見ろ」
「よし、紅に報告する」
「慎次やめれー!」

 ぎゃいぎゃいと二階が騒がしくなった──




 後日、慎次に報告されたフエは拳骨をくらいたんこぶを頭に作っていた──




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