クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
210 / 238

唐突に~ジビエ料理食べたいという「花嫁」~

しおりを挟む



「ジビエ食いたい」
「いきなりどうした?」

 零が突如言い出したことに、首をかしげつつ慎次は問いかける。

「読んでいた漫画を見て食べたくなった」
「じゃあ、ジビエの料理屋予約して──」
「はいはいー! 私狩ってくる、んでお裾分けするー!」

 フエが現れそう宣言して姿を消した。

「……予約したら顰蹙買いそうだな」
「そうだな」
 慎次は予約を止め、フエが来るのを待つことに。




 翌日の夕方──
「取ってきたどー!」

 と、フエは料理を並べ始めた。

「凄い量だな」
「どれだけ狩った?」
「猪一匹に、鹿一頭、鴨とキジとコジュケイ一匹ずつだよ」
「そんなにか……」
「だから余った分は柊さんと食べるね」
「それがいいだろう」

 零は微笑んで言う。

「……これはハンバーグ?」
「ああ、猪油と鹿肉混ぜたハンバーグだよ、猪って油多いから」
「そうなのか……いや、そう書いていたな」

 フエの解説に零は納得するように言って、ハンバーグを食べる。

「うん、美味い」
「鹿肉のステーキとスペアリブのタレづけは冷蔵庫に入れといたから明日食べてね」
「分かった料理しよう」
「慎次よろ!」

 フエは次々料理を提供し、零は舌鼓を打った。

「満腹だ」
「ちょうど良かった今日の分はそれでおしまい、明日以降の分は慎次任せた」
「了解した」
「ほとんど冷凍庫に入れてるからね」
「ああ」

 フエはそう言うと居なくなった。

「さて、フエの奴どんな言い訳をするのだろうな?」
「案外言い訳しないんじゃないか、俺も言ってないし」
「そうか」

 後片付けする慎次を見て、零は風呂へ向かうことにした。




「柊さん、ご飯にしよう!」
「ああ」

 フエは料理を提供した。

「ん? いつもと肉質が違う」
「さすが柊さん、実はちょっと狩りに言ってて猪と鹿取ったのよ」
「これは鹿肉のステーキ?」
「そうそう」
「ずいぶんと量があるのにあっさりしてる、美味いな」
「本当? 良かった!」
「ところでなんで急に?」
「あー何となくジビエ食いたくなったから」
「そうか……」
「まぁ、猟師さんじゃないから特殊な方法で捕まえるんだけどね」
「フエならそうだろう」

 柊はもくもくとジビエ肉とサラダを口にした。

「ふう、お腹いっぱいだ」
「じゃあ、一緒にお風呂に入って、寝ようか」
「うん」

 柊はフエに言われてうっとりとした表情を浮かべた。
 入浴後、二人は仲良くベッドに入り、そして眠りに落ちた──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...