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「花嫁」を傷つける者は許さない
しおりを挟む「ぐぎぇええええ」
一見すると、人のように見えるそれは異形だった。
人型を取る異形にフエは話かける。
「私達の花嫁さんに、なにするつもりだったの?」
人型を取っていたそれは、異形の姿を取り始め、言葉も耳障りな音に成り果てていた。
「もう言葉もしゃべれないか、じゃあ」
「死ね」
フエの黒い物体が異形を捕食する。
無数の口が、皮膚を食いちぎり、頭部を破壊していく。
断末魔を静かに聞きながら、フエは息を吐いた。
「まっず」
ぺっぺっとつばを吐き出しそのままその場を後にした。
異形を食い殺したフエが向かったのは零の部屋。
零がベッドの上で包帯で体を巻かれて眠っていた。
フエは椅子を近づけ、零の様子を見る。
「零さん、痛かったよね」
そう言って零の唇に触れる。
だが、零は反応しない。
「ごめんよ、私が気づかなかったばっかりにあんな異形の罠に引っかからせて」
「それは違うぞフエ」
慎次が雑炊を作ってもってきていた。
「アレは俺のミスだ、俺が気づくべきだった」
「側に居たから」
「そうだ、悪意を人間の者に見せかける異形なんていくらでもいるはずなのに」
「……でも、私がやっぱり気づくべきだった」
「いや、二人のせいじゃない、気づいてたのに飛び込んだ私のせいだ」
零は倒れ込む。
「零さん⁈」
「大丈夫か零」
「少し傷が痛むが大丈夫だ、それより腹が減った」
「ほれ、鳥雑炊だ」
零はフエに手伝って貰い起きると、鳥雑炊をよそってもらい、食べ始めた。
「ああ、美味い」
「零さん、さっき気づいてたって……」
「私が罠にかかれば他の参加者は罠にかからない仕様になっていた。だからあえてかかることにした」
「それで大けがしたんじゃん」
「それは誤算だったが、おかげで他の人達は助かった訳だ」
「ええ、緊急中止って形で異形を捕縛したからよかったものの……」
「お前達ならきっと異形を捕まえてくれると信じてた」
「でも、もう二度とやらないでよね」
フエは不満そうに零に言う。
「それはどうかな?」
「もー!」
フエは地団駄を踏む。
「諦めろ、フエ。零はこう言う奴だ」
「なんだか私より後に来たのに理解度高いのむかつくー!」
「そんなこと行ってると、柊に告げ口するぞ」
「いやー! やめてー! アンタの告げ口聞いた柊さん、ヒステリックになって私を責めるんだから!」
フエは血相を変えて悲鳴を上げた。
「だったら、口を慎め」
「ぐぬぬぬぬ……」
「二人とも、喧嘩やるなら余所でやってくれ」
零は盛大にため息をついた──
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