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通り魔との遭遇
しおりを挟む「……」
零は風呂の中に入り、シャワーを浴びていた。
じっと何かに耐えるように。
「おい、どうした?」
様子がおかしいと気になった慎次がシャワーを止めて、零に風呂から出るように伝える。
零は大人しく風呂から出た。
そして、体を拭かれて、寝間着を着替えさせている。
「一人でコンビニ寄ってたらしいがどうしたんだ?」
「通り魔に出会った」
「通り魔」
「既に女性が刺されて倒れていた」
慎次はそこで零の様子がおかしかった理由を知る。
「その通り魔はどうした?」
「フエが捕まえて警察行きだ」
「そうか……」
「女性は亡くなっていた」
「……」
慎次も無言になる。
「もっと早く私が遭遇していれば」
「だから言っただろう、たらればは意味がないと」
「……」
慎次の言葉に零はため息をついた。
「おいフエ」
「はいはいー聞いてるよー」
フエが天井からずるりと現れた。
「零は一体どうしたいんだ」
「助けたかったんでしょう、女性を」
「だが、無理だったんだろう?」
「そうねー既に死んでたし」
そう言われて慎次は考え込む。
「なら、フエ、そいつが本当に通り魔かどうかも含めて情報を集めてくれ」
「OK」
フエはその場から姿を消した。
「何をする気だ?」
「異形の子流に女性の無念を晴らしてやろうとな」
「……」
慎次の言葉に零は無言になった。
「はーい、情報集めてきた。通り魔じゃなくて計画的犯行、元彼氏、DVとかが酷くて別れたのを逆恨みして襲ったって」
「屑だな」
零は吐き捨てるように言う。
「で、どうする? 異形の子流の無念を晴らすか?」
「頼む」
慎次がフエの方を向くと、フエはにっと笑った。
「くそ、変なガキに捕まって……」
『大介……』
「巴⁈ いや、そんなはずはない殺した」
男を木の棒で腐りかけた女が殴り始めた。
「と、もえ」
『アンタが殺したんだ、許さない許さない』
「ひ、ひぃいい! ゆるしてくれ!」
ガンガンと殴り、男が痣だらけになると、女は溶けて黒い肉壁に。
「ぎゃあああ! いだい、いだい! だずげでえええええ!」
肉壁に捕食され、男は悲鳴を上げた。
翌日、男が傷だらけで見つかり病院に連れて行かれたとフエが零に話した。
「治療を受けれるだけありがたいと思え、彼女はそれもできずにお前に殺されたんだ」
と、忌々しげに呟いた。
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