クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
196 / 238

「花嫁」の為に~異形殺し~

しおりを挟む



「はい、慎次とレオン以外全員集合したわね」

 異形の子等の住処の会議室で、フエが確認を取る。
 皆手を上げて、自分がいることを主張する。

「よろしい、何故未熟なレラも呼んだか事情を説明しよう」

 そう言ってフエは、先日零に起きた出来事を話した。

「と言うわけで場所関係無く奴らは人間を見張っている、だからこれを機会に、連中が動けないようにしようと思う」
「具体的にはどうやってだ?」

 紅が問いかける。

「異形を潰していく、殺すに限る」
「やっぱりか」

「私加減無しでいい⁈」
「地上から遠く離れた地下空間や、宇宙空間、海の中なら許可する、それ以外は手加減できないだろうから手出ししない」
「ぶー!」

 レラが不満げに言う。

「やらせてもらえるだけ有り難いと思え」

 クラルがレラに拳骨を落とす。

「痛い」

 レラはクラルに講義する。

「痛くしたんだ」
「そこ兄姉漫才はそこまで。さっさと行くよ、各自の脳みそにたたき込んだ場所に行くこと、じゃあ解散‼」

 フエ以外その場から居なくなるとフエも姿を消した。




「……」

 零はあの事件から陰鬱に過ごしていた。
 それでも異形がいないかの見廻りだけは辞めなかった。

「零、飯食えよ、倒れるぞ」
「そんな暇はない」

 食事も取らず見廻りをしようとする零に、慎次がキレた。

「あのなぁ、あの件をどうにもできなかったと思ってるのはお前だけじゃねぇんだぞ⁈ それなのにお前は一人で自分を追い詰めて!」
「あの時私が最初の被害者になれば、他の被害は出なかった‼」
「たられば言っててもしかたねぇだろ、その内体を壊して見廻り自体ができなくなったらどうする⁈」
「這ってでも見廻りをする」
「じゃあ、俺はお前を拘束する」

 慎次はそう言って零をベッドに拘束した。

「離せ!」
「少しは頭を冷やせ!」

 慎次は怒鳴る。

「あーやっぱりこうなってたかー」
「フエ」

 慎次がフエの名前を呼ぶ。
 フエは天井から現れ、着地する。

「零さん、今うちら総出で異形潰し行ってるから」
「……」
「何でもっと早く行ってくれなかったと思ってるかもしれないけど、私ら表に出すぎると異形連中がピリピリしだすから、普段からできなかったのよ」
「……だから、私が先に……」
「零さん、いつまでもたらればで考えてたえら駄目よ、前を向けなくなる」

 フエがそう言うと、零は唇を噛みしめた。

「じゃあ、私異形殺しに戻るから、零さんのことお願いね、慎次」
「おう」

 フエが居なくなった部屋で零が唇を噛みすすり泣く音が響いた──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
【連載再開】  長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^) ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

あさひ市で暮らそう〜小さな神様はみんなの望みを知りたくて人間になってみた〜

宇水涼麻
ファンタジー
田中洋太は父親役の真守と母親役の水萌里ともに旭市で暮らすことになった『八百万の神』の一人である。 旭市に住まう神として、旭市を知り、旭市を好きになるため、旭市で生活し人々と接していくことになったのだった。 洋太にどのような出会いが待っているのだろうか。 神々についての説明が出てまいりますが、宗教や信仰心に正しくない場合が多々あります。また『なんで免許持ってるの?』とか『籍はどうしたの?』などのご質問はお赦しください。フィクションであり、ご都合主義もあるとご理解ください。ファンタジーでありノンフィクションである小説です。 非公認エリア旭喝采部です!とにかく旭市を褒めまくります! この小説は旭市のPRを込めたものです。千葉県北東部九十九里浜最北東にある温暖な気候と肥沃な大地と大海原を持った自然豊かな土地であり、それでいて都心まで九十分という利便性を持った街です。 実際にある風景やお店や仕事などを楽しく紹介していきたいと思っています。 作者の知らない旭市の顔もまだまだありますので、取材をしながらゆっくりと進めてまいります。 読み物としても面白可笑しく書いていくつもりですので、旭市に興味のない読者様もよろしくお願いします。 完結主義の作者でございますが、紹介したいところが多すぎて完結までどれほどかかるやらwww 乞うご期待! 毎週土曜日と日曜日の昼11時に更新です。 旭市にお住まいの方で、「取材に来てぇ!」と思ってくださりましたら、【X】または【インスタ】にてご連絡ください!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...